弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成21年1月26日判決言渡
平成20年(行ケ)第10118号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年10月30日
判決
原告X
訴訟代理人弁護士冨宅恵
被告株式会社岡田組
訴訟代理人弁護士上原健嗣
同上原理子
同阪上武仁
訴訟代理人弁理士鈴江正二
同木村俊之
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2007−800076号事件について平成20年2月26日
にした審決を取り消す。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
被告は,発明の名称を「既設杭の引抜き装置」とする特許第305213
5号の特許(以下「本件特許」という。平成10年11月20日出願,平成
12年4月7日設定登録。請求項の数は1である。)の特許権者である(乙
1)。
原告は,平成19年4月16日,特許庁に同日付け審判請求書(書証とし
て,甲1ないし11〔審決にいう甲1ないし11と同じ。枝番号の記載は省
略する。以下同じ。〕が添付されていた。)を提出し,本件特許の請求項1
に係る発明についての特許を無効とすることについて審判(無効2007−
800076号事件。以下「本件審判」という。)を請求した。
その後,本件審判の手続において,被告は,平成19年7月17日付け答
弁書及び同年11月5日付け上申書(書証として,甲18及び19〔審決に
いう乙1及び2〕が添付されていた。)を提出し,原告は,同年12月3日
付け弁駁書(書証として,甲12ないし15〔審決にいう甲12ないし15
と同じ。〕が添付されていた。)及び同年12月19日付け上申書(書証と
して,甲16及び17〔審決にいう甲16及び17と同じ。〕が添付されて
いた。)を提出した。
特許庁は,平成20年2月26日,「本件審判の請求は,成り立たな
い。」との審決(以下「審決」という。)をし,同年3月7日,その謄本を
原告に送達した。
なお,審決は,「第1手続の経緯」の末尾において,「請求人は,本件
の特許権につき移転登録手続及び不当利得金の返還等を請求する訴えを大阪
地方裁判所に提起した(平成17年(ワ)第1238号,以下,『地裁事件
』という。)が,平成19年10月30日に請求を棄却する旨の判決が言い
渡され,移転登録手続の請求部分についての判決は確定している。」(審決
書2頁4行∼8行)と説示しているが,同判決は,審決時において確定して
おらず,上記説示は誤りである。大阪地方裁判所が平成17年(ワ)第12
38号事件(本訴原告が本訴被告を相手方として提起したもの。)について
平成19年10月30日に言い渡した判決(一部認容・一部棄却)は,同事
件の原告(本訴原告)からの控訴(知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第
10099号事件)により,その確定が遮断(民事訴訟法116条2項)さ
れ,平成20年7月17日,知的財産高等裁判所により上記控訴を棄却する
旨の判決が言い渡され,同判決は上告及び上告受理申立て期間の経過により
確定し,その結果上記大阪地方裁判所の判決も確定した(当裁判所に顕著な
事実)。
2特許請求の範囲の記載
本件特許の願書に添付した明細書(以下,図面と併せ,「本件明細書」と
いう。乙1)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以
下,この発明を「本件発明」という。)。
「【請求項1】打込機に連結され,既設杭の最大外径よりも大きい内径を
もつ円筒状のケーシングと,このケーシングの下部に,油圧シリンダによる
駆動でケーシング内に突出するように取付けられたチャック爪とを備えた既
設杭の引抜き装置において,
上記油圧シリンダは上記ケーシングの上部に取付けられ,この油圧シリン
ダのロッド端部と上記チャック爪とを連結ロッドで連結してあり,
上記チャック爪は円弧状のカム溝を有し,このカム溝を上記ケーシングの
下部に固定した軸に挿通してあり,
上記油圧シリンダの縮小動作で上記連結ロッドが上昇することにより上記
チャック爪が上記ケーシング外に略垂直姿勢に退出し,上記油圧シリンダの
伸長動作で上記連結ロッドが下降することにより上記チャック爪が上記ケー
シング内に略水平姿勢に突出するようにしてなることを特徴とする既設杭の
引抜き装置。」
3審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,原告(請求人)が下記(1)のと
おり主張したのに対し,下記(2)のとおり認定判断し,原告(請求人)の主張
及びその提出に係る証拠によっては,本件発明についての特許を無効とする
ことはできないとの結論を導いた。なお,審決が,「大阪府守口市内のNT
Tの現場でのペデスタル杭の撤去工事」についても判断した点は,不要な説
示であるが,その点の当否については,後記第5の2において触れる。
