弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
一本件控訴を棄却する。
二控訴費用は控訴人の負担とする。
○事実
第一当事者の求めた裁判
一控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を札幌地方裁判所に差し戻す。
3訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張及び証拠
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示
のとおりであるから、これを引用する。
一原判決の訂正等
原判決一枚目裏末行の「以下」の前に「昭和四六年法律第三五号」を加え、同二枚目表。

行目の「以下」の前に「昭和四六年室蘭市条例第三七号」を加え、同行の「施行規則」。

「八二条に基づいて室蘭市長が定めた同条例施行規則(昭和四七年室蘭市規則第二二号。
以下、単に「条例施行規則」などという」と改め、同三枚目表二行目の括弧内を「昭。)

四六年農林省令第五二号。以下、単に「法施行規則」などという」と改める。。
二控訴人の当審における主張
、。、控訴人は本件処分の無効確認を求める法律上の利益を有する者に該当するその理由は
次のとおりである。
1中央卸売市場は、その市場の取扱品目の部類における取扱品目の売買取引が行われろ
場所であり、卸売業者、仲卸業者及び売買参加者によつて構成されるものである。
しかし、中央卸売市場には、多量の物資が集散するため、この物的流通、商的流通を円滑
にし、市場機能の充実に資する業務が必要である。また、卸売市場は、開設者の職員、出
荷者、運送業者、卸売業者、売買参加者、買出入その他多数の人が参集する場所であり、
これら市場の利用者に最小限度における便益を提供することが必要である。
関連事業者は、市場本来の業務ではないが、市場が充実し効率的に円滑に機能するために
大きな役割を果しているのである。
、、2右のように関連事業者が中央卸売市場において大きな役割を有することにかんがみ
業務規程に関連事業者に関する詳細な定めが置かれている。
室蘭市中央卸売市場についてみると、室蘭市は、条例二九条以下及び条例施行規則二九条
以下にそれぞれ関連事業者に関する定めをなし、市場内における関連事業者の営業を許可
制とし、市場の使用料を徴収し、かつ、保証金の納付を義務付け、保証金を納付しなけれ
ば営業を開始できないものとしているのである。
このように、
条例をもつて関連事業者の営業を許可制とし、営業開始の条件として保証金を納付させ、
かつ、市場の使用料を徴していることは、とりもなおさず、関連事業者の中央卸売市場内
における許可を受けた範囲内の営業に関し、行政法規が関連事業者の個人的利益を個別的
具体的に擁護する趣旨を含もものであることは明らかである。
中央卸売市場が公益の目的のため設置されていることは当然であるが、市場関係者(卸売
業者、仲卸業者、関連事業者)は、すべて市場内において許可を受けた取扱業務をそれぞ
れの私的営業として行つているのであつて、これらの者が中央卸売市場の公益性のゆえを
もつて、あるいは権利侵害に対する保護規定がないことを理由に、不法な権利侵害の救済
を否定されるいわれはない。関連事業者は、無許可者が市場内において関連事業者と同種
営業を開始し、関連事業者の営業を侵害するときは、当然にその排除を求める権利を有す
ることは論をまたない。
3本件の場合、被控訴人は、室蘭中央卸売市場の取扱品とされていない控訴人と同種営
、、、業である花き類について卸売業者にその取扱いの許可を与えたものであるが右許可は
控訴人が既に詳細に主張しているとおり、法及び条例(業務規程)に違反し、被控訴人に
は許可権限のない無効な処分であり、卸売業者が取り扱つている花き類の取扱いは、実質
、、、無許可者の営業と同視すべきものであるところ右無効な許可処分によつて卸売業者は
控訴人の営業を侵害しているのである。
すなわち、本件は、適法な行政権の行使によつて生ずる営業の競合ではない。
しかして、控訴人は、本訴において被控訴人の行つた本件処分の無効確認を得るほかに他
に権利侵害の救済を求める手段はないのであつて、控訴人は、本件処分の無効確認を求め
るにつき、法律上の利益を有するものに該当するものである。
三控訴人の右主張に対する被控訴人の認否
控訴人の右主張事実のうち、2項第二段の「室蘭市中央卸売市場についてみると」から、
「営
業を開始できないものとしているのである」までは認めるが、その余の事実は否認し、。

張は争う。
○理由
一当裁判所は、控訴人の訴えは原告適格を欠く不適法なものと判断するものであつて、
その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これ
を引用する。
1原判決五枚目表一〇行目から同末行までの全文を次のとおり改める。
「3次いで、後者についてみるに「当該処分の無効の確認を求めるにつき法律上の利益、

