弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)被告が原告に対する公正取引委員会平成○年(判)第○号不当景品類
及び不当表示防止法違反事件につき平成19年1月30日付けでした審決
を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2被告
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,イタリアのa社製とされb株式会社(以下「b」という)が輸。
入したルーマニアで縫製されたズボンをbから購入して自社の小売店舗で一
般消費者に販売していた原告に対し,これらのズボンに取り付けられていた
品質表示タッグ(以下「本件品質表示タッグ」という)及び下げ札(以下。
「本件下げ札」という)に「イタリア製」と表示されていた(以下これら。
の表示を「本件原産国表示」という)のは平成17年法律第35号による。
改正前の不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という)4。
条1項3号の不当表示に当たるとして,被告から平成16年11月24日付
けで排除命令がなされ(平成○年(排)第○号,原告がこれに対して不服)
を申し立てたが(平成○年(判)第○号,被告が平成19年1月30日付)
けで上記排除命令と同内容の審決をしたため(以下「本件審決」という,。)
原告が本件審決の取消しを求めて訴えを提起した事件である。
2本件審決の主文,本件審決及びその引用に係る審決案が認定した事実の要
旨,法令の適用の要旨は,以下のとおりである。
(一)本件審決の主文(被審人とは原告である)。
(1)被審人は,自社の小売店舗において販売したa社製のズボンの取引
に関し,一般消費者の誤認を排除するために,平成12年2月ころから
平成16年7月ころまでの間に被審人が行った,当該ズボンの原産国が
ルーマニアであるにもかかわらず,あたかも,原産国がイタリア共和国
であるかのように示した表示は,事実と異なるものであり,かかる表示
は,当該商品の原産国について一般消費者に誤認される表示である旨を
速やかに公示しなければならない。この公示の方法については,あらか
じめ,当委員会の承認を受けなければならない。
(2)被審人は,今後,輸入されたズボンを販売するに当たり,原産国が
イタリア共和国でないのにイタリア共和国であるかのように示す表示が
行われることを防止するために必要な措置を講じ,これを自社の役員及
び従業員に周知徹底させなければならない。
(3)被審人は,今後,輸入されたズボンを販売するに当たり,原産国が
イタリア共和国でないのにイタリア共和国であるかのように示す表示を
行うことにより,当該商品の原産国について一般消費者に誤認される表
示をしてはならない。
(4)被審人は,第1項に基づいて行った公示及び第2項に基づいて採っ
た措置について,速やかに文書をもって当委員会に報告しなければなら
ない。
(二)認定した事実の要旨
(1)原告は,肩書地に本店を置き,衣料品の小売業等を営む事業者であ
り,bは,大阪市αに本店を置き,衣料品の輸入卸売業等を営む事業者
であり,a社はイタリアに所在する衣料品の製造業者である。
(2)原告は,bが輸入したa社製とされるズボンを購入して,平成12
,,年2月ころから平成16年7月ころまでの間原告の小売店舗において
一般消費者に販売を行った(原告が購入・販売したこれらのズボンを,
以下「本件商品」という。原告が上記の期間に販売のために仕入れ。)
た本件商品の数は約5700着であった。
(3)本件商品には,bの社名とともに「イタリア製」と記載された本件
品質表示タッグ並びに原告の社名及び商標とともに「イタリア製」と記
載された本件下げ札が取り付けられており,これらは原産国がイタリア
である旨の表示であると認められる。
しかし,本件商品は,実際にはルーマニアで縫製されたものであると
認められる「商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公正取。」
引委員会告示第34号。以下「原産国告示」という)において,原産。
国とは,その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われ
た国をいう旨が規定されているから,本件商品の原産国はルーマニアと
解されるものであった。
(4)原告は景品表示法上の表示を行った者(表示の主体)に該当するか
について(表示の主体について)
景品表示法は,不当な表示による顧客の誘引を防止するため,事業者