(1)原告(請求人)の主張(無効理由)
「本件特許の請求項1に係る発明は,本件出願前に,日本国内で行われた
『神戸新港第7突堤サイロ基礎杭撤去工事』(以下,『神戸第7突堤工事
』という。)において公然実施された発明であるから,特許法第29条第
1項第2号に該当し特許を受けることができない。」(審決書2頁33行
∼36行)
(2)審決の認定判断
「本件発明は,本件出願前に,『神戸第7突堤工事』あるいは『大阪府守
口市内のNTTの現場でのペデスタル杭の撤去工事』において実施された
発明であるとすることはできないから,当該実施が公然と行われたもので
あるか否かについて検討するまでもなく,本件発明は,日本国内におい
て,公然実施された発明であるとすることはできない。」(審決書14頁
30行∼34行)
なお,審決が認定した「神戸第7突堤工事」あるいは「大阪府守口市内
のNTTの現場でのペデスタル杭の撤去工事」において実施された各発明
の内容,審決における本件発明と上記各発明との対比の結果は,次のとお
りである。
ア平成10年6月23日に神戸第7突提工事の現場において実施された
発明(以下「実施発明1」という。)について
(ア)実施発明1の内容
「バイブロ工法で用いる打込機に連結され,既設のペデスタル杭の最
大外径よりも大きい直径600mmの内径をもつ円筒状のケーシング
と,このケーシングに,油圧シリンダによる駆動でケーシング内に突
出するように取付けられたカム溝を有するチャック爪とを備えた既設
杭の引抜き装置であって,
油圧シリンダはケーシングの上部に取付けられ,
チャック爪はケーシングの中ほどに取付けられ,
油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロッドに上記チャック爪
を1関節で連結してあり,
チャック爪は円弧状のカム溝を有し,このカム溝を,ケーシングに
溶接したブラケットに固定したピンに挿通しており,
上記油圧シリンダの縮小動作で上記連結ロッドが上昇することによ
り上記チャック爪が上記ケーシング外に退出し,上記油圧シリンダの
伸長動作で連結ロッドが下降することにより上記チャック爪がケーシ
ング内に突出する既設杭の引抜き装置。」(審決書10頁14行∼2
7行)
(イ)本件発明と実施発明1との対比
「実施発明1は,本件発明を特定するために必要な『油圧シリンダの
伸長動作で連結ロッドが下降することによりチャック爪がケーシング
内に略水平姿勢に突出する』との事項を具備してるとはいえな
い。」(審決書12頁25行∼27行)
イ平成10年7月末ごろ神戸第7突提工事の現場において実施された発
明(以下「実施発明2」という。)について
(ア)実施発明2の内容
「バイブロ工法で用いる打込機に連結され,既設のペデスタル杭の最
大外径よりも大きい直径800mmの内径をもつ円筒状のケーシング
と,このケーシングに,油圧シリンダによる駆動でケーシング内に突
出するように取付けられたカム溝を有するチャック爪とを備えた既設
杭の引抜き装置であって,
油圧シリンダは17mケーシングの上部に取付けられ,
チャック爪はケーシングの下から3m程度のところに取付けられ,
油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロッドに上記チャック爪
を1関節で連結してあり,
チャック爪は円弧状のカム溝を有し,このカム溝を,ケーシングに
溶接したブラケットに固定したピンに挿通しており,
上記油圧シリンダの縮小動作で上記連結ロッドが上昇することによ
り上記チャック爪が略垂直姿勢に退出し,上記油圧シリンダの油圧シ
リンダの伸長動作で連結ロッドが下降することにより上記チャック爪
がケーシング内に突出する既設杭の引抜き装置。」(審決書10頁3
6行∼11頁12行)
(イ)本件発明と実施発明2との対比
「本件発明と実施発明2とを対比すると,実施発明2は,『油圧シリ
ンダのロッド端部に連結した連結ロッドにチャック爪を1関節で連結
』したものであり,実施発明1と同様に,本件発明を特定するために
必要な『油圧シリンダの伸長動作で連結ロッドが下降することにより
チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出する』との事項を具備
してるとはいえない。」(審決書12頁30行∼34行)
ウ平成10年8月に神戸第7突提工事の現場において実施された発明(
以下「実施発明3」という。)について
(ア)実施発明3の内容
「バイブロ工法で用いる打込機に連結され,既設のペデスタル杭の最
大外径よりも大きい直径700mmの内径をもつ円筒状のケーシング
と,このケーシングに,油圧シリンダによる駆動でケーシング内に突
出するように取付けられたカム溝を有するチャック爪とを備えた既設
杭の引抜き装置であって,
油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロッドに上記チャック爪
を2関節で連結してあり,
チャック爪は円弧状のカム溝を有し,このカム溝を,ケーシングに
