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裁判例


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平成14年1月17日宣告 
平成13年(わ)第362号,同第481号  窃盗,現住建造物等放火被告事件
判       決
主       文
被告人を懲役4年6月に処する。
未決勾留日数中190日をその刑に算入する。
理       由
(罪となるべき事実)
被告人は,株式会社Aの経営する福岡市a区大字bc番d所在のホテルB料飲部
宴会予約課に平成12年10月まで勤務していたものであるが,
第1 同勤務中の平成12年6月25日午前9時40分ころ,前記ホテルBe号室にお
いて,Cほか1名所有の現金約48万円を窃取した。
第2 前記ホテルを退職後,株式会社Aの代表者に対する憤まん等を晴らすため,
国が所有する前記ホテルBの鉄筋コンクリート造平屋建研修棟(床面積約13
34.25平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,平成12年12月2日
午前1時20分ころ,同棟研修室において,同所に設置された結婚披露宴用の
ステージ,ジョーゼット及びじゅうたん等に所携の灯油をまいた上,所携のライ
ターで同ジョーゼットに点火して火を放ち,その火を同ジョーゼットから同室内
壁,天井等に燃え移らせ,これらを炎上させ,よって,同室及び同棟廊下を焼
損し(焼損面積約494.67平方メートル),もって,現に人が住居に使用せず,
かつ,現に人がいない建造物を焼損した。
(証拠の標目)(略)
(判示第2の事実認定について)
第1 争点
判示第2の事実に係る公訴事実は,「被告人は,株式会社Aの経営するホテ
ルB宴会予約課にかつて勤務していたものであるが,同会社等に対する憤ま
んを晴らすため,福岡市a区大字bc番dに所在し,国が所有する,現にDら従
業員及び宿泊客がいる同ホテルの鉄筋コンクリート造平屋建研修棟(床面積
約1,334.25平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,平成12年1
2月2日午前1時20分ころ,同棟研修室において,同所に設置された結婚披露
宴用のステージ,ジョーゼット及びじゅうたん等に所携の灯油をまいた上,所携
のライターで同ジョーゼットに点火して火を放ち,その火を同ジョーゼットから同
室内壁,天井等に燃え移らせ,これらを炎上させ,よって,同室及び同棟廊下
を焼損し(焼損面積約494.67平方メートル),もって,現に人がいる建造物を
焼損したものである。」というものであるところ,弁護人は,従業員及び宿泊客
が現在した宿泊棟と被告人が火を放った研修棟とは,外観上は2棟の建物が
2本の渡り廊下によって接続された構造となっているが,その構造等からしても
宿泊棟と研修棟が物理的に一体とまでは言えない上,被告人には,研修棟内
のじゅうたん等を焼損する可能性の認識ないし意図があったに止まり,宿泊棟
への延焼可能性についての認識はもとより,研修棟の建物自体に対する延焼
可能性についての認識もなかった旨主張して,上記公訴事実を争い,被告人
も,当公判廷において,これに沿うような供述をしているので,以下検討する。
第2 証拠上認められる事実
  関係各証拠によれば,以下の各事実を認めることができる。
1 株式会社Aの経営するホテルBの構造は,別紙見取図第1図及び同第2図
(当裁判所の検証調書添付の別紙見取図第1図及び同第2図に同じ。以
下,別紙見取図第2図中の<A>等の○付きアルファベットにより指示される
部分を,単に「<A>」等で表す。)のとおりである。
  鉄筋8階建ての宿泊棟は,昭和62年に当時の住宅都市整備公団が建設し
たもので,客室,レストラン等が設けられ,鉄筋コンクリート造平屋建の研修
棟は,当時の建設省が建設した研修室等と,平成8年に増築されたチャペ
ル,会議室等により構成された建物であるが,建設省と住宅都市整備公団
との協議・同意により,宿泊棟のみならず研修棟も住宅都市整備公団が管
