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平成29年10月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第41326号債務不存在確認請求本訴事件
平成29年(ワ)第6491号特許権侵害差止等請求反訴事件
口頭弁論終結日平成29年7月19日
判決5
本訴原告兼反訴被告(以下「原告」という。)
三菱製紙株式会社
同訴訟代理人弁護士熊倉禎男
同富岡英次
同松野仁彦10
同補佐人弁理士山崎一夫
同服部博信
本訴被告兼反訴原告(以下「被告」という。)
株式会社北里バイオファルマ訴訟承継人
株式会社北里コーポレーション15
同訴訟代理人弁護士三木浩太郎
同訴訟代理人弁理士向山正一
同村山信義
主文
1原告の本訴請求に係る訴えをいずれも却下する。20
2被告の反訴請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,本訴及び反訴を通じ,全て被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1本訴請求25
⑴被告が,原告に対し,別紙原告製品目録記載1ないし5の各製品のうち別紙
原告製品説明書(原告)記載の構成を有する各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸出若
しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含
む。)について,特許第4373025号の特許権に基づく差止請求権を有してい
ないことを確認する。
⑵被告が,原告に対し,別紙原告製品目録記載1ないし5の各製品のうち別紙5
原告製品説明書(原告)記載の構成を有する各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸出若
しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含
む。)について,特許第4324181号の特許権に基づく差止請求権を有してい
ないことを確認する。
2反訴請求10
⑴原告は,別紙原告製品目録記載1ないし5の各製品を製造し,譲渡し,譲渡
の申出をしてはならない。
⑵原告は,別紙原告製品目録記載1ないし5の各製品及び各半製品(別紙原告
製品説明書(被告)記載の構成a,構成b-1,構成c及び構成dの構造を備えて
いるが,製品として完成するに至っていないもの)を廃棄せよ。15
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,原告が,発明の名称を「卵凍結保存用具および筒状部材保持器具」とす
る特許第4373025号の特許権(以下「本件特許権1」といい,その特許を
「本件特許1」という。また,本件特許1の願書に添付した明細書及び図面を併せ20
て「本件明細書1」という。)及び発明の名称を「卵凍結保存用具」とする特許第
4324181号の特許権(以下「本件特許権2」といい,その特許を「本件特許
2」という。また,本件特許2の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明
細書2」という。)をそれぞれ有する被告に対し,原告の別紙原告製品目録記載1
ないし5の各製品(以下,これらをまとめて「原告製品」という。)のうち,別紙25
原告製品説明書(原告)記載の構成を有する各製品の生産,譲渡,貸渡し,輸出若
しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含
む。)は,いずれも被告の本件特許権1及び同2(以下,これらを併せて「本件各
特許権」という。)の侵害を構成しないと主張して,被告が原告の上記各行為(以
下,これらをまとめて「譲渡・輸出入等」という。)について本件各特許権に基づ
く差止請求権を有していないことの確認を求める(本訴請求)のに対し,被告が,5
原告に対し,原告は,原告製品の製造,譲渡及び譲渡の申出をするおそれがあると
ころ,原告の上記各行為(以下,これらをまとめて「譲渡等」という。)は,いず
れも本件各特許権の侵害を構成すると主張して,特許法100条1項,2項に基づ
き,原告製品の譲渡等の差止めを求めるとともに,原告製品及びその半製品(別紙
原告製品説明書(被告)記載の構成a,構成b-1,構成c及び構成dの構造を備10
えているが,製品として完成するに至っていないもの)の廃棄を求める(反訴請求)
事案である。
2前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実)
⑴当事者15
ア原告は,紙類,パルプ類,写真感光材料,合成樹脂等の製造及び販売等を業
