弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
一 控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求をいずれも棄却する。訴訟費用
は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文
同旨の判決を求めた。
二 当事者の主張は、次に記載するもののほか、原判決事実摘示第二に記載のとお
りであるから、これをここに引用する(但し、「原告」を「被控訴人」と、「被
告」を「控訴人」と読み替えるものとする。以下原判決引用部分について同
じ。)。
1 控訴人
(一) 原判決は、本件商標1ないし3の図柄の特徴を、「①黒色の太い枠からな
る正方形の輪郭、その内部の地色を下方部分において白色、その他の部分において
橙色とした点、②内部中央に、帽子をかぶり両手で投釣り用釣竿を持ち、両足をや
や開いた人物を黒色で大きく影絵風に描いてある点、③「DAIWA」の文字の
点」にあると認定しているが、右の①及び②に類似した図柄は、他の多くのメーカ
ーにおいても商標としてこれまで使用され、市場に流通してきたものであつて、ひ
とり被控訴人の商品であることを特徴づける商標ではなくなつてしまつている。
 すなわち、別紙に示す商標(1)ないし(6)は、被控訴人以外のメーカーの投
釣用釣竿の商標で、以前より市場に流通するものの一部である(もつとも、これら
商標の使用者、使用開始の時期、具体的使用態様は明らかでない。)が、これらは
いずれも原判決が商標の類似性として掲げた特徴の大部分又は相当部分を備えてい
ることからすると、原判決が認定するような図柄は、被控訴人の商品であることを
特徴づけるような独創性ある図柄ではなく、釣具業界で投釣用釣竿であることを示
すにすぎないものである。したがつて、本件商標1ないし3のうち、被控訴人の商
品であることを特徴づけるものは、「DAIWA」とローマ字で大書した部分のみ
であり、控訴人標章(原判決のいう「被告標章」)1ないし3の使用によつて、商
品の混同を生ずるおそれはない。
(二) 控訴人標章1ないし3及びこれを付した商品は、被控訴人の製品を下請製
造している大平洋釣具製造株式会社笠間工場の次長である【A】と釣用品の総合問
屋今西商事株式会社の専務取締役【B】の両名が、昭和四九年一一月ころ、【C】
(控訴人代表者)方に来訪し、同人に対し、「大平洋釣具製造株式会社の製品であ
る。心配ない商品なので売つて欲しい。」と交互に依頼したので、同代表者は、右
【A】が、前記のとおり、被控訴人の製品を下請製造している大平洋釣具製造株式
会社の工場の責任者の地位にあることをも考えて、それを信じて右依頼に応じたも
のである。
 したがつて、仮に控訴人に、被控訴人の商品と混同を生じさせる行為があつて、
同人の営業上の利益を害したとしても、控訴人には過失がない。
2 被控訴人
(一) 控訴人の(一)の主張について
 釣具メーカーは数多く存在し、被控訴人と競業関係に立つているが、その多く
は、販売市場において優位に立つ被控訴人の商品や商標を模倣しがちであり、別紙
商標(1)ないし(6)の中にも被控訴人の商標を意識して作成されたとみられる
ものもある。現に、右商標中その出所を示しているものは、(5)のシマノのもの
のみでその余のものは、いずれのメーカーの商品に付されているものか、また、い
ずれの時期に使用されたものであるかが全く不明である。しかも、(1)、(4)
の商標は、控訴人標章を作成した者によつて、これに一部変更を加えて作成された
ものであり、(5)のシマノの商標も、「シマノ」のカタログ(甲第三一号証の一
ないし一〇)には登載されていないことからみても、現実に商品に付された商標か
どうかさえ疑わしい。
(二) 控訴人の(二)の主張について
 控訴人は、昭和五〇年の初めには、被控訴人の商品である釣竿のいそかぜ全種を
取扱つていた旨宣伝していたのであるから、その商品に付された商標の存在を知つ
ていたはずである。また、控訴人は、被控訴人の製品を下請製造していた大平洋釣
具製造株式会社の関係者からの販売依頼の言を信じたというが、その当時、被控訴
人と同会社との下請関係が終了していたことは業界に周知の事実であり、同会社の
関係者の持参した商品に被控訴人の釣竿と類似の釣竿が含まれていれば、被控訴人
の商品との同一性について疑問をもつのが常識である。
 このようなことからしても、控訴人が被控訴人の釣竿と同一の釣竿を販売した行
為には、少なくとも過失があつたことは明らかである。
三 証拠関係(省略)
       理   由
一 当裁判所も、被控訴人の請求を認容すべきものであると判断するが、その理由
は、左記の点を付加するほか、原判決の理由と同一であるから、これをここに引用
する。
1 控訴人の(一)の主張について
 別紙(1)ないし(6)の商標については、その使用者、使用時期、期間などが
明らかでなく、本件において提出された証拠及び弁論の全趣旨に照らしても、この
ような商標が本件商標1ないし3の使用以前から釣具について広く使用されていた
ものとは認められない。仮にこのような商標が一部の業者によつて釣竿に使用され
た事実があつたとしても、そのことから、本件商標1ないし3について、商品の自
他識別機能が「DAIWA」とローマ字で大書された部分にのみ限定されるものと
は到底いえない。また、本件商標1ないし3と控訴人標章1ないし3とが、原判決
の説示するとおり、互いに類似する商標であることは明らかであり、右のとおり、
別紙(1)ないし(6)の商標が一部の業者によつて釣竿に使用されたからといつ
て、このことが、本件商標1ないし3と控訴人標章1ないし3とが互いに類似する
とした判断に影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。
 したがつて、控訴人の(一)の主張は採用できない。
2 控訴人の(二)の主張について
 原審における控訴人代表者尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、【C】(控
訴人代表者)は、同人が【A】らから販売の依頼を受けたとされる昭和四九年一一
月当時には、被控訴人の製品である釣竿にどのような商標が使用されていたかにつ
いて、これを充分承知していたものと推認するに難くない。そうとすれば、仮に控
訴人主張のような事実があつたとしても、【A】から販売の依頼を受けた釣竿に使
用されている商標が、本件商標1ないし3のいずれとも異なり、しかも、これと類
似しているのであるから、【A】が、被控訴人の製品の下請製造をしている大平洋
釣具製造株式会社の工場の責任者の地位にあるなどの事情があり、その商品が、同
会社の製品であるから心配がない旨述べたからといって、この種釣具の販売業者で
ある控訴人において、このような商品を販売することにより、被控訴人の商品であ
る釣竿と混同を生じさせる行為をして同人の営業上の利益を害するについて少なく
とも過失があつたとする認定をくつがえすに足りないことは明らかである。
 したがつて、控訴人の(二)の主張も採用できない。
二 よつて、本件控訴は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の
負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条、各規定を適用して、主文のとおり判決
する。
(裁判官 荒木秀一 藤井俊彦 清野寛甫)
別紙
<12241-001>
<12241-002>

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