理運営することとなり,その後,住宅都市整備公団とE株式会社との間で,
宿泊棟等の賃貸借契約が締結され,研修棟についても賃貸借の対象では
ないものの,宿泊棟等の賃貸施設と一体的にE株式会社が管理運営を行う
ものと同契約により定められ,E株式会社から業務委託を受けた同社の関
連会社である株式会社AがホテルBを構成する施設として宿泊棟及び研修
棟を一体的に運営している。
  研修棟では,各種会議,結婚式,結婚披露宴,宴会等が行われているとこ
ろ,ホテルBの営業の中で,最も売上が多く,最も利益が多いのが結婚披露
宴等であり,研修棟で行われる結婚式ないし結婚披露宴のために宿泊棟の
客室の一部を着付室などに利用している。
  また,夜間には,宿泊棟で当直勤務についている従業員が,警備の為,宿
泊棟のみならず研修棟をも巡回している。
2 平成12年12月2日午前1時20分ころ,被告人は,無人の研修棟に侵入
し,同棟研修室に設置された結婚披露宴用のステージ,ジョーゼット及びじ
ゅうたん等に所携の灯油をまいた上,所携のライターで同ジョーゼットに点火
して火を放ち,その火を同ジョーゼットから同室内壁,天井等に燃え移らせ,
これらを炎上させ,よって,同室及び同棟廊下を焼損した(焼損面積約49
4.67平方メートル)。
3 前記2記載の日時ころ,宿泊棟において,Dら3名の従業員が勤務について
いた他,99名の宿泊客及び2名の従業員が宿泊して,同棟に現在した。
4 研修棟側のロビーと宿泊棟側のレストランとの間には北西側渡り廊下が設
けられているが,その長さは約7.5メートルであり,幅が約3.6メートル,高
さが約3.1メートルである。
同渡り廊下の床面は,地表に鉄筋を敷き,その上にコンクリートを流し込
んで,厚さ13センチメートルの床にするという基礎工事をした上に,タイルカ
ーペットを張った構造となっている。
また,同渡り廊下内部の北西側側壁及び南東側側壁は,ほぼ全面にわた
ってガラス窓となっており,鋼鉄板の防火シャッターはもとより,防火シャッタ
ーのレールも金属製であり,窓ガラスの下に設けている鉄筋コンクリートの
壁とその窓ガラスを仕切る幅約10センチメートルの額ふちが,同渡り廊下内
の部材で唯一の木製の材料である。
同渡り廊下の天井から屋根にかけては,太さ350ミリメートル×170ミリメ
ートルのH鋼を2本,左右に入れ,その両端をボルトで固定し,鉄製の土台と
なる梁を取り付け,その梁の上方に亜鉛基合金板の屋根を乗せ,その梁の
下方には空間を設け,その下に天井の下地となる軽鉄野縁を取り付け,そ
の下に石膏ボードを張り,その下にロックウール化粧吸音板を張り付けた構
造になっている。
同渡り廊下の研修棟側にはステンレス製の枠にガラスをはめ込んだ両開
きの扉が設けられており,同扉は,本件火災当時閉められていた。
5 北西側渡り廊下の宿泊棟側の端に設置されたDの防火シャッターは,同渡
り廊下の天井に設置されたEの煙感知器が煙を感知すると自動的に降下す
るようになっており,同シャッターが完全に降下した場合には,北西側渡り廊
下から宿泊棟へのアクセスは空間的には完全に遮断された状態になる。
6 研修棟側のパントリーと宿泊棟側のレストランとの間には南東側渡り廊下
が設けられているが,その長さは約7.5メートルであり,幅が約2.25メート
ル,高さが約3.1メートルである。
同渡り廊下の床面は,地表に鉄筋を敷き,その上にコンクリートを流し込
んで,厚さ13センチメートルの床にするという基礎工事をした上に,ビニール
シートを張った構造となっている。
同渡り廊下の天井から屋根にかけては,太さ350ミリメートル×170ミリメ
ートルのH鋼を2本,左右に入れ,その両端をボルトで固定し,鉄製の土台と
なる梁を取り付け,その梁の上方に亜鉛基合金板の屋根を乗せ,その梁の
下方には空間を設け,その下に天井の下地となる軽鉄野縁を取り付け,そ
の下に化粧石膏ボードを張り付けた構造になっている。
  同渡り廊下の宿泊棟側にはガラス窓付きの金属製扉,研修棟側には鉄製
扉がそれぞれ設置されており,防火扉である研修棟側の鉄製扉は,本件火
災当時閉められていた。
  パントリー北東側の壁及びそれに隣接する機械室の北東側の壁はコンクリ