有する者」とは、当該処分の法的効果として自己の法律上の利益を侵害され又は必然的に
侵害されるおそれのある者をいう。また「法律上の利益」とは、処分がその本来的効果、

して制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護す
ることを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益
もこれに当たり、右の制約に違反して無効な処分が行われたと主張する者も(当該処分、

無効を前提とする現在の法律関係に関する訴訟により目的を達することができないものに
)。限られるとの限定の下で当該処分の無効の確認を求めることができると解すべきである
そして、右にいう行政法規による行政権の行使の制約とは、明文の規定による制約に限ら
れるものではなく、直接明文の規定はなくとも、法律の合理的解釈により当然に導かれる
制約を含もものである。
ところで、右にいう法律上の利益は、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として
行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることになる反射的利益と
は区別されるべきものであるから、行政法規が行政権の行使に制約を課している趣旨が、
私人の利益を一般的、抽象的にではなく、個別的、具体的な利益として保護する趣旨を含
むことを要するというべきである」。
2原判決五枚目裏六行目の「について」の次に「定めて」を加え、同六枚目表五行目の
「安定」に続く「の確保」を削除する。
3原判決六枚目裏八行目の「いえるのである」の次に「条例二九条及び条例施行規則(

九条に照らすと、控訴人は、右のうち(2)の市場の利用者に便益を提供するものとし、

条例施行規則で定める物品販売業(花き園芸品販売)を営も者として、関連事業業務の許
可を得たものと解される。この関連事業者の設置は、市場の前記公益性にかんがみ、。)

場機能の充実を図り、又は出荷者等の市場の利用者に便益を提供するために、市場の本来
の業務以外に特別にいわば付随的に設けたものであつて、関連事業者の利益を保護するこ
とをその趣旨としているとは解されないのである。また、条例三一、三二条、条例施行規
則三一条に照らすと、関連事業者は、
保証金の預託を義務付けられ、保証金を預託しなければ営業を開始できず、許可を取り消
されることがあるとされていること、さらに、条例六七条、条例施行規則七七ないし七九
条によると、関連事業者は他の市場使用者と同様に市場の使用料を納付しなければならな
いものとされていることが明らかである。しかしながら、これらの規定があることをもつ
て、行政法規が関連事業者の個人的利益を個別的、具体的に保護する趣旨を含むものであ
ると解することはできない」を加える。。
4原判決七枚目表初行の末尾に「法一五条によると、卸売業者は、取扱品目の部類ご、

に農林水産大臣の許可を得て業務を行うこととされており、条例施行規則四八条及びこれ
に基づく本件処分は、卸売業者に対し許可を受けた取扱品目の部類に属しない物品の販売
を許可しようとするものであるところ(法施行規則二条、条例三条、条例施行規則三条等
に照らすと、室蘭市中央卸売市場では青果部と水産物部のみが設けられ、青果部の取扱品
目には花きは含まれていないところ、訴外会社は青果部について卸売業者の許可を得てい
るものであり、本件処分は、訴外会社に対し、許可を受けた青果部に属しない物品である
花き類の販売を許可するものである、卸売業者の許可を取扱品目の部類ごとに行うこ。)

とした規定の趣旨は、あくまでも市場の適正かつ健全な運営を確保するという公益上の目
的に出たものと理解されるのであつて、特に関連事業者の利益を保護する点にあるとは解
されないのである」を加える。。
5原判決七枚目表二行目から五行目までの全文を次のとおり改める。
「ところで、本件処分は、その本来的効果として控訴人の関連事業者としての地位その
他控訴人の権利利益に対し制限を加えるなど法律上の影響を与えるものではない(右のよ
うな効果をもたらす旨の規定はない。また、以上に検討したとおり、本件処分の根拠。)

なつた実体法規は、公共の利益の実現を目的とするものであり、関連事業者である控訴人
の利益を個別的、具体的に保護する趣旨と解すべき規定もないから、控訴人は、本件処分
の無効確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当しないというべきである。
たしかに、本件処分により、控訴人の営業は売上の減少等のある程度の影響ないし損害を
受けることがうかがえるけれども、それは事実上のものにすぎず、控訴人は、本件処分に
より、
反射的利益を侵害されるにすぎないといわざるを得ないのである」。
二以上によれば、控訴人の本件訴えは不適法であり、これを却下した原判決は相当であ
つて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟
法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官丹野益男岩井俊大淵武男)

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