弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
被告が原告に対して昭和四二年六月二二日付でなした原告の昭和四一年度分所得税
および同所得税の無申告加算税の各課税決定は、営業所得につき九九六、五九〇円
を越える金額を認定してなした部分をいずれも取り消す。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
       事   実
第一、当事者の求めた裁判
(原告)
一、被告が原告に対して昭和四二年六月二二日付でなした原告の昭和四一年度所得
税八二二、四〇〇円の決定のうち金二四、五三〇円を越える部分および同所得税の
無申告加算税金八二、二〇〇円の決定のうち金二、四〇〇円を越える部分につい
て、いずれもこれを取消す。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
(請求原因)
一、被告は原告に対し、昭和四二年六月二二日付で原告の昭和四一年度所得税を八
二二、四〇〇円と、右所得税の無申告加算税を八二、二〇〇円とそれぞれ決定し
た。
二、そこで原告は、昭和四二年七月六日被告に対し右決定に対する異議申立をした
が同年一〇月二日付をもつてこれを棄却する旨の決定を受けたので、原告はさらに
同月二八日福岡国税局長に対し右棄却決定に対する審査請求をしたところ、同局長
は昭和四三年四月二五日付でこれを棄却する旨決定した。
 然しながら、被告のなした各決定は原告の総所得金額を過大に評価した違法があ
る。すなわち、(一)、原告は機船「第一信丸」を所有し、同船により長崎市深堀
町と西彼杵郡香焼町間の海峡において旅客、貨物の運送に従事していたものであ
り、原告の長男である訴外Aも昭和三八年一二月頃機船「信丸」を購入して自らも
同船に船長として乗船し、原告同様右深堀、香焼間の旅客、貨物の運送に従事して
いたものであり、原告の長女Bも昭和三九年春頃「第二信丸」を購入して訴外Cを
船長として雇傭し、原告同様右深堀、香焼間の旅客間の旅客貨物の運送に従事して
いたものであつて、右三隻の船の運賃収入はそれぞれ各船の所有者の収入に属する
ものである。この点について、被告は九州海運局長崎支局に提出してある資料によ
れば「信丸」、「第二信丸」の所有者はいずれも原告となつていること、右二隻の
船の進水年月日からその当時年少者であつた訴外A、同Bが船を購入し取得するこ
とは考えられないこと、昭和四一年当時右両名は長崎に居住せず運送事業に従事で
きるような情況になかつたこと、航路補償金は原告が三隻分について全部受領して
いること等から「信丸」、「第二信丸」による所得も原告に属すると判断している
ようである。しかし、昭和四一年頃運行されていた「信丸」、「第二信丸」は九州
海運局長崎支局に届出られた船とは異なり、それらの船は廃船となつたため前記の
とおり訴外A、同Bらが昭和三八、九年頃他から船を購入して「信丸」、「第二信
丸」として運航させていたものであり、Aが大阪へ転出したのは航路が廃止になつ
た後の昭和四二年五月二〇日頃であつて、Bも昭和四〇年頃婚姻して大阪へ転出し
たが、「第二信丸」を購入した頃から、前記のとおりCを船長として雇傭し、運賃
収入からCの給与及び諸経費を控除した残額を取得していたのである。また、航路
補償金についても原告は三名の分を代表して受け取つただけのことであつて、後に
A、Bの両名に対して原告からその取得すべき分が渡されている。
 然るに、被告は原告の昭和四一年度の総取得額を決定するにあたつて、右事実を
無視し、右「第一信丸」以外の二隻の船の運賃収入をも原告の所得として総所得金
額に算入して、三、四一二、三五〇円と決定している。
(二)、右昭和四一年度分の総所得金額の内訳は、営業所得一、一二九、三五〇
円、航路補償金二、二八三、二〇〇円となつている。しかし、1、右航路補償金は
長崎県が公有水面埋立法に基いてなした長崎外港臨海土地造成事業に伴い、当該水
面に航路権を有していた原告らに対し、右航路の廃止による補償として昭和四一年
六月末日頃長崎県知事から交付された金員であつて、かかる性格からして右補償金
