弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴申立て以後に生じた1審原告控訴人らの訴訟費用は,1審原告控
訴人らの負担とし,控訴申立て以後に生じた1審被告,1審原告P1及
び1審原告P2の訴訟費用は,1審被告の負担とし,控訴申立て以後に
生じた参加人P3の参加費用は,参加人P3の負担とし,控訴申立て以
後に生じた参加人P4の参加費用は,参加人P4の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
11審原告控訴人ら
(1)原判決主文第1ないし第4項を次のとおり変更する。
ア1審被告は,参加人P3に対し,76万2370円及びこれに対する
平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せ
よ。
イ1審被告は,参加人P4に対し,22万4000円及びこれに対する
平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せ
よ。
ウ1審被告は,P5に対し,9万5040円及びこれに対する平成15
年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
エ1審被告は,P6に対し,7万7760円及びこれに対する平成15
年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(2)訴訟費用は,第1,第2審とも1審被告の負担とし,参加費用は,第1,
2審とも参加人らの負担とする。
21審被告
(1)原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。
(2)1審原告らの請求を棄却する。
(3)訴訟費用及び参加費用は,第1,第2審とも1審原告らの負担とする。
第2事案の概要
1本件は,函館市の住民である1審原告らが,函館市議会の6会派(参加人
P3,参加人P4,P5,P6,P7及びP8)が平成13年度に1審被告
から支給された政務調査費について使途基準に違反する違法な支出を行って
おり,上記各会派は函館市に対して上記支出に係る政務調査費相当額を不当
利得として返還すべきであるにもかかわらず,函館市長は上記各会派に対す
る返還請求を違法に怠っているとして,地方自治法(以下「法」という。)
242条の2第1項4号に基づき,函館市長である1審被告に対し,上記各
会派に対して当該支出額に相当する金員及びこれに対する不当利得返還請求
権発生の後であり,訴状送達の日の翌日である平成15年3月1日から支払
済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求することを求めた
事案である。
(1)原審は,1審原告らの請求のうち,別紙の番号7ないし9,14,17
及び18の各支出に係る請求を認容した(函館地方裁判所平成15年(行
ウ)第2号)。1審原告控訴人ら及び1審被告は,それぞれ控訴した。
(2)控訴審は,1審原告らの請求のうち,別紙の番号1ないし14の各支出
に係る請求(参加人P3,参加人P4,P5及びP6の行った支出に関す
る部分)を認容し,別紙の番号15ないし18の各支出に係る請求(P7
及びP8の行った支出に関する部分)を棄却した(当庁平成▲年(行コ)第
▲号)。1審被告は,上告受理の申立てをしたが,1審原告控訴人らは,
上告又は上告受理の申立てをしなかったので,その敗訴部分(別紙の番号
15ないし18の支出に係る請求)が確定した。
(3)最高裁判所は,上告人敗訴部分(別紙の番号1ないし14の各支出に係
る請求(参加人P3,同P4,P5及びP6の行った支出に関する部分))
を破棄し,これを,札幌高等裁判所に差し戻した(最高裁判所平成▲年(行
ヒ)第▲号。(以下「本件上告審判決」という。))。
(4)本件は,上記差戻し後の控訴審の事件であり,当審における審理の対象
は,別紙の番号1ないし14の各支出に係る請求(参加人P3,同P4,
P5及びP6の行った支出に関する部分)である。
2争いのない事実等は,次のとおり改めるほか,原判決の「事実及び理由」
欄の「第2事案の概要」の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁7行目から9行目にかけての「参加人P3,同P4,P5,
P6,P7及びP8(以下「本件各会派」という。)」を「参加人P3,同
P4,P5及びP6(以下「本件各会派」という。),P7並びにP8」と
改める。
(2)原判決4頁11行目の「参加人P9」を「亡P9(以下「亡P9議員」
という。)と改め,以後,「参加人P9」とあるのを,すべて「亡P9議
員」と読み替える。
(3)原判決4頁15行目の「13項」を「14項」と改める。
(4)原判決4頁23行目の「13項及び14項」を「14項及び15項」と
改める。
