弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は,検察官石井隆作成の控訴趣意書に,これ
に対する答弁は,弁護人(主任)山本啓二作成の答弁書に,そ
れぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。
論旨は,要するに,原判決は,平成17年11月4日付け起
訴状記載の公訴事実(以下「本件犯罪」という)について,,
犯罪の証明がないとして,無罪を言い渡したが,これは証拠の
取捨選択及びその評価を誤ったもので,被告人は本件犯罪を行
っているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らか
な事実の誤認がある,というのである。
そこで検討するに,原審において取り調べられた関係証拠に
よれば,被告人が本件犯罪を行った証明がないとした原判決の
判断は正当であり,当審における事実取調べの結果を併せて検
討しても原判決に事実の誤認があるとは認められない。以下,
所論に鑑み付言する(なお,以下の月日は,いずれも平成1。
,「」。)7年であり本件4か所の傷を本件創傷ということがある
1本件犯罪,関係者等の概要について
本件犯罪は,被告人が被害者とされるAに対し,タバコの
火を押しつけ腕や足の4か所に熱傷及び続発性膿痂疹という
傷害を負わせた,というものであるところ,被告人を含む本
件関係者,Aに存在した本件創傷が発覚した状況,その後の
経緯は,原判決がその理由の第2の1で認定説示するとおり
である。
2本件創傷の原因について
9月28日,Aは,医師であるB及びCの診察を受けてい
るところ,Bは「本件創傷は,左前腕部,右前腕部,右下,
腿内側に2箇所であり,それらはほぼ円形状のかさぶた状と
なっており,C先生の診断でタバコによる熱傷と分かった,
いずれの傷も熱傷2度の深いものである,傷の状態からは,
診断時には受傷後1週間以上は経過していると思われ,1か
月から2か月程度経過している可能性がある,本件創傷がい
ずれも形状が円形をしており,タバコ以外であれば,円筒形
をした金属様のものしか考えられず,常識的に言ってそうい
うもので高熱を帯びたものというのは現時点では考えられ
ず,また,Aもタバコというような言葉で説明をしていたの
で,過去の症例からそのように判断した,熱傷後に治療をし
たような痕跡はなく,そのため,熱傷箇所の治癒が遅れたも
のと思われる」などと供述し,Cは「タバコによる熱傷及,
び続発性膿痂疹「患児の説明及び創部の状況から,両前腕」
及び右下腿内側(2か所)合計4か所の創部はタバコによる
熱傷の後,続発性の膿痂疹を発症したものと考える。なお右
肘,右膝の創部は転倒による外傷と思われます」旨記載し。
た同日付診断書を作成し,さらに,原審及び当審公判廷にお
ける各証言並びに平成18年11月30日付検察官調書にお
いて,本件創傷は,まず元々膿痂疹ができる基になった傷が
それぞれあって,それらが4つの膿痂疹になったということ
ができる,なぜなら,膿痂疹には,いわゆるとびひする場合
もあるが,そのような場合には,膿痂疹が複数の箇所に点在
するのではなく,特定の場所付近に不整形の膿痂疹がいくつ
か集中的に生じるのが通常だが,本件創傷の膿痂疹4つにつ
いては,それぞれが別々の場所に,しかも一つ一つが円形で
クリアな形のものが点在するものだったからである,4か所
の膿痂疹の形が円形であったということと,4か所の傷のい
くつかについては,その円の外側にドーナツ状に傷が残り,
その中心部が治癒の傾向にあったことから,膿痂疹の基にな
