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令和3年3月29日判決言渡
令和2年(行ケ)第10037号審決取消請求事件
口頭弁論終結日令和3年2月1日
判決
原告株式会社サンセイアールアンドディ
訴訟代理人弁理士山田和寛
福嶋亨
冬木郁代
吉田元治
被告特許庁長官
指定代理人佐藤高之
瀬津太朗
長崎洋一
樋口宗彦
小出浩子
主文
1特許庁が不服2019-10092号事件について令和2年2月2
6日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文第1項と同旨
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
⑴原告は,平成26年7月24日に出願した特許出願(特願2014-15
0521号)の一部を分割して,平成28年2月2日,発明の名称を「遊技
機」とする発明について,新たな特許出願(特願2016-18140号。
以下「本願」という。甲2)をした。
原告は,平成29年7月20日付けで特許請求の範囲及び明細書について
手続補正(以下「第1次補正」という。甲3)をした後,平成30年4月1
9日付けの拒絶理由通知(甲4)を受けたため,同年5月31日付けで特許
請求の範囲及び明細書について手続補正(以下「第2次補正」という。甲6)
をしたが,さらに,同年9月28日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理
由通知」という。甲7)を受けたため,同年11月14日付けで特許請求の
範囲及び明細書について手続補正(以下「第3次補正」という。甲9)をし
た。
特許庁は,平成31年4月23日付けで,第3次補正を却下する決定(以
下「第3次補正の却下決定」という。甲10)をするとともに,第2次補正
後の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を否定して拒絶査定(以下「本
件拒絶査定」という。甲11)をした。
⑵原告は,令和元年7月31日,「原査定を取り消す。本願は特許すべきもの
である。」との審決を求める拒絶査定不服審判(不服2019-10092号
事件。以下「本件審判」という。甲12)を請求するとともに,同日付けで,
特許請求の範囲及び明細書について手続補正(以下「本件補正」という。甲
13)をした。なお,本件補正は,第3次補正と同じ内容である。
特許庁は,令和2年2月26日,本件補正を却下する決定をした上で,「本
件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を
し,その謄本は,同年3月10日,原告に送達された。
⑶原告は,令和2年3月20日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2特許請求の範囲の記載
⑴第2次補正後のもの
第2次補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである
(以下,同請求項1に係る発明を「本願発明」という。甲6)。
【請求項1】
所定条件の成立を契機として当否判定を行う当否判定手段と,
通常状態である第一状態から,当該第一状態とは異なる状態であることを
遊技者の感覚で認識可能な第二状態に変化可能である,遊技者が操作可能な
操作手段と,
前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報知
するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作するこ
とを促す操作演出を実行する演出実行手段と,
前記操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作され
ていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化させる場
合がある状態変化手段と,
を備え,
前記操作手段が操作されていないにも拘わらず前記操作有効時間内に前
記操作手段が前記第一状態から前記第二状態に変化した場合には,当該変化
が発生しない場合に比して,前記対象当否判定結果が大当たりであることが
報知されるに至る蓋然性が高くなるように設定されていることを特徴とする
遊技機。
⑵本件補正後のもの
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以
下,同請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。下線部は,本件補正
による補正箇所である。甲13)。
【請求項1】
所定条件の成立を契機として当否判定を行う当否判定手段と,
通常状態である第一状態から,当該第一状態とは異なる状態であることを
遊技者の感覚で認識可能な第二状態に変化可能である,遊技者が操作可能な
操作手段と,
前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報知
するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作するこ
とを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を
契機として演出の結果が示される操作演出を実行する演出実行手段と,
前記操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作され
ていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化させる場
合がある状態変化手段と,
を備え,
前記操作手段が操作されていないにも拘わらず前記操作有効時間内に前
記操作手段が前記第一状態から前記第二状態に変化した場合には,当該変化
が発生しない場合に比して,前記対象当否判定結果が大当たりであることが
報知されるに至る蓋然性が高くなるように設定されていることを特徴とする
遊技機。
3本件審決の理由の要旨
⑴本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,①本件補正発明は,本願出願前に頒布された刊行物である特
開2013-208304号公報(以下「引用文献1」という。甲1)に記
載された発明(以下「引用発明」という。)と同一の発明であるから,特許
法29条1項3号の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けること
ができないものであるから,本件補正は,却下すべきものである,②本願発
明は,引用発明と同一の発明であるから,同号の規定により特許を受けるこ
とができないというものである。
(2)本件審決は,次のとおり,本件補正発明を構成に分説し,引用発明を認定
した上で,本件補正発明と引用発明を対比し,引用発明の構成aないしfは
本件補正発明の構成AないしFに相当するから,本件補正発明は,引用発明
と同一のものである旨判断した。
【本件補正発明の構成の分説】
A所定条件の成立を契機として当否判定を行う当否判定手段と,
B通常状態である第一状態から,当該第一状態とは異なる状態であること
を遊技者の感覚で認識可能な第二状態に変化可能である,遊技者が操作可
能な操作手段と,
C前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報知
するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作する
ことを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操
作を契機として演出の結果が示される操作演出を実行する演出実行手段
と,
D前記操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作さ
れていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化さ
せる場合がある状態変化手段と,
を備え,
E前記操作手段が操作されていないにも拘わらず前記操作有効時間内に前
記操作手段が前記第一状態から前記第二状態に変化した場合には,当該変
化が発生しない場合に比して,前記対象当否判定結果が大当たりであるこ
とが報知されるに至る蓋然性が高くなるように設定されていることを特
徴とする
F遊技機。
【引用発明】
a特図1,2関連抽選処理において,特図1始動口230または特図2始
動口232への入賞に基づいて,大当りとするか,小当りとするか,はず
れとするかの当否判定を行うCPU304を有する主制御部300(【0
083】,【0097】,【0131】,【0132】)と,
b遊技者の操作によって各種演出装置206の演出態様に変化を与え,操
作有効期間中にチャンスボタン136が発光状態(第1の態様)から,遊
技者がその振動を触覚的に感じ取ることができる,発光+振動状態(第2
の態様)に変化可能に構成されたチャンスボタン136(【0012】,
【0448】,【0473】,【0532】)と,
cリーチ形成中に係る通常予告演出としての「ボタン系」の予告演出を実
行する第1副制御部400とを備え(【0360】,【0513】),
c1,d第1副制御部400は,
特図変動遊技の開始時の予告決定処理において,リーチ形成中に係る「ボ
タン系」の予告演出の予告態様として,次のア~ウの態様を選択する予告
決定処理を実行し(【0360】,【0511】,【0513】),
ア.「操作手段」として,チャンスボタン136が第1の態様から第2
の態様に変化することを示す,チャンスボタン136の態様「1-2」
(【0383】~【0384】),
イ.「表示」として,演出表示予告の予告態様が,表示2から表示3に
変化することを示す,予告態様「2-3」(【0383】~【038
4】),
ウ.「予告態様の変化契機」として,チャンスボタン136の1回の操
作(押下)を契機として演出表示予告が開始され,または演出表示予
告の予告態様が変化することを示す「操作1回」,および,チャンス
ボタン136の操作を遊技者に要求する操作要求演出の開始から3
秒経過することを契機としてチャンスボタン136の態様が変化す
ることを示す「3秒経過」(【0385】),
「ボタン系」の予告演出において,
「リーチB」の演出が開始されてから所定時間経過後にチャンスボ
タン136の操作有効期間が開始されて,チャンスボタン136を表
した画像と,演出表示領域208dの中央部上方に「連打せよ!」と
いう文字画像とがそれぞれが表示されて遊技者にチャンスボタン1
36の押下をうながす操作要求演出を実行し(【0360】,【05
21】),
操作有効期間中であって装飾図柄表示装置208による操作要求
演出の実行中に,チャンスボタン136を1回押下すると,リーチ形
成中の演出表示予告として,中図柄表示領域208bと重なる演出表
示領域208dに表示2の「番長の幼馴染」を表したキャラクタ画像
に代えて,信頼度および期待度が100%である表示3の「保健医」
のキャラクタ画像を表示し(【0379】,【0383】~【038
4】,【0522】~【0523】,【0644】),
操作有効期間中であって操作要求演出が開始されてから3秒経過
すると,チャンスボタン136の態様を,発光状態(第1の態様)か
ら,発光+振動状態(第2の態様)に発展的に変化させ(【0360】,
【0448】,【0473】),
eチャンスボタン136の第1の態様を実行するよりも第2の態様を
実行する方が大当りに当選することを遊技者に期待させることができ
る(【0376】)
fパチンコ機100(【0008】)。
第3当事者の主張
1取消事由1(手続違背)
⑴原告の主張
第3次補正の却下決定の理由は,補正事項が新規事項の追加に当たるから,
第3次補正は特許法17条の2第3項に違反するというものである。
原告は,本件審判の請求と同時に,第3次補正と同じ内容の本件補正をし
たところ,本件審決は,本件補正の補正事項は新規事項の追加に当たらない
から,本件補正は同項に規定する要件を満たすが,本件補正後の請求項1に
係る発明(本件補正発明)は,新規性を欠くので,独立特許要件を満たさな
いとして,本件補正を却下する決定をした上で,本件拒絶査定をした。
しかし,本件審決が,第3次補正と同じ内容の本件補正が新規事項の追加
に当たらないとして,第3次補正の却下決定が誤りであることを認めた以上,
本件補正発明が新規性の欠如により独立特許要件を欠くとの本件補正の却下
理由は,本件拒絶査定における拒絶理由と異なる拒絶理由であるといえるか
ら,本件審判手続において,原告に対し,新たな拒絶理由通知をし,反論の
機会を与えるべきであったのに(特許法159条において準用する同法50
条本文),これを怠った手続違背の違法がある。
⑵被告の主張
本件拒絶理由通知(甲7)記載の拒絶理由は,引用文献1に基づいて新規
性又は進歩性が否定されるとする理由であるから,本件審決が本件補正発明
が引用文献1により新規性が否定されると認定したことは,本件拒絶査定と
と同一の拒絶理由に基づくものであり,特許法第50条を準用する同法15