(5)原判決7頁14行目の「一覧表の番号1ないし18」を「一覧表の番号
1ないし14」と改める。
3争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり訂正,削除するほか,
原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の3に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(1)原判決9頁7行目冒頭から10頁18行目末尾までを次のとおり改め
る。
「ア会派が調査研究を行っていない点について
(ア)本件上告審判決は,「具体的な調査研究活動ごとに,その活動内
容及びこれに必要な政務調査費からの支出を求める金額を会派に申請
し,会派の代表者及び経理責任者からその活動内容及び金額の承認を
得た上で,経理責任者からその金員の交付を受けた」ことが認められ
れば,本件各会派の代表者がした承認は,会派の名において,各所属
議員の発案,申請に係る調査研究活動を会派のためのものとして当該
議員にゆだね,又は会派のための活動として承認する趣旨のものと認
める余地があり,そのように認められる場合には,本件使途基準にい
う「会派が行う」との要件は満たされることになるし,そのような事
実が本件各支出について存在するかどうか,存在するとしてその場合
の本件各会派の代表者の承認を上記趣旨のものと認めることができる
かどうかなどの点について審理することを命じ,本件を当審に差し戻
した。
(イ)本件上告審判決の判示したところの承認要件が満たされているか
否かについての1審原告らの主張は以下のとおりである。
調査研究を会派が行ったと言えるためには,各政務調査費の支出に
関し,会派の代表者及び経理責任者の事前又は事後の承認が必要であ
り,そのためには,①どこへ行って(調査先),②何を調査するのか
(調査内容),③函館市政とどのようなつながりがあるか(市政との
関連性),④なぜ,それを今する必要があるのか(調査の必要性)の
4点を事前あるいは事後に会派代表者及び経理責任者に報告すること
が必要である。以下,各支出につき,論ずる。
a番号3の支出
「政務調査費支出伝票」(甲5の2の1)は,福井県小浜市,石
川県輪島市及び金沢市の調査が終了した後の平成13年4月20日
付けで作成されており,事前には会派代表者及び経理責任者の承認
を得たという証拠は存在しない。事後報告は,同月25日付けで提
出されているが,報告の宛先が記載されておらず,また,この報告
には,上記要件③④が含まれておらず,会派代表者が事後に承認を
与えたと認めることはできない。
なお,旅費の支出がされた平成13年4月20には報告書はまだ
提出されていないから,支出をもって会派代表者及び経理責任者が
承認を与えたと判断することもできない。
よって,番号3の支出は,事前あるいは事後に会派代表者の承認
を得た出張に関するものではなく,本件使途基準に反する違法な支
出である。
b番号4の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲5の2の3)には,用務地として東京都,旅行の目的として「東
京都の防災計画についての調査」と記載されているが,上記要件③
④が記載されいない。報告書が平成13年6月5日付けで提出され
ているものの,それにも同③④は記載されていない。同③④を事前
あるいは事後に,口頭で補充して承認を得たとの証拠はないから,
この支出は,「会派性」の要件を満たさない違法な支出である。
なお,旅費の支出がされた同年5月28日には報告書はまだ提出
されていないから,支出をもって会派代表者及び経理責任者が承認
を与えた判断することはできない。
c番号5の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲5の2の7)には,用務地として金沢市,旅行の目的として「高
次都市機能調査「P10」」と記載されているが,上記要件③④が
記載されいない。同③④を口頭で補充して事前に承認を得たとの証
拠はないし,報告書は平成13年11月5日付けで提出されている
ものの,事後に代表者がそれに承認を与えたという証拠もないから,
この支出は,「会派性」の要件を満たさない違法な支出である。
d番号6の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲5の2の8)には,用務地として「鹿児島市,山口市,富士宮
市」,旅行の目的として「環境行政・高等教育問題・国際交流事情
調査」と記載されているが,上記要件③④が記載されいない。同③
④を口頭で補充して事前に承認を得たとの証拠はないし,報告書は
平成13年12月5日付けで提出されているものの,事後に代表者
がそれに承認を与えたという証拠もないから,この支出は,「会派
性」の要件を満たさない違法な支出である。