とする株式会社である。
イ承継前本訴被告兼反訴原告である株式会社北里バイオファルマは,医薬品,
医療用具,医薬部外品等の製造及び販売等を業とする株式会社であった。
被告は,医薬品,医療用具,医薬部外品等の製造及び販売等を業とする株式会社20
であり,平成29年2月13日,株式会社北里バイオファルマの権利義務を合併に
より承継した。
⑵本件各特許権
ア被告は,以下の事項により特定される本件特許権1を有している(以下,そ
の特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件発明1」という。)。25
特許番号特許第4373025号
発明の名称卵凍結保存用具および筒状部材保持器具
出願番号特願2001-120225
出願日平成13年4月18日
公開番号特開2002-315573
公開日平成14年10月29日5
登録日平成21年9月11日
特許請求の範囲別紙特許第4373025号公報(写し)の該当欄のとおり
イ被告は,以下の事項により特定される本件特許権2を有している(以下,そ
の特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件発明2-1」といい,請求項2記
載の発明を「本件発明2-2」という。また,両者を併せて「本件発明2」といい,10
これと本件発明1を一括して「本件各発明」という。)。
特許番号特許第4324181号
発明の名称卵凍結保存用具
出願番号特願2006-163921
出願日平成18年6月13日15
分割の表示特願2001-120225の分割
原出願日平成13年4月18日
公開番号特開2006-271395
公開日平成18年10月12日
登録日平成21年6月12日20
特許請求の範囲別紙特許第4324181号公報(写し)の該当欄のとおり
⑶本件発明1の構成要件の分説
本件発明1は,次のとおり構成要件に分説することができる(以下,分説に係る
各構成要件を符号に対応して「構成要件1A」などという。)。
1A液体窒素耐性材料により形成された本体部と,25
1B該本体部の一端に取り付けられ,可撓性かつ透明性かつ液体窒素耐性材料
により形成された卵付着保持用ストリップと,
1C該卵付着保持用ストリップを被包可能に前記本体部に着脱自在に取り付け
られる一端が封鎖され,かつ液体窒素耐性材料により形成された筒状部材と
1Dからなることを特徴とする卵凍結保存用具。
⑷本件発明2の構成要件の分説5
本件発明2は,それぞれ,次のとおり構成要件に分説することができる(以下,
分説に係る各構成要件を符号に対応して「構成要件2-1A」などという。)。
ア本件発明2-1
2-1A液体窒素耐性材料により形成された本体部と,(判決注:構成要件1
Aと同じ)10
2-1B液体窒素耐性材料により形成された卵付着保持用ストリップと,
2-1C該卵付着保持用ストリップを被包可能に前記本体部に着脱自在に取り
付けられる一端が封鎖され,かつ液体窒素耐性材料により形成された筒状部材とか
らなる卵凍結保存用具であって,
2-1D前記卵付着保持用ストリップは,可撓性かつ無色透明な平坦フィルム15
状となっており,
2-1E前記本体部は,前記卵付着保持用ストリップの一端を保持するととも
に,前記筒状部材の他端内に侵入し係合する円柱状部を備えている
2-1Fことを特徴とする卵凍結保存用具。
イ本件発明2-220
2-2A液体窒素耐性材料により形成された本体部と,(判決注:構成要件1
A,2-1Aと同じ)
2-2B液体窒素耐性材料により形成された卵付着保持用ストリップと,(判
決注:構成要件2-1Bと同じ)
2-2C該卵付着保持用ストリップを被包可能に前記本体部に着脱自在に取り25
付けられる一端が封鎖され,かつ液体窒素耐性材料により形成された筒状部材とか
らなる卵凍結保存用具であって,(判決注:構成要件2-1Cと同じ)
2-2D該卵凍結保存用具は,顕微鏡下において,該卵凍結保存用具の前記卵
付着保持用ストリップの先端部に卵子を少量のガラス化液とともに付着させ,卵子
が付着したストリップ部分を液体窒素に浸漬し凍結させるためのものであり,
2-2E前記卵付着保持用ストリップは,可撓性かつ無色透明な平坦フィルム5
状となっており,(判決注:構成要件2-1Dと同じ)
2-2F前記本体部は,前記卵付着保持用ストリップの一端を保持するととも
に,前記筒状部材の他端内に侵入し係合する円柱状部を備えている(判決注:構成
要件2-1Eと同じ)
2-2Gことを特徴とする卵凍結保存用具。(判決注:構成要件2-1Fと同10
じ)
⑸原告の行為
原告は,平成27年11月,日本受精着床学会総会・学術講演会において,原告
製品の概要を記載したパンフレット(甲5の1)を配布し,原告製品を販売のため
に展示した。15
被告は,平成28年2月15日付け通知書(甲10)により,原告に対し,原告