ート製である。
  パントリーと研修棟内の廊下との境であるJの位置にスチール製引き戸
が,パントリー内のIの位置にスチール製防火扉がそれぞれ設けられてい
た。
7 研修棟の屋根組は,切り妻屋根の折り板鉄板葺きであり,また,同棟の宿
泊棟側の壁面には,機械室の扉が設けられているだけで,窓はない。
第3 宿泊棟と研修棟との一体性の有無
 1 ところで,現に人がいる建物(以下「現在の建物」という。)と,現に人が住居に
使用せず,かつ,現に人がいない建物(以下「非現住・非現在の建物」という。)
とがある場合,それらが全体として一個の現在建造物と認められるためには,
各建物が渡り廊下などの構造物によって相互に連結されていることを前提に,
その構造上の接着性の程度,建物相互間の機能的連結性の有無・強弱,相
互の連絡,管理方法などに加えて,非現住・非現在の建物の火災が現在の建
物に延焼する蓋然性をも考慮要素とし,これらの諸事情を総合考慮して,一個
の現在建造物と評価することが社会通念上も相当とみられることが必要と解さ
れる。そして,現在建造物放火罪の法定刑が著しく加重されているのは,人の
生命・身体に対する危険性に着目したものであるから,その抽象的危険犯とし
ての性格を前提としても,非現住・非現在の建物から現在の建物へ延焼する
可能性が全く認められない場合にまで,それら複数の建物を一個の現在建造
物と評価することは許されないというべきである。したがって,それら複数の建
物が一個の現在建造物と認められるためには,そのような延焼可能性が否定
できないという程度の意味において,延焼の蓋然性が認められることが必要と
考えるべきである。
 2 そこで検討すると,前記のとおり,被告人が放火した研修棟と従業員及び宿泊
客が現在した宿泊棟とは,側壁及び天井を有する長さ約7.5メートルの2本の
渡り廊下によって構造上連結されている上,住宅都市整備公団とE株式会社
の契約で,宿泊棟及び研修棟は一体的に管理運営を行うものとされ,現に同
社から委託を受けた株式会社AがホテルBを構成する施設として両建物を管
理運営し,研修棟において行われる結婚式ないし結婚披露宴の為に宿泊棟の
客室の一部を着付室などとして利用し,結婚披露宴等によって最も多くの売上
を上げ,また,夜間には宿泊棟で当直勤務についている従業員により研修棟
への巡回も行われているというのであるから,宿泊棟と研修棟との間には相当
に強い機能的連結性が認められる。
   しかしながら,前記のとおり,宿泊棟と研修棟とを連結している南東側渡り廊下
には,研修棟側入口に防火扉である鉄製扉が設置されている上,宿泊棟側に
もガラス窓付きの金属製扉が設けられており,また,同渡り廊下を建築した建
築業者の担当者によれば,長さ約7.5メートルの同渡り廊下の屋根から床面
に至るまでの部材の中に可燃物は見当たらないというのであって,このような
防火設備及び材質等に鑑みると,本件証拠関係の下では,同渡り廊下を経由
して研修棟から宿泊棟へ延焼する蓋然性を認めるには合理的疑いが残ると言
わざるを得ない。
   また,北西側渡り廊下には,宿泊棟側の端に鋼鉄板の防火シャッターが設置さ
れており,同シャッターは同渡り廊下に設置された煙感知器が煙を感知すれば
自動的に降下するようになっている上,同渡り廊下の研修棟側にはステンレス
製の枠にガラスをはめ込んだ両開きの扉が設けられており,さらに,同渡り廊
下を建築した建築業者の担当者によれば,長さ約7.5メートルの同渡り廊下
の屋根から床面に至るまでの部材における可燃物としては,床に張っているタ
イルカーペットと窓ガラスと壁を仕切る木製の額ふちくらいであるというのであ
るから(なお,タイルカーペットの可燃性に関する客観的証拠は,当公判廷に
顕出されていない。),このような防火設備及び材質等に鑑みると,本件証拠
関係の下で,同渡り廊下を経由して研修棟から宿泊棟へ延焼する蓋然性を認
めるには合理的疑いが残ると言わざるを得ない。この点,検察官は,前記防火
シャッターは,閉鎖された防火扉とは異なり,煙感知器が作動し,これに連動し
て防火シャッターが完全に降下するまでに一定の時間を要すること,また,煙