った傷については,円形で皮膚に損傷を負わせるような性質
のものにより負わされたといえる,虫刺されのような小さな
点のような傷の膿痂疹が広がっていく場合には円形になりに
くいが,基からある程度の大きさの円形の傷があって膿痂疹
が広がる場合には円形をとどめた形になりやすいためであ
る,本件4か所の膿痂疹はいずれも円形をとどめた形である
と診察時に認知している,今回の傷については,傷と傷のな
い皮膚との境界が明確であることから,このような円形の損
傷を挫創で負わせるには,円形のもので皮膚に損傷を負わせ
るか,円形の物体でないならそれを回すという特殊な傷の付
け方をする必要がある,A本人が気付かないうちに傷ができ
た可能性は乏しい,本件創傷の部位は,転倒したことによる
ものとするには非常に不自然であり,虐待で出てくる頻度の
高い部位である,単に,膿痂疹が円形だということだけでな
く,その内側がどのようになっているかということも考え併
せて,本件4か所の膿痂疹の基の傷が円形のものであった可
能性が高いと判断した,Aの本件創傷の熱傷の程度は,多く
はⅡDである,本件創傷は,真皮の深いところまで傷んでい
るような深い傷であり,掻きむしって本件創傷ほど深くなる
可能性はあまりない,痛くて,多分掻けないと思われる,本
件創傷の状態からだけでは,傷から続発した膿痂疹としか診
断できず,熱傷であると診断したのは,膿痂疹の大きさや形
状,Aがタバコの火によるものと述べたことを加味したから
である,Aは,右肘と右膝はこけてけがした,本件創傷に関
しては「ここと,ここと,ここと,ここを,タバコでじゅ,
っとされた」と指を差しながら説明した,これまで,虐待を
受けた児童を診察した経験や医師としての経験からいって,
タバコでじゅっとされたというAの話は本当のことだと判断
した,実際にタバコを持って傷口と比べたところ,タバコの
直径よりも大きいので,Aの発言と本件創傷が矛盾するかど
うかを医師同士で話したが,中心部がタバコによって火傷を
して,周囲に膿痂疹が広がっていって,周囲の傷は続発性膿
痂疹の状態になったと考えて全く矛盾しないという判断をし
た,蚊にかまれた場合には,傷そのものはものすごく小さい
傷になり,その後うんできたりしても,本件創傷のような大
きさの丸みがあった大きさになるということは考えにくく,
可能性としては非常に少ない,本件創傷は,最低でも2週間
くらいは経過している,Aの傷は,非常に管理がうまいこと
できていない,若しくはちゃんと治療されてない傷である,
と述べている。
B及びC両医師は,外科ないし形成外科の臨床医として,
実際に,本件創傷を診察し,Aの言動を見て,診断を下して
おり,その供述内容は,本件創傷を撮影した各写真と整合し
ており,特に,不自然な点は認められない。これらの供述等
によれば,後述のAの供述を除いたとしても,本件創傷は,
元々円形の傷があり,それを基に膿痂疹になったものと認め
られる。そして,一般的な生活場面を考えても,このような
円形の傷の原因として考えられるものはタバコによる熱傷以
外に想起し難いこと,複数箇所に傷があることに照らすと,
本件創傷がタバコによる熱傷により生じた可能性が非常に高
いということができる。
ところで,原判決は,C医師の原審証言について,C医師
は形成外科の専門医であり,供述は十分信用できるところ,
同人は,本件創傷の膿痂疹の状態からは,タバコの火による
ものと考えて矛盾しないが,その状態のみでは火傷によるも
のか虫刺されによるものかの区別は付かず,その形状や大き
さ等から虫刺されよりもタバコの火による確率の方が高いと