製品が本件特許1及び同2に係る発明の技術的範囲に含まれる可能性が高いとして,
同製品が発売された場合には,これを確認の上,法的手段をとる旨の警告をした。
原告は,これを踏まえ,原告製品の発売を一時的に見合わせたものの,被告に対
し,原告製品が本件特許1及び同2に係る発明の技術的範囲に含まれない旨主張し20
て,本訴を提起した。
⑹原告製品の構成
原告製品の構成は,上記⑸の展示に係るものを除いて,別紙原告製品説明書(原
告)記載のとおりである。
なお,上記⑸の展示に係る原告製品は平成27年11月頃に作成された試作品25
(以下「本件試作品」という。)であり,別紙原告製品説明書(原告)記載のもの
と比べて,角柱状部及び円柱状部を併せた長さが90mmである点,角柱状部の切
断面の一辺が2.5mmの正方形である点,カバーキャップの係合側と反対側の先
端封止部がスポンジ又はセルロース製不織布により封止されている点で異なってい
るものの,本件各発明と対比されるべき構成は実質的に同一である。(以上につき,
甲5の1・2,甲9,14,弁論の全趣旨)5
3争点
⑴原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
具体的には,原告製品が「卵付着保持用ストリップ」の「透明性」(構成要件1
B)及び「無色透明」(同2-1D,同2-2E)を充足するかが争われている。
⑵原告製品の譲渡等は本件各特許権の間接侵害を構成するか(争点2)10
⑶本件試作品について差止めの必要性があるか(争点3)
第3争点に対する当事者の主張
1争点1(原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について
【被告の主張】
⑴原告製品は,本件発明1の「卵付着保持用ストリップ」の「透明性」(構成15
要件1B)並びに本件発明2-1及び本件発明2-2の「無色透明」(同2-1D,
同2-2E)以外の本件各発明の構成要件を充足する(この点は原告も争っていな
い)ところ,原告製品のPET支持体は,それ自体に卵の付着保持が可能な細長い
小片(ストリップ)であるから,本件各発明の「卵付着保持用ストリップ」に対応
する構成である。そして,PET支持体は,無色透明な平坦フィルム状であるから,20
構成要件1Bの「透明性」並びに同2-1D及び同2-2Eの「無色透明」をいず
れも充足する。
他方で,原告製品の多孔性PTFEフィルムは,PET支持体の上面に付加され
たものにすぎないか,本件各発明を利用するものであるから,本件各発明の「卵付
着保持用ストリップ」に当たらない。25
なお,透明性及び可撓性を有する支持体上に卵・胚等を付着保持することは従来
からスタンダードな手法として行われおり,原告製品の操作者は,PTFEフィル
ムが取り付けられていないPET支持体の露出面にも,ガラス化液と共に卵・胚等
を付着保持することができると認識する。
⑵仮に,原告製品の多孔性PTFEフィルムとPET支持体とを一体のものと
捉え,これらが本件各発明の「卵付着保持用ストリップ」に該当すると解したとし5
ても,多孔性PTFEフィルムは,原告製品の使用時(ガラス化液滴下時)にガラ
ス化液を吸収して無色透明化するから,物の生産時点から特許権侵害が当然のこと
として予定されていたと評価することができる。
したがって,原告製品は,構成要件1Bの「透明性」並びに同2-1D及び同2
-2Eの「無色透明」をいずれも充足し,その譲渡等は,本件各特許権の侵害(直10
接侵害)を構成する。
⑶以上より,原告製品は,本件各発明の構成要件をいずれも充足し,本件各発
明の技術的範囲に属する。
【原告の主張】
⑴原告製品は,卵載置部がガラス化液吸収体である白色不透明の多孔性PTF15
Eフィルムによって形成されており,少なくとも,本件各発明の「卵付着保持用ス
トリップ」について,構成要件1Bの「透明性」並びに同2-1D及び同2-2E
の「無色透明」をいずれも充足しない。
⑵被告は,原告製品のPTFEフィルムは使用時に透明化するから,本件各発
明の構成要件を全て充足する旨主張するが,試験結果報告書(甲9)記載のとおり,20
PTFEフィルムはガラス化液吸収後に透明化するものではない。
仮に,使用後にPTFEフィルムが透明化するとしても,特許権者以外の第三者
が特許発明の実施行為の全部を行うことによって特許権侵害が成立するのが特許法
の原則であるから,原告製品の譲渡等が本件各特許権の侵害を構成することはない。
⑶以上より,原告製品は,本件各発明の技術的範囲に属さない。25
2争点2(原告製品の譲渡等は本件各特許権の間接侵害を構成するか)につい

【被告の主張】
仮に,原告製品が本件発明1の構成要件1Bの「透明性」並びに本件発明2-1
の構成要件2-1D及び本件発明2-2の構成要件2-2Eの「無色透明」を充足