感知器やそれと連動した防火シャッターの降下装置に不備があった可能性を
指摘して,延焼する可能性が認められると主張するが,前記防火シャッターが
本件火災の際に現に降下したことが関係証拠から認められる本件において,
そのような抽象的な指摘のみで前記防火シャッターの延焼防止装置としての
有効性を否定することはできず,前記防火シャッターの存在にもかかわらず延
焼する可能性が否定できないというには,前記指摘の諸点について具体的に
立証することを要するというべきである。
さらに,前記のとおり,鉄筋コンクリート造平屋建である研修棟の屋根組は
切り妻屋根の折り板鉄板葺きであり,また,研修棟北東側の宿泊棟に面した壁
面には,機械室の扉が設けられているだけで,窓などの開口部がないことが認
められる上,研修棟と宿泊棟との距離は約7.5メートルあることからすると,渡
り廊下以外の延焼経路により延焼する蓋然性についてもこれを認めるには合
理的疑いが残るというべきである。
そうすると,結局,研修棟から宿泊棟へ延焼する蓋然性はこれを認めること
ができない。
3 従って,研修棟と宿泊棟を一体のものとして,一個の現在建造物ということは
できず,研修棟は,宿泊棟とは独立した,非現住・非現在建造物であると認め
るのが相当と判断される。
第4 建造物放火の故意について
 1 ところで,被告人は,当公判廷において,研修棟内の研修室のじゅうたんが耐
火性であることから,例えばキャンプにおいて燃えにくい薪を燃やす為にアルコ
ールを撒くのと同様に,灯油を使用することによって同じゅうたんの表面を焦が
そうと思っただけである旨供述し,弁護人も,これに沿って,被告人には建造物
放火の故意自体がなかった旨弁論していると解されるが,被告人は,アルコー
ルとは異なって強い燃焼力を持つ灯油を約36リットルも撒布している上,防炎
製品であるじゅうたんのみならず,結婚披露宴において高砂席の背後を飾る垂
れ幕で,研修室の内壁から5,6センチメートル程度の位置に,床面から約4メ
ートル弱の高さまで達する形で設営されていたジョーゼットにも,それが防炎製
品でないことを知りつつ灯油を撒布しているのであるから,被告人には,研修
室の内壁,天井等が独立して燃焼することについての認識,認容があったと認
められ,弁護人の主張は採用できない。
 2 なお,被告人の検察官調書(乙19)には,宿泊棟への延焼を認識,認容したと
もみられる供述があるが,前記のとおり,研修棟から宿泊棟への延焼の蓋然
性は認められないところ,本件ホテルに勤務していた被告人は,防火設備も含
め同ホテルの構造を熟知していたと認められる上,被告人は,結婚披露宴で
使用する研修室を使用不能にすることを目的として本件放火の犯行に及んだ
ものとみられるのであって,そのような被告人が,宿泊棟への延焼を認識,認
容したとは考えがたく,前記供述調書の内容のみをもって,被告人に,研修棟
を媒介物とする宿泊棟への放火の故意があったとみることはできない。
第5 結論
以上によれば,被告人の放火行為は,刑法108条の現在建造物放火罪に
該当するとするには合理的疑いが残るといわざるを得ず,結局,同法109条1
項に該当する非現住・非現在建造物放火罪を構成するに止まるとみるのが相
当と判断した。
(法令の適用)
罰条
 第1の事実         刑法235条
 第2の事実         刑法109条1項
併合罪加重          刑法45条前段,47条本文,10条(重い第2の罪の刑
に刑法14条の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入      刑法21条
(量刑の理由)
1 本件は,判示ホテルの従業員であった被告人が,その勤務中に,同ホテルで前
日結婚式を挙げた被害者夫婦から結婚祝儀金等約48万円を窃取し(第1),退
職後,同ホテル上層部への憤まん等を晴らすため,同ホテル研修棟の研修室に
火を放ち,同室等を焼損させた(第2)という窃盗及び非現住・非現在建造物放火
の事案である。
2 まず,第1の窃盗についてみると,被告人は,月額合計約15万円にも及んでい
たサラ金等の借金の返済に窮して本件第1の犯行に及んだものであるが,被告