9条2項の「拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発
見した場合」に該当しない。
また,第3次補正の却下決定においても,予備的見解として同様の理由が
示されているから,本件審判手続で,新たな拒絶理由通知を行う必要はない。
したがって,本件審判手続に新たな拒絶理由通知の欠缺の手続違背がある
との原告の主張は,理由がない。
2取消事由2(引用文献1を主引用例とする本件補正発明の新規性の判断の誤
り)
⑴原告の主張
ア本件補正発明の構成Cに関する判断の誤り
本件審決は,①引用発明の構成c,c1,d(以下「本件構成」という
場合がある。)における「操作有効期間中であって装飾図柄表示装置208
による操作要求演出の実行中に,チャンスボタン136を1回押下する」
ことは,本件補正発明における「操作有効期間中に操作手段を操作するこ
とを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の操作手段の操作を契
機と」することに相当する,②本件構成における「「ボタン系」の予告演出
において」,「信頼度および期待度が100%である表示3の「保健医」の
キャラクタ画像を表示」する演出は,当り確定を表示する演出であるから,
本件補正発明における「演出の結果が示される操作演出」に相当する。③
したがって,引用発明の本件構成は,本件補正発明の構成Cの「前記当否
判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報知するための
演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作することを促し,
当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機とし
て演出の結果が示される操作演出を実行する演出実行手段」に相当する旨
判断した。
しかしながら,本件補正発明の構成Cの「操作有効期間が開始されてか
ら最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示される」とは,
「最初の前記操作手段の操作を契機」として「必ず」大当たりであること
を示す「演出の結果」が示されることを意味するものと解されるところ,
引用文献1の【0368】の「本実施の形態によるパチンコ機100では,
予告抽選2において演出表示予告の予告態様が発展的に変化する「1-2」
または「2-3」が選択された場合には,操作有効期間中にチャンスボタ
ン136が1回押下されたことに基づいて表示1または表示2が装飾図柄
表示装置208の演出表示領域208dに出現して演出表示予告が開始さ
れる。その後,操作有効期間中にチャンスボタン136がさらに1回押下
されたことに基づいて演出表示予告の予告態様が表示2または表示3に発
展的に変化する。」との記載によれば,演出表示予告の予告態様が,表示2
の「番長の幼馴染」のキャラクタ画像から表示3の「保健医」のキャラク
タ画像に変化することを示す,予告態様「2-3」が選択された場合,操
作有効期間中の1回目のチャンスボタン136の操作により表示2の「番
長の幼馴染」のキャラクタ画像が表示され,2回目のチャンスボタン13
6の操作により表示3の「保健医」のキャラクタ画像が表示されるもので
あって,最初(1回目)のチャンスボタン136の操作を契機として大当
たりであることを示す表示3の「保険医」のキャラクタ画像が必ず表示さ
れる構成とはいえないから,引用発明の本件構成は,本件補正発明の構成
Cの「操作有効期間が開始されてから最初のチャンスボタン136の操作
を契機として表示3が表示される」構成に相当するものではない。
したがって,引用発明は,本件補正発明の構成Cに相当する構成を有す
るものではないから,本件審決の上記判断は誤りである。
イ本件補正発明の構成D及びEに関する判断の誤り
本件審決は,引用発明の本件構成は,本件補正発明の構成Dに相当し,
引用発明の構成eの「チャンスボタン136の第1の態様を実行するより
も第2の態様を実行する方が大当りに当選することを遊技者に期待させる
ことができ」ることは,本件補正発明の構成Eの「操作手段が操作されて
いないにも拘わらず操作有効時間内に操作手段が第一状態から第二状態に
変化した場合には,当該変化が発生しない場合に比して,対象当否判定結
果が大当たりであることが報知されるに至る蓋然性が高くなるように設定
されている」ことに相当する旨判断した。
しかし,引用文献1の【0478】には,「本実施例によるパチンコ機1
00では,チャンスボタン136が操作することでのみ第2の態様に変化
するので,チャンスボタンの第2の態様への変化に対する自力操作での達
成感を遊技者に付与することができる場合がある。」との記載があり,上記
記載中の「操作することでのみ第2の態様に変化する」及び「自力操作で
の達成感を遊技者に付与する」との部分は,操作されなければ第2の態様
(振動状態)に変化することはないことを述べたものと解釈するのが自然
であるから,引用文献1には,本件補正発明の構成Dの「前記操作手段が
操作されていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に操
作させる場合がある」及び構成Eの「前記操作手段が操作されていないに
も拘わらず前記操作有効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前記第
二状態に変化」することについての開示はない。
したがって,引用発明は,本件補正発明の構成D及びEに相当する構成
を有するものではないから,本件審決の上記判断は誤りである。
ウ被告の予備的主張について
被告は,仮に本件補正発明の構成Cの「当該操作有効期間が開始されて
から最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示される」にい
う「最初の前記操作手段の操作を契機として」との構成は,最初の一回の
ボタン操作のみ行われる場合を指すと限定解釈することを前提としても,
引用文献1には別の実施例(被告主張の「技術事項A」)に係る発明が記載
されており,当該発明は本件補正発明の構成C,D及びEに相当する構成を
有するから,引用文献1に基づいて本件補正発明の新規性を否定した本件
審決の判断に誤りはない旨主張する。
しかし,被告の上記主張は,本件審決が引用文献1記載の発明として認
定した引用発明とは異なる技術事項Aに係る発明に基づいて本願補正発
明が新規性を欠くことを主張するものにほかならず,本件審決が示した本
願の拒絶理由を変更するものであり,このような拒絶理由の変更を認める
ことは,実質的に審判手続における請求人の反論の機会(特許法159条
2項,50条)を奪う結果につながるものであるから,許されるべきもの
ではない。
また,被告主張の技術事項Aは,「操作有効期間の「経過後」(終了後)」
に,操作手段(チャンスボタン136)が第一状態から第二状態に変化す
るものであって,「操作有効時間内」に操作手段が第一状態から第二状態に
変化するものではないから,少なくとも,この点において本件補正発明と
相違するから,技術事項Aに係る発明に基づいて本件補正発明の新規性は
否定されるものではない。
エ小括
以上のとおり,引用発明は,本件補正発明の構成CないしEに相当する
構成を有しないから,本件補正発明が引用発明と同一の発明であるという
ことはできない。
したがって,本件補正発明の新規性を否定した本件審決の判断(独立特
許要件の判断)に誤りがあり,この誤りは,本件審決の結論に影響を及ぼ
すというべきである。
⑵被告の主張
ア本件補正発明の構成Cに関する判断の誤りの主張に対し
(ア)構成Cの「当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段
の操作を契機として演出の結果が示される」操作演出の意義について
本件補正発明の構成Cの「当該操作有効期間が開始されてから最初の
前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示される操作演出を実行
する演出実行手段」にいう「最初の前記操作手段の操作を契機として演
出の結果が示される」とは,以下のaないしeを総合すると,操作手段
の最初の「操作直後に演出の結果が示される態様」のみならず,操作手
段の最初の操作を「きっかけ」として,所定時間後に演出の結果が示さ
れる態様を包含するものをいい,操作手段の1度の操作によって直ちに
演出の結果が示されるものに限定して解されるべきものではない。
a「契機」(広辞苑第六版)とは,「動因。ある事象を生じさせるきっ
かけ。」を意味する用語である。
b遊技機の技術分野において,操作手段の操作を契機(きっかけ)と
した演出を実行する際,操作が契機となる演出が実行される前に異な
る演出を挟むなど,操作後直ちに演出が実行されるとは限らないこと
は,技術常識である(例えば,乙2の【0166】~【0170】,図
14,乙3の【0343】,乙4の請求項1,【0089】,【0090】,
【0270】,図8及び26)。
c遊技機の技術分野においては,以下のi)~iii)の例のとおり,
「契機」という用語を,操作手段の操作後直ちに結果が生じない場合
についても用いられているのが通常である(例えば,乙2の【016
8】,【0169】,乙3の【0343】,乙4の【0089】,【009
0】)。
d本願の願書に添付した明細書(第1次補正及び本件補正後のもの。
以下,図面を含めて「本願明細書」という。甲2,3,13)の【0
024】には,「大当たりの抽選は,…始動入賞口904への遊技球の
入賞を契機として実行する。…その他の構成等は公知の遊技機と同様
のものが適用できるため,説明は省略する。」との記載がある。
遊技機の技術分野では,始動入賞口に入賞(入球)した場合に,ま
ず抽選用の乱数が取得され,入賞に伴う演出(変動)が可能になった
タイミングで,当該乱数に基づく抽選が行われて,大当たり等の当否
が決定される方式の遊技機が一般的であり,そのような方式の遊技機
の場合,先の入賞に伴う変動中に次の入賞が起きた場合は,すぐに抽
選は行われず,最大4つまで,一旦(乱数が)保留(記憶)され,先
の変動が終了して次の変動が行えるタイミングまで待って,当該保存
された乱数をもとに抽選が行われることになるのが技術常識であるこ
と(甲1,乙2ないし4)を踏まえると,【0024】の「大当たりの
抽選は,…始動入賞口904への遊技球の入賞を契機として実行する。」
との記載における「契機」は,入賞し,最大4つの保留を経て抽選さ
れるような場合を当然に含むといえるから,本願明細書においても,
「契機」を,遊技球の入賞直後に生じる事象に限定されない意味で用
いているといえる。
(イ)引用発明が構成Cに相当する構成を有すること
引用発明の構成cの「ウ」の記載は,「操作有効期間中」に「チャンス
ボタン136の1回の操作(押下)を契機として」生じる事象は,表示
2による演出表示予告が開始され,続いて,「保健医」のキャラクタ画像
を含む表示3に変化する,「予告態様「2-3」」の一連の演出が実行さ
れることを開示するものである。
一方,引用文献1の【0465】に記載とされているように,最初の
チャンスボタン136の押下がないと,変化後の演出表示予告の予告態
様を表示することができないのであるから,演出表示予告の開始や,予
告態様の変化の表示は,最初のチャンスボタン136の押下が契機にな
っているといえる。
そうすると,引用発明では,チャンスボタン136の1回の操作を契
機として,表示2による演出表示予告が開始され,続いて,「保健医」の
キャラクタ画像を含む表示3に変化する一連の予告演出を実行している
ということができる。
加えて,引用発明における「信頼度および期待度が100%である表
示3の「保健医」のキャラクタ画像を表示」する演出は,本件補正発明
における「演出の結果が示される操作演出」に相当するものであること
を総合すると,引用発明の本件構成のうち,「操作有効期間中」における,
最初の「チャンスボタン136の1回の操作(押下)を契機として演出
表示予告が開始され」,その「予告態様「2-3」」の一連の「演出表示
予告」の中で「信頼度および期待度が100%である表示3の「保健医」
のキャラクタ画像を表示」することは,本願補正発明の構成Cの「操作
有効期間中に操作手段を操作することを促し,当該操作有効期間が開始
されてから最初の操作手段の操作を契機として演出の結果が示される操
作演出を実行する」ことに相当する。
したがって,引用発明が本件補正発明の構成Cに相当する構成を有す
るとした本件審決の判断に誤りはない。
イ本件補正発明の構成D及びEに関する判断の誤りの主張に対し
(ア)引用文献1の【0458】ないし【0477】の記載によれば,本実
施の形態の2-3は,演出に関する予告抽選の結果が,「操作5回3
秒」,演出表示予告の態様が「2」,チャンスボタンの態様が「1-2」
の場合,リーチ形成後の演出において,リーチ形成後の操作有効期間開
始から3秒経過することを契機として変化しているから,チャンスボタ
ン136を操作しなくても,操作要求演出から3秒経過することにより,