しないとしても,購入者がその通常の用法(クライオトップ法)に従って使用する5
ことにより,多孔性PTFEフィルムがガラス化液を吸収し,常に無色透明化して
本件各発明の構成要件を充足する物になるから,そのような場合の使用行為は物の
「生産」に当たると解すべきであり,原告製品の譲渡等は本件各特許権の間接侵害
(特許法101条1号,2号)を構成する。
【原告の主張】10
否認ないし争う。
3争点3(本件試作品について差止めの必要性があるか)について
【被告の主張】
原告は,本件訴訟(本訴請求)提起に至るまでの被告とのやりとりにおいて,原
告製品の製造販売を継続する意思を強く示しており,原告による本件各特許権の侵15
害行為の停止又は予防のためには,本件試作品を含む原告製品の製造,譲渡,譲渡
の申出を差し止める必要がある。
【原告の主張】
原告は,別紙原告製品説明書(原告)記載のものと前記前提事実⑹の点で異なる
本件試作品については,製造及び販売を意図しておらず,差止めの必要性を欠く。20
第4当裁判所の判断
1争点1(原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について
⑴原告製品の構成について
ア前記前提事実⑹及び弁論の全趣旨に照らすと,本件各発明の構成要件と対比
すべき原告製品の構成は,次のとおり分説することができる(以下,各構成を符号25
に対応して,「構成1a」などという。)。
(ア)本件発明1と対比すべき構成
1a液体窒素耐性材料であるプラスチックによって形成された円柱状部及び角
柱状部と,
1b上記円柱状部の一端に取り付けられた先端シート部を構成する,液体窒素
耐性材料であるポリエステルによって形成された透明性及び可撓性を有する細長い5
PET支持体と,PET支持体上に取り付けられ,液体窒素耐性材料であるポリテ
トラフルオロエチレンによって形成され,卵載置部において白色不透明のガラス化
液吸収体である多孔性PTFEフィルムと,
1c上記PET支持体及びPTFEフィルムを被包可能に上記円柱状部に着脱
自在に取り付けられる,一端が封鎖され,かつ,液体窒素耐性材料によって形成さ10
れたカバーキャップと,
1dからなることを特徴とする卵凍結保存用具。
(イ)本件発明2-1と対比すべき構成
2-1a上記(ア)の1aと同じ。
2-1b液体窒素耐性材料であるポリエステルによって形成された細長い形状15
のPET支持体と,PET支持体上に取り付けられた,液体窒素耐性材料であるポ
リテトラフルオロエチレンによって形成されたガラス化液吸収体である多孔性PT
FEフィルムと,
2-1c上記PET支持体及びPTFEフィルムを被包可能に上記円柱状部に
着脱自在に取り付けられる,一端が封鎖され,かつ,液体窒素耐性材料によって形20
成されたカバーキャップとからなる卵凍結保存用具であって,
2-1d上記PET支持体は透明性及び可撓性を有し,また,上記PTFEフ
ィルムは,卵載置部において白色不透明であって,いずれも平坦なフィルム状であ
り,
2-1e上記円柱状部は,PET支持体の一端を保持するとともに,上記カバ25
ーキャップの他端内に侵入し係合するものである
2-1fことを特徴とする卵凍結保存用具。
(ウ)本件発明2-2と対比すべき構成
2-2aから2-2cまで上記(イ)の2-1aから2-1cまでと同じ。
2-2d当該卵凍結保存用具は,顕微鏡下において,上記PET支持体の先端部
に取り付けられたPTFEフィルムに設けられた卵載置部に,卵子を少量のガラス5
化液とともに付着させ,卵子が付着したPTFEフィルム部分を液体窒素に浸漬さ
せるためのものであり,
2-2eから2-2gまで上記(イ)の2-1dから2-1fまでと同じ。
イ上記アの分説に係る原告製品の構成に照らすと,原告製品の円柱状部及び角
柱状部は本件各発明の「本体部」に対応し,原告製品のカバーキャップは本件各発10
明の「筒状部材」に対応すると認められる。
そして,「卵付着保持用ストリップ」については,一般に「ストリップ」が「細
長い片」等(広辞苑第六版)の字義を有することからすると,卵を付着保持する際
に用いられる細長い片であると理解できるところ,原告製品の製品案内(甲5の
1・2)に記載されているように,卵を付着保持する際に用いられるのは,PET15
支持体上に取り付けられたガラス化液吸収体であるPTFEフィルムであると認め
られるから,PET支持体とPTFEフィルムが一体となった構成として特定する
のが相当である。
ウこれに対し,被告は,PET支持体はそれ自体卵の付着保持が可能な細長い
小片であるのに対し,PTFEフィルムは,PET支持体の上面に付加されている20
にすぎないか,本件各発明を利用するものであるから,「卵付着保持用ストリップ」
に当たらない旨主張し,また,操作者は,PTFEフィルムが取り付けられていな