の取得は租税特別措置法第三一条第一項第七号の補償金若しくは所得税法第三四条
の一時所得に該当するものというべく、所得額の決定にあたつても右各法規に定め
られた算定方法がとられるべきである。そうすると、原告自身の取得した営業補償
金は右金額の三分の一に過ぎず、且つ右補償金の収入については前記各法規に定め
られた控除がなさるべきであるから、課税対象となる所得額は三七三、〇三三円と
するのが正当である。
2、営業所得についても、前記金額から訴外両名の所得を控除すべきであり、且つ
原告が昭和四一年度に「第一信丸」によつて営業をしたのは同年六月末までであつ
て、その間の営業所得は二〇八、二三〇円である。
(三)、右のとおりであるから、原告の昭和四一年度の総所得金額は合計五八一、
二六三円であつて、右金額を基礎とすると所得税額は二四、五三〇円、無申告加算
税は二、四〇〇円となり、被告の本件課税決定のうち右金額を越える部分は取り消
されるべきである。
三、被告のなした本件決定は手続的にも違法である。けだし、被告は原告の昭和四
一年度の総所得額を定めるにあたつて、原告の帳簿類の審査をすることもなく、又
原告に出頭を求めて面接調査をすることさえも一度もなかつた。かかることは所得
税法上認められた推計課税の許容範囲を逸脱した不当違法な方法であるといわなけ
ればならない。而して、かかる杜撰な手続の結果独立の事業体である訴外A、Bの
所得をも原告の総所得額に加算するという過誤をおかすに至つたものである。
四、よつて、原告は被告に対し、原告の昭和四一年度所得税の決定のうち二四、五
三〇円を越える部分および同所得税の無申告加算税の決定のうち二、四〇〇円を越
える部分について、いずれもその取消を求める。
(請求原因に対する答弁および被告の主張)
 被告が原告主張の如き課税処分をなし、原告がこれに対し行政不服申立をなした
が、これが棄却されたことは認め、その余は後記被告の主張と相容れない限度です
べて争う。
一、所得の帰属について
(一)、「信丸」の所有者については、原告が九州海運局長崎支局に昭和二八年一
二月に提出した「旅客定期航路事業免許申請書」に添付した「使用船舶明細書」お
よび昭和二九年五月二七日に提出した「積量に関する証明願」にいずれも「信丸」
の所有者は原告である旨明記されており、「第二信丸」の所有者については、原告
が右支局に昭和二九年一二月二日に提出した「積量に関する証明願」および昭和三
〇年二月二六日ならびに同年五月一〇日に提出した「旅客定期航路事業代船使用
届」のいずれにも第二信丸の所有者は原告である旨明記されている。
(二)、前記「使用船舶明細書」には「信丸」の進水年月日は昭和二三年六月と明
記されており、原告がその所有者であると主張する訴外Aは右進水当時未だ一一才
の年少者であり、前記「積量に関する証明願」には「第二信丸」の進水年月日は昭
和二五年五月と明記されており、原告がその所有者であると主張する訴外Bは右進
水当時未だ一四才の年少者であつた。
(三)、訴外A、同Bの両名はいずれも海上運送法上の免許を有せず、訴外Aは昭
和四一年五月二〇日に、同Bも昭和四〇年二月一五日に、それぞれ大阪へ転出して
おり、同人らが長崎で海上運送事業を営める状況にはなかつた。
(四)、長崎外港開発総局からの補償金は「信丸」、「第一信丸」、「第二信丸」
の三隻分についていずれも原告が受領している。
 以上の各事実を綜合すると、「信丸」、「第二信丸」は「第一信丸」とともに当
初から原告の所有であつたのであり、原告はこれらの船舶を使用し、自己の事業と
して旅客定期航路事業を継続して営んできたものであつて、所得の全部が原告に帰
属すべきものとした本件処分に何ら違法はない。
二、原告の昭和四一年度分の事業所得について、被告のなした決定処分の内訳は次
のとおりである。
1、運賃収入 一、七〇二、二〇〇円
 右は本件航路の営業廃止に伴つて長崎県長崎港開発総局の算定した航路補償金算
定調書に基いて算定した金額であり、「第一信丸」、「第二信丸」、「信丸」の三
隻分の合計収入金額である。
2、一般経費 五六四、七四〇円
 金額の把握方法については運賃収入の場合に同じである。
3、雑収入 二、二七四、九〇〇円