溶接したブラケットに固定したピンに挿通しており,
上記油圧シリンダの縮小動作で上記連結ロッドが上昇することによ
り上記チャック爪が略垂直姿勢に退出し,上記油圧シリンダの油圧シ
リンダの伸長動作で連結ロッドが下降することにより上記チャック爪
がケーシング内に突出する既設杭の引抜き装置。」(審決書11頁1
9行∼30行)
(イ)本件発明と実施発明3との対比
「実施発明3は,本件発明を特定するために必要な『油圧シリンダの
伸長動作で連結ロッドが下降することによりチャック爪がケーシング
内に略水平姿勢に突出する』との事項を具備しているとはいえな
い」。(審決書14頁1行∼3行)
エ平成10年10月ころ,大阪府守口市内のNTTの現場でのペデスタ
ル杭の撤去工事において実施された発明(以下「実施発明4」とい
う。)について
(ア)実施発明4の内容
「アースオーガに連結されたケーシングと,このケーシングに,油圧
シリンダによる駆動でケーシング内に突出するように取付けられたカ
ム溝を有するチャック爪とを備えた既設杭の引抜き装置であって,
油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロッドに上記チャック爪
を連結してあり,チャック爪と連結ロッドとの関節部分に保護用カバ
ーを設けている既設杭の引抜き装置。」(審決書11頁35行∼12
頁3行)
(イ)本件発明と実施発明4との対比
「実施発明4は,『油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロッド
にチャック爪を連結』したものであるが,油圧シリンダーの取付位置
や,チャック爪の形状,取り付け部の構造,連結ロッドとチャック爪
を連結部の構成等が不明であり,本件発明を特定するに必要な事項を
具備しているとはいえない。」(審決書14頁6行∼10行)
「仮に,実施発明4が実施発明3と同様に,油圧シリンダがケーシン
グの上部に取付けられ,油圧シリンダのロッド端部に連結した連結ロ
ッドにチャック爪を2関節で連結してあり,チャック爪は円弧状のカ
ム溝を有し,このカム溝を,ケーシングに溶接したブラケットに固定
したピンに挿通している引抜き装置である場合について検討する。・
・・実施発明4のチャック爪が『ケーシング内に略水平姿勢に突出す
る』ように改良されたものであったとすることはできない。」(審決
書14頁11行∼22行)
第3取消事由についての原告の主張
審決は,以下のとおり,実施発明1ないし4の認定を誤り,本件発明と実施
発明1ないし4との対比を誤った違法があるから,取り消されるべきである。
1実施発明1ないし4が本件発明と実質的に同一であること
以下のとおり,本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシング内に
略水平姿勢に突出する」との構成は技術的に意味がなく,実施発明1ないし
4におけるチャック爪はケーシング内に略45度の姿勢で突出するものは,
チャック爪が略水平姿勢に突出するものと技術的に等価であるから,実施発
明1ないし4は本件発明と実質的に同一である。
(1)本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に
突出する」との構成は技術的に意味がないこと
以下のとおり,本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシング内
に略水平姿勢に突出する」との構成は技術的に意味がないというべきであ
り,チャック爪,固定軸,連結ロッド及び油圧シリンダに及ぶ負荷を軽減
するため,チャック爪はケーシング内に略45度の姿勢で突出しなければ
ならない。
ア本件発明においてチャック爪をケーシング内に突出させる目的は,地
中に埋設されたケーシング内に存在する既設杭の先端部分にチャック爪
を接着させることにより,地中内のケーシングを引き抜く際,これとと
もに既設杭も引き抜くことができようにすることであり,チャック爪を
突出させる姿勢はかかる目的を達することができればよい。
イチャック爪を固定軸により軸着し,この固定軸を支点として回動させ
ることにより,チャック爪をケーシング内に略水平姿勢に突出させる
と,チャック爪と既設杭の接点が極小となり,チャック爪への負担が大
きくなるとともに,チャック爪と既設杭との接点とチャック爪と固定軸
との軸着点が水平になり,既設杭の重量負荷が固定軸及び油圧シリンダ
に直接及ぶことになる結果,チャック爪の破損,固定軸の折損,軸着部
の亀裂などの不都合が生じ,また,既設杭の重量負荷に対応し得る特殊
な油圧ジャッキを備える必要がある。
ウ本件発明のチャック爪にカム溝を施し,固定された軸を挿通させ,チ
ャック爪がケーシング内に突出する際に固定軸をカム溝に沿って摺動さ
せ,カム溝をチャック爪がケーシング内に略45度の姿勢で突出するよ
うな形状とすることの技術的意義は,固定軸がカム溝を摺動することに
より,固定軸をチャック爪に軸着する場合よりも,固定軸と既設杭との
距離を近接することができ,これにより,固定軸,固定軸とチャック爪