いPET支持体の露出面にも卵を付着保持できると認識するなどと主張する。
しかしながら,本件特許1及び同2の各特許請求の範囲において,「卵付着保持
用ストリップ」とストリップの用途が特定されていることからすると,これに対応25
する原告製品の構成を特定するに当たっても,卵を付着保持することが物理的に可
能であるというだけでなく,その構造,作用効果等に照らして,実際に卵を付着保
持する際に使用することが予定されている構成として特定する必要があるというべ
きであり,以下のとおり,原告製品について,卵を付着保持する際に使用すること
が予定されているのは,PET支持体の上面に取り付けられたPTFEフィルムで
あるから,PTFEフィルムを含めた形で原告製品の構成を特定するのが相当であ5
る。
すなわち,原告製品は,円柱状部の一端に取り付けられたPET支持体の上面に,
ガラス化液吸収体である多孔性PTFEフィルムが取り付けられた構成を有してい
るところ(構成1-1b,同2-1b,同2-2b。なお,原告の試験[甲17の
1・2]においても,滴下された胚の周囲のガラス化液がPTFEフィルムに吸収10
される効果が確認されている。),別紙原告製品説明書(原告)添付の図3-1か
ら同3-4までのとおり,PTFEフィルムは,円柱状部と反対側の端部から順に,
黒色最先端部,卵載置部(白色),黒色線,後端接着部(白色)に分けられており,
黒色最先端部及び後端接着部において,接着層を介してPET支持体と接着されて
いるのに対し,卵載置部においては,PET支持体と接着されていない構成を有し15
ていることが認められる。
ところで,原告製品と同様に,「支持体上に,接着層とガラス化液吸収層を少な
くともこの順に有するガラス化液吸収体を有し,該ガラス化液吸収層の細胞又は組
織を載置する部分と支持体の間に,接着層が存在しない部分を有することを特徴と
する細胞又は組織のガラス化凍結保存用治具」に関する発明(特許第61248420
5号の特許請求の範囲の請求項1記載の発明。以下「原告発明」という。)につき
原告が保有する特許に係る明細書(甲15参照)には,本件特許1及び同2の公開
公報を先行技術文献として挙げた上,その方法では,作業者の操作によって,極少
量のガラス化液と共に,卵子又は胚をフィルム上に載置する操作の難度が高いとい
う問題があり,また,ガラス化液を多く滴下した場合,余分なガラス化液が卵子又25
は胚の周囲に残り,ガラス化液自体の毒性のために卵子又は胚の生存性を低下させ
るおそれがあるため,余分なガラス化液を吸引してフィルム上から除去するといっ
た煩雑な操作を要することがあるという課題の認識の下(段落【0021】),ガ
ラス化液吸収体が細胞又は組織の外周に付着した余分なガラス化液を吸収すること
から,余分なガラス化液を除去するための操作(例えば,ガラス化液吸収体下部か
らの吸引除去操作や,マイクロピペット等を用いた細胞又は組織周囲からの直接的5
な吸引除去操作)を特に必要とせず,容易にかつ確実に操作を行うことができると
いう作用効果を奏する構成として,上記の構成が採用されたこと(段落【002
4】,【0025】⑴,【0026】前段),ガラス化液吸収層の細胞又は組織を
載置する部分と支持体との間に接着層が存在しない部分を設ける構成についても,
ガラス化液吸収層を支持体上に接着層を介して設けたガラス化凍結保存用治具にお10
いては,ガラス化液吸収層の空隙中に接着層の一部が入り込み,ガラス化液の吸収
性能が低下する問題があったことから採用されたこと(段落【0034】)が,そ
れぞれ記載されている。
そうすると,原告製品のPET支持体上にガラス化液吸収体であるPTFEフィ
ルムを有し,その間に接着層が存在しない部分を有する構成についても,原告発明15
と同様に,ガラス化液吸収体が細胞又は組織の外周に付着した余分なガラス化液を
吸収することから,余分なガラス化液を除去するための操作を特に必要とせず,容
易にかつ確実に操作を行うことができるという技術的意義を有するものとして採用
された構成であると推認するのが相当であり,上記推認を覆すに足りる証拠はない。
上記の原告製品の構造,作用効果等に照らすと,原告製品について,卵を付着保20
持する際に使用することが予定されているのは,PET支持体の上面に取り付けら
れたガラス化液吸収体であるPTFEフィルムであって,これをPET支持体上に
付加されているにすぎないものであるとか,本件各発明を利用するにとどまるもの
であるということはできず,また,PTFEフィルムが取り付けられていないPE
T支持体上に卵を直接載置することは予定されていないといえる。25
したがって,上記アのとおり,PTFEフィルムを含めた形で原告製品の構成を
特定するのが相当である。
⑵「透明性」(構成要件1B)及び「無色透明」(同2-1D,同2-2E)