 右は本件航路の廃止に伴つて、長崎県が原告に支払つた航路営業補償金を事業所
得の収入金と認めて雑収入に計上したものである。事業所得の収入金と認めた根拠
は、税務計算上は「営業の全部もしくは一部の転換または廃止により受けるいわゆ
る営業補償金のうち、営業権の対価と認められる部分以外の部分」は事業所得によ
り生じた収入金と解すべきであり、これは所得税法第二七条第一項の趣旨を敷衍し
た正当な考え方である。本件航路補償金については長崎港開発総局の算定調書によ
れば営業権の対価相当分は含まれていないから、これを事業所得の収入金と判断し
たものである。
 よつて、右運賃収入と雑収入の合計から一般経費を控除した三、四一二、三五〇
円が原告の昭和四一年度分の事業所得と算定したものである。
三、原告は、昭和四一年度分所得税の確定申告を法定期限までになさず、被告の調
査にも何ら協力せず、帳簿書類の提出もしなかつたので、被告が己むを得ず原告が
公有水面の埋立に伴い受領する補償金算定の関係で長崎県長崎開発総局に提出して
いた資料に基き原告の同年度分の所得の調査を行い、前項のとおり運賃収入、一般
経費および雑収入の金額を把握して所得金額を計算したものであつて、本件決定手
続に何ら違法な点はない。
第三、証拠(省略)
       理   由
一、被告が原告に対し、昭和四二年六月二二日付で、原告の昭和四一年度所得税を
八二二、四〇〇円と、右所得税の無申告加算税を八二、二〇〇円と、それぞれ決定
したこと、右決定に際して被告は、原告の昭和四一年度総所得金額を三、四一二、
三五〇円(被告はその内訳を、運賃収入一、七〇二、二〇〇円から一般経費五六
四、七五〇円を控除した一、一三七、四五〇円と、営業上の雑収入に該当する航路
営業補償金二、二七四、九〇〇円と主張している。)と決定したこと、また右所得
の算定にあたつて、被告は「信丸」、「第一信丸」、「第二信丸」の三隻の船舶は
いずれも原告の所有に属し原告はこれらの船舶を使用して自己の事業として旅客定
期航路事業を営んでいたとの前提に立つて、右三隻の船舶から生ずる収入すべてを
原告の所得に属するものとして総所得金額を算出したこと、なお原告は、右決定に
対して主張するような行政不服申立をなしたこと等の事実はいずれも当事者間に争
いがない。
二、所得の帰属について。
 原告が「第一信丸」を所有し、これによつて長崎市深堀町と西彼杵郡香焼町間の
海峡において旅客定期航路事業に従事していたこと、従つて同船舶から生じた収入
が原告の所得に帰属すること、については当事者間に争いがない。
 そこで右以外の「信丸」、「第二信丸」が何人の所有に属するものであるか、ま
たこれら船舶から生ずる収入が誰の所得に帰属するかについて判断するに、成立に
争いのない甲第一号証の一、二、甲第二、三号証、甲第四、五号証の各一、二、乙
第一号証の一乃至三、第二乃至第五号証、証人A、同Cの各証言および原告本人尋
問の結果に弁論の全趣旨を綜合すると次の事実が認められる。
1、原告は昭和二八年頃から九州海運局長の免許を得て香焼、深堀間の旅客定期航
路事業に従事していたが、その間汽船「第一信丸」の外「信丸」、「第二信丸」を
所有しこれを同事業のため使用していた。ところが昭和三八年一二月頃右「信丸」
は朽廃したため原告は、これを廃船にし、その際原告の長男である訴外Aが旧「信
丸」の就航の権利を承継することとして他から中古船を購入し、これに改造を加え
て自己の所有船舶とし、同一船名を用い「信丸」として九州海運局長崎支局長に届
出、船舶検査合格証を得て昭和四一年七月頃まで就航させていた。また、右「第二
信丸」も昭和三九年五月頃朽廃したため原告の長女である訴外B(旧姓○○)が同
様他から中古船を購入し、同じくこれに改造を加えて自己の所有船舶として九州海
運局長崎支局長に届出、船舶検査合格証を得て昭和四一年七月頃まで就航させてい
た。
2、原告は本件香焼、深堀間の旅客定期航路事業について唯一人の免許取得者であ
つたが、海上運送法の改正により一二人以下の旅客定員を有する船舶には免許は不
要となり、昭和四一年頃には本件航路に全部で九隻の船が一二人以下の旅客定員を
有するものとして免許を得ずに就航していた。そこで各業者は任意組合を結成し共