との接点及び油圧ジャッキにかかる負荷を軽減する点にある。
エ仮に,チャック爪をケーシング内に略水平姿勢に突出させると,上記
の効果が得られないので,本件発明のチャック爪にカム溝を施し,固定
軸を摺動させることの技術的意義はないということになる。
オしたがって,チャック爪はケーシング内に略45度の姿勢で突出しな
ければならないのであり,関節部を2つにし,カム溝の形状を変更する
ことによって,チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出するよう
にすることはあり得ない。すなわち,チャック爪は,カム溝の形状いか
んによりケーシング内に略水平姿勢に突出するようになるのではなく,
ケーシング内に略45度の姿勢で突出するようにカム溝の形状が決定さ
れなければならない。
(2)実施発明1ないし4におけるチャック爪はケーシング内に略45度の姿
勢で突出するものであること
実施発明1ないし4のチャック爪は,いずれも原告が作成した「バイブ
ロ仕様杭引き抜きケーシング先端チャック部」の図面(甲13)に記載さ
れているように,略45度の姿勢で突出するものである。
現在,被告が使用している引抜き装置において,チャック爪がケーシン
グ内に略45度の姿勢で突出する構成となっている。被告が平成20年3
月27日に神戸で使用した装置を撮影した写真(甲20)によれば,被告
は,現在,関節部が2つで,カム溝をチャック爪の上端限界まで設けた装
置を使用しており,この装置では,連結ロッドが限界まで下降した状態
で,チャック爪がケーシング内に略45度の姿勢でしか突出していない。
(3)チャック爪が略45度の姿勢で突出するものはチャック爪が略水平姿勢
に突出するものと技術的に等価であること
チャック爪がケーシング内に略45度の姿勢で突出するものは,チャッ
ク爪がケーシング内に略水平姿勢に突出するものと,技術的に等価であ
る。
カム溝を施されたチャック爪を使用する技術的意義は,前記(1)のウのと
おり,固定軸,固定軸とチャック爪との接点及び油圧ジャッキにかかる負
荷を軽減することにある。
本件明細書の【発明の効果】の欄では,油圧シリンダがケーシング上部
に設置されることによる効果としてチャック爪の突出状況を確認できるこ
とのみが記載されているが,本件発明の技術的要素にカム溝が施されたチ
ャック爪が含まれている以上,本件明細書にカム溝が施されたチャック爪
を使用することによる効果が記載されていないことをもって,本件発明の
上記技術的意義が否定されることにはならない。
実施発明1ないし4は,いずれも本件発明に係る技術的要素を充たし,
固定軸,固定軸とチャック爪との接点及び油圧ジャッキにかかる負荷を軽
減する効果を得ているから,本件発明と技術的に等価であるといえる。
2本件発明と実施発明3及び4が同一であること(仮定的主張)
仮に,1の(1)の主張(本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシン
グ内に略水平姿勢に突出する」との構成は技術的に意味がないとの主張)が
認められないとしても,実施発明3及び4は,チャック爪がケーシング内に
略水平姿勢に突出するものであるから,実施発明3及び4は本件発明と同一
である。
(1)実施発明3は関節部を2つにするものであるところ,被告代表者の陳述
書(甲3)には,2つの関節の仕組みとすることとし,これにより略水平
かつ垂直運動する運びとなった旨の記載(35頁)があり,Nの陳述書(
甲5)には,2つの関節の仕組みを示すとされる図に,関節部が2つでチ
ャック爪が略水平に突出した様子が記載されている(21頁)。また,N
の証人調書(甲6)には,関節部が2つのものは8月以降に製作されたも
のであるとの記載がある(24頁)。被告代表者の供述等によれば,実施
発明3は,チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出するという,本
件発明の構成を有することになる。
そして,Kの証人調書(甲10)には,実施発明3を使用することによ
り,平成10年8月に入ってから杭を完全に抜くことができた旨の記載が
ある(4頁)から,実施発明3は完成していたことになる。
(2)同様に,実施発明4は,実施発明1ないし3を前提にする技術であるか
ら,本件発明の構成を備えている。そして,「大阪府守口市内のNTTの
現場」の工事期間は,平成10年10月12日ないし同年11月24日で
あり(甲21),実施発明4を使用して工事を完遂した点については争い
がないのであるから,実施発明4は,本件特許の出願日(平成10年11
月20日)以前に完成し,実施されていたと推認される。
(3)以上のとおり,被告代表者の供述等(甲3,5,6)によれば,関節を
2つの構成とした実施発明3及び4は,チャック爪が略水平姿勢に突出す
るものである。
第4被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
1実施発明1ないし4が本件発明と実質的に同一であるとの主張に対し