第2の態様への変化が自ずと起こるものであることは明らかである。
したがって,引用文献1には,構成Dの「前記操作手段が操作されて
いなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に操作させる
場合がある」こと,及び構成Eの「前記操作手段が操作されていないに
も拘わらず前記操作有効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前記
第二状態に変化」することが開示されている。
一方,原告の指摘する引用文献1の【0478】の記載は,本実施の
形態の2-3についての前段落まで(【0458】ないし【0477】)
の具体的な説明と明らかに矛盾するから,当該実施の形態を【0478】
の記載事項に基づいて理解すべき理由はない。
(イ)以上によれば,引用発明が本件補正発明の構成D及びEに相当する
構成を有するとした本件審決の判断に誤りはない。
ウ予備的主張
仮に本件補正発明の構成Cの「当該操作有効期間が開始されてから最初
の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示される」にいう「最初
の前記操作手段の操作を契機として」との構成は,最初の一回のボタン操
作のみ行われる場合を指すと限定解釈されるとしても,引用文献1には,
以下に述べるとおり,構成CないしEを備える実施例に係る発明が記載さ
れている。
したがって,引用文献1による新規性欠如との本件審決の判断に誤りは
ない。
(ア)引用文献1の記載(【0200】ないし【0202】,【0218】,【0
219】,【0227】,【0232】,【0238】,【0336】,【034
0】ないし【0343】,図16,17及び24)によれば,引用文献1
には,次のとおりの「技術事項A」が記載されている。
【技術事項A】
「c1’第1副制御部400は,「リーチB当り時」に「ボタン系予告
演出」として「演出J」を行うときは,演出表示領域208dに「リ
ーチ!」という文字画像が表示されてから所定時間の経過後に,「ボ
タンを押せ!」という文字画像の表示がされてチャンスボタン13
6の操作有効期間が開始され,
c2’,d’操作有効期間内にチャンスボタン136の1回押下であ
る第二の操作をしたとき,又は,操作有効期間内にチャンスボタン
136を遊技者が操作しない場合に,遊技結果が大当りであること
を報知する「雷演出」として,演出表示領域208dに,「雷の画像」
を表示するとともに,チャンスボタン136を,非押下状態の操作
手段演出1の実行から,チャンスボタンランプ138を七色発光さ
せ振動モータ718により振動させながら,回転駆動部730によ
りチャンスボタン装飾部材706および光拡散部材708を回転
させる操作手段演出6の実行に変化し,
e’チャンスボタン136の「操作無しで雷演出」が行われた演出
は,100%当りとなる一方,「操作無しで雷演出」が行われなかっ
たときには,当り確率は100%とはならない。」
(イ)引用文献1の技術事項Aにおいて,「雷演出」,「操作有効期間内」,
「チャンスボタン136」,「チャンスボタン136の1回押下である第
二の操作」,「操作有効期間内にチャンスボタン136を遊技者が操作し
ない」こと,「チャンスボタン136」が「操作手段演出1」から,「チ
ャンスボタンランプ138を七色発光させ振動モータ718により振
動させながら,回転駆動部730によりチャンスボタン装飾部材706
および光拡散部材708を回転させる操作手段演出6の実行」に変化す
ることは,それぞれ本件補正発明の「対象当否判定結果を報知するため
の演出」,「操作有効期間中」,「操作手段」,「最初の前記操作手段の操作」,
「前記有効時間内に,前記操作手段が操作されていな」いこと,「前記操
作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化させる場合」に相当する。
また,技術事項Aにおいて,「演出Jを行うときに」,「操作有効期間内
にチャンスボタン136を遊技者が操作しない場合に,チャンスボタン
136を,非押下状態の操作手段演出1の実行から,チャンスボタンラ
ンプ138を七色発光させ振動モータ718により振動させながら,回
転駆動部730によりチャンスボタン装飾部材706および光拡散部材
708を回転させる操作手段演出6の実行に変化されるこ」とが,本願
補正発明の「前記操作手段が操作されていないにも拘わらず前記操作有
効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前記第二状態に変化した場
合」(以下「場合C」という場合がある。)に相当する。
さらに,技術事項Aにおいて,操作有効期間内にチャンスボタン13
6が「操作無し」のときに,「雷演出」を実行しない演出AないしI」,
チャンスボタン136が操作手段演出1のまま変化がないと認められる
から,本件補正発明の「当該変化が発生しない場合」(以下「場合D」と
いう場合がある。)に相当する。
そして,場合Cは,100%当りとなる報知となるが,一方で,場合
Dは,当り確率は100%とはならないから,場合Cは,場合Dに比し
て,大当たりであることが報知される蓋然性が高くなるように設定され
ているといえる。
そうすると,引用文献1(甲1)には,本件補正発明の構成Cないし
Eに相当する構成が記載されているといえるから,引用文献1の実施例
に係る発明は,本件補正発明の各構成に相当する構成を有するものであ
る。
エ小括
以上のとおり,引用発明は,本件補正発明の構成CないしEに相当する
構成を有するから,本件補正発明は引用発明と同一の発明である。
したがって,本件補正発明の新規性を否定した本件審決の判断(独立特
許要件の判断)に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1本願明細書の記載事項について
⑴本願明細書(甲2,3及び13)には,次のような記載がある(下記記載
中に引用する図1ないし6については別紙1を参照)。
ア【技術分野】
【0001】
本発明は,遊技者が操作可能な操作手段を備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には,遊技者が操作可能な操作手段(ボタン)であって,
振動可能なものが開示されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の振動可能な操作手段を備えた遊技機では,リーチ演出等におい
て,所定の期間内(操作有効時間内)に操作手段を操作させ,大当たりと
なる場合には操作手段が振動する,というように操作手段を使用すること
がある。しかし,操作手段が振動するタイミングが同じ(操作手段が操作
されたとき)であるため,すぐに飽きられてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は,遊技者の感覚で通常状態とは異なる状態であることが認識可
能な状態に変化可能な操作手段を備えた遊技機において,当該操作手段を
用いた演出の趣向性を向上させることを目的とする。
イ【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明にかかる遊技機は,
所定条件の成立を契機として当否判定を行う当否判定手段と,通常状態で
ある第一状態から,当該第一状態とは異なる状態であることを遊技者の感
覚で認識可能な第二状態に変化可能である,遊技者が操作可能な操作手段
と,前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報
知するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作す
ることを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の
操作を契機として演出の結果が示される操作演出を実行する演出実行手段
と,前記操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作
されていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化さ
せる場合がある状態変化手段と,を備え,前記操作手段が操作されていな
いにも拘わらず前記操作有効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前
記第二状態に変化した場合には,当該変化が発生しない場合に比して,前
記対象当否判定結果が大当たりであることが報知されるに至る蓋然性が高
くなるように設定されていることを特徴とする。
ウ【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明にかかる遊技機では,操作有効時間内に,操作手
段が操作されていなくても操作手段が第一状態から第二状態に変化するこ
とがある演出となるから,操作手段が第二状態となるタイミングが常に同
じではない趣向性の高い演出とすることが可能である。
エ【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,本発明にかかる遊技機1の一実施形態について図面を参照して詳
細に説明する。まず,図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に
説明する。なお,図1では,遊技機1の枠体,遊技球を発射する発射装置,
遊技球を貯留する下皿や上皿など,本発明に関係のない構成の説明は省略
する。これらについては公知の遊技機と同様の構造のものが適用できる。
【0020】
遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は,ほぼ正方形の合板によ
り成形されており,発射装置の操作によって発射された遊技球を遊技領域
902に案内する金属製の薄板からなる帯状のガイドレール903が略円
弧形状となるように設けられている。
【0021】
遊技領域902には,表示装置91,始動入賞口904,大入賞口90
6,アウト口などが設けられている。表示装置91は,後述する報知演出
や選択演出に用いられる。かかる表示装置91の表示画面は,遊技盤90
に形成された開口901を通じて視認可能である。
【0022】
また,遊技領域902には,流下する遊技球が衝突することにより遊技
球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。
遊技領域902を流下する遊技球は,遊技釘に衝突したときの条件に応じ
て様々な態様に変化する。
【0023】
このような遊技機1では,発射装置を操作することにより遊技領域90
2に向けて遊技球を発射する。遊技領域902を流下する遊技球が,始動
入賞口904や大入賞口906等の入賞口に入賞すると,所定の数の賞球
が払出装置により払い出される。
【0024】
大当たりの抽選は,図示されない制御基板に設けられた当否判定手段が
始動入賞口904への遊技球の入賞を契機として実行する(このような始
動入賞口は複数設けられていてもよい)。その他の構成等は公知の遊技機と
同様のものが適用できるため,説明は省略する。
【0025】
本実施形態にかかる遊技機1は,上記当否判定手段による判定結果を報
知するための各種演出が実行可能である。これらの演出において,演出に
関与しているかのような印象を遊技者に与えるため,遊技者に操作手段1
0を操作させる(操作手段10の操作が有効となる)時間が設定されるこ
とがある。
オ【0026】
[操作手段の構成]
本実施形態における操作手段10の構成は次の通りである。図1~図3
に示すように,本実施形態における操作手段10は,遊技機前方右側に設
けられた「剣」を模した構造物である。当該「剣」は,略上下方向にスラ
イド自在に設けられており,図示されない付勢部材によって上側に付勢さ
れている。したがって,操作手段10に何の力も作用していないときには,
当該付勢部材の付勢力により,最も上方の位置である原位置に位置する(図
2参照)。遊技者が付勢部材の付勢力に抗して操作手段10に対して下向き
の力を作用させると,操作手段10が下方にスライドする。具体的には,
遊技者は,操作手段10である「剣」の「持ち手部分」を握り,下向きの
力を加えることで操作手段10を下方にスライドさせる。操作手段10が
最も下方の位置である終端位置(図3参照)に到達すると,図示されない
センサによって操作手段10が当該終端位置に到達したことが検出される。
本実施形態でいう「操作手段10が操作された」とは,当該センサによっ
て操作手段10が所定位置に到達したことを検出されたときをいい,単に
遊技者が操作手段10に触れただけ,という状態をいうものではない。本
実施形態では,遊技機本体に固定された固定部材12に形成された開口1
21を通るように操作手段10が設けられている。
【0027】
また,本実施形態における操作手段10には,バイブレーション機構1
1が設けられている。バイブレーション機構11は,「剣」の「持ち手部分」,
すなわち,操作手段10を操作する遊技者が手で触れる部分に設けられて