e番号7の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲6の2の1)の旅行目的の欄は空白であり,用務地も「東京都
目黒区,渋谷区,中央区」と記載されているだけで,「政務調査費
支出伝票」には具体的な調査研究の内容が記載されていない。
P11議員は,原審における証人尋問においても,東京都目黒区
P12について「会派の指示ではなく,自分の判断で実施した(同
証人尋問調書1頁)」,「会派に対する報告は甲6の2の1のみで
ある(同調書3頁)」と証言し,また,P13研究所,P14開発
「P15」についても,「会派の指示による調査ではなかった(同
調書6頁)」と証言し,具体的な調査研究の内容を事前に会派代表
者に申請し,承認を得たとは述べていない。P11議員は,平成1
3年5月30日に報告書を会派代表者に提出しているが(甲6の2
の1),それを会派代表者が承認したとの証拠は存在しない。
よって,番号7の支出は,事前及び事後に具体的な調査研究の内
容について会派代表者の承認を得ない出張に関するものであり,「会
派性」の要件を満たさない違法な支出である。
f番号8の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲6の2の3)には,旅行の目的として「P16とイベント開催
時の運営管理について」と記載されているが,P11議員によれば,
「P16ではイベントはやっていなかった(イベントをやっている
か否かの事前調査はしていない)(同人の原審における証人尋問調
書13頁)」ということであるから,「政務調査費支出伝票」に記
載された目的と実態に重大な食い違いがある。イベントを開催して
いないP16を見学者の一人として見て歩くことについて事前に会
派代表者が承認を与えることはあり得ないし,P11議員が報告書
を提出したのは調査から3か月以上経過した翌年の平成14年1月
30日であるから,事後に承認を得たという証拠も存在しない。
よって,この支出は,「会派性」の要件を満たさない違法な支出
である。
また,P17展の見学は「政務調査費支出伝票」の旅行の目的に
その旨が記載されておらず,事後に承認を得たという証拠も存在し
ないから,これは,事前・事後に会派代表者の承認を得ないで行わ
れた調査であり,「会派性」の要件を満たさない違法な支出である。
g番号9及び10の支出
調査研究前に会派代表者宛てに提出された「政務調査費支出伝票」
(甲6の2の4)には,旅行の目的として「「P18」展の視察」
と記載されているが,上記要件③④が記載されいない。同③④を事
前あるいは事後に,口頭で補充して事前に承認を得たとの証拠はな
いから,この支出は,「会派性」の要件を満たさない違法な支出で
ある。
h番号12の支出
1審被告は,「P5の代表者であるP19議員は,平成13年4
月上旬の同クラブ会派会議の席上,同月13日開催されるP20協
会P21支部主催の食の祭典の内容及びこれが函館市政と関連する
ことを説明し,同議員が同クラブの政務調査費から会費1万円を支
出して,その食の祭典に出席する旨説明し,承認を得た。」と主張
するが,それを裏付ける会議録の類は提出されていない。
また,かかる調査の実態は,要するにP19議員が,「食の祭典」
に参加して飲食(討論)したというだけのことであり,実態のとお
りのことを事前に会派代表者に報告し,会派代表者が承認を与える
ことはあり得ない。
i番号13の支出
1審被告は,「平成13年4月初旬ころ,P5に所属していた亡
P9は,函館市議会の同クラブ控室において同クラブの代表者たる
会長であるP19議員のほか数名の同クラブ所属議員のいる中で,
会長であるP19議員に対し,同年のゴールデンウイーク中に2泊
3日で東京に出張し,α商店街を視察し商店街活性化の調査をし,
またP22を視察しP23に係留して公開されているP24活用に
ついて調査をするため,同クラブの政務調査費からその費用を支出
してもらいたい旨要請した。」と主張するが,会議録の類は提出さ
れていない。
また,調査報告書も感想文の域を出るものではなく,どのような
船を見たのか,どういう点で函館のP24と異なった特徴があるの
か,函館市政とどう関連するのかについての具体的記述が全くない。
かような実態とおりのことを事前に会派代表者に報告し,会派代表
者が承認を与えることはあり得ない。
j番号14の支出
1審被告は,「平成13年9月中旬ころ,P6に所属していた亡
P9議員は,P6の代表者会長であるP25議員及び経理責任者と
してP6の政務調査費の管理をするP26議員その他所属議員全員
が出席する会派会議において,同月下旬に2泊3日で釧路市及び旭
川市に出張し,釧路で漁業の調査及びウオーターフロント施設「P
27」の視察をし,旭川で地場産業である木工展示場及びP28等
の視察をするため,P6の政務調査費からその費用を支出してもら