に自己の供給する商品等について一定の不当な表示をすることを禁止し
ており(同法4条1項,公正取引委員会は,これに違反する行為を行)
った事業者に対し,その行為の差止め又はその行為が再び行われること
を防止するために必要な事項等を命ずべきこととしており(同法6条1
項,このような規制の趣旨に照らせば,当該不当な表示についてその)
内容の決定に関与した事業者は,その規制の対象となる事業者に当たる
ものと解すべきである。この場合の「決定に関与」とは,自ら若しくは
他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合のみならず,
他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合や,他の
者にその決定を委ねた場合も含まれるものと解すべきである。そして,
この場合において,当該表示が同法4条1項に規定する不当な表示であ
ることについて,当該決定関与者に故意又は過失があることを要しない
ものである。
原告は,原告独自の視点から選択した商品群を消費者に提示するとい
ういわゆるセレクトショップという業態で衣料品の小売業を営んでいる
ところ,平成11年に本件商品の購入を始めるに当たり,bの説明に基
づき,本件商品がイタリア製であると認識し,その認識の下に,本件品
質表示タッグ及び本件下げ札の作成及び取付けをbに委託し,bがこれ
に応じて「イタリア製」と記載した本件品質表示タッグ及び本件下げ札
,。,,を作成し本件商品に取り付けた原告はその後平成16年までの間
累次にわたり本件商品を購入し,上記と同様の方法により上記の表示を
付した本件商品の販売を継続していたものである。原告は,本件品質表
示タッグ及び本件下げ札の作成をbに委託するに当たり,これに「イタ
リア製」である旨の記載がされることを認識していたものと推認するこ
とができる。原告が本件品質表示タッグ及び本件下げ札の表示内容の決
定に関与した者に該当することは明らかである。
(5)本件原産国表示が景品表示法の「表示」に当たるか否かについて
一般に,原産国に関する表示は,一般消費者の商品選択に資する情報
提供の一つとしてされるものであって,その商品選択に係る資料として
の重要性の大小の違いはあっても,およそ顧客を誘引する手段に当たら
ないということはできない。
(6)排除措置の要否について
不当表示行為が認められる場合の排除措置としては,景品表示法6条
1項に照らし,一般に,当該行為を取りやめること(差止め,当該行)
為によって生じた一般消費者の誤認を排除すること(誤認排除)及び被
審人における同様の行為の再発を防止すること(再発防止)が考えられ
るところ,本件においてはすでに不当表示行為はなくなっているので,
誤認排除及び再発防止の観点から,排除措置を命じることの要否を検討
する。
ア誤認排除のための措置
不当表示行為によって生じた誤認を排除するためには,当該不当表
示によって誘引された顧客の少なくとも大部分が不当表示の事実を知
ることができるような適切な方法・内容の告知が行われる必要があ
る。本件において,原告はすでにウェブサイト及び店頭に本件商品の
原産国誤記表示についてのお詫びとお知らせを掲載してはいるが,本
件商品を購入した消費者の購買行動等から,原告のウェブサイト及び
店頭における訂正告知により不当に誘引された顧客の大部分に告知さ
れたとは認められない。原告に対してはなお誤認排除のための措置を
とるよう命じることが必要である。
イ再発防止のための措置
不当表示を行ったか否かの認定においては,行為者の故意・過失の
有無を問うものではないが,再発防止のための措置が必要であるか否
かの判断においては,対象商品の取引実態から求められる注意義務を
当該行為者が果たしたか否かも勘案されるべきである。小売業者が一
般消費者に対してイタリア製であるとして販売することを予定して輸
入業者から商品を購入する場合には,原産国に係る不当表示を防止す
るため,小売業者は当該商品が真にイタリア製であるか否かを確認す
べき注意義務がある。しかし,原告は,本件商品の取引を開始する前
にbの担当者から本件商品がイタリア製であることを聞いたにすぎ
ず,その後において原産国がどこであるかをbに確認したことはなか
ったのであるから,原告が原産国に係る不当表示を防止するために注
意義務を果たしたとはいえないものである。原告に対して再発防止の
ための措置を講じるよう命じることが必要である。
(7)原告に対して排除措置をとるよう命じることが平等原則違反といえ
るかについて
景品表示法は,同法の趣旨・目的を効果的に達成するために,被告に