の充足性について
ア本件各発明の「卵付着保持用ストリップ」は,「透明性」(構成要件1B)
を有し,又は「無色透明」(同2-1D,同2-2E)なものとされているところ,5
原告製品については,構成1b,同2-1d,同2-2eのとおり,「卵付着保持
用ストリップ」に対応するPET支持体とPTFEフィルムとが一体となった構成
は,卵載置部においてPTFEフィルムが白色不透明であるから,上記の「透明性」
及び「無色透明」をいずれも充足しない。
イこれに対し,被告は,原告製品のPTFEフィルムは,購入者がその通常の10
用法に従って使用することにより,ガラス化液を吸収して常に無色透明化し,本件
各発明の構成要件を充足する物となるから,物の生産時点から特許権侵害が当然の
こととして予定されていたものとして,「透明性」(構成要件1B)を有し,又は
「無色透明」(同2-1D,同2-2E)をいずれも充足し,原告製品の譲渡等は,
本件各特許権の直接侵害を構成する旨主張する。15
(ア)そこで検討すると,確かに,原告製品は,顕微鏡下において,ガラス化液を
浸漬した細胞又は組織をガラス化液と共にガラス化液吸収体であるPTFEフィル
ム上に滴下し,同細胞又は同組織の周囲に付着しているガラス化液を同フィルムに
吸収させて使用するものであり,原告及び被告の各実施に係る試験(甲9,17の
1・2,乙17)によっても,ガラス化液吸収後については,同フィルムの透明度20
がある程度高まっていることがうかがわれる。
(イ)しかしながら,本件明細書1(甲2,乙2参照)及び同2(甲4,乙4参照)
の各段落【0010】における「ストリップ3は,卵付着作業を容易にするために,
可撓性かつ無色透明な平坦フィルム状のものが用いられている。」との記載に示さ
れるように,本件各発明の「卵付着保持用ストリップ」が「透明」又は「無色透明」25
である構成は,卵付着作業,すなわち,顕微鏡下において,ガラス化液を浸漬した
細胞又は組織をガラス化液と共に「卵付着保持用ストリップ」上に滴下して付着さ
せる作業を容易にするためのものであるから,少なくとも,その使用者において,
同作業を行う際には,「卵付着保持用ストリップ」が「透明」又は「無色透明」な
状態であることが求められているものと解される。
これを原告製品について見ると,PET支持体と一体となったPTFEフィルム5
は,少なくとも,原告製品の使用者において,細胞又は組織をガラス化液と共に滴
下して付着させるまでは,卵載置部において白色不透明であると認められるから,
その時点では,同フィルムが「透明」又は「無色透明」であることによって,卵付
着作業を容易にするものではない。
また,卵凍結保存用具である原告製品の性質上,ガラス化液と共に細胞又は組織10
が付着し,透明性が高まったPTFEフィルムを用いて,再度,卵付着作業を行う
ことは予定されていないといえる。
(ウ)かえって,原告製品と同様に,「支持体上に接着層とガラス化液吸収層をこ
の順に有するガラス化液吸収体を少なくとも有する卵子又は胚のガラス化凍結保存
用治具」を含む発明(特許第6013969号の特許請求の範囲の請求項1記載の15
発明)につき原告が保有する特許に係る明細書(甲6参照)には,「ガラス化液吸
収層として用いる紙の白色度は60%以上が好ましく,更には70%以上が好適で
ある。白色度がこのような範囲であると,付着した卵子又は胚の確認が容易である
ため好ましい。(中略)再生紙用パルプ繊維であっても雑分をしっかりと除き,白
色度70%以上にすれば好適に使用できる。本発明においては,以上に挙げた各種20
パルプ繊維を混合して白色度70%以上なら好適に使用することができる。」(段
落【0032】)などと記載されていることにも鑑みると,別紙原告製品説明書
(原告)記載2⑴オのとおり,原告製品についても,卵載置部を無色透明なものに
するのではなく,あえて白色度を高めた多孔構造を有するものとすることによって,
顕微鏡下において付着した卵子又は胚の確認を容易にしようとするものであると推25
認するのが相当であり,上記推認を覆すに足りる証拠はない。
(エ)以上のとおり,原告製品は,PTFEフィルムが「透明」又は「無色透明」
であることによって卵付着作業を容易にするものということはできず,原告製品の
生産時点から本件各特許権を侵害することが当然のこととして予定されていたとい
うこともできない。
したがって,原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するとはいえない。5
2争点2(原告製品の譲渡等は本件各特許権の間接侵害を構成するか)につい

被告は,原告製品は,購入者がその通常の用法に従って使用することにより,常
に多孔性PTFEフィルムが無色透明化して本件各発明の構成要件を充足する物に
