弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     当審の訴訟費用は被告人Aの負担とする。
         理    由
 被告人Bにかかる控訴趣意について。
 所論は、要するに、たばこ専売法第七十五条にいう没収追徴の客体には公社又は
その指定小売人の手を経て国家の財政収入が満足された後販売された製造たばこを
包含しないものと解すべきにかかわらず、これを包含するものと解釈し、被告人B
に対し没収追徴を言い渡した原判決には、法令の解釈を誤つた違法がある、という
に帰する。
 よつて按ずるに、たばこ専売法によるたばこ専売制度が結局において国家財政上
の収入をその根本目的とすることは所論のとおりであるけれども、同法は右根本目
的の下に、その企業独占の実を具体的に確保し且つ該企業の健実な運営及びその信
用の保持等を期するため、たばこの耕作、製造たばこの製造、輸入、販売、輸出等
の各段階において諸種の規制をなし、特に販売の段階においては、製造たばこの販
売機関をC公社及びその指定小売人に限定(同法第二十九条)すると共に公社及び
小売人に対し厳重な監督統制(同法第三十条、第三十一条、第三十四条乃至第三十
六条、第三十八条乃至第四十条等)をしていることに鑑みれば、たとえ指定小売人
が一旦消費者に売り渡した所論の製造たばこであつても、公社又は指定小売人でな
い者が反覆継続してする意思の下に、これを他に販売し又は販売の準備をする場合
は、たばこ専売法の根本目的とする財政収入の面において直接の侵害を与えるもの
とは云い難いけれども前記のような諸種の監督統制を乱し、ひいては右根本目的を
阻害することになるから、、かような行為は同法第二十九条第二項に違反するもの
と解するを相当とし(昭和三〇年(あ)第一〇二五号、同三二年七月九日最高裁第
三小法廷決定、判例集一一巻八号二〇五五頁参照)、他面同法第七十五条は、犯則
物件又はこれに代るべき価格が犯則者の手に存することを禁止すると共に国がたば
この専売を独占し、もつて前記目的を確保するため、特に必要没収、必要追徴の規
定<要旨>を設け、不正たばこの販売なとの取締を厳に励行しようとする趣旨である
と解せられるから、前記のように、指定小売人が一旦消費者に売り渡した製
造たばこであつても、これを更に販売し又は販売の準備をした行為につき、一定の
条件の下に同法第二十九条第二項第七十一条第五号の罪の成立を認める以上、右犯
罪にかかる製造たばこにつき没収追徴を言い渡すことは当然であり、国が既に財政
収入を得ていることを理由として例外的取扱をすべきいわれはない。本件について
これをみるに、被告人Bが公社から指定を受けた製造たばこの小売人でないのに反
覆継続してする意思の下に多量の製造たばこを他に販売し、又は販売の準備をした
ことは、原判決の判示自体に徴し明らかであるから、たとえ所論のように右製造た
ばこが指定小売人において一旦消費者に売り渡したものであることについては、検
察官が争わないとしても、犯罪にかかる製造たばこを没収し、又はその価格を追徴
した原判決の措置は相当であつて、論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 岩田誠 判事 司波実 判事 小林信次)

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