(1)本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に
突出する」との構成は技術的に意味がないとの主張に対し
ア原告は,チャック爪は,カム溝の形状いかんによりケーシング内に略
水平姿勢に突出するようになるのではなく,ケーシング内に略45度の
姿勢で突出するようにカム溝の形状が決定されなければならないなどと
主張する。
しかし,「上記チャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に突出す
る」との構成は可能であり,技術的に意味がある。原告の上記主張は,
技術的根拠のない独自の見解であり,審決の認定判断とも何ら関係がな
い主張であって,失当である。
イ原告は,甲20が被告の撮影に係る写真であることを前提として,現
在,被告が使用している引抜き装置において,チャック爪がケーシング
内に略45度の姿勢で突出する構成となっていることからも,「上記チ
ャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に突出する」との構成は技術
的に意味がないと主張する。
しかし,①そもそも,甲20は被告の作成に係るものではないこと,
②甲20からは,撮影された装置におけるチャック爪がケーシング内に
略45度の姿勢でしか突出しないものであるか否かは明らかでないこ
と,③仮に,甲20に撮影された装置が被告の装置であったとしても,
被告が現在使用する装置には様々なものがあること,④被告が現在使用
する装置の構成から,本件発明の構成や実施発明1ないし4の構成を認
定することはできないことから,原告の上記主張は失当である。
(2)実施発明1ないし4におけるチャック爪がケーシング内に略45度の姿
勢で突出するものであるとの主張に対し
原告は,実施発明1ないし4のチャック爪は,甲13に記載されている
ように,略45度の姿勢で突出すると主張する。
しかし,①前記(1)のとおり,「上記チャック爪が上記ケーシング内に略
水平姿勢に突出する」との構成は技術的に意味がないとする原告の主張は
根拠を欠くものであること,②甲13は,原告が独自に作成した図面であ
って,実施発明1ないし4とは何ら関係がないことから,原告の上記主張
は失当である。
(3)チャック爪が略45度の姿勢で突出するものはチャック爪が略水平姿勢
に突出するものと技術的に等価であるとの主張に対し
原告は,チャック爪がケーシング内に略45度の姿勢で突出するもの
は,チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出するものと,技術的に
等価であると主張する。
しかし,原告の上記主張は,独自の見解であり,失当である。
2本件発明と実施発明3及び4が同一であるとの主張(原告の仮定的主張)
に対し
原告は,仮定的主張として,被告代表者の供述等に照らし,関節を2つの
構成とした実施発明3及び4は,チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に
突出するものといえるから,実施発明3及び4は本件発明と同一である旨主
張する。
しかし,被告代表者らは,実施発明3及び4そのものについて,チャック
爪がケーシング内に略水平姿勢に突出した旨供述したものではなく,これら
の発明は,実際には,チャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出する構
成とはなっていなかったのであるから,原告の上記主張は誤りである。
第5当裁判所の判断
1実施発明1ないし4が本件発明と実質的に同一であるとの主張について
当裁判所は,実施発明1ないし4は,いずれも本件発明における「上記チ
ャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に突出する」との構成を備えたも
のとは認められないから,本件発明と同一とはいえないと判断する。その理
由は,以下のとおりである。
(1)チャック爪が略45度の姿勢で突出するとの原告主張について
原告は,①チャック爪がケーシング内に略水平姿勢で突出することは技
術的に意味がないこと,②実施発明1ないし4におけるチャック爪はケー
シングから略45度の姿勢で突出するものであること,③チャック爪が略
45度の姿勢で突出するものは,チャック爪が略水平姿勢で突出するもの
と技術的に等価であることから,実施発明1ないし4は本件発明と実質的
に同一であると主張する。
しかし,以下のとおり,上記原告の主張は失当である。
アチャック爪の突出姿勢について
原告は,チャック爪などにかかる負荷を軽減するためには,チャック
爪はケーシング内に略45度の姿勢で突出しなければならず,このこと
は被告の使用に係る現在の引抜き装置が略45度の姿勢で突出する構成
となっていることによっても裏付けられると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
すなわち,①そもそも,既設杭の引き抜きに際し,チャック爪などに