いる。バイブレーション機構11が駆動すると,「剣」の「持ち手部分」が
振動するため,当該部分に触れている遊技者はその振動を感知することが
できる。バイブレーションを発生させるためのバイブレーション機構11
の構成はどのようなものであってもよいため詳細な説明を省略する(公知
のバイブレータを適用することができる)。
【0028】
このように,本実施形態における操作手段10は,振動していない通常
状態(以下,第一状態と称することもある)と,バイブレーション機構1
1が駆動し振動している状態(以下,第二状態と称することもある)に変
化可能である(このように操作手段10の状態を制御する手段,すなわち
本実施形態ではバイブレーション機構11を制御する手段が本発明におけ
る状態変化手段に相当する)。なお,通常状態である第一状態とそれと異な
る状態である第二状態の差異を生じさせるためのものは「振動」に限られ
ない。遊技者の感覚(触覚,視覚,聴覚等)によって,第二状態が通常状
態である第一状態と異なる状態であることを認識可能とするものであれば
よい。例えば,第二状態となったとき,第一状態では光っていなかった操
作手段10の一部が光るような構成(遊技者がその視覚によって光を視認
することにより第二状態であることを認識する構成)としてもよい。ただ
し,第一状態と第二状態の差異を生じさせるためのものが,状態が変化し
ていることが視覚や聴覚上分かりにくい「振動」であれば,遊技者に与え
るインパクトを向上させることができるという利点がある(その理由は後
述)。
【0029】
[操作手段を利用した演出]
以下,操作手段10を利用した演出について説明する。操作手段10を
利用した演出では,操作手段10の操作が有効となる操作有効時間が設定
される。操作手段10の操作が有効とは,操作手段10の操作が演出上反
映される時間という意味である。つまり,操作有効時間以外の時間に操作
手段10が操作されたとしても,その操作は演出上反映されない。なお,
操作有効時間が設定されたときには,表示装置91に図4に示すような時
間表示画像20が操作指示画像30とともに表示される。時間表示画像2
0は,操作手段10の操作が有効となる操作有効時間を表示する画像であ
る。本実施形態における時間表示画像20は,だんだんと減少していくメ
ータ21を表示することで,操作有効時間が減少していくことを遊技者に
示す。操作指示画像30は,操作手段10を模した画像(本実施形態では
「剣」の画像)31や操作手段10を操作すべき方向を示す画像(矢印等
を示した画像)32が含まれているとよい。これにより,遊技者は剣を模
した操作手段10を操作すべきタイミングであることを容易に認識するこ
とが可能となる。
【0030】
操作手段10を利用した演出,すなわち操作有効時間が設定される演出
の一例として,当否判定結果が大当たりであるかどうかを報知するいわゆ
るリーチ演出が挙げられる。この種のリーチ演出において,操作有効時間
が設定され,操作手段10が操作されたとき,大当たりである場合にはそ
れに対応した演出(画像等)が,はずれである場合にはそれに対応した演
出(画像等)が実行される。つまり,操作手段10が操作されることを契
機として,当否判定結果が大当たりかどうかを報知するものである。本実
施形態では,当否判定結果が大当たりであるとき,いずれかのタイミング
で操作手段10が振動することとなる。すなわち,第一状態であった操作
手段10が,いずれかのタイミングで第二状態に変化することとなる。な
お,本実施形態では,当否判定結果がはずれである場合には,操作有効時
間内に操作手段10を操作しても操作手段10は振動しない。
【0031】
本実施形態において,当否判定結果が大当たりであり,操作手段10が
第一状態から第二状態に変化する,すなわち状態変化手段によってバイブ
レーション機構11が駆動し,操作手段10が振動するタイミングとして
は,以下の三つが設定されている。
1)操作手段10が操作されたとき
2)操作有効時間の開始と同時(図5参照)
3)操作有効時間の開始から所定時間経過したとき(図5参照)
【0032】
基本的には,上記1)の操作手段10が操作されたとき,に操作手段1
0が振動する。つまり,操作手段10が操作されたときに,大当たりであ
ることを示すような画像が表示装置91に表示されるとともに,操作手段
10が振動する。これにより,遊技者は大当たりを獲得したということを
理解する。
【0033】
一方,上記2)の操作有効時間の開始と同時,や3)の操作有効時間の
開始から所定時間経過したときは,操作手段10が操作されていないにも
拘わらず,操作手段10が振動する演出態様である。2)の操作有効時間
の開始と同時,は,操作有効時間が開始されると同時(多少前後してもよ
い)に,操作手段10が振動するため,時間表示画像20を見て操作手段
10を操作しようとした遊技者は,操作手段10に触れたとき,既に操作
手段10が振動していることをその触覚によって認識する。大当たりとな
るときには操作手段10を操作したときに操作手段10が振動するものと
認識している遊技者には,大きなインパクトを与えることが可能である。
なお,その後,操作手段10が操作されたことが検出されたときには,操
作手段10の振動が継続するようにしてもよいし,振動が停止するように
してもよい。
【0034】
3)の操作有効時間の開始から所定時間経過したとき,は,操作有効時
間が開始されたときに操作手段10は振動していない(第一状態)である
が,所定の時間が経過したタイミングで振動する(第二状態に変化する)
ものである。このようなタイミングが設定されていると,操作手段10を
操作しようとした遊技者が操作手段10に触れたときには操作手段10が
振動していないにも拘わらず,途中でいきなり振動し始めるため,遊技者
に大きなインパクトを与えることが可能である。なお,操作有効時間の開
始から所定時間経過する前に操作手段10が操作されたときには,操作さ
れたことが検出されたときに操作手段10が振動するようにするとよい。
この場合,遊技者の受ける印象としては,上記1)の態様と同じになる。
また,操作有効時間の開始から所定時間経過し,操作手段10が振動した
状態で操作手段10が操作されたことが検出されたときには,操作手段1
0の振動が継続するようにしてもよいし,振動が停止するようにしてもよ
い。また,操作手段10が振動を開始する「所定時間」は,複数の時間が
設定されていてもよいし,タイマ等によって演出が実行される度に抽選に
よって決定される構成(振動を開始するタイミングが無数にある構成)と
してもよい。
【0035】
このように,本実施形態にかかる遊技機1では,操作有効時間内に,操
作手段10が操作されていなくても操作手段10が第一状態から第二状態
に変化することがある演出となるから,操作手段10が第二状態となるタ
イミングが常に同じではない趣向性の高い演出とすることが可能である。
つまり,従来の遊技機のように,操作手段10が第二状態となるタイミン
グが上記1)のタイミングだけでないから,遊技者に与えるインパクトが
大きい演出とすることが可能である。
【0036】
また,本実施形態では,操作手段10の第一状態と第二状態の差異は,
視覚や聴覚によって判別することが困難である「振動」の有無によるもの
である。例えば,操作手段10が第一状態から第二状態に変化したことが
視覚や聴覚によって判別することができれば,操作手段10が操作される
前に操作手段10の状態が変化したことが遊技者に把握されてしまうため,
遊技者に与えるインパクトが低下してしまうおそれがあるところ,本実施
形態では状態の変化を振動によって実現しているため,操作手段10が操
作されていないにも拘わらず操作手段10が振動したことを遊技者が認識
したときのインパクトを大きくすることが可能である。
【0037】
なお,上記1)~3)のタイミングによる操作手段10の第一状態から
第二状態の変化は,全てが発生する可能性がある構成としてもよいし,い
ずれかが発生する可能性がない構成であってもよい。また,当否判定結果
が大当たりであるにも拘わらず操作手段10が操作されなかったときには,
そのまま表示装置91等を用いて大当たりであることが報知される。操作
有効時間の経過後,操作手段10を第一状態から第二状態に変化させても
よいし,第一状態のままとしてもよい。本実施形態では,当否判定結果が
大当たりであるかどうかは操作手段10の操作の有無に拘わらず予め決ま
っており,操作手段10の操作の有無によって,当否判定結果が変化する
ことはない。
【0038】
[操作手段の状態が変化するタイミングの別例]
操作手段10が第一状態から第二状態に変化するタイミングとして,4)
遊技者が操作手段10に接触または近接したことが検出されたとき,が設
定されていてもよい。この場合,操作手段10には,遊技者(人体)が接
触または近接したことを検出するセンサ13を設けておく(図6参照)。か
かるセンサ13としては,公知の接触センサや近接センサが適用できる。
本実施形態における操作手段10であれば,操作手段10を操作する遊技
者が手で触れる「剣」の「持ち手部分」に設けられる。このようにすれば,
操作有効時間が設定され,操作手段10を操作しようとした遊技者が操作
手段10に接触または近接した瞬間,つまり,遊技者が操作手段10に触
れた瞬間,操作手段10が第二状態に変化するため,遊技者に与えるイン
パクトが大きい演出とすることが可能である。
【0039】
[操作手段の状態が変化したタイミングと大当たりの関係]
操作手段10が操作されたときに操作手段10が第一状態から第二状態
に変化した場合よりも,操作手段10が操作されていないにも拘わらず操
作手段10が第一状態から第二状態に変化した場合の方が,遊技者に対し
その後付与される利益が大きくなる蓋然性が高くなるように設定されてい
るとよい。本実施形態では,当否判定結果が大当たりであるかどうかを報
知する演出として操作手段10が利用されるものであるため,上記利益の
差は,当該大当たりによって得られる利益の差ということである。
【0040】
大当たりによって得られる利益の例としては,大当たり遊技中に獲得で
きる平均的な遊技球の数(いわゆる平均出玉)や,大当たり遊技終了後,
遊技状態が有利なものとなるかどうかが例示できる。有利な遊技状態とし
ては,大当たりに当選する確率が上昇するいわゆる確率変動状態や,遊技
球の入賞を契機として当否判定を行う入賞口に遊技球が頻繁に入賞するこ
とができる状態であるいわゆる時間短縮状態等が例示できる。
【0041】
つまり,操作手段10が第一状態から第二状態に変化するタイミングと
して,上記1)のタイミングと,2)~4)の少なくともいずれかが設定
されている場合,大当たりの種別を踏まえ,遊技者にとって利益の大きい
大当たりであればあるほど,上記2)~4)のタイミングで操作手段10
が第二状態となる態様が発生しやすくなるように構成されている。このよ
うに設定すれば,操作手段10が第二状態に変化したタイミングとその後
の利益がリンクした趣向性の高い演出とすることが可能である。
【0042】
以上,本発明の実施の形態について詳細に説明したが,本発明は上記実
施の形態に何ら限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲
で種々の改変が可能である。
【0043】
上記実施形態では,当否判定結果が大当たりであるときにいずれかのタ
イミングで操作手段10が振動することになることを説明したが,はずれ
であるときに振動する構成としてもよい。例えば,操作有効時間の開始と
同時,操作有効時間の開始から所定時間経過したとき,遊技者が操作手段
10に近接または接触したことが検出されたときに操作手段10が振動す
る場合,すなわち,操作手段10が操作されていないにも拘わらず操作手
段10が振動する場合において,操作手段10の操作前に振動した場合に
は,大当たりとなる確率が高まるものの,操作手段10が操作されたとき
にその振動が停止し,はずれであることが報知される,という流れの演出
が実行されることがあってもよい。つまり,操作有効時間が設定されたと
き,操作手段10が操作されていないにも拘わらず操作手段10が第二状
態となることがある構成であればよい。
【0044】
上記実施形態では,大当たりであるかどうかを報知するリーチ演出にお
いて操作手段10(操作手段10の振動)が利用されることを説明したが,
それ以外の演出において利用されることがあってもよい。つまり,操作有
効時間が設定されるあらゆる演出において,上記技術思想が適用可能であ
る。
【0045】
上記実施形態における操作手段10の態様は一例である。操作されたこ
とが検出されるセンサが設けられ,遊技者の感覚で違いが認識することが
できる第一状態から第二状態に変化可能なものであればどのようなもので
あってもよい。
上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を以下に列挙する。
手段1の発明にかかる遊技機は,通常状態である第一状態から,当該第
一状態とは異なる状態であることを遊技者の感覚で認識可能な第二状態に
変化可能である,遊技者が操作可能な操作手段と,前記操作手段の操作が
有効となる操作有効時間が設定される演出において,当該操作有効時間内