通の乗船切符を発売することによつて各船舶の運賃を一旦全部組合の手にとりまと
め、これから桟橋の借料等の経費を控除した残りを各船ごとに均等割りにして配分
していた。
3、訴外Aは、昭和三七年一〇月婚姻してから父親である原告と別居し、昭和三八
年一二月新たに「信丸」を取得してからは自らこれに船長として乗り込んで香焼、
深堀間の旅客定期航路事業に従事し、原告とは生計を異にしてもつぱら「信丸」の
運賃収入によつて生計を維持していたが、昭和四一年七月頃香焼、深堀間の埋立工
事が開始されるに及んで右事業をやめ、翌四二年五月二〇日転職のため大阪へ転出
した。また訴外Bは高校卒業後会社事務員として働き、昭和三九年五月「第二信
丸」を購入改造するについては自己の貯蓄から費用を支出し、右船舶に義兄にあた
る訴外Cを雇傭して乗船させ、同人の給料として「第二信丸」からの運賃収入を折
半して与え残りの半分を利益として同女が取得していた。昭和四〇年Bが婚姻して
大阪に転出後は、同女の受け取るべき運賃収入は、同女の指示にもとづき同女の祖
母にあたる訴外Dに生活費として与えられ、原告には全く渡されていなかつた。
以上の認定に反する証拠はない。
 右事実によれば、昭和四一年当時の「信丸」、「第二信丸」の所有者は原告では
なく、それぞれ訴外A、Bであること、これら船舶による香焼、深堀間の旅客定期
航路事業はそれぞれその所有者がその営業主体であり、右営業は従前原告の取得し
ていた事業免許とは無関係であることが明らかであつて、「信丸」の運航による事
業所得の帰属者はA、「第二信丸」の運航による事業所得の帰属者はBであるとい
わなければならない。
 原本の存在成立に争いのない乙第八号証、証人Eの証言によれば、被告ないし被
告の決定に対する審査請求につき棄却の決定をした訴外福岡国税局長は、「信
丸」、「第二信丸」の事業所得の実質的帰属者を原告と判断した根拠として、本件
航路の廃止にともない長崎外港開発総局が支給した補償金について、原告が「第一
信丸」の分とともに右二隻の船舶の分についても一括して受領し、右二隻分につい
ての補償金がA、Bに渡されたとの原告の主張を裏付ける証拠がないこと、昭和四
一年当時「信丸」、「第二信丸」の所有名義人であるA、Bの両名は長崎を転出し
ていること、その進水年月日当時両名は年少者であつたことなどから、右両名は単
なる名義人にすぎず実質上の所有者は原告であるとみられること、等をあげている
ことが認められる。しかしながら、「信丸」、「第二信丸」の所有者がA、Bであ
り、その取得の経緯や時期に格別不審とすべき事由のないことは前記認定のとおり
であり、補償金の受領者が「信丸」、「第二信丸」についても原告であることや、
これらの補償金が原告から名義人であるA、Bにそれぞれ渡されたことの裏付がな
いというような事実は、後記認定の事情を考慮すれば別段異とするには足りない。
 前掲乙第六号証中原告本人の供述部分、証人F、同A、同Cの各証言、原告本人
尋問の結果によれば、原告がその子であるAやBの分まで自己の名で補償金の交付
を申請しこれを受領したのは、他の同業者と違つて原告が当初九州海運局長の免許
を受けた業者であることを理由として他の同業者よりは多額の補償を受けようと考
えたについて、もともと原告は三隻の持船で営業していたこともあつて、そうする
ことが外形上さほど不自然でなく、AやBも原告が自分達に代わつてその手続をと
ることに異存がなかつたからであること、原告が受領した補償金の中からはAの借
金二六〇、〇〇〇円、「第二信丸」の船長Cの退職金七五、〇〇〇円が各支払われ
たほか、実際にAやBに交付された分もあり、かなりの部分が昭和四一年頃原告が
建築していた家屋の建築資金に使用されているとはいうものの、必ずしも補償金の
全額が原告のためにのみ使用されたのではないこと、を肯定し得るのであつて、補
償金受領の日時やその処分の時期・方法に関する原告の供述が的確でないからとい
つて、それだけの理由で補償金は原告が全額費消したものということはできない。
そうすると、従来別個の事業としてその所得も別個の主体に帰属していた本件「信
丸」および「第二信丸」による旅客定期航路事業につき、航路の廃止にともない交