対して,当該不当な表示行為の実態に即応して規制権限を行使すること
ができるように,排除措置をとるよう命じるについても,また,いかな
る内容の排除措置をとるよう命じるか等についても,広範な裁量権を与
えている。景品表示法に違反する特定の表示を行っている事業者が多数
あると考えられる場合に,被告が上記の裁量権を行使して,違反行為の
規模,市場に与える影響,措置の実効性等を考慮して,一部の違反行為
者にのみ措置を命じることがあるのは当然である。原告による本件商品
の販売期間や販売形態に徴すると,原告に対して排除措置をとるよう命
じることが平等原則違反であるとはいえない。行政処分が平等原則に反
して違法なものとなるのは,被告が,処分の相手方である事業者以外の
違反行為をした事業者に対しては行政処分をする意思がなく,処分の相
手方である事業者に対してのみ,差別的意図をもって当該行政処分をし
たような場合に限られるものと解されるが(東京高裁平成8年3月29
日判決・公正取引委員会審決集42巻457頁,しかし,本件におい)
てこのような事実は認められない。
(三)法令の適用の要旨
以上によれば,原告は,本件商品の原産国について,原産国告示2項1
号に該当する表示をしていたものであって,これは,平成15年11月2
3日より前の表示については平成15年法律第45号による改正前の景品
表示法4条3号の規定に,同日以降の表示については改正後の景品表示法
4条1項3号の規定にそれぞれ違反する。
よって,原告に対し,平成17年法律第35号による改正前の独占禁止
法54条2項並びに同景品表示法7条1項及び2項の規定により,主文の
とおり審決する。
3本件の争点
本件の争点は,①原告が景品表示法4条1項3号に該当する不当な表示
を行った事業者(以下,単に「不当表示を行った者」という)に当たるか。
否か(争点1,②本件品質表示タッグ及び本件下げ札に表示された本件)
原産国表示は景品表示法4条1項3号の「表示」に該当するか(争点2,)
③本件原産国表示がなされたこと(以下「本件違反行為」という)につ。
いて原告に過失があることが必要か(争点3,④本件審決が命じる排除)
措置(以下「本件排除措置」という)はその必要性があるか(争点4,。)
⑤原告に本件排除措置をとるよう命じることは平等原則に違反するか(争
点5,⑥原告に本件排除措置をとるよう命じることは裁量権の濫用か()
争点6,である。)
4争点に関する当事者の主張
(1)争点1(原告が景品表示法4条1項3号に該当する不当な表示を行っ
た事業者(不当表示を行った者)に当たるか否か)
ア原告
(ア)不当表示を行った者とは,景品表示法の趣旨や責任主義及び比例
原則の考えからしても「表示内容を決定し又は表示内容の決定に実,
質的に関与した者」のことをいい,表示内容の決定に関与した者が複
数いるときは,その中のいずれか実質的な決定者が不当表示を行った
者として取り扱われることになると解釈すべきである。そして「表,
示内容の決定に実質的に関与した者」とは,自ら表示内容を決定した
わけではないが,その関与の態様,内容決定に影響を与え得る権限の
強弱,内容決定に対する判断能力などを総合的に勘案して,実質的に
自ら決定したのと同様と判断される者のことをいうものと解すべきで
ある。本件審決のような解釈では,不当表示を行った者の範囲が余り
に広くなりすぎ,不当である。
(イ)本件商品については,原告は,bに対して,本件品質表示タッグ
及び本件下げ札の作成と取付けを依頼していたにすぎない。アパレル
業界では,本件商品のように,輸入商社が海外の衣料品製造メーカー
から商品を買い付けてこれを小売業者に販売する取引(バイイング取
引)を行った場合には,商品の原産国については,輸入商社が自らの
判断と責任において決定する商慣習が存在している。したがって,本
件商品の原産国について「表示内容を決定した者」はbであって原告
ではない。また,原告には本件商品の原産国がどこであるかを調査す
る能力はなく,原産国についての表示内容の決定に影響を及ぼすよう
な権限もなく,さらに,bが原産国についてその表示内容を決定する
につき,原告がbに指示したりbから相談を受けたりしたこともなか
ったのであるから,原告は「表示内容の決定に実質的に関与した者」
すなわち「実質的に自ら決定したのと同様と判断される者」にも当た
らないのである。
(ウ)原告が景品表示法4条1項3号に該当する不当な表示を行った事
業者(不当表示を行った者)に当たるとした本件審決は,同法4条1
項の解釈を誤った違法がある。
イ被告
()(ア)景品表示法4条1項の表示を行った事業者不当表示を行った者
とは,本件審決のとおり「当該不当な表示についてその内容の決定,