人がそのような多額の借金を抱えるに至ったのはパチンコ,競馬,競艇といった
ギャンブルなどの遊興費に費消した為であり,しかも婚約が破談になった平成6
年ころに借金を始めるようになってから,2度にわたって実父の援助を得て借金を
清算する機会を与えられていたにもかかわらず,なおも多額の借金を抱える生活
を漫然と続けていたものであることからすると,被告人の借金はいわば身から出
た錆ともいうべきものであって,その動機に酌量すべき余地など全くない。しか
も,被告人は,自ら婚礼予約を担当したことにより面識のあった被害者夫婦に同
ホテル内のレストランで会ったことを奇貨として,マスターキーを使って客室内に
入り込み,前日結婚式を挙げたばかりの被害者夫婦の結婚祝儀金をそれと知り
つつ窃取したもので,ホテルマンとしての立場を悪用した大胆不敵かつ極めて悪
質な犯行である。窃取金額も約48万円と少なくない上,結婚祝儀金を窃取され
たことにより「人生の出発に汚点をつけられたような気持ち」になった被害者夫婦
の精神的苦痛も軽視することはできず,結果も重大である。
3 次に,第2の放火についてみると,被告人は,判示ホテルの上層部に対する憤
まん等を晴らすため,同ホテルにおいて結婚披露宴等が行われる研修室を使用
不能にすることを企て,同室に火を放ったものであるが,その動機は逆恨みと評
すべきものであって,もとより酌量すべき余地など全くない。しかも,被告人は,自
らの自動車を使用すれば判示ホテルの元従業員であることなどから自らが放火
の犯人と疑われると考え,当時交際していた女性の自動車の鍵を言葉巧みに入
手して同車を使用して同ホテルに向かい,灯油を入れる容器の調達,灯油の入
手,研修室への侵入などを経て,本件放火を敢行しているのであって,強固な犯
罪意思に基づく犯行というべきである。犯行態様も,約36リットルもの多量の灯
油を現場に撒布し,ジョーゼットであれば燃えやすいと判断した上でそれに火を
放つなどしたものであって,極めて危険かつ悪質なものである。このような被告人
の犯行により,判示ホテルが被った経済的損害は総額4億円を超えている上,宿
泊棟に宿泊していた観光客4名が精神的な症状により病院に搬送されるなど,宿
泊客にも多大な不安感を与えたと認められ,さらに,当日,研修室で結婚披露宴
を予定していた夫婦に与えた精神的苦痛も軽視することはできないのであって,
結果は極めて重大である。
4 以上に照らせば,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。
5 他方,被告人は,捜査段階から一貫して窃盗の事実を認め,放火の事実につい
ても自らが研修室に灯油を撒布して火を放ったという客観的な行為自体は一貫し
て認め,弁護人を介して被害者に対して謝罪の手紙を送るなど,約10か月間に
わたる身柄拘束を通じて内省を深めていることが窺われること,窃盗の被害者に
対する損害は判示ホテル側により補填されている上,被告人の父から見舞金とし
て10万円が支払われていること,判示ホテル側と被告人との間で和解契約が締
結され,窃盗被害者の損害補填分及び放火による損害賠償の趣旨で,被告人の
父親の出捐により700万円が支払われており,判示ホテル側からの宥恕文言を
含む形での和解契約が成立したものとみられること,窃盗の原因となった被告人
の負債については既に整理が行われていること,被告人には前科がないこと,情
状証人として出廷した被告人の父親の監督が期待できることなど,被告人のため
に酌むことのできる事情も認められる。
6 そこで,これら被告人に有利,不利な一切の事情を総合勘案し,主文の刑を量
定した。
7 よって,主文のとおり判決する。
(検察官壬生隆明,私選弁護人篠木潔各出席)
(求刑-懲役7年)
平成14年1月17日
福岡地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官    谷       敏   行
裁判官    家   令   和   典
裁判官    古   庄       研

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