いたい旨要請し,その承認を得た。」と主張するが,会議録の類は
提出されていない。
また,調査の実態は極めてずさんであり,かような実態とおりの
ことを事前に会派代表者に報告し,会派代表者が承認を与えること
はあり得ない。」
(2)原判決19頁20行目冒頭から20頁10行目末尾までを削除する。
(3)原判決21頁23行目冒頭から,22頁12行目末尾までを次のとおり
改める。
「イ本件条例及び本件規則は,法100条12項及び13項と同じく平
成13年4月1日施行されたところ,参加人P3,参加人P4,P5
は,その施行のころ,また,P6は,これが設立された同年5月28
日ころ,いずれも会派として,所属議員によって政務調査費に関して
協議を行い,いずれも1審被告から交付される政務調査費は経理責任
者がこれを管理し,所属議員が政務調査費からの支出を求めるときに
は,その調査研究活動の内容とこれに必要な政務調査費から支出を求
める金額を会派に申請し,代表者及び経理責任者からその活動内容と
金額の承認を得たうえで,経理責任者からその金員の交付を受けるこ
とが決定され,これを会派の申し合わせとして以後そのとおりの運用
がなされてきた。これによれば,それら会派として承認をなす権限は,
その協議による決定によって,会派代表者及び経理責任者にこれが授
与されたものである。
本件上告審判決は,「本件使途基準にいう「会派が行う」調査研究
活動には,会派がその名において自ら行うもののほか,会派の所属議
員等にこれをゆだね,又は所属議員による調査研究活動を会派のため
のものとして承認する方法によって行うものも含まれると解すべきで
ある。そして,一般に,会派は,議会の内部において議員により組織
される団体であり,その内部的な意思決定手続等に関する特別の取決
めがされていない限り,会派の代表者が会派の名においてした行為は,
会派自らがした行為と評価されるものである。
そうすると,本件各支出について,1審被告の主張する,各会派の
所属議員が,具体的な調査研究活動ごとに,その活動内容及びこれに
必要な政務調査費からの支出を求める金額を会派に申請し,会派の代
表者及び経理責任者からその活動内容及び金額の承認を得た上で,経
理責任者からその金員の交付を受けたという事実が認められれば,本
件各会派の代表者がした承認は,会派の名において,各所属議員の発
案,申請に係る調査研究活動を会派のためのものとして当該議員にゆ
だね,又は会派のための活動として承認する趣旨のものと認める余地
があり,そのように認められる場合には,本件使途基準にいう「会派
が行う」との要件は満たされることになる。」旨判示した。
そして,本件各支出は,前記各会派の申し合わせどおりの運用によ
りされたものであるところ,これによれば,本件各支出にかかる調査
研究活動は,本件上告審判決にいう「会派ためのものとして当該議員
にゆだね,又は会派のための活動として承認したもの」として「会派
が行う」との要件を満たすものというべきである。」
(4)原判決22頁15行目の「15ないし18」及び原判決25頁17行目
冒頭から26頁5行目末尾までを削除する。
(5)原判決30頁21行目冒頭から31頁13行目末尾までを削除する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,番号7ないし9及び14の各支出は,市政に関する調査研究
に資するために必要な経費に充てられたものとは認められないが,その余の
支出は,違法ではないと判断する。その理由は,次のとおり訂正,削除する
ほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1,2(原
判決31頁15行目から66頁7行目まで)のとおりであるから,これを引用
する。
原判決34頁6行目冒頭から同頁16行目までを,次のとおり改める。
「以上によれば,本件使途基準にいう「会派が行う」調査研究活動には,
会派がその名において自ら行うもののほか,会派の所属議員等にこれを
ゆだね,又は所属議員による調査研究活動を会派のためのものとして承
認する方法によって行うものも含まれると解すべきである。そして,一
般に,会派は,議会の内部において議員により組織される団体であり,
その内部的な意思決定手続等に関する特別の取決めがされていない限り,
会派の代表者が会派の名においてした行為は,会派自らがした行為と評
価されるものである。
そして,証拠(乙14,乙C5,丙A37,丙B40,証人P11(差
戻前2審))及び弁論の全趣旨によれば,本件各会派における政務調査費
の支出に関しては,会派の内部的な意思決定手続等に関して特別な取決
めはされておらず,当該議員が,当該会派の代表者及び経理責任者に政
務調査費用支出の承認を受けて,経理責任者から,支払を受けるという
運用がされていたことが認められる。この点,証人P11の証言及びP
29の陳述書(丙B40号証)中には,参加人P4においては,政務調