加わる負荷は,引き抜き対象である既設杭の形状(特に先端の形状),
チャック爪と既設杭との位置関係,地盤の状態など,様々な要因により
影響を受けるものと考えられること,②チャック爪の突出姿勢は,チャ
ック爪の形状,カム溝の長さ,関節形態,油圧シリンダの伸縮長等によ
り,様々な角度に調整することが可能であることからすれば,「上記チ
ャック爪が上記ケーシング内に略水平姿勢に突出する」との構成が,技
術的に意味がないとはいえないし,チャック爪がケーシング内に略45
度の姿勢で突出することが必然であるともいえない。
また,甲20の写真は,実施発明1ないし4の実施から10年近くを
経た平成20年3月に撮影されたとされるものである上,撮影された装
置の使用時におけるチャック爪の突出姿勢が,略45度の角度であるか
否かも明らかでなく,実施発明1ないし4におけるチャック爪がケーシ
ングから略45度の姿勢で突出するという原告の主張を裏付けるに足り
るものということはできない。
さらに,甲13は,原告が作成した「バイブロ仕様引き抜きケーシン
グ先端チャック部」の図面であるが,同図面のとおりに実施発明1ない
し4に供された装置が作製されたと認めるに足りる証拠を見いだすこと
ができない。
以上のとおり,実施発明1ないし4におけるチャック爪がケーシング
内に略45度の姿勢で突出するものであると認めることはできない。
イ本件発明との同一性について
原告は,実施発明1ないし4におけるチャック爪がケーシング内に略
45度の姿勢で突出するものであることを前提として,略45度の姿勢
で突出するものは,略水平姿勢に突出するものと技術的に等価であると
主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
(ア)まず,そもそも,前記アのとおり,実施発明1ないし4における
チャック爪は,ケーシング内に略45度の姿勢で突出するものとは認
められないから,原告の上記主張は,前提を欠き,その主張自体失当
である。
(イ)また,以下のとおり,チャック爪を略水平姿勢に突出させること
と,略45度の姿勢で突出させることは,技術的に等価とすることは
できないから,この点からも原告の主張は理由がない。
a本件明細書の記載
本件明細書(乙1)の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2の
とおりである。
また,本件明細書には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は地中に埋設されている既設杭を
引抜く装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】既設杭の引抜き方法が,例えば,特公平3−572
47号公報に開示されている。そこでは,既設杭が地中に埋設され
てから長い年月が経過していると腐食などにより引張強さが大きく
低下していて,これを引抜く時に途中でちぎれてしまう,という不
具合な事態を解消するための既設杭の引抜き方法が記載されてい
る。その引抜き方法は,既設杭を囲む円筒状のケーシングをこのケ
ーシングの下端が前記既設杭の下端よりも下方に位置する深さにま
で打ち込むとともに,前記ケーシング内の既設杭まわりの土を水や
ベントナイト等の泥土化剤で泥土化し,次いで,前記ケーシングの
下端部に取付けた係止突起をケーシング内に向けて突出させた後
に,ケーシングに引抜力を加えて既設杭の下端に当接する前記係止
突起により既設杭に押上げ力を加えることで既設杭を引抜く方法で
あって,これによれば引張強さが大きく低下している既設杭もこの
全部を引抜くことができるというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに,上記既設杭の引抜き方
法では係止突起を突出操作するにあたり油圧シリンダが採用される
が,その油圧シリンダは,係止突起と同じようにケーシングの下端
部に装着されており,これではケーシングの打込み後係止突起をケ
ーシング内に向けて突出させるといっても,その突出状態を地上で
確認することができないため,係止突起が既設杭の下端に達しない
まま,あるいは既設杭の下端に当接しないまま既設杭が引抜かれる
ことがあり,既設杭の全部を引抜くという所期の目的を達成できな
い場合が生じる。またケーシングの下端部に取付けられた油圧シリ
ンダはケーシングの打込み時に土砂との摩擦抵抗で破損や損傷を加
えられやすいという問題がある。
【0004】本発明は,このような問題を解消するためになされた
もので,その目的とするところはチャック爪のケーシング内への突
出動作の確認を可能にすることにより既設杭の全部引抜きを全うす
ることができ,またチャック爪操作用の油圧シリンダの保護を図れ
る既設杭の引抜き装置を提供するにある。」
「【0007】
【作用】油圧シリンダはケーシングの上部に取付けているため,既
設杭に対してケーシングを打込み後チャック爪をケーシング内に向
けて突出させる時にその油圧シリンダの伸長状態を地上で明確に確
認することができ,この確認によりチャック爪が既設杭の最下端の