なるから,そのような場合の使用行為は物の「生産」に当たるなどとして,原告製10
品の譲渡等は本件各特許権の間接侵害(特許法101条1号,2号)を構成すると
主張する。
しかしながら,特許法101条1号及び同条2号における「その物の生産」は,
発明の構成要件を全て充足する物を新たに作り出す行為をいうと解されるから,購
入者による通常の用法に従った使用行為について,直ちに「生産」に当たるという15
ことはできない。
原告製品についても,少なくとも,使用者において,細胞又は組織をガラス化液
と共に滴下して付着させるまではPTFEフィルムの卵載置部が白色不透明であり,
顕微鏡下において付着した卵子又は胚の確認を容易にするために,あえてこのよう
な構成が採用されていると推認されることは上記のとおりであり,ガラス化液を吸20
収して透明性が高まるものとはいえ,一度卵付着作業に使用したPTFEフィルム
を再利用することは予定されていないものであるから,卵付着作業を容易にするた
めに「透明」又は「無色透明」な「卵付着保持用ストリップ」を採用した本件各発
明とは技術思想が異なるものといえる。
したがって,原告製品をその通常の用法に従って使用することによって,卵付着25
作業を容易にする「透明」又は「無色透明」な「卵付着保持用ストリップ」が新た
に作り出されるということはなく,本件各発明の構成要件を全て充足する物が「生
産」されるとはいえない。
よって,原告製品の譲渡等は特許法101条1号及び同条2号の間接侵害を構成
するものとはいえない。
3反訴請求についての小括5
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,被告の反訴請求はい
ずれも理由がない(なお,被告は,本件各特許権の直接侵害又は間接侵害の成立に
係る攻撃防御方法として,本件各発明以外の各発明に係る具体的な主張立証をして
いないし,前記前提事実⑵によれば,原告が指摘するとおり,本件特許1の特許請
求の範囲の請求項2ないし8は,同1を直接又は間接に引用するものであり,本件10
特許2の特許請求の範囲の請求項3ないし5は,同1又は同2を直接又は間接に引
用するものであるから,本件各発明以外の各発明との関係でも,上記1及び2と同
じ結論となることは明らかである。)。
4本訴請求に係る各訴えについて
原告は,本訴請求において,原告製品を別紙原告製品目録記載1ないし5の製品15
番号で特定の上,そのうち,別紙原告製品説明書(原告)の構成を有するものの譲
渡・輸出入等について,被告が本件各特許権の侵害を理由とする差止請求権を有さ
ないことの確認を求めている。
しかしながら,被告が,原告製品を別紙原告製品目録記載1ないし5の製品番号
で特定の上,具体的構成によって限定することなく,また,譲渡・輸出入等のうち20
譲渡等に含まれない行為について特段の留保をすることなく,原告製品の譲渡等に
ついて本件各特許権の侵害を理由とする差止めを求める反訴を提起していることか
らすれば,同一の訴訟物につき判断がされる以上,原告の本訴請求に係る各訴えは,
もはや確認の利益がなく,不適法であり,却下を免れない。
第5結論25
よって,原告の本訴請求に係る各訴えをいずれも却下し,被告の反訴請求をいず
れも棄却することとし,主文のとおり判決する。
なお,訴訟費用については,民事訴訟法62条を適用し,本訴及び反訴を通じ,
全て被告の負担とする。
東京地方裁判所民事第29部5
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
伊藤清隆
裁判官
西山芳樹
別紙
原告製品目録
下記製品名の超急速ガラス化デバイス
記5
1「Diamour-op(W)」
2「Diamour-op(B)」
3「Diamour-op(G)」
4「Diamour-op(R)」
5「Diamour-op(Y)」10
以上
別紙
原告製品説明書(原告)
1概要
原告製品は,卵子又は胚などの卵を急速にガラス化するデバイスであり,いず5
れも液体窒素耐性材料により形成されたデバイス本体1及びカバーキャップ2か
らなる。
原告製品は,デバイス本体1の先端シート部3に顕微鏡下で観察しながら卵子
又は胚をガラス化液と共に滴下して載置し,卵子又は胚が適切に載っていること
を確認した後,先端シート部3をデバイス本体1と共に液体窒素中に投入し,卵10
子又は胚を急速に凍結するものである。なお,別紙原告製品目録記載1から5ま
での各製品は,それぞれプラスチックからなるデバイス本体1の角柱状部4及び
円柱状部5のプラスチックの色彩が異なるのみである(甲5の1・2)。
2構成
⑴デバイス本体115
アデバイス本体1は,全体として細長い棒の形状をしており,角柱状部4,
円柱状部5及び先端シート部3からなる。