査の行き先,調査内容,日程等につき,毎週行われる議員団会議で協議
し,承認するという手続を経ていたとの部分があるが,同証人の他の証
言部分に照らし,採用できない。
なお,1審原告控訴人らは,会派代表者及び経理責任者が承認を下す
には,①調査先及び②調査内容のほかに,③函館市政とどのようなつな
がりがあるか(市政との関連性),④なぜ,それを今する必要があるの
か(調査の必要性)ということについても,事前あるいは事後に会派代
表者及び経理責任者に報告することが必要であると主張するが,③,④
の要件が,「会派が行う」といえるための必須の条件であるとは考えら
れないので,上記主張は採用できない。
以下,本件各支出について,検討を加える。
ア番号1及び2の各支出について
証拠(甲5の1の3,丙A1,証人P30(原審))及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
P30議員は,平成14年2月8日に東京都で開催される本件研修
会に参加するため,旅行の目的欄に「公共入札の改革,その課題と展
望の研修セミナー参加」,用務地欄に「東京都」とそれぞれ記載され
た政務調査費支出伝票(旅費)を作成提出し,参加人P3代表者(P
30議員自身)及び経理責任者(P31)の押印を得て,同月1日,
本件研修会に参加するための旅費(交通費,宿泊費及び日当3日分)
として合計8万6040円を同会派から受領し,また,同月10日に
東京都で開催される本件シンポジウムに参加するため旅行の目的欄に
「難聴者聞こえと生活実態についてのシンポジウム参加」,用務地欄
に「東京都」とそれぞれ記載された政務調査費支出伝票(旅費)を作
成提出し,同会派の代表者(P30議員自身)及び経理責任者(P3
1)の押印を得て,同月1日,本件シンポジウムに参加するための旅
費(交通費,宿泊費及び日当2日分)として合計8万3040円を同
会派から受領した。
P30議員は,本件研修会に参加した後の同月12日及び本件シン
ポジウムに参加した後の同月18日,いずれも会派代表者宛てに報告
書を提出した。
イ番号3の支出について
証拠(甲5の2の1,丙A2,証人P32(原審))及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
P32議員は,平成13年4月14日から同月17日までの間に福
井県小浜市の魚市場,石川県輪島市の朝市及び金沢市のβ駅周辺を視
察した。
P32議員は,上記視察後の同月20日,旅行目的欄に「函館市と
類似する都市の街づくりと状況についての調査」,用務地に「小浜市,
輪島市,金沢市」とそれぞれ記載された政務調査費支出伝票(旅費)
を作成提出し,参加人P3代表者及び経理責任者の押印を得て,上記
視察に要した旅費(交通費,宿泊費及び日当)として合計14万71
90円を同会派から受領した。
P32議員は,上記視察の後の同月25日,会派代表者宛てに報告
書を提出した(なお,同報告書の宛先欄は空欄ではあるが,同報告書
の趣旨及び内容からみて,宛先は会派代表者であると認めるのが相当
である。)。
ウ番号4の支出について
証拠(甲5の2の3,丙A2,証人P32(原審))及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
P32議員は,平成13年5月30日及び31日に東京都の防災計
画についての調査を行うため,旅行の目的欄に「東京都の防災計画に
ついての調査」,用務地欄に「東京都」とそれぞれ記載された政務調
査費支出伝票(旅費)を作成提出し,参加人P3代表者(P33議員)
及び経理責任者の押印を得て,同月28日,上記調査を行うための旅
費(交通費,宿泊費及び日当)として合計6万7240円を同会派か
ら受領した。
P32議員は,上記調査を行った後の同年6月5日,会派代表者宛
てに報告書を提出した(なお,同報告書の宛先欄は空欄ではあるが,
同報告書の趣旨及び内容からみて,宛先は会派代表者であると認める
のが相当である。)。
エ番号5の支出について
証拠(甲5の2の7,丙A4,証人P33(原審))及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
P33議員は,平成13年10月14日から同月16日の間に金沢
市の高次都市機能についての調査を行うため,旅行の目的欄に「高次
都市機能調査「P10」」,用務地欄に「金沢市」とそれぞれ記載さ
れた政務調査費支出伝票(旅費)を作成提出し,参加人P3代表者(P
30議員)及び経理責任者(P31)の押印を得て,同月10日,上
記調査を行うための旅費(交通費,宿泊費及び日当)として合計11
万3980円を同会派から受領した。
P33議員は,上記調査を行った後の同年11月5日,会派代表者
宛てに報告書を提出した。
オ番号6の支出について
証拠(甲5の2の8,丙A3,4,証人P34(原審),証人P33(原