述べるにとどまっている,と説示する。しかしながら,C医
師は原審公判廷において「本件創傷の状態からだけでは,,
傷から続発した膿痂疹としか診断できず,熱傷であると診断
したのは,膿痂疹の大きさや形状,Aがタバコの火によるも
のと述べたことを加味してのものである」などと証言する。
一方「本件創傷の部位は,転倒したことによるものとする,
には非常に不自然であり,虐待で出てくる頻度の高い部位で
ある。蚊にかまれた場合には,傷そのものはものすごく小さ
い傷になり,その後うんできたりしても,十何ミリという大
きさの膿痂疹になることは少ないと思う「本件創傷のう。」
ち中心部が治癒しているのが,虫刺されの後の膿痂疹と見る
。,のに不自然さを感じる虫刺されの後の膿痂疹とみることは
医学的には可能性としてはゼロではないが,通常考えにく
い「ドーナツ状になっている傷に関しては,蚊にかまれ。」
たようなものを掻きむしって,あそこまで正円状に,きれい
なドーナツ状に広がるというのは,アトピーがあるかないか
などとは関係なく,病態の進み方自体が考えにくい」など。
と証言しているのであって,Cの原審証言は,本件創傷(特
に,ドーナツ状になっている傷)は,医学的可能性としては
虫刺されの後の膿痂疹であることは否定できないものである
が,実際には不自然であり,通常は考え難い,として,実質
的に,本件創傷が虫刺されの後の膿痂疹であることを否定し
。,ている趣旨を述べていると評価するのが相当であるそして
C医師は,上記検察官調書及び当審証言において,原判決を
読んだところ,原判決はC医師の原審証言の趣旨を誤解して
いる,本件創傷が虫刺されの後の膿痂疹である可能性につい
ては,ほとんど考えにくいと否定したつもりであった,など
とを述べて,その趣旨を明確にしている。C証言に対する原
判決の評価は正当でない。
また,弁護人は,当審弁論要旨において,C医師の当審証
言について,①円形の傷の大きさを重視しているが,弁護人
から示された写真のとびひ(膿痂疹。以下,単に「とびひ」
という)の大きさが15センチメートルから2センチメー.
トル程度のものであると証言しているから,本件創傷の大き
さが1センチメートルから15センチメートル程度のもの.
だったというC医師の原審証言を前提にすると,本件創傷は
虫刺されによってもできる大きさの円形膿痂疹となる,②と
びひと本件創傷とは深さが違うと証言したが,その後,本件
,,創傷の一つも浅いことを認めた③本件創傷の内側の状態で
本件創傷を含むAの傷を分類しているが,その分類によって
も本件創傷が火傷から生じたとする診断にはならないはずで
あるなどとして,C医師の証言は信用できないという。しか
しながら,①の点は,C医師は,インターネットに掲載され
ている写真で,そこに写っているとびひの大きさを計測する
ことのできない状態で弁護人から質問を受け,あくまでも,
写真に写っている幼児・児童の腕の大きさ等から推察してと
びひの大きさを述べたものであり,そもそも,その大きさの
正確性には多大な疑問があるというべきである。確かに,C
医師は,原審公判廷における証言で,本件創傷の大きさは1
センチメートルから15センチメートル位であると述べて.
いるが,当審証人尋問において,本件創傷の写真を見て,本
件創傷の大きさは2センチメートルから4センチメートルで
あると述べていることからすると,とびひの大きさは,本件
創傷よりも一回り以上小さいものであるとC医師は判断して
いることが明らかであり,当審証人尋問前にカルテで本件創
傷を確認していないことも併せ考えると,とびひの大きさが
1センチメートルないし15センチメートルとするC証言.
