弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決中上告人敗訴部分を取り消す。
     被上告人の請求を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岩永勝二の上告理由一について
 一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 被上告人は、昭和四六年ころから訴外亡D(以下「D」という。)と内縁関
係にあつたところ、Dは、昭和五二年一〇月二六日訴外E生命保険相互会社(以下
「E生命」という。)との間で、Dを被保険者、被上告人を保険金受取人、災害に
よる死亡のとき一時払保険金二〇〇〇万円、年賦払保険金が五年間二〇〇万円宛均
等払の合計一〇〇〇万円とする生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を
締結した。
 2 Dは、手形ブローカーのごとき仕事をし、金融業者であるF商事こと上告人
方に出入りし、昭和五二年一一月当時、上告人に対し三〇〇〇万円には達しないま
でもこれに匹敵する額の債務を負担していた。
 3 本件保険契約においては、保険証券の受取人欄の下部欄外に「保険契約者は
保険金受取人を指定し、または変更する権利を留保します。」との記載があり、ま
た、Dは、昭和五三年三月ころ、上告人に対し「A(上告人)の紹介によりE生命
の外交員Gに加入した私の生命保険金は私が万一事故の場合には保険金を受け取つ
てください。」と記載した念書を交付した。
 4 Dは、昭和五四年二月七日災害によつて死亡したため、E生命は被上告人に
対し、一時払保険金二〇〇〇万円を支払い、年賦払保険金一〇〇〇万円については
五年の年賦払とする旨の年金支払証書を交付した。被上告人は、右二〇〇〇万円の
うち八〇〇万円を定額郵便貯金とし、五〇〇万円を相互銀行に対する定期預金とし
て、それぞれの証書を受領した(右年金支払証書を含む各証書をあわせて、以下「
本件預貯金証書等」という。)。
 5 被上告人は、昭和五四年八月三〇日、上告人の求めに応じて本件預貯金証書
等を、翌三一日届出印鑑をそれぞれ任意に交付したところ、上告人は、同日右預貯
金を引出して利息分を含む合計一三〇七万六五一九円を受領し、年賦払保険金一〇
〇〇万円については一括支払請求をし、同年九月一二日八九二万一四八〇円を受領
した。
 二 被上告人は、原審において、本件保険契約について、Dが保険金受取人の変
更権を留保しなかつたものであり、また、Dが保険金受取人を被上告人から上告人
に変更する旨の意思表示をしたことはなかつたから、上告人は被上告人から本件保
険金を受け取るべき権利はなく、したがつて、上告人は被上告人から交付された本
件預貯金証書等により支払を受けた金員を法律上の原因なく不当に利得したもので
ある旨を請求の原因事実として主張し、上告人がこれを争つたところ、原審は、こ
れに対し前記一の事実関係に基づいて次のような判断を示し、被上告人の請求の一
部を認容した第一審判決を維持した。
 1 前記保険証券の記載によれば、Dが保険金受取人を変更する権利を留保して
いたことが明らかであり、また、Dが上告人に交付した前記念書の文言によれば、
Dが保険金受取人を被上告人から上告人に変更する旨の意思表示をしたものと認め
られるが、Dが保険者であるE生命に対し保険金受取人の変更の通知をしたことに
ついては、本件全証拠によつてもこれを認めることができないから、上告人は自己
が保険金受取人であることをE生命に対抗することができず、保険金受取人の権利
は確定的に被上告人に帰属したものというべきである。
 2 したがつて、E生命が被上告人に保険金を支払つたこと及び被上告人がこれ
を受領したことについてはなんらの違法もないから、上告人において、被上告人か
ら本件保険金ないし本件預貯金証書等の交付を受けるべき権利はなく、上告人は、
法律上の原因なくして本件預貯金証書等の交付を受けることによつて受領した金員
を不当に利得したものである。
 三 しかしながら、右判断はにわかに是認することができない。その理由は、次
のとおりである。
 商法六七五条ないし六七七条の規定の趣旨に照らすと、保険契約者が保険金受取
人を変更する権利を留保した場合(同法六七五条一項但書)において、保険契約者
がする保険金受取人を変更する旨の意思表示は、保険契約者の一方的意思表示によ
つてその効力を生ずるものであり、また、意思表示の相手方は必ずしも保険者であ
ることを要せず、新旧保険金受取人のいずれに対してしてもよく、この場合には、
保険者への通知を必要とせず、右意思表示によつて直ちに保険金受取人変更の効力
が生ずるものと解するのが相当である。もつとも、同法六七七条一項は、保険契約
者が保険金受取人を変更したときは、これを保険者に通知しなければ、これをもつ
て保険者に対抗することができない旨規定するが、これは保険者が二重弁済の危険
にさらされることを防止するため、右通知をもつて保険者に対する対抗要件とし、
これが充足されるまでは、保険者が旧保険金受取人に保険金を支払つても免責され
るとした趣旨のものにすぎないというべきである。
 本件についてこれをみると、前記一の事実関係のもとにおいては、Dが上告人に
対し、本件保険金受取人を被上告人から上告人に変更する旨の意思表示をしたこと
によつて直ちに保険金受取人変更の効力が生じたものというべきであるから、上告
人が被上告人から任意に本件預貯金証書等の交付を受け、その払戻金等を取得した
ことは、被上告人との間において不当利得にならないと解するのが相当である。
 そうすると、上告人に不当利得があることを一部認めた原審の判断は、法令の解
釈、適用を誤つたものであり、右違法が判決に影響を及ぼすことが明らかであるか
ら、この点の違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原
審の適法に確定した前記事実関係のもとにおいては、右説示に徴し、被上告人の本
訴請求は理由がないものというべきであるから、第一審判決中上告人敗訴部分を取
り消し、被上告人の請求を棄却すべきである。
 よつて、その余の論旨について判断をするまでもなく、民訴法四〇八条、三九六
条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    高   島   益   郎
            裁判官    佐   藤   哲   郎
            裁判官    四 ツ 谷       巖

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