弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士吉田賢雄の上告理由第一点について。
 昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号自作農創設特別措置法第五条第四号の
規定による主務大臣の指定する土地に関する件によれば、「自作農創設特別措置法
第五条第四号の主務大臣の指定する土地は、都市計画法施行以前に設立された耕地
整理組合が耕地整理法により宅地としての利用を増進するため工事を施行した土地
とする」とある(但し同年八月二一日農林省告示第一八五号によつて右告示中(イ)
「都市計画法施行以前に」とあるのは「昭和八年五月十日以前に」と、(ロ)「宅
地としての利用を増進するため工事を施行した土地」とあるのは「農業上の土地の
利用を増進するため工事を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つ
たもの」と改められた)。論旨は、右告示を以つて旧自創法第五条第四号により買
収除外を指定する土地は都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合が耕地整理
法により宅地としての利用を増進する為め工事を施行した土地についてであつて、
本件の如く同法施行後に設立された組合で工事を施行した土地は宅地化されたもの
として、当然買収し得ない土地である。すなわち盛岡市に都市計画法が施行された
のは昭和三年一月一日であり、志家耕地整理組合が設立認可されたのは同年一月二
五日であるから、同組合によつて市街地宅地造成のため耕地整理の行われた本件宅
地は旧自創法第五条第四号所定の主務大臣の指定を要することなく、既に区画整理
を完了し宅地化されたものとして、前示農林省告示にかかわらず、買収を除外さる
べきであると論ずる。
 しかし右告示からそのように論結することはその文理上できないばかりでなく、
他にそのように論断しなければならない法律上の根拠は見出し得ない。従つて、論
旨は、独自の見解に立脚して彼是論議するに外ならないもので、到底採るを得ない。
 同第二点について。
 しかし、原判決認定の諸事実を彼此考量すれば、本件土地がその買収処分当時に
おいて、いまだ以て近く土地使用の目的を変更することを相当とすることが客観的
に明白な状況にあつたものとは認められない旨の原判決の事実上の判断は相当であ
り、そこに法令違背の欠点あるものとは認められない。なお本件土地の買収処分後
に所論の指摘するように売渡保留の決定がなされたからといつて、その一事によつ
て本件土地が盛岡市の住宅地域として使用目的の変更を相当とすることが明白であ
つたとして、遡つて、本件買収処分が重大且明白な瑕疵を内包するに至つたものと
言うことできない。論旨は、ひつきようするに独自の見解を出でないものであつて、
これを亦採るを得ない。
 よつて、民訴四〇六条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
        裁判所長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾

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