を重要視することは妥当でない。また,②は,とびひの写真
を見せられて,本件創傷との違いを述べた際に深さが違うと
言ったに過ぎず,本件創傷が全て深い傷であることから本件
創傷の原因等を判断したものではないから,治癒段階にある
本件創傷の一つが傷の浅いものであることをもって,本件創
傷の原因についての証言の信用性を損なうことはない。③に
ついては,C医師は,本件創傷の内側の状態からは,基とな
った傷は円形のある程度広がったものであると証言している
が,本件創傷の内側の状態から本件創傷が火傷によって生じ
たと認めるとは証言していないのであって,弁護人の主張は
証言を曲解したものである。その他,当審弁論要旨において
るる主張する点を考慮検討しても,C証言は十分に信用でき
る。
3本件創傷を被告人が負わせたかについて
,(1)被告人が本件創傷を負わせたことを示す主要な証拠は
Aの供述のみであるところ,その供述経過及び内容は,概
ね,原判決が「理由」第2の3(1)(2)で説示するとおりで
ある。すなわち,Aは,当初,傷の原因をはっきり言わな
かったり,転んでできた傷であるなどと言い,9月27日
にAの叔母であるDに尋ねられた際にも「転んだ」とか,
「タバコが落ちてきた」と答えて,誰に傷つけられたかに
ついては答えず,Dが「Eちゃん(被告人を意味する)に
やられたのかい」と聞いたところ「俺,Eちゃんって言,
った?」と答えるだけだった,9月28日に,児童相談所
職員がAを保護して児童相談所へ移動する際,Aは「タ,
バコが落ちてきた。お母さんがした」などと説明し,同。
日,病院で診察を受けた際にC医師らから尋ねられたとき
には「本件創傷4か所を差して)ここと,ここと,こ,(
こと,ここを,たばこでじゅっとされた」と説明し「母,
親」にされた旨返答した,10月7日の警察官による事情
聴取の際にも,どうやってけがしたのか問われて,Aは,
「お母さんの手を触って。タバコを持っていたので怪我し
た「お母さんが間違ってタバコを落とした」などと答。」。
えたが,警察官が納得せず,さらに,問い詰めたところ,
「()。。やったのはEちゃんお母さんは風呂に入っていた
お母さんに言った。お母さんに薬を付けてもらった」な。
どと返答し,その後は,Eちゃん,すなわち,被告人から
タバコの火を押しつけられた,風呂から出た母親Fに申告
し,Fから傷の手当をしてもらった,と捜査段階では一貫
して供述していた,そして,平成18年5月8日に行われ
た原審証人尋問の際には,被告人からタバコの火を押しつ
けられたことは明言しながらも,Fに申告したかどうか,
Fから傷の手当をしてもらったかどうか,についての答え
があやふやなものとなっている。Aの年齢やその供述内容
が虐待された際の状況であることに照らすと,タバコを押
しつけられた旨の供述内容は相当具体的なものと評価で
き,Aが創作して虚偽を述べるような内容とも考え難いも
のであり,被告人からタバコの火を押しつけられたという
証言は一応信用できるようにも見える。
しかしながら,Fは,Aから被害申告を受けたことはな
く,火傷の治療をしたこともない,本件創傷は9月25日
まで気付かなかった,とAの供述と相反する供述を捜査段
階から原審証人尋問まで一貫して続けている。そして,A
は本件当時6歳で,証人尋問当時でも7歳であって,その
供述の信用性については慎重に検討すべきであることに加
え,当初,複数の機会にわたり,Fから本件創傷を負わさ
れた旨を述べているところ,そのように述べた理由につい
てAは何ら説明していないから,Fにより本件創傷を負わ
された可能性を含めて,Aの供述の信用性については一層
慎重な検討をする必要がある。
(2)本件創傷は,火傷の程度でいうとⅡDであって,真皮
の深いところまで傷んでおり,A自身が痛くて掻けないほ
どの深さであることからすると,Aの供述のとおり,被告
人から同時に4か所にタバコの火を押しつけられたとする
と,Aは相当大きな痛みを感じたと認められ,しかも,そ
の痛みが一過性のものでなくある程度継続するものである
ことも加味すると,このような大きな痛みを感じながら,
母親であるFに何も告げないことは,被告人とFが当時交
,,際中であることやAが我慢強い子供であることさらには
被告人から口止めされていた可能性などを考慮しても,考
え難く不自然というべきである。加えて,タバコの火を押
しつけられた後には,Aが供述するとおり,痛みのために
Aは泣いていたと考えられ,風呂から出たFが,そのよう
