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判決 平成14年4月18日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第1121号 傷
害,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
          主     文
    被告人を懲役1年4月に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
押収してある折りたたみ式ナイフ1丁(平成13年押第209号の1)を
没収する。
          理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成13年10月20日午後11時35分ころ,神戸市A区Ba丁目b番c
号所在の県公営住宅B団地C棟d階廊下から,V(当時39歳)に対し,同人が乗
車していたオートバイ(第2種原動機付自転車)のエンジン音がやかましいなどと
怒鳴りつけたところ,同人が反論し,全く謝ろうとしないなどとして激高の上,同
団地C棟e階エレベーターホールにおいて,同人に対し,その左前腕部を所携の木
棒(長さ約60センチメートル)で1回殴打し,よって,同人に対し,加療約1週
間を要する左前腕部打撲の傷害を負わせた
第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時ころ,前記団地C棟
e階エレベーターホールにおいて,刃体の長さ約7.5センチメートルの折りたた
み式ナイフ1丁(平成13年押第209号の1)を携帯した
ものである。
(証拠の標目)ー括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号ー
 省略
(補足説明)
 被告人は,捜査段階から一貫して,被害者に対し木棒を1回振り下ろしたことは
あるが,被害者が手に持っていたヘルメットに当たったのみで被害者の左前腕部に
は当たっていない旨供述し,弁護人は,被告人において,判示第1の暴行を加えた
事実はない,被告人において,ヘルメットを振りかざして殴りかかってきた被害者
の攻撃を避けるため,被害者に対し一回所携の木棒を振り下ろしたことはあるが,
仮に,その行為により被害者が傷害を負ったとしても正当防衛行為であるから無罪
である旨,判示第2の事実については,判示ナイフの携帯には違法性がないから無
罪である旨主張するところ,前掲関係各証拠によれば,判示各事実は,所論の点を
含め,いずれもこれを優に認めることができるのであるが,所論にかんがみ補足し
て説明を加える。
 前掲証人Vの当公判廷における供述その他前掲関係各証拠によれば,被告人にお
いて,ヘルメットを右手に持ち,左腕で頭部をかばうような姿勢の被害者に対し,
右手に持っていた木棒を振り下ろして,被害者の左前腕部を殴打し,その結果同人
に加療約1週間を要する左前腕部打撲の傷害を負わせた事実を認めるに十分であ
る。被告人は,現場で被害者の左腕を見たがなんの異常もなかったから,被害者は
虚偽供述をしているというが,前掲証人春藤啓介の当公判廷における供述その他の
関係証拠によれば,被害者がその左前腕部に判示の傷害を負った事実は明白である
など,前掲証人Vの公判供述の信用性は十分である。また,被告人の判示第1の行
為が正当防衛行為にあたるとし,あるいは判示第2につきナイフの携帯には正当な
理由があったとする弁護人の主張は,関係証拠に照らし,各行為につき何らの正当
性も認められない本件にあっては,明らかに失当である。
 以上のとおり,被告人及び弁護人の主張は理由がない。
(累犯前科)
 被告人は,平成8年5月13日神戸地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により
懲役2年6月に処せられ,平成10年10月13日その刑の執行を受け終わったも
のであって,この事実は,検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号28)
及び判決書謄本(同38)によって認める。 
(法令の適用)
 罰 条  第1 刑法204条
         第2 銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条
 刑種の選択   いずれも懲役刑選択
 再犯加重    各刑法56条1項,57条
 併合罪加重   同法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑
に同法14条の制限内で法定の加重)
 宣告刑     懲役1年4月
 未決勾留    刑法21条(100日算入)
 没収      刑法19条1項1号,2項本文(折りたたみ式ナイフ1丁につ
き,判示第2の犯行組成物件)
 訴訟費用    刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,判示の経過で被害者に所携の木棒でその左前腕部を一回殴打
し判示の傷害を負わせた事案(第1)とその際折りたたみ式ナイフ1丁を不法に携
帯した銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案(第2)であるが,各犯行の動機に格別
斟酌すべき事情は認められず,被告人は,犯行後,警察官に制止されたにもかかわ
らず,なおも被害者に攻撃を加えかねない気勢を示していたのであって,その犯行
の態様は執拗かつ悪質であること,被告人には前記の累犯前科のほか多数の前科が
あること,加えて,被告人は第1及び第2の各犯行につき不合理な弁解を繰り返し
て恥じるところがないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は重いといわねばなら
ない。そうすると,被害者の傷害の程度は比較的軽微に止まったことなど被告人の
ために斟酌すべき事情を考慮しても,主文の懲役刑を科するのはやむを得ないとこ
ろである。 
 よって,主文のとおり判決する。
  平成14年4月18日
     神戸地方裁判所第11刑事係甲
          裁 判 官  杉森研二

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