審))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
P34議員及びP33議員は,平成13年11月12日から同月1
6日の間に鹿児島市,山口市及び静岡県富士宮市において環境行政等
の調査を行うため,旅行の目的欄に「環境行政,高等教育問題,国際
交流事情調査」,用務地欄に「鹿児島市,山口市,富士宮市」とそれ
ぞれ記載された政務調査費支出伝票(旅費)を作成提出し,参加人P
3代表者(P30議員)及び経理責任者(P31)の押印を得て,同
月7日,上記調査を行うための旅費(交通費,宿泊費及び日当)とし
てそれぞれ合計19万4030円(二人の合計額38万8060円)
を同会派から受領した。
P34議員及びP33議員は,上記調査を行った後の同年12月5
日,会派代表者宛てに報告書を提出した。
カ番号7の支出について
証拠(甲6の2の1,丙B1の1,証人P11(原審))及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
P11議員は,平成13年5月21日から同月24日までの間に東
京都目黒区,渋谷区及び中央区の視察を行うため,旅行目的欄空欄,
用務地に「東京都目黒区,渋谷区,中央区」と記載された参加人P4
あての政務調査費支出伝票(旅費)(なお,代表者欄には「幹事長P
35」,経理責任者欄には「P29」と各記名がされている。)を作
成提出し,同月10日,上記視察を行うための旅費(交通費,宿泊費
及び日当)として合計10万2840円を同会派から受領した。
P11議員は,同月21日から同月24日までの間,東京都目黒区,
渋谷区及び中央区を視察した。そして,P11議員は,上記視察の後
の同月30日,同会派代表者であるP35宛てに報告書を提出した。
参加人P4の代表者であるP35からP11議員に対し,番号7の
支出に関し,問題の指摘等がされたことはない。
キ番号8の支出について
証拠(甲6の2の3,丙B1の1,証人P11(原審))及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
P11議員は,平成13年10月20日及び21日にP16の視察
を行うため,旅行目的欄に「P16とイベント開催時の運営管理につ
いて」,用務地に「札幌市」と記載された参加人P4あての政務調査
費支出伝票(旅費)(なお,代表者欄には「幹事長P35」,経理責
任者欄には「P29」と各記名がされている。)を作成提出し,同月
15日,上記視察に要する旅費(交通費,宿泊費及び日当)として合
計3万6480円を同会派から受領した。
P11議員は,同月20日及び21日,P16及びP17展を視察
した。そして,P11議員は,上記視察の後の平成14年1月30日,
同会派代表者であるP35宛てに報告書を提出した。
参加人P4の代表者であるP35からP11議員に対し,番号8の
支出に関し,問題の指摘等がされたことはない。
ク番号9及び10の各支出について
証拠(甲6の2の4,丙B1の1,証人P11(原審))及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
P11議員は,平成14年1月20日及び21日に札幌市で開催さ
れている「P18」展の視察を行うため,旅行目的欄に「「P18」
展の視察」,用務地に「札幌市」と記載された参加人P4あての政務
調査費支出伝票(旅費)(なお,代表者欄には「幹事長P35」,経
理責任者欄には「P29」と各記名がされている。)を作成提出し,
同月18日,上記視察に要する旅費(交通費,宿泊費及び日当)とし
て合計3万6480円を同会派から受領した。
P11議員は,同月20日及び21日,P18展の視察を行い,同
会場において,本件書籍を3500円で購入し,後日,本件書籍代金
3500円を同会派から受領した。
そして,P11議員は,上記視察の後の同月30日,同会派代表者
であるP35宛てに報告書を提出した。
参加人P4の代表者であるP35からP11議員に対し,番号9及
び10の支出に関し,問題の指摘等がされたことはない。
ケ番号11の支出について
証拠(甲6の3の4,丙B1の1,証人P11(原審))及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
P11議員は,平成14年3月3日,音楽を函館市の街作りにどの
ように活かしていくか等を検討する上で参考とするため,P36氏の
作曲に係る作品が収録されたCDや,同氏と関係の深い演奏家が演奏
した作品が収録されたCD等合計14点を購入し,その費用として合
計4万4700円を支出した。また,P11議員は,同日,支払先欄
に「P37財団」,摘要(品名)欄に「CD代」と記載された参加人
P4あての政務調査費支出伝票(一般)を作成提出し,代表者(P1
1議員自身)及び経理責任者(P29)の押印を得て,同日,上記C