なAの様子を見て,あるいは,その後一緒に暮らしている
中で,受傷から一,二週間以上経過した9月25日まで本
件創傷に気付かないこともやはり不自然である。したがっ
て,本件創傷が,被告人からタバコの火を押しつけられた
ことにより生じたものであるとすると,Aが供述するとお
り,Aは,受傷直後にFに火傷の申告をし,Fは,この申
告を受けてその治療を行うなど,その後の創傷の経過につ
いて関心を持ち続けていたと考えるのが自然である。しか
しながら,Aを診察したB医師は,熱傷後に治療をしたよ
うな痕跡はなく,そのため,熱傷箇所の治癒が遅れたもの
と思われると述べ,C医師も当審公判廷において,Aの傷
は,非常に管理がうまいことできていない,若しくはちゃ
んと治療されていない傷であると証言しているのであっ
て,この2名の医師の供述によると,本件創傷はまともな
治療をしていなかったと強く推定され,Fの供述するとお
り,Fは,本件創傷の治療をしていないという可能性は小
さくないと言わざるを得ない。所論は,Fの供述は信用で
きないと主張しながら,FがDに本件創傷を相談したこと
から,Fは犯人ではないといえるが,薬を塗ったことはな
いなどとはいえない,というが,上記のとおり,医師2名
の供述によると,本件創傷の治療がなされていなかった可
能性は否定できず,所論は採り得ない。
このように,本件創傷が被告人にタバコの火を押しつけ
られたことによって生じたものであると認定するには,そ
の前後の状況に関するAとFの供述に氷解し難い疑問点が
残るといわざるを得ない。
,,,,(3)また本件当時Aは実母であるFとともに生活し
Fに面倒を見てもらっていたから,Fを一番身近で大切な
,,人自分を保護してくれる人と感じていたと推察されるが
そのようなAが,真実は,被告人から本件創傷を負わせら
れたにもかかわらず,児童相談所の職員や診察していた医
師という第三者に対して,Fから負わせられたとの虚偽を
述べることは,不自然である。所論は,虐待を受けた児童
は人間に対する不信感を抱いていて,なかなか本当のこと
を言おうとしないが,Aが当初虚偽の供述をして,その後
児童相談所の生活に落ち着いてから真実を一貫して話すよ
うになったのは,この虐待を受けた児童の一般的な供述傾
向と合致するから,被告人からタバコの火を押しつけられ
たとするAの供述は信用できる,という。なるほど,本件
創傷が,転んでできたとかタバコが落ちてできたなどと述
べていた点については,何らかの理由,例えば,虐待者を
恐れて,あるいはある者をかばって,虐待を受けていない
と虚偽を述べたものということで合理的に説明できる。し
かし,虐待を受けたことを認めた上で,保護者である母親
のFから虐待されたと虚偽の供述をすることは,虐待を受
けた児童の心理ないし供述傾向から合理的に説明できるも
のではなく,やはり,不自然さは強く残るというべきであ
る。
(4)このように,本件創傷がタバコによる熱傷により生じ
た可能性が非常に高いことを前提にしても,被告人が本件
創傷を負わせたとするAの供述には拭い難い重大な疑問点
があることからすると,被告人の供述の信用性を検討する
までもなく,被告人がAにタバコの火を押しつけたと認め
。(,るにはなお合理的な疑いが残るというべきであるなお
原判決が説示するように,被告人の否認供述には,取り立
てて不自然といえるような部分はない。所論は,被告人が
9月25日にAの裸を見たにもかかわらず,本件傷害に気
付かなかったというのは,極めて不自然であり,現実には
あり得ない虚偽である,というが,Aの身体には本件創傷
以外にも日常的にかなりの傷あとがついていたことなどに
照らして,被告人が本件創傷に気付かないことも必ずしも
不自然とまではいえない。所論は採り得ない)。
その他,所論がるる主張する点を考慮検討しても,被告人が
Aにタバコの火を押しつけたことを認定することはできないと
,。,して被告人を無罪とした原判決に事実の誤認はない論旨は
理由がない。
,,よって刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし
当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき18
1条3項本文を適用して,主文のとおり判決する。
平成19年9月13日
札幌高等裁判所刑事部
裁判長裁判官矢村宏
裁判官市川太志
裁判官二宮信吾

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