弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成29年(わ)第169号,第190号大麻取締法違反,窃盗被告事件
主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成29年7月29日,福岡市a区bc丁目d番e号福岡県A警察署1階証
拠品倉庫において,同警察署署長B管理に係る大麻約4.407グラムを窃取
し,
第2みだりに,同日,福岡市f区gh丁目i番j号の九州旅客鉄道株式会社C駅
において,上記大麻約4.407グラムを所持し
たものである。
(量刑の理由)
本件は,警察署で証拠品の管理を担当していた警部補である被告人が,気分が落
ち込んだときに大麻を使用したいなどと考え,被疑者不詳の大麻栽培事件で押収さ
れた証拠品として証拠品倉庫で保管されていた大麻草の株から,密かに,ハサミを
用いて一部の葉を切り取るなどして判示第1の大麻の窃盗に及び,盗んだ大麻をバ
ッグに入れて電車で持ち帰ろうとして,JRC駅で大麻を所持して判示第2の犯行
に及んだが,電車から降りる際にバッグごと大麻を電車内に置き忘れてしまい,落
とし物としてバッグが発見され,検挙されるに至った事案である。
本件犯行は,市民の警察に対する信頼を失墜させるものであり,その社会的影響
は大きい。また,証拠品に,警察官が密かに手を加えるような事態は刑事司法上も
許容することができない。被告人は,現職の警部補として,法律を守り,犯罪を取
り締まる立場にあり,総務課のいわゆる証拠品係の係長として,きちんと証拠品を
管理することを期待されながら,その職責に反し,証拠品に手を加えて大麻を盗み
出したものであり,厳しい社会的非難を免れない。
被告人は,以前からうつ傾向があり,警部補に昇任した後,平成20年に高速道
路で速度違反をして処分を受けるなどして心理的に耐えきれなくなり,うつ病で同
年11月頃から3か月間病気休暇を取り,職場復帰したが,平成25年にうつ病が
再発し,約1か月間入院し,再度職場復帰したが,その後も服薬治療を続けていた。
被告人は,職場復帰後も気分が落ち込むことがあり,本件の約1か月前から,落ち
込んだ気分を晴らそうとして,2回にわたり証拠品倉庫で保管していた大麻草の株
から自然に落ちた葉を密かに集めて持ち帰るなどし,何度か自宅で吸って使用する
うちに,本件犯行に及んだという。被告人は,うつ病であるとはいえ,長期間にわ
たり処方薬を用いて一時的に気分を晴らすことを続けた末,大麻を使用するに至っ
ており,薬物に依存する傾向があり,法律を守ろうという意識が乏しくなっていた
ものと言わざるを得ない。
そうすると,被告人がうつ病にり患して服薬治療中であり,本件犯行の直前には
服用する処方薬の量が増えており,被告人が当直明けに大麻を盗み,盗んだ大麻を
被告人名義の診察券や源泉徴収票,たばこ等の入ったバッグごと電車内に置き忘れ,
置き忘れにすぐには気付かずにいたなど,被告人の精神状態が悪化していた点を考
慮しても,被告人の刑事責任は重く,そのことを明らかにする必要がある。また,
被告人は,当面,服薬治療を続けるというのであるが,処方薬が一時的に気分を晴
らすために用いられており,被告人に処方薬その他の薬物に依存する傾向があるこ
となどからすると,適切な指導監督を受ける必要がある。
その他,被告人が事実を認め,反省の態度を示し,当然ではあるが既に懲戒免職
となっており,うつ病の治療をする旨述べていること,被告人が盗んで所持してい
た大麻は,すぐに落とし物として発見され回収されていること,被告人には前記の
速度違反による罰金前科以外に前科がないこと,被告人が本件で検挙されたことか
ら離婚するに至り,幼い子供らの親権者となった離婚した妻が被告人の更生への協
力を申し出ていること,被告人が相当期間身柄を拘束され反省の機会を与えられた
ことなど,被告人のために酌むべき事情を考慮して,刑の執行を猶予し,保護観察
に付して,再犯の防止と被告人の更生に努めることとした。
(求刑懲役1年6月)
平成29年10月26日
福岡地方裁判所久留米支部
裁判官西﨑健児

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