カバーキャップ2がデバイス本体1に取り付けられる時には,円柱状部5及び
先端シート部3はカバーキャップ2の内部に侵入するが,角柱状部4はカバーキ
ャップ2の内部に侵入しない(図1-1ないし図1-5)。20
イ原告製品のデバイス本体1のうち,角柱状部4及び円柱状部5を合わせた
長さは85mmであり,角柱状部4の断面は,2.5mm,2.0mmの長方形
である。
原告製品のデバイス本体1が備える円柱状部5は,先端シート部3の端部を保
持するとともに,カバーキャップ2がデバイス本体1に取り付けられる際には,25
カバーキャップ2の内部に侵入するものである。
ウ原告製品のデバイス本体1の先端シート部3は,卵子又は胚などの卵が載
置される細長い形状の部材である。
上記先端シート部3は,ポリエステルからなるPET支持体3aの上面に,白
色不透明の多孔性のPTFEフィルム3b,すなわち,ポリテトラフルオロエチ
レン製のフィルムからなるガラス化液吸収体を備える。5
エPTFEフィルム3bは卵載置部3cを含み,卵載置部3cは,厚み方向
及び広がり方向のいずれにも複雑に絡み合った多孔構造のPTFEフィルム3b
と空気の界面で光が拡散・散乱される結果,透過光が遮られ反射光だけが散乱さ
れるので,白色不透明である(甲9)。
オ先端シート部3は,先端側の端部に,黒色の着色により最先端であること10
を示す黒色最先端部3d(不透明である)を備えるとともに,卵載置部3cの後
端側の端部に,黒色線3eを含む後端接着部3fを備える。
PTFEフィルム3bは,黒色先端部3dと後端接着部3fにおいて接着剤に
よりPET支持体3aに接着されているが,黒色先端部3dと後端接着部3fの
間においてはPET支持体に接着されておらず,この部分には接着層が存在しな15
い。
上記先端シート部3の卵載置部3cは,白色不透明であり,顕微鏡下で透明で
はないが,操作者が前記黒色着色部及び黒色線3eを確認することにより,卵を
載置すべき卵載置部3cを顕微鏡で視認できるように構成されているものである。
⑵カバーキャップ220
原告製品のカバーキャップ2は,先端シート部3を,被包できる内径及び長さ
を備えた筒の形状の部材であり,内径及び外径は常に一定である。
カバーキャップ2の係合側と反対側の端部は濾紙シート6により封止される一
方,カバーキャップ2の係合側の端部は黒色に着色されているが,封止はされて
おらず,デバイス本体1に着脱自在に取り付けられる。25
3添付図面の説明
図1-1ないし1-5は,カバーキャップ2をデバイス本体1に取り付けた状
態における原告製品の平面図,正面図,拡大左側面図,拡大右側面図及び底面図
である。
図2-1ないし2-5は,デバイス本体1の平面図,正面図,拡大左側面図,
拡大右側面図及び底面図である。5
図3-1ないし3-4は,デバイス本体1の先端シート部3の拡大平面図,拡
大正面図,拡大底面図及び拡大斜視図である。
図4-1ないし4-3は,カバーキャップ2の全体図,拡大左側面図及び拡大
右側面図である。
4符号の説明10
⑴デバイス本体:1
⑵カバーキャップ:2
⑶先端シート部:3
アPET支持体:3a
イPTFEフィルム:3b15
ウ卵載置部:3c
エ黒色最先端部(接着部):3d
オ黒色線:3e
カ後端接着部:3f
⑷角柱状部:420
⑸円柱状部:5
⑹濾紙シート:6
別紙
原告製品説明書(被告)
1構成a液体窒素耐性材料であるプラスチックからなる細い棒状の円柱状部
及び角柱状部を有する。5
2構成b−1上記円柱状部の一端に,液体窒素耐性材料であるポリエステル
からなるPET支持体が取り付けられている。該PET支持体は,無色透明で可撓
性がある平坦なフィルム状のものである。
3構成b−2該PET支持体の上面に,液体窒素耐性材料である多孔性のP
TFEフィルムからなるガラス化液吸収体が接着されている。10
該ガラス化液吸収体は,未使用の状態においては白色不透明であるが,実際の反
訴被告製品の使用時(卵もしくは胚などを含むガラス化液の上記ガラス化液吸収体
への滴下時)には,同ガラス液吸収体はガラス化液を吸収して白色不透明から無色
透明化するものである。
4構成c液体窒素耐性材料から成るカバーキャップは,その一端が封鎖され15
ているが,反対側の端部において上記PET支持体を保持する円柱状部と着脱自在
に取り付けられる。カバーキャップは,上記PET支持体を保持する円柱状部に取
り付けられたとき上記PET支持体を被包する。
5構成d原告製品は,顕微鏡下において,上記PET支持体またはその上面
に接着されたPTFEフィルムからなるガラス化液吸収体に卵子を少量のガラス化20
液とともに付着させ,卵子が付着したストリップ部分を液体窒素に浸漬し凍結させ
るための卵凍結保存用具である。

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