下方に完全に突出したか否かを知ることができる。したがって,チ
ャック爪が既設杭の最下端の下方に突出しないまま該既設杭を引抜
くこと,つまり既設杭が途中でちぎれ,その下部を残したまま引抜
かれるのを防止することができる。
【0008】このようにチャック爪を既設杭の最下端の下方に突出
させて既設杭の全部を引抜くことができるが,この全部引抜きは,
既設杭が長期年月の経過により引張強度が低下しているものに限ら
れず,貫通式の場所打ちコンクリート杭の一種であるペデスタル杭
のごとく柱身と球根とポイントとが一体化されていない既設杭の場
合もその最下端のポイントまでの全部を引抜くことができる。
【0009】ケーシングの上部に取付けられた油圧シリンダは,ケ
ーシングの打込み時に土砂の抵抗を受けることがなく,土圧からの
防護を図れる。」
「【0023】【発明の効果】本発明によれば,チャック爪をケー
シング内に突出操作するのに用いられる油圧シリンダはケーシング
の上部に取付けてあるので,ケーシングの打込み時にも該油圧シリ
ンダは土砂の抵抗を受けることがなくてその保護を図れるばかり
か,チャック爪がケーシング内に突出していることを容易に確認す
ることができて既設杭の全部引抜きを全うできる利点がある。」
b本件発明の技術的意義
本件明細書の前記aの記載によれば,本件発明について,次のと
おり解することができる。
①本件発明は,地中に埋設された既設杭を引き抜く装置に関する
ものであって,従来,既設杭の周囲に打ち込むケーシングの下端
に,油圧シリンダと係止突起を設け,既設杭の下方に達するまで
ケーシングを打ち込んだ後に,該油圧シリンダにより係止突起を
ケーシング内に突出させて既設杭を下方から持ち上げて引き抜く
ものであったところ,係止突起の突出状態が地上より確認できな
いために杭の引き抜き不良が発生し,また打込み時に油圧シリン
ダが破損し易いという課題を解決するものである。
②ケーシングの上部に油圧シリンダを取付け,円弧状のカム溝を
有するチャック爪を下部に設けてその間を連結ロッドで連結し,
油圧シリンダの縮小動作によって,チャック爪がケーシング外に
略垂直姿勢で退出し,また伸張動作によって略水平姿勢でケーシ
ング内に突出する構成とすることにより,油圧シリンダの保護が
図れるとともに,地上よりチャック爪の突出状態を確認できるの
で,既設杭を確実に引き抜くことができるという意義を有する。
c技術的意義についての結論
チャック爪をケーシング内に略水平姿勢に突出するようにするた
めには,略45度の姿勢に突出するようにする場合に比べ,より大
きな油圧シリンダの伸張動作が必要であることは,その構成上明ら
かであるから,前記bで認定した本件発明の技術的意義に照らし,
本件発明には,チャック爪をケーシング内に略水平姿勢に突出させ
ることによって,より明確に地上からチャック爪の突出姿勢を確認
できるという利点があるといえる。また,チャック爪がケーシング
内に略水平姿勢に突出すれば,ケーシングの両側に配置されたチャ
ック爪間の間隔が狭くなるので,より広範囲の径の杭に対応可能と
なることも,技術常識に照らし,明らかである。そうすると,チャ
ック爪をケーシング内に略水平姿勢に突出させることと,略45度
の姿勢で突出させることは,技術的に等価とすることはできない。
(2)実施発明3及び実施発明4は本件発明と同一であるとの仮定的主張につ
いて
原告は,仮に,本件発明における「上記チャック爪が上記ケーシング内
に略水平姿勢に突出する」との構成は技術的に意味がないとの原告の主張
が認められないとしても,実施発明3及び実施発明4は,チャック爪がケ
ーシング内に略水平姿勢に突出するものであるから,本件発明と同一であ
ると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
本件記録を検討しても,実施発明3及び実施発明4が,本件発明におけ
る「油圧シリンダの伸長動作で連結ロッドが下降することによりチャック
爪がケーシング内に略水平姿勢に突出する」との構成を備えていると認め
るに足りる証拠はない。原告の指摘に係る被告代表者の供述等によって
も,実施発明3及び実施発明4がチャック爪がケーシング内に略水平姿勢
に突出する構成を備えていると認めることはできない。前記(1)のアのとお
り,チャック爪の突出姿勢は,チャック爪の形状,カム溝の長さ,関節形
態,油圧シリンダの伸縮長等により,様々な角度に調整することが可能で
あって,関節の形態のみにより決定されるものではないから,実施発明3
及び実施発明4において,2つの関節が使用されたものであるとしても,
そのことから直ちにチャック爪がケーシング内に略水平姿勢に突出するも
のであると断定することはできない。
(3)小括
上記検討したところによれば,実施発明1ないし4が,本件発明におけ
る「油圧シリンダの伸長動作で連結ロッドが下降することによりチャック
爪がケーシング内に略水平姿勢に突出する」との構成を備えているとは認
められないから,本件発明は実施発明1ないし4と同一であるいうことは
できない。