D購入費合計4万4700円を「資料購入費」として同会派から受領
した。
コ番号12の支出について
証拠(甲7の1の1,乙C1の1,2,乙C3)及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
P19議員は,平成13年4月13日,函館市民の食生活及び食文
化について意見交換するため,食の祭典に出席し,その費用として1
万円を支出した。また,P19議員は,同日,支払先欄に「P20協
会P21支部」,摘要(品名)欄に「研修会会費」と記載されたP5
あての政務調査費支出伝票(一般)を作成提出し,代表者(P19議
員自身)及び経理責任者の押印を得て,同日,上記食の祭典出席費用
1万円を「研究研修費」として同会派から受領した。
サ番号13の支出について
証拠(甲7の2の1,丙C1,証人P9(原審))及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
亡P9議員は,平成13年4月30日から同年5月2日の間に商店
街の調査及び函館港に係留されている連絡船の運営方法に関する調査
を行うため,旅行の目的欄に「これからの市場と函館港に係留されて
いる連絡船について」,用務地欄に「東京都」とそれぞれ記載された
政務調査費支出伝票(旅費)を作成しP5に提出し,同会派代表者(P
19議員)及び経理責任者(P26)の押印を得て,同月24日,上
記調査を行うための旅費(交通費,宿泊費及び日当)として合計8万
5040円を同会派から受領した。
また,亡P9議員は,上記調査を行った後の同年6月4日,会派代
表者宛てに報告書を提出した(なお,同報告書の宛先欄は空欄ではあ
るが,同報告書の趣旨及び内容からみて,宛先は会派代表者であると
認めるのが相当である。)。
シ番号14の支出について
証拠(甲8の2の2,丙C4,証人P9(原審))及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
亡P9議員は,平成13年9月22日から同月24日までの間にγ
漁港や旭川市内を視察した。
亡P9議員は,上記視察後の同月27日,旅行目的欄に「γ漁港調
査,旭川観光調査」,用務地に「釧路市,旭川市」とそれぞれ記載さ
れた政務調査費支出伝票(旅費)を作成しP6に提出し,P6の代表
者及び経理責任者の押印を得て,上記視察に要した旅費(交通費,宿
泊費及び日当)として合計7万7760円を同会派から受領した。
また,亡P9議員は,上記視察の後の同月25日,会派代表者宛て
に報告書を提出している(なお,同報告書の宛先欄は当初函館市議会
議長と記載されていたものが二本線で抹消されているものであるとこ
ろ,同報告書の趣旨及び内容からみて,宛先が会派代表者であること
が認められる。)。
以上の各事実が認められる。
上記各認定事実によれば,番号1ないし14の各支出に関し,上記各
会派の議員らは,具体的な調査研究活動ごとに,その活動内容及びこれ
に必要な政務調査費からの支出を求める金額を会派に申請し,会派の代
表者及び経理責任者からその活動内容及び金額の承認を得た上で,経理
責任者からその金員の交付を受けたと認めるのが相当であり,かつ,本
件各会派の代表者がした承認は,会派の名において,各所属議員の発案,
申請に係る調査研究活動を会派のためのものとして当該議員にゆだね,
又は会派のための活動として承認する趣旨のものと認めることができる。
よって,上記各支出は,本件基準にいう「会派が行う」との要件を満
たすというべきである。」
2結論
以上のとおりであるから,参加人P4による番号7ないし9の各支出,P
6による番号14の支出は,いずれも本件使途基準に反し違法であるから,
参加人P4は,番号7ないし9の各支出に係る支出金額合計17万5800
円を,P6は,番号14の支出に係る支出金額7万7760円を,それぞれ
函館市に対し返還すべき義務を負う。
したがって,1審原告らの請求は,1審被告に対し,参加人P4に17万
5800円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の
割合による金員を,P6に7万7760円及び及びこれに対する平成15年
3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ請求するこ
とを求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がない。
よって,原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないから,これら
をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官井上哲男
裁判官中島栄
裁判官中川博文

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