に,前記操作手段が操作されていなくても前記操作手段を前記第一状態か
ら前記第二状態に変化させる場合がある状態変化手段と,を備えることを
特徴とする。
手段2の発明は,手段1に記載の遊技機において,前記状態変化手段は,
前記操作有効時間の開始と同時に,前記操作手段を前記第一状態から前記
第二状態に変化させる場合があることを特徴とする。
手段3の発明は,手段1または手段2に記載の遊技機において,前記状
態変化手段は,前記操作有効時間の開始から所定時間経過したとき,前記
操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化させる場合があることを
特徴とする。
手段4の発明は,手段1から手段3のいずれかに記載の遊技機において,
前記操作手段には,当該操作手段に遊技者が接触または近接したことを検
出するセンサが設けられ,前記状態変化手段は,前記操作有効時間内にお
いて,前記センサによって遊技者が前記操作手段に接触または近接したこ
とが検出されたとき,前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変
化させる場合があることを特徴とする。
手段5の発明は,手段1から手段4のいずれかに記載の遊技機において,
前記操作手段が操作されたときに当該操作手段が前記第一状態から前記第
二状態に変化した場合よりも,前記操作手段が操作されていないにも拘わ
らず前記操作有効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前記第二状態
に変化した場合の方が,遊技者に対しその後付与される利益が大きくなる
蓋然性が高くなるように設定されていることを特徴とする。
手段6の発明は,手段1から手段5のいずれかに記載の遊技機において,
前記第二状態にある前記操作手段は,遊技者の触覚によって認識可能とな
るように振動した状態であることを特徴とする。
手段1の発明にかかる遊技機では,操作有効時間内に,操作手段が操作
されていなくても操作手段が第一状態から第二状態に変化することがある
演出となるから,操作手段が第二状態となるタイミングが常に同じではな
い趣向性の高い演出とすることが可能である。
手段2の発明のように,操作有効時間の開始と同時に,操作手段が第一
状態から第二状態に変化する場合があるようにすれば,遊技者が操作手段
を操作しようとしたとき,操作手段が既に第二状態となっていることがあ
るから,意外性のある(遊技者にインパクトを与える)演出とすることが
可能である。
手段3の発明のように,操作有効時間の開始から所定時間経過したとき,
操作手段が第一状態から第二状態に変化する場合があるようにすれば,遊
技者が操作手段を操作する前に,操作手段が第二状態となることがあるか
ら,意外性のある(遊技者にインパクトを与える)演出とすることが可能
である。
手段4の発明のように,センサによって遊技者が操作手段に接触または
近接したことが検出されたとき,操作手段が第一状態から第二状態に変化
する場合があるようにすれば,遊技者が操作手段に接触または近接した瞬
間,操作手段が第二状態となることがあるから,意外性のある(遊技者に
インパクトを与える)演出とすることが可能である。
手段5の発明のように,操作手段が操作されたときに当該操作手段が第
一状態から第二状態に変化した場合よりも,操作手段が操作されていない
にも拘わらず操作有効時間内に操作手段が第一状態から第二状態に変化し
た場合の方が,遊技者に対しその後付与される利益が大きくなる蓋然性が
高くなるように設定されていれば,操作手段が第二状態に変化したタイミ
ングとその後の利益がリンクした趣向性の高い演出とすることが可能であ
る。
手段6の発明のように,操作手段が振動するものであれば,遊技者の視
覚や聴覚では振動しているかどうかを判別することが困難であるため,操
作されていないにも拘わらず操作手段が振動したことを遊技者が認識した
ときのインパクトを大きくすることが可能である。
⑵前記⑴の記載事項によれば,本願明細書には,本件補正発明に関し,次の
ような開示があることが認められる。
ア遊技者の感覚で通常状態とは異なる状態であることが認識可能な状態に
変化可能な操作手段を備えた遊技機には,リーチ演出等において,所定の
期間内(操作有効時間内)に操作手段を操作させ,大当たりとなる場合に
は操作手段が振動する,振動可能な操作手段を備えた遊技機があるが,操
作手段が振動するタイミングが,「操作手段が操作されたとき」という同じ
タイミングであるため,すぐに飽きられてしまうという問題があった(【0
002】,【0004】)。
イ「本発明」(請求項1に係る発明)は,遊技者の感覚で通常状態とは異な
る状態であることが認識可能な状態に変化可能な操作手段を備えた遊技
機において,当該操作手段を用いた演出の趣向性を向上させることを目的
とし,その課題を解決するための手段として,通常状態である第一状態か
ら,当該第一状態とは異なる状態であることを遊技者の感覚で認識可能な
第二状態に変化可能である,遊技者が操作可能な「操作手段」と,当否判
定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報知するための
演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作することを促し,
当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機と
して演出の結果が示される操作演出を実行する「演出実行手段」と,前記
操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作されてい
なくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化させる場
合がある「状態変化手段」とを備え,前記操作手段が操作されていないに
も拘わらず前記操作有効時間内に前記操作手段が前記第一状態から前記
第二状態に変化した場合には,当該変化が発生しない場合に比して,前記
対象当否判定結果が大当たりであることが報知されるに至る蓋然性が高
くなるように設定されている構成を採用した(【0005】,【0006】)。
「本発明」は,状態変化手段により,操作有効時間内に,操作手段が操
作されていなくても操作手段が第一状態から第二状態に変化することが
ある演出となるから,操作手段が第二状態となるタイミングが常に同じで
はない趣向性の高い演出とすることができるという効果を奏する(【00
12】)。
2取消事由2(引用文献1を主引用例とする本件補正発明の新規性の判断の誤
り)について
⑴引用文献1の記載事項
引用文献1(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する
図1,3,9,12,14,27ないし29,31,36,40ないし42
については別紙2を参照)。
ア【0001】
本発明は,弾球遊技機(パチンコ機)や回胴遊技機(スロットマシン)
あるいは封入式遊技機に代表される遊技台に関する。
【0002】
近年,遊技者が操作可能な所謂チャンスボタンと称される操作手段を搭
載した遊技台が知られている。遊技者がチャンスボタンを押して所定の演
出を行うことは新鮮味に欠けつつある。
【0004】
本発明の目的は,遊技の興趣を向上可能な遊技台を提供することにある。
【0006】
本発明によれば,遊技の興趣を向上することができる。
イ【0008】
以下,図面を用いて,本発明の一実施の形態に係る遊技台(例えば,パ
チンコ機100等の弾球遊技機やスロット機等の回胴遊技機)について詳
細に説明する。
ウ【0009】
まず,図1を用いて,本発明の実施形態に係るパチンコ機100の全体
構成について説明する。
【0012】
球貯留皿付扉108は,パチンコ機100の前面において本体104の
下側に対して,ロック機能付きで且つ開閉自在となるように装着された扉
部材である。前面枠扉106と球貯留皿付扉108とは一体的に構成され
ている。球貯留皿付扉108は,複数の遊技球(以下,単に「球」と称す
る場合がある)が貯留可能で且つ発射装置110へと遊技球を案内させる
通路が設けられている上皿126と,上皿126に貯留しきれない遊技球
を貯留する下皿128と,遊技者の操作によって上皿126に貯留された
遊技球を下皿128へと排出させる球抜ボタン130と,遊技者の操作に
よって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称,ドル箱)
へと排出させる球排出レバー132と,遊技者の操作によって発射装置1
10へと案内された遊技球を遊技盤200の遊技領域124へと打ち出す
球発射ハンドル134と,遊技者の操作によって各種演出装置206の演
出態様に変化を与えるチャンスボタン136と,チャンスボタン136を
発光させるチャンスボタンランプ138と,設定者(例えば,工場の作業
者,遊技店員,遊技者)の操作によって遊技に関する設定(例えば,時刻
の設定,演出内容の設定)を行う設定操作部139(後述)と,チャンス
ボタン136や設定操作部139が設けられた操作部700(後述)と,
遊技店に設置されたカードユニット(CRユニット)に対して球貸し指示
を行う球貸操作ボタン140と,カードユニットに対して遊技者の残高の
返却指示を行う返却操作ボタン142と,遊技者の残高やカードユニット
の状態を表示する球貸表示部144と,を備える。また,下皿128が満
タンであることを検出する不図示の下皿満タンセンサを備える。
【0019】
図3は,遊技盤200を正面から見た略示正面図である。遊技盤200
には,外レール202と内レール204とを配設し,遊技球が転動可能な
遊技領域124を区画形成している。遊技領域124の略中央には,演出
装置206を配設している。演出装置206には,略中央に装飾図柄表示
装置208を配設し,その周囲に,普通図柄表示装置210と,第1特別
図柄表示装置212と,第2特別図柄表示装置214と,普通図柄保留ラ
ンプ216と,第1特別図柄保留ランプ218と,第2特別図柄保留ラン
プ220と,高確中ランプ222を配設している。演出装置206は,演
出可動体224を動作して演出を行うものであり,詳細については後述す
る。なお,以下,普通図柄を「普図」,特別図柄を「特図」,第1特別図柄
を「特図1」,第2特別図柄を「特図2」と称する場合がある。
エ【0083】
本実施の形態によるパチンコ機100は,当否判定において大当りとす
るか,小当りとするか,はずれとするかの決定を行い,その後,当該当否
判定の結果に基づいて,図柄変動表示後に「特図A」~「特図J」のいず
れを特図1または特図2表示装置212,214に停止表示するのかを決
定するように構成されている。このため,本実施の形態によるパチンコ機
100は,図柄変動表示後に停止表示する図柄(停止図柄)を決定するこ
とにより,大当り遊技のラウンド数や大当り遊技後の利益状態(例えば,
特図確変状態の有無や電サポ状態の有無)が自動的に決定されるようにな
っている。
オ【0097】
次に,図9を用いて,主制御部300のCPU304が実行する主制御
部タイマ割込処理について説明する。なお,同図は主制御部タイマ割込処
理の流れを示すフローチャートである。主制御部300は,所定の周期(本
実施形態では約2msに1回)でタイマ割込信号を発生するカウンタタイ
マ312を備えており,このタイマ割込信号を契機として主制御部タイマ
割込処理を所定の周期で開始する。
カ【0131】
ステップS225およびステップS227における特図状態更新処理が
終了すると,今度は,特図1および特図2それぞれについての特図関連抽
選処理を行う。ここでも先に,特図2についての特図関連抽選処理(特図
2関連抽選処理)を行い(ステップS229),その後で,特図1について
の特図関連抽選処理(特図1関連抽選処理)を行う(ステップS231)。
これらの特図関連抽選処理についても,主制御部300が特図2関連抽選
処理を特図1関連抽選処理よりも先に行うことで,特図2変動遊技の開始
条件と,特図1変動遊技の開始条件が同時に成立した場合でも,特図2変
動遊技が先に変動中となるため,特図1変動遊技は変動を開始しない。ま
た,特図2変動遊技の保留数が0より多い場合には,特図1変動遊技の保
留に関する抽選処理や変動遊技は行われない。装飾図柄表示装置208に
よる,特図変動遊技の大当り判定の結果の報知は,第1副制御部400に
よって行われ,特図2始動口232への入賞に基づく抽選の抽選結果の報
知が,特図1始動口230への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知よりも
優先して行われる。
【0132】
特図2関連抽選処理(ステップS229)の場合には,特図2乱数値記
憶領域内の最先の(最も過去に記憶された)保留位置から特図2乱数値の
組を取得し、取得した特図2乱数値の組のうちの当り判定用乱数値に対し
て図12(a)または図12(b)に示す当否判定用テーブルを参照して、
大当りとするか、小当りとするか、はずれとするかの決定を行う。次いで
主制御部300は、当否判定結果が大当りまたは小当りの場合は、取得し