付された補償金が特に実質的に原告に帰属したと認むべき事情はこれを肯定しがた
いから、右補償金についても運賃収入と同様、「信丸」についての分はAの、「第
二信丸」についての分はBの、所得とみるのが相当である。
三、航路営業補償金の性格について。
 成立に争いのない乙第七号証の一乃至六、原本の存在成立とも争いのない乙第
八、九号証、証人G、同E、同Fの各証言によれば、本件航路補償金は航路営業補
償、船舶売却損補償、船員離職補償の合計からなり、そのうち航路営業補償は本件
香焼、深堀間の航路廃止に伴い長崎県訓令第六一号第四三条に基いて、転業に通常
必要とする期間中の従前の収益相当額を補償するものとし、原告の提出にかかる資
料に基いて過去二年分の平均営業収益を算出し、これを基準に将来二年分の収益相
当額が右航路営業補償として支払われたこと、本件香焼、深堀間の旅客定期航路事
業は海上運送法による運輸大臣の免許は不要であつて、何人でも航路の利用状況か
ら許可されない場合を除いては海運局の許可によつて営業することができたこと、
航路の免許を他人に譲渡する場合も海運局長に対して「譲渡、譲受認許申請書」を
提出することによつて譲渡できるが、その際取引の慣習ではいわゆる航路権ないし
は営業権の代価というものはなく単に船舶代金によつてのみ取引されていること、
従つて本件航路営業補償の中にも漁業権、鉱業権等の消滅に対する対価補償に類す
るものは含まれていないことが認められ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
 そして所得税法施行令九四条二号によれば、当該業務の全部又は一部の休止、転
換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他
これに類するものについては不動産所得、事業所得、山林所得または雑所得の収入
金額となるとされており、前記認定事実によれば、まさに本件航路営業補償の場合
は同条に該当することが明らかである。そうすると、本件航路営業補償金は事業所
得の収入金と解すべきであつて、航路権ないしは営業権の対価たる補償であつて譲
渡所得にあたるとする原告の主張は失当である。
四、ところで、被告は原告の昭和四一年度の運賃収入については、原告が補償金算
定の資料として長崎県長崎港開発総局に提出していたものに基いて所得調査を行つ
たと主張するが、原告らは前記第二項に認定のとおり、昭和四一年度は七月頃には
すでに旅客定期航路事業を辞めているのであるから、年度全般を通じて事業を継続
したことを前提とする右資料に基いて昭和四一年度分の運賃収入を算定することは
できない。原告本人尋問の結果によつて真正に成立したと認められる甲第六号証に
よれば、原告の「第一信丸」による昭和四一年一月から事業を継続した同年六月ま
での運賃収入から経費を控除した収益額の集計は二〇九、三九〇円であるとされて
居り、その記帳はずさんであり誤算も含まれているけれども、被告主張の三隻分一
年間の収益の三分の一の二分の一より高く、乙第七号証の五の「第一信丸」の、昭
和三九、四〇年の平均年間収益額の二分の一より高いところからみて、同金額をも
つて右期間の収益額と認むべきである。原告にこれをこえる営業上の収益があつた
ことを肯定せしむべき証拠はない。
五、以上の結果、原告の昭和四一年度の総所得金額は「第一信丸」による運賃収益
二〇九、三九〇円と、前顕乙第七号証の五によつて認められる「第一信丸」の航路
営業補償金七八七、二〇〇円の合計九九六、五九〇円であつて、右航路営業補償金
については事業所得の収入金と解するのが相当であるから、原告の本訴請求は同年
分の事業所得につき九九六、五九〇円をこえる金額を認定してなした部分の被告の
課税処分の取消を求める限度で理由があるので正当としてこれを認容し、その余を
失当として棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法九二条を適用
して、主文のとおり判決する。
(裁判官 蓑田速夫 塚田武司 大石一宣)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