弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理     由
 上告代理人鈴木康隆の上告理由について。
 非嫡出子認知の要件に関する準拠法につき、法例一八条一項は、子の認知の要件
はその父又は母に関しては認知の当時父又は母の属する国の法律によりこれを定め、
その子に関しては認知の当時子の属する国の法律によりこれを定めるものと規定し
ているから、非嫡出子の認知が有効に成立するためには、一方において父又は母の
本国法による認知の要件を具備するとともに、他方において子の本国法による認知
の要件を具備することが必要であるものと解される(最高裁昭和四三年(オ)第七
三四号同四四年一〇月二一日第三小法廷判決・民集二三巻一〇号一八三四頁参照)。
 原審の適法に確定した事実によると、上告人らはいずれも出生とともに日本国籍
を取得したものであるが、上告人らが大韓民国籍を有するD(昭和四五年八月二四
日死亡)の子であるとして、同人の死亡を知つた日から一年を経過したのちである
昭和四八年三月二日付で検察官を相手方として本件訴を提起したというのである。
そうすると、上告人らの関係では日本民法七八七条が適用され、父又は母の死亡の
日から三年内にかぎり認知の訴を提起することができるが、他方、Dの本国法であ
る大韓民国民法(一九五八年二月二三日法律第四七一号)八六四条によれば、父又
は母が死亡したときは、その死亡を知つた日から一年内に検事を相手方として認知
請求の訴を提起することができると定められている。してみると、本件認知の訴は、
子である上告人らの関係では出訴期間内に提起されたことになるけれども、父たる
べきDの関係で出訴期間を徒過しており、結局認知の要件を具備していないことが
明らかであつて、本件訴は不適法たるを免れない。
 また、大韓民国民法の右規定は、父又は母の死亡後における認知請求の訴を認め
たうえ、出訴期間をその死亡を知つた日から一年に限定したものであるからといつ
て、これを日本民法七八七条の規定と対比してみても、その適用の結果がわが国の
公序良俗に反するものとは認め難い。
 したがつて、右と同旨の原審判断は相当であつて、原判決に所論の違法はない。
論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    吉   田       豊
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    大   塚   喜 一 郎

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