た特図2乱数値記憶領域内の当り時用特図決定用乱数値に対して図12
(c)に示す特図決定用テーブルを参照して特図2の変動表示後に停止表
示する図柄(停止図柄)の決定を行う。詳細は後述するが、当否判定結果
がはずれの場合は、はずれ図柄決定用乱数値を別途取得し、当該乱数値に
対して図12(c)に示す特図決定用テーブルを参照して停止図柄を決定
する。
キ【0360】
図27は,特図変動遊技の開始時の第1副制御部予告決定処理(詳細は
後述)における予告抽選2(ステップS1105)で用いられる予告テー
ブル2の別の例を示している。予告テーブル2は,例えば第1副制御部4
00のROM406に記憶されている。予告テーブル2は,図14に示す
予告テーブル1を用いた予告抽選1において「ボタン系」に当選した場合
にチャンスボタン136の態様および装飾図柄表示装置208による演出
表示予告の態様(所定の演出表示の表示態様)を決定するために用いられ
る。本実施の形態によるパチンコ機100は,通常予告演出として「ボタ
ン系」の予告演出を実行する場合には,チャンスボタン136の態様を変
化させるとともに装飾図柄表示装置208による演出表示予告(所定の演
出表示)を実行するようになっている。予告テーブル2は,特図1および
特図2で共通して用いられるようになっている。
ク【0376】
チャンスボタン136の第1の態様の信頼度よりも第2の態様の信頼度
の方が高く設定されているので,パチンコ機100は,チャンスボタン1
36の第1の態様を実行するよりも第2の態様を実行する方が大当りに当
選することを遊技者に期待させることができる。また,チャンスボタン1
36の態様として第2の態様の信頼度よりも第3の態様の信頼度の方が高
く設定されているので,パチンコ機100は,チャンスボタン136の態
様として第2の態様を実行するよりも第3の態様を実行する方が大当りに
当選することを遊技者に期待させることができる。このようにチャンスボ
タン136の態様は大当りに当選することの期待の高低,すなわち期待度
も示唆することができるようになっている。
【0379】
図28(d)~図28(f)は,リーチ形成中の演出表示予告において
例えば装飾図柄表示装置208の装飾図柄表示領域208a~208cの
いずれかと重なる領域の演出表示領域208dに表示されるキャラクタ画
像を示している。図28(d)は,表示1に対応する「すけ番」を表した
キャラクタ画像を示し,図28(e)は,表示2に対応する「番長の幼馴
染」を表したキャラクタ画像を示し,図28(c)は,表示3に対応する
「保健医」を表したキャラクタ画像を示している。リーチ形成中の演出表
示予告では,リーチ形成中に図28(d)~図28(f)に示すキャラク
タ画像が演出表示領域208dにカットイン表示されるようになっている。
ケ【0382】
図29は,特図変動遊技の開始時の第1副制御部予告決定処理(詳細は
後述)における予告抽選3(ステップS1107)で用いられる予告テー
ブル3の一例を示している。予告テーブル3は,例えば第1副制御部40
0のROM406に記憶されている。予告テーブル3は,装飾図柄表示装
置208に表示される演出表示予告の実行契機または演出表示予告の予告
態様の変化契機およびチャンスボタン136の態様の変化契機をそれぞれ
決定するために用いられる。予告テーブル3は,特図1および特図2で共
通して用いられるようになっている。
【0383】
図29に示す予告テーブル3は,左列から「操作手段」,「表示」および
「予告態様の変化契機」の3つに区分されている。「操作手段」は,図27
に示す予告テーブル2を用いた予告抽選2において選択されたチャンスボ
タン136の態様を示している。「操作手段」は,チャンスボタン136の
第1の態様を示す「1」,チャンスボタン136が第1の態様から第2の態
様に変化することを示す「1-2」,チャンスボタン136の第2の態様を
示す「2」,チャンスボタン136が第2の態様から第3の態様に変化する
ことを示す「2-3」,チャンスボタン136の第3の態様を示す「3」の
5つに区分されている。
【0384】
「操作手段」の図中右隣の「表示」は,図27に示す予告テーブル2を
用いた予告抽選2において選択された装飾図柄表示装置208による演出
表示予告の予告態様を示している。「表示」は,「操作手段」の区分毎に対
応付けて1,2または3つに区分されている。チャンスボタン136の態
様「1」に対応する演出表示予告の予告態様は,表示1を示す「1」,表示
2を示す「2」および表示1から表示2に変化することを示す「1-2」
の3つに区分されている。また,チャンスボタン136の態様「1-2」
に対応する演出表示予告の予告態様は,表示1から表示2に変化すること
を示す「1-2」,表示2を示す「2」および表示2から表示3に変化する
ことを示す「2-3」の3つに区分されている。また,チャンスボタン1
36の態様「2」に対応する演出表示予告の予告態様は,表示2を示す「2」
および表示2から表示3に変化することを示す「2-3」の2つに区分さ
れている。また,チャンスボタン136の態様「2-3」に対応する演出
表示予告の予告態様は,表示2を示す「2」および表示2から表示3に変
化することを示す「2-3」の2つに区分されている。さらに,チャンス
ボタン136の態様「3」に対応する演出表示予告の予告態様は,表示3
を示す「3」が対応付けられており,複数に区分に分されていない。
【0385】
図29に示すように,「予告態様の変化契機」は,「予告態様の変化契機」
の欄って「表示」の図中右隣から順に,「操作1回3秒経過」,「操作1回
操作10回」,「操作1回1回ごと1/10」,「操作5回3秒経過」,
「操作5回操作10回」,「操作5回1回ごと1/10」,「1回ごと1
/53秒経過」,「1回ごと1/5操作10回」および「1回ごと1/
51回ごと1/10」の9個の小欄に区分されている。当該小欄内の上
方には,演出表示予告の開始または演出表示予告の予告態様の変化契機の
条件が示され,下方には,チャンスボタン136の態様の変化契機のため
の条件が示されている。当該小欄内の上段に示す「操作1回」は,チャン
スボタン136の1回の操作(押下)を契機として演出表示予告が開始さ
れ,または演出表示予告の予告態様が変化することを示し,「操作5回」は,
チャンスボタン136の5回の操作(押下)を契機として演出表示予告が
開始され,または演出表示予告の予告態様が変化することを示し,「1回ご
と1/5」は,チャンスボタン136の1回の操作(押下)毎に1/5の
当選確率で抽選して当選した場合に,演出表示予告が開始され,または演
出表示予告の予告態様が変化することを示している。当該小欄内の下段に
示す「3秒経過」は,チャンスボタン136の操作を遊技者に要求する操
作要求演出(詳細は後述)の開始から3秒経過することを契機としてチャ
ンスボタン136の態様が変化することを示し,「操作10回」は,操作有
効期間中のチャンスボタン136の10回の操作(押下)を契機としてチ
ャンスボタン136の態様が変化することを示し,「1回ごと1/10」は,
操作有効期間中のチャンスボタン136の1回の操作(押下)毎に1/1
0の当選確率で抽選して当選した場合にチャンスボタン136の態様が変
化することを示している。当該操作有効期間は,遊技者による操作手段(例
えば,チャンスボタン136や操作設定部139)の操作が,チャンスボ
タン136の態様を変化させたり演出表示予告を開始および変化させたり
するための契機として有効な操作である判定される期間である。
【0386】
本実施の形態によるパチンコ機100では,予告抽選2において演出表
示予告の予告態様が発展的に変化する「1-2」または「2-3」が選択
された場合には,操作有効期間中にチャンスボタン136が1回押下され
たことに基づいて表示1または表示2が装飾図柄表示装置208の演出
表示領域208dに出現して演出表示予告が開始される。その後,操作有
効期間中にチャンスボタン136がさらに1回押下されたことに基づい
て演出表示予告の予告態様が表示2または表示3に発展的に変化する。ま
た,予告抽選2において演出表示予告の予告態様が発展的に変化する表示
「1-2」または「2-3」が選択されず表示「1」,「2」および「3」
が選択された場合には,操作有効期間中にチャンスボタン136が1回押
下されたことに基づいて表示1,表示2または表示3が装飾図柄表示装置
208の演出表示領域208dに出現して演出表示予告が開始される。そ
の後,操作有効期間中にチャンスボタン136がさらに1回押下されても
演出表示予告の予告態様は変化せずに当初の表示が維持されて演出表示
予告が実行される。
コ【0448】
このように本実施例によるパチンコ機100は,装飾図柄表示装置20
8がチャンスボタン136の操作有効期間中に操作要求演出を表示可能で
あり,チャンスボタン136が操作有効期間中以外で変化する態様とは異
なる,例えば発光状態または振動状態に変化可能であり,操作有効期間中
にチャンスボタン136が発光状態から発光+振動状態に変化可能に構成
されている。
【0450】
また,本実施例によるパチンコ機100では,チャンスボタン136の
態様は,発光状態から発光+振動状態となることで第1の態様から第2の
態様に変化している。
【0451】
特に,チャンスボタン136の態様に振動状態が加わって触覚的態様に
変化すると,遊技者は装飾図柄表示装置208に注目しながらもチャンス
ボタン136の態様の変化を認識することができる場合がある。
サ【0473】
操作有効期間中であって操作要求演出が開始されてから3秒経過すると,
図36(d)に示すようにチャンスボタン136の態様が発光+振動状態
(第2の態様)に発展的に変化する。演出表示領域208dに引き続き「連
打せよ!」という文字画像が表示されているので,遊技者は,当該表示に
従いチャンボタン136を繰り返し押下し続けていると,チャンスボタン
136の振動を触覚的に感じ取ることができる。
【0474】
一方,予告抽選3において「操作5回3秒」が選択されているので,
図36(e)に示すように,操作有効期間中であって装飾図柄表示装置2
08による操作要求演出の実行中に,遊技者がチャンスボタン136を1
回だけ押下しても演出表示予告が実行されない。また,遊技者がチャンス
ボタン136を合計5回押下する前に操作要求演出の開始から3秒経過す
ると,図36(f)に示すように演出表示予告が実行される前にチャンス
ボタン136の態様が発光+振動状態(第2の態様)に発展的に変化する。
操作要求演出に促されて,遊技者がチャンスボタン136を押下している
最中にチャンスボタン136の態様が変化すると,遊技者は,手を介して
チャンスボタン136の振動を触覚的に感じ取ることができる。これによ
り遊技者は,装飾図柄表示装置208から目を逸らすことなくチャンスボ
タン136が信頼度の高い予告に変化したことを認識できる場合がある。
【0475】
操作有効期間中であってチャンスボタン136の態様が発光+振動状態
に発展的に変化した後に,遊技者によりチャンスボタン136が5回目の
押下が行われると,図36(g)に示すように中図柄表示領域208bと
重なる演出表示領域208dに「幼馴染」を表したキャラクタ画像が表示
されてリーチ形成中の演出表示予告が実行される。
【0477】
このように,本実施例によるパチンコ機100では,操作有効期間中に
おいて所定時間経過(例えば,操作要求演出から3秒経過)するとチャン
スボタン136が発光状態から発光+振動状態に変化している。
【0478】
本実施例によるパチンコ機100では,チャンスボタン136が操作す
ることでのみ第2の態様に変化するので,チャンスボタンの第2の態様へ
の変化に対する自力操作での達成感を遊技者に付与することができる場合
がある。
シ【0511】
また,主制御部300から当該コマンドを受信した第1副制御部400
は,図31に示す特図変動遊技開始時の予告決定処理を実行する。例えば
第1副制御部400は,予告抽選1を実行して「ボタン系」に当選し(ス
テップS1101),予告抽選1において「ボタン系」に当選したと判定し
(ステップS1103のYes),予告抽選2を実行し(ステップS110
5),予告抽選3を実行し(ステップS1107),変動時間と予告抽選1
~3での抽選結果とに基づいて,「装飾図柄表示装置での演出態様」として
の「リーチB当り」と通常予告演出としての「ボタン系」とを実行するこ
とを示す情報を含むコマンドを装飾図柄表示装置208に出力して(ステ
ップS1109),特図変動遊技の開始時の予告決定処理を終了する。
【0513】
また本例では,例えば,予告抽選2において,リーチ形成中に係る「ボ
タン系」の予告態様として,チャンスボタン136の態様「1-2」およ
び演出表示予告の予告態様「2-3」が選択され,予告抽選3においてリ
ーチ形成中に係る演出表示予告の実行および変化契機並びにチャンスボタ
ン136の態様の変化契機として「1回ごと1/51回ごと1/10」
が選択されている。
ス【0521】
「リーチB」の演出が開始されてから所定時間経過後にチャンスボタン
136の操作有効期間が開始される。予告抽選2において,リーチ形成前
に係るチャンスボタン136の態様「1-2」が選択されているため,図