以上のとおり,実施発明1ないし4のその余の具体的構成やこれらの発
明が公然実施されたか否かについて,原告がその他縷々主張する点は,い
ずれも審決を取り消すべき理由とは認められない。
2付言(実施発明4に関する審決の審理及び判断について)
当裁判所は,審決が,所定の手続を経由することなく,原告(請求人)が
主張した無効理由とは別個の無効理由について無効理由が存在しないと判断
した点は,特許法153条2項や同法167条の趣旨に反する不適切な審理
及び判断であると解する。その点を以下に付言する。
(1)審決は,原告が本件審判の手続において主張した無効理由について,前
記第2の3の(1)のとおり摘示している。すなわち,同摘示によれば,原告
の無効理由は,「神戸第7突堤工事」において実施された発明(実施発明
1ないし3)が,本件発明と同一であり,かつ,公然実施されたものであ
るというものであり,「大阪府守口市内のNTTの現場でのペデスタル杭
の撤去工事」において実施された発明(実施発明4)と同一の発明である
との無効理由を含むものではない。
しかるに,審決は,本件発明は,本件出願前に,「神戸第7突堤工事」
において実施された発明(実施発明1ないし3)あるいは「大阪府守口市
内のNTTの現場でのペデスタル杭の撤去工事」において実施された発
明(実施発明4)と同一の発明ではないとの判断をして,原告の主張を排
斥した。
(2)特許無効審判において,請求人が主張した無効理由とは別個の無効理由
を審理するためには,あらかじめ審判手続において,特許法153条2項
の規定による通知をし,当事者に意見を申し立てる機会を与える手続を採
らなければならない。上記規定が設けられたのは,当事者に対して,適正
公平な審判手続を保障するとの趣旨のみならず,第三者に対して,審決の
効力の及ぶ範囲を明確にするとの趣旨によるものと解される。とりわけ,
後者の趣旨は重要であり,特許法167条に「何人も,特許無効審判・・
・の確定審決の登録があったときは,同一の事実及び同一の証拠に基づい
てその審判を請求することができない。」と規定されていることを併せ考
慮すると,審決の判断の基礎とした無効理由を構成する事実及び証拠がど
のようなものであるかを,審判手続において明確にさせることが必要不可
欠であるといえる。したがって,請求人が主張した無効理由を審決で摘示
することは必須であり,また,請求人が主張しない無効理由について,上
記のような手続を採ることなく,審決において判断することは,手続上の
違法を来す余地があるというべきである(知的財産高等裁判所平成19
年(行ケ)第10380号事件・平成20年11月27日判決参照)。
(3)本件についてみると,実施発明4についての無効理由に係る事実(実施
発明4が本件発明と同一であり,かつ,公然実施されたものであるとの事
実)は,実施発明1ないし3についての無効理由に係る事実(「神戸第7
突堤工事」において実施された発明(実施発明1ないし3)が,本件発明
と同一であり,かつ,公然実施されたものであるとの事実)とは,実施の
場所,日時等が明らかに異なるものであって,別個の事実である。
そして,本件全証拠によるも,本件審判の手続において,特許法153
条2項の規定による通知がされ,当事者に意見を申し立てる機会を与える
手続が採られたことを認めるに足りる証拠は,これを見いだすことができ
ない。
そうすると,審決が理由において述べた,大阪府守口市内のNTTの現
場でのペデスタル杭の撤去工事において実施された発明(実施発明4)は
本件発明と同一ではないとした判断部分は,原告が無効審判請求において
主張していない無効理由について,特許法所定の手続を採ることなく,当
該無効理由が存在しないとしたものといえる。
(4)以上のとおり,審決は,特許法の規定する適正な手続を経ることなく,
前記第2の3の(2)のエのとおり述べて,実施発明4が本件発明と同一であ
り,かつ,公然実施されたものであるとの無効理由が成立しない旨の判断
を示した点において,適切さを欠いた点がある。しかし,①原告が,審決
の審理手続の違法については,取消事由として主張せず,実施発明4に関
する審決の判断の誤りのみを取消事由として主張していること,②本件審
判について請求不成立の審決をするに際し,実施発明4について判断を示
す必要はないこと,③全体として,上記の適切妥当を欠いた手続及び理由
は,審決の結論に影響を与えるものとはいえないこと等の諸点を総合する
と,上記の点は,審決を取り消すべき事由に当たらないと解される。
3結論
以上のとおり,原告主張の取消事由には理由がなく,また,審決に,これ
を取り消すべきそのほかの誤りがあるとも認められない。よって,原告の本
訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決す
る。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官齊木教朗
裁判官嶋末和秀

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