40(h)に示すように,チャンスボタン136の態様が発光状態(第1
の態様)に変化するとともに,中図柄表示領域208bと重なる演出表示
領域208dにチャンスボタン136を表した画像と,演出表示領域20
8dの中央部上方に「連打せよ!」という文字画像とがそれぞれが表示さ
れてチャンスボタン136を遊技者に押下させるための操作要求演出が実
行される。
【0522】
操作有効期間中であって装飾図柄表示装置208による操作要求演出の
実行中に,図41(a)に示すように遊技者がチャンスボタン136を1
回押下するごとに演出表示予告用の抽選(当選確率は1/5)とチャンス
ボタン136の態様変化用の抽選(当選確率は1/10)とが行われる。
本例では先に演出表示予告用の抽選に当選したので,図41(b)に示す
ように,中図柄表示領域208bと重なる演出表示領域208dに「幼馴
染」を表したキャラクタ画像が表示されてリーチ形成中の演出表示予告が
実行される。
【0523】
また,図41(b)に示すように,演出表示領域208dの中央部上方
には引き続き「連打せよ!」という文字画像が表示されるので,当該文字
画像に促されて遊技者がさらに続けてチャンスボタン136を押下すると,
チャンスボタン136に1回の押下ごとに演出表示予告用の抽選およびチ
ャンスボタン136の態様変化用の抽選が行われる。チャンスボタン13
6の態様変化用の抽選に当選する前に演出表示予告用の抽選に当選したの
で演出表示予告の予告態様が表示2から表示3へと発展的に変化する。こ
のため,図41(c)に示すように中図柄表示領域208bと重なる演出
表示領域208dに「幼馴染」を表したキャラクタ画像に代えて「保健医」
のキャラクタ画像が表示される。
セ【0532】
演出表示予告の開始後,図42(c)に示すように遊技者がチャンスボ
タン136を複数回押下し続けると,チャンスボタン136の押下ごとに
演出表示予告用の抽選およびチャンスボタン136の態様変化用の抽選が
行われる。例えば,乱数値7が取得されて演出表示予告用の抽選およびチ
ャンスボタン136の態様変化用の抽選に同時に当選すると,演出表示予
告の予告態様が表示2から表示3へと発展的に変化するとともに,チャン
スボタン136の態様が発光状態(第1の態様)から発光+振動状態(第
2の態様)に発展的に変化する。このため,図42(d)に示すように,
中図柄表示領域208bと重なる演出表示領域208dに「幼馴染」を表
したキャラクタ画像に代えて「保健医」のキャラクタ画像が表示され,チ
ャンスボタン136が発光+振動状態に変化する。遊技者は,チャンスボ
タン136を押下し続けてチャンスボタン136に触れていたので,チャ
ンスボタン136の振動を触覚的に感じ取ることができる。
ソ【0644】
上記実施の形態によるパチンコ機100では,「ボタン系」の予告演出に
基づく信頼度や期待度は,チャンスボタン136の態様が「3」または演
出表示予告の予告態様が「3」である場合に相対的に高く,チャンスボタ
ン136の態様が「1」または演出表示予告の予告態様が「1」である場
合に相対的に低くなるように設定されているが,相対的高い場合には信頼
度および期待度が100%であることを含み,相対的に低い場合には信頼
度および期待度が0%であることを含んでいる。
⑵本件補正発明の構成Cに関する判断の誤りの有無について
原告は,本件審決は,引用発明の構成c,c1,d(本件構成)は,本件
補正発明の構成Cの「前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当
否判定結果を報知するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作
手段を操作することを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の前記
操作手段の操作を契機として演出の結果が示される操作演出を実行する演出
実行手段」に相当する旨判断したが,本件補正発明の構成Cの「操作有効期
間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示
される」とは,「最初の前記操作手段の操作」を契機として「必ず」大当たり
であることを示す「演出の結果」が示されることを意味するものと解される
ところ,引用発明の本件構成は,予告態様「2-3」が選択された場合,操
作有効期間中の1回目のチャンスボタン136の操作により表示2の「番長
の幼馴染」のキャラクタ画像が表示され,2回目のチャンスボタン136の
操作により表示3の「保健医」のキャラクタ画像が表示されるものであって,
最初(1回目)のチャンスボタン136の操作を契機として大当たりである
ことを示す表示3の「保険医」のキャラクタ画像が必ず表示される構成とは
いえず,引用発明の本件構成は,本件補正発明の構成Cの「操作有効期間が
開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示され
る」操作演出を実行する演出実行手段に相当しないから,本件審決の上記判
断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。
ア構成Cの「操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を
契機として演出の結果が示される」操作演出の意義について
(ア)本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,
「所定条件の成立を契機として当否判定を行う当否判定手段と,
通常状態である第一状態から,当該第一状態とは異なる状態であること
を遊技者の感覚で認識可能な第二状態に変化可能である,遊技者が操作
可能な操作手段と,
前記当否判定手段による当否判定の結果である対象当否判定結果を報
知するための演出の一部として,操作有効期間中に前記操作手段を操作
することを促し,当該操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手
段の操作を契機として演出の結果が示される操作演出を実行する演出実
行手段と,
前記操作演出において,前記操作有効時間内に,前記操作手段が操作
されていなくても前記操作手段を前記第一状態から前記第二状態に変化
させる場合がある状態変化手段と,
を備え,
前記操作手段が操作されていないにも拘わらず前記操作有効時間内に
前記操作手段が前記第一状態から前記第二状態に変化した場合には,当
該変化が発生しない場合に比して,前記対象当否判定結果が大当たりで
あることが報知されるに至る蓋然性が高くなるように設定されているこ
とを特徴とする遊技機。」というものである。
上記記載によれば,本件補正発明の「演出実行手段」は,「当否判定の
結果である対象当否判定結果」を「報知」するための演出の一部として,
「操作有効期間中に前記操作手段を操作することを促し,操作有効期間
が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が
示される操作演出」を実行する手段(構成C)であり,「操作演出」で示
される「演出の結果」は,「対象当否判定結果」であることを理解できる。
また,構成Cの「操作有効期間が開始されてから最初の前記操作手段
の操作を契機として演出の結果が示される」とは,その構成中の「最初
の前記操作手段の操作」との文言に照らすと,操作有効期間が開始され
てから「最初」の「前記操作手段の操作」を契機として「演出の結果」
が示されること意味し,操作有効期間が開始されてから「2回目以降」
の「前記操作手段の操作」を契機として「演出の結果」が示されるもの
は含まれないと解するのが自然である。
(イ)次に,本願明細書には,「本実施形態」(「本発明」の実施形態)に関
し,①「本実施形態における操作手段10は,遊技機前方右側に設けら
れた「剣」を模した構造物である。当該「剣」は,略上下方向にスライ
ド自在に設けられており,…付勢部材によって上側に付勢されている。
したがって,操作手段10に何の力も作用していないときには,当該付
勢部材の付勢力により,最も上方の位置である原位置に位置する(図2
参照)。遊技者が付勢部材の付勢力に抗して操作手段10に対して下向
きの力を作用させると,操作手段10が下方にスライドする。具体的に
は,遊技者は,操作手段10である「剣」の「持ち手部分」を握り,下
向きの力を加えることで操作手段10を下方にスライドさせる。操作手
段10が最も下方の位置である終端位置(図3参照)に到達すると,図
示されないセンサによって操作手段10が当該終端位置に到達したこ
とが検出される。本実施形態でいう「操作手段10が操作された」とは,
当該センサによって操作手段10が所定位置に到達したことを検出さ
れたときをいい,単に遊技者が操作手段10に触れただけ,という状態
をいうものではない。本実施形態では,遊技機本体に固定された固定部
材12に形成された開口121を通るように操作手段10が設けられ
ている。」(【0026】),②「また,本実施形態における操作手段10に
は,バイブレーション機構11が設けられている。バイブレーション機
構11は,「剣」の「持ち手部分」,すなわち,操作手段10を操作する
遊技者が手で触れる部分に設けられている。バイブレーション機構11
が駆動すると,「剣」の「持ち手部分」が振動するため,当該部分に触れ
ている遊技者はその振動を感知することができる。」(【0027】),③
「このように,本実施形態における操作手段10は,振動していない通
常状態(以下,第一状態と称することもある)と,バイブレーション機
構11が駆動し振動している状態(以下,第二状態と称することもある)
に変化可能である(このように操作手段10の状態を制御する手段,す
なわち本実施形態ではバイブレーション機構11を制御する手段が本
発明における状態変化手段に相当する)。」(【0028】),④「本実施形
態において,当否判定結果が大当たりであり,操作手段10が第一状態
から第二状態に変化する,すなわち状態変化手段によってバイブレーシ
ョン機構11が駆動し,操作手段10が振動するタイミングとしては,
以下の三つが設定されている。1)操作手段10が操作されたとき,2)
操作有効時間の開始と同時(図5参照),3)操作有効時間の開始から所
定時間経過したとき(図5参照)」(【0031】),⑤「基本的には,上記
1)の操作手段10が操作されたとき,に操作手段10が振動する。つ
まり,操作手段10が操作されたときに,大当たりであることを示すよ
うな画像が表示装置91に表示されるとともに,操作手段10が振動す
る。これにより,遊技者は大当たりを獲得したということを理解する。」
(【0032】)との記載がある。
上記記載から,「本実施形態」における「操作手段」は,「剣」を模し
た構造物である操作手段10であり,その「持ち手部分」のバイブレー
ション機構11の駆動により振動可能な構造であり,「操作手段」の「操
作」とは,操作手段10の「持ち手部分」を握り,操作手段10を最も
上方の位置である「原位置」から最も下方の位置である「終端位置」に
到達させたことをいい,当否判定結果が大当たりである場合,「操作有効
時間内」に「操作手段」が「操作されたとき」に,「操作手段」が振動し,
操作手段の状態が「通常状態」(第一状態)から「第二状態」(バイブレ
ーション機構11が駆動し振動している状態)に変化することを理解で
きる。
このように当否判定結果が大当たりであるときは,「操作有効時間内」
に「操作手段」が「操作された」タイミングで操作手段が振動すること
(操作手段の状態が変化すること)が開示されており,このことは,「操
作有効時間内」の「最初」の「操作手段」の「操作」のタイミングで「操
作手段」が振動することにより,当否判定結果が大当たりであることを
示すものといえる。
一方で,本願明細書には,当否判定結果が大当たりである場合に,「操
作有効時間内」の最初の「操作手段」が「操作された」ときには振動せ
ずに,「2回目以降」の「操作手段」の「操作」のタイミングでは振動す
ることについての開示はない。
(ウ)以上の本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本願
明細書の上記開示事項を総合すると,本件補正発明の構成Cの「操作有
効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機として演出の
結果が示される」操作演出とは,操作有効期間が開始されてから「最初」
の「前記操作手段の操作」がされたときに「対象当否判定結果」である
「演出の結果」が示される演出を意味し,操作有効期間が開始されてか
ら「2回目以降」の「前記操作手段の操作」がされたときに「演出の結
果」が示される態様のものは含まれないと解するのが相当である。
(エ)これに対し被告は,①「契機」(広辞苑第六版)とは,「動因。ある
事象を生じさせるきっかけ。」を意味する用語であること,②遊技機の技
術分野において,操作手段の操作を契機(きっかけ)とした演出を実行
する際,操作が契機となる演出が実行される前に異なる演出を挟むなど,
操作後直ちに演出が実行されるとは限らないことは,技術常識であるこ
と(例えば,乙2の【0166】~【0170】,図14,乙3の【03
43】,乙4の請求項1,【0089】,【0090】,【0270】,図8及
び26),③遊技機の技術分野においては,「契機」という用語を,操作
手段の操作後直ちに結果が生じない場合についても用いられているのが
通常であること(例えば,乙2の【0168】,【0169】,乙3の【0
343】,乙4の【0089】,【0090】),④遊技機の技術分野では,
始動入賞口に入賞(入球)した場合に,まず抽選用の乱数が取得され,
入賞に伴う演出(変動)が可能になったタイミングで,当該乱数に基づ
く抽選が行われて,大当たり等の当否が決定される方式の遊技機が一般
的であり,そのような方式の遊技機の場合,先の入賞に伴う変動中に次
の入賞が起きた場合は,すぐに抽選は行われず,最大4つまで,一旦(乱
数が)保留(記憶)され,先の変動が終了して次の変動が行えるタイミ
ングまで待って,当該保存された乱数をもとに抽選が行われることにな
るのが技術常識であること(甲1,乙2ないし4)を踏まえると,本願
明細書の「大当たりの抽選は,…始動入賞口904への遊技球の入賞を
契機として実行する。…その他の構成等は公知の遊技機と同様のものが
適用できるため,説明は省略する。」(【0024】)との記載における「契
機」は,入賞し,最大4つの保留を経て抽選されるような場合を当然に
含むものであり,本願明細書においても,「契機」を,遊技球の入賞直後
に生じる事象に限定されない意味で用いていることを根拠に,本件補正
発明の構成Cの「最初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が
示される」とは,操作手段の最初の「操作直後に演出の結果が示される
態様」のみならず,操作手段の最初の操作を「きっかけ」として,所定
時間後に演出の結果が示される態様を包含するものをいい,操作手段の
1度の操作によって直ちに演出の結果が示されるものに限定して解すべ
きものではない旨主張する。
しかしながら,①については,「契機」は,一般的に,「きっかけ」を
意味する用語であるからといって,そのことから直ちに,構成Cの「最
初の前記操作手段の操作を契機として演出の結果が示される」操作演出
は,操作有効期間が開始されてから「最初」の「前記操作手段の操作」
がされたときに「対象当否判定結果」である「演出の結果」が示される
ものに限らず,「2回目以降」の「前記操作手段の操作」がされたときに
「演出の結果」が示される態様を包含するとの解釈に結びつくものでは
ない。
また,同様に,遊技機の技術分野において被告が②及び③で述べるよ
うな技術常識や「契機」の用語の使用例があるからといって直ちに上記
解釈に結びつくものではなく,本件補正発明の特許請求の範囲(請求項
1)及び本願明細書の具体的な記載を踏まえた上で,上記技術常識や「契
機」の用語の使用例がどのように適用されるかについての論理付けがな
い。
さらに,④については,被告が述べるような技術常識があるとしても,
本願明細書の【0024】の上記記載から上記解釈を導出することは困
難である。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ引用発明の本件補正発明に係る構成Cの具備の有無について
(ア)引用発明の本件構成(c,c1,d)は,「「ボタン系」の予告演出
において,「リーチB」の演出が開始されてから所定時間経過後にチャン
スボタン136の操作有効期間が開始されて,チャンスボタン136を
表した画像と,演出表示領域208dの中央部上方に「連打せよ!」と
いう文字画像とがそれぞれが表示されて遊技者にチャンスボタン136
の押下をうながす操作要求演出を実行し(【0360】,【0521】)」,
「操作有効期間中であって装飾図柄表示装置208による操作要求演出
の実行中に,チャンスボタン136を1回押下すると,リーチ形成中の
演出表示予告として,中図柄表示領域208bと重なる演出表示領域2
08dに表示2の「番長の幼馴染」を表したキャラクタ画像に代えて,
信頼度および期待度が100%である表示3の「保健医」のキャラクタ
画像を表示(【0379】,【0383】,【0384】,【0522】,【05
23】,【0644】)」する構成を含むものである。
しかるところ,引用文献1には,本件構成(c,c1,d)に関し,
①「本実施の形態によるパチンコ機100では,予告抽選2において演
出表示予告の予告態様が発展的に変化する「1-2」または「2-3」
が選択された場合には,操作有効期間中にチャンスボタン136が1回
押下されたことに基づいて表示1または表示2が装飾図柄表示装置20
8の演出表示領域208dに出現して演出表示予告が開始される。その
後,操作有効期間中にチャンスボタン136がさらに1回押下されたこ
とに基づいて演出表示予告の予告態様が表示2または表示3に発展的に
変化する。」(【0386】),②「また本例では,例えば,予告抽選2にお
いて,リーチ形成中に係る「ボタン系」の予告態様として,チャンスボ
タン136の態様「1-2」および演出表示予告の予告態様「2-3」
が選択され,予告抽選3においてリーチ形成中に係る演出表示予告の実
行および変化契機並びにチャンスボタン136の態様の変化契機として
「1回ごと1/51回ごと1/10」が選択されている。」(【051
3】),③「「リーチB」の演出が開始されてから所定時間経過後にチャン
スボタン136の操作有効期間が開始される。予告抽選2において,リ
ーチ形成前に係るチャンスボタン136の態様「1-2」が選択されて
いるため,図40(h)に示すように,チャンスボタン136の態様が
発光状態(第1の態様)に変化するとともに,中図柄表示領域208b
と重なる演出表示領域208dにチャンスボタン136を表した画像と,
演出表示領域208dの中央部上方に「連打せよ!」という文字画像と
がそれぞれが表示されてチャンスボタン136を遊技者に押下させるた
めの操作要求演出が実行される。」(【0521】),④「操作有効期間中で
あって装飾図柄表示装置208による操作要求演出の実行中に,図41
(a)に示すように遊技者がチャンスボタン136を1回押下するごと
に演出表示予告用の抽選(当選確率は1/5)とチャンスボタン136
の態様変化用の抽選(当選確率は1/10)とが行われる。本例では先
に演出表示予告用の抽選に当選したので,図41(b)に示すように,
中図柄表示領域208bと重なる演出表示領域208dに「幼馴染」を
表したキャラクタ画像が表示されてリーチ形成中の演出表示予告が実行
される。」(【0522】),⑤「また,図41(b)に示すように,演出表
示領域208dの中央部上方には引き続き「連打せよ!」という文字画
像が表示されるので,当該文字画像に促されて遊技者がさらに続けてチ
ャンスボタン136を押下すると,チャンスボタン136に1回の押下
ごとに演出表示予告用の抽選およびチャンスボタン136の態様変化用
の抽選が行われる。チャンスボタン136の態様変化用の抽選に当選す
る前に演出表示予告用の抽選に当選したので演出表示予告の予告態様が
表示2から表示3へと発展的に変化する。このため,図41(c)に示
すように中図柄表示領域208bと重なる演出表示領域208dに「幼
馴染」を表したキャラクタ画像に代えて「保健医」のキャラクタ画像が
表示される。」(【0523】)との記載がある。
上記記載及び図41(別紙2参照)から,図41(b)記載の「幼馴
染」を表したキャラクタ画像は,図41(a)に示された状態で遊技者
がチャンスボタン136を1回押下したときに表示される画像であり,
図41(c)記載の「保健医」を表示したキャラクタ画像は,図41(b)
に示された状態で,「連打せよ!」という文字画像に促されて遊技者がさ
らに続けてチャンスボタン136を押下し,抽選に当選したときに,「幼
馴染」を表したキャラクタ画像に代えて表示される画像であることを理
解できる。
そうすると,引用発明においては,1回目のチャンスボタン136の
押下(操作)がされたときに,表示2の「番長の幼馴染」のキャラクタ
画像(図41(b))が表示され,予告態様「2-3」の演出が開始され
るが,2回目以降のチャンスボタン136の押下(操作)がなければ,
大当たりであることを示す表示3の「保険医」のキャラクタ画像(図4
1(c))が表示されないのであるから,本件構成は,最初(1回目)の
チャンスボタン136の操作がされたときに大当たりであることを示す
表示3の「保険医」のキャラクタ画像が表示される構成であるものとは
認められない。
(イ)以上によれば,引用発明の本件構成における演出は,操作有効期間
が開始されてから「最初」の「前記操作手段の操作」がされたときに「対
象当否判定結果」である「演出の結果」(表示3の「保険医」のキャラク
タ画像)が示される演出ではないから,本件補正発明の構成Cの「操作
有効期間が開始されてから最初の前記操作手段の操作を契機として演出
の結果が表示される」操作演出に相当するものと認めることはできない。
したがって,引用発明は,本件補正発明の構成Cに相当する構成を有
するものと認められないから,これと異なる本件審決の前記判断には誤
りがある。
上記認定に反する被告の主張は理由がない。
ウ被告の予備的主張について
被告は,本件審決認定の引用発明が本件補正発明の構成Cに相当する構
成を有しないとしても,①引用文献1の記載(【0200】ないし【020
2】,【0218】,【0219】,【0227】,【0232】,【0238】,【0
336】,【0340】ないし【0343】,図16,17及び24)によれ
ば,引用文献1には,技術事項Aが記載されている,②技術事項Aに係る
発明は,本件補正発明の構成CないしEに相当する構成を有するから,本
件補正発明は,引用文献1に記載された発明と同一の発明である旨主張す
る。
そこで検討するに,被告が主張する技術事項Aは,
「c1’第1副制御部400は,「リーチB当り時」に「ボタン系予告演
出」として「演出J」を行うときは,演出表示領域208dに「リー
チ!」という文字画像が表示されてから所定時間の経過後に,「ボタン
を押せ!」という文字画像の表示がされてチャンスボタン136の操
作有効期間が開始され,
c2’,d’操作有効期間内にチャンスボタン136の1回押下である
第二の操作をしたとき,又は,操作有効期間内にチャンスボタン13
6を遊技者が操作しない場合に,遊技結果が大当りであることを報知
する「雷演出」として,演出表示領域208dに,「雷の画像」を表示
するとともに,チャンスボタン136を,非押下状態の操作手段演出
1の実行から,チャンスボタンランプ138を七色発光させ振動モー
タ718により振動させながら,回転駆動部730によりチャンスボ
タン装飾部材706および光拡散部材708を回転させる操作手段演
出6の実行に変化し,
e’チャンスボタン136の「操作無しで雷演出」が行われた演出
は,100%当りとなる一方,「操作無しで雷演出」が行われなかっ
たときには,当り確率は100%とはならない。」
というものであるから,技術事項Aの構成は,本件審決が認定した引用発
明の構成cないしeとは,異なる構成である。
また,技術事項Aは,本願の審査及び本件審判手続において,審査又は
審理の対象とされなかった技術である。
そうすると,被告の上記主張は,本件審決が引用文献1記載の発明とし
て認定した引用発明とは異なる技術事項Aに係る発明に基づいて本願補
正発明が新規性を欠くことを主張するものにほかならず,本件審決が示し
た本願の拒絶理由を本件訴訟の段階で変更するものであり,このような拒
絶理由の変更を認めることは,拒絶査定不服審判の審判手続における請求
人の防御の機会(特許法159条2項,50条)を奪うものであるから,
主引用例が同一であるからといって,主張自体許されるべきものではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
⑶小括
以上によれば,引用発明は,本件補正発明の構成Cに相当する構成を有す
るものではないから,その余の点について判断するまでもなく,本件補正発
明は,引用発明と同一の発明であると認めることはできない。
したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りであるから,原告主張の
取消事由2は理由がある。
第5結論
以上のとおり,原告主張の取消事由2は理由があるから,その余の取消事由
について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきである。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官小林康彦
裁判官高橋彩
(別紙1)
【図1】
【図2】【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
(別紙2)
【図1】
【図3】
【図9】
【図12】
【図14】
【図27】
【図28】
【図29】
【図31】
【図36】
【図40】
【図41】
【図42】

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