に関与した事業者」であり,この場合の「決定に関与」とは,自ら若
しくは他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合のみ
ならず,他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場
合や,他の者にその決定を委ねた場合も含まれると解すべきである。
(イ)本件において,原告は,bに対し,購入申込書兼契約書(以下「
オーダーシート」という)を渡して,本件品質表示タッグ及び本件。
,,,下げ札の作成及び取付けを依頼しておりbはこの依頼に基づいて
本件品質表示タッグ及び本件下げ札をc株式会社に作成させ,d株式
会社においてこれを本件商品に取り付け,原告に納入していたもので
あり,原告は,これらを「e「f」などと称する原告直営の小売」,
店舗(セレクトショップ)において一般消費者に販売していたもので
ある。
(ウ)したがって,原告が「他の者の表示内容に関する説明に基づきそ
の内容を定めた者」あるいは「他の者にその決定を委ねた者」に当た
り「当該不当な表示についてその内容の決定に関与した事業者」で,
あることは明らかであり,景品表示法4条1項の表示を行った事業者
(不当表示を行った者)に当たるものである。
(2)争点2(本件品質表示タッグ及び本件下げ札に表示された本件原産国
表示は景品表示法4条1項3号の「表示」に該当するか)
ア原告
(ア)景品表示法4条1項3号の「表示」に該当するためには,①当
該表示が顧客を誘引するための手段であること,②事業者が行うも
のであること,③事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は
取引条件その他これらの取引に関する事項について行うものであるこ
と,④広告その他の表示であって公正取引委員会が指定するもので
あること,の4つの要件を満たすことが必要である。
(イ)しかし,本件原産国表示は,上記①の要件を満たしていない。な
ぜなら,原告は,本件商品のデザインや品質に着目して販売している
のであって,本件商品が「イタリア製」であることを顧客誘引の手段
とはしていないからである。このことは,原告がbに対して本件品質
表示タッグ及び本件下げ札の作成・取付けを発注する際に「イタリア
製」との原産国表示を求めていないことからも明らかである。
(ウ)実際にも,一般消費者が本件品質表示タッグ及び本件下げ札にそ
れぞれ小さく記載された「イタリア製」との本件原産国表示を判断基
準として本件商品を購入するという実態にはなく,現に,原告が平成
16年9月1日以降商品を「ルーマニア製」と訂正表示してその販売
を再開した後も,消費者に対する売上げにはまったく変化がないので
あり,このことからも「イタリア製」である旨の本件原産国表示が,
本件商品についての顧客誘引の手段となっていなかったことが明らか
である。
(エ)本件原産国表示は景品表示法4条1項3号の「表示」に該当しな
いから,本件審決は違法である。
イ被告
景品表示法4条1項3号は「前2号に掲げるもののほか,商品又は,
役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある
表示であって,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあ
ると認めて公正取引委員会が指定するもの」と規定しており,これに該
当する表示は禁止されているところ,これを受けて指定された原産国告
示の2項1号は,その商品の原産国以外の国名の表示で一般消費者が実
際の原産国を判別することが著しく困難であると認められる表示と定め
ている。したがって,原産国に関する不当な表示は,類型的に,不当に
顧客を誘引し公正な競争を阻害する蓋然性が高いものである。本件原産
国表示は原産国告示に該当する表示であるから,不当に顧客を誘引し公
正な競争を阻害するものである。
(3)争点3(本件原産国表示がなされたこと(本件違反行為)について原
告に過失があることが必要か)
ア原告
景品表示法6条1項による排除命令を発するためには,誤認排除措置
(公示)をとるよう命じる排除命令及び再発防止措置をとるよう命じる
排除命令のいずれについても,責任主義の原則から,排除命令の対象事
業者において不当表示がなされたことすなわち違反行為があったことに
ついて過失があったことが必要である。
しかし,本件商品は,a社が製造し,イタリアの卸売業者であるg社
を介してbが買い付けた商品であって,原告はこれをbから購入したも
のである。このような取引(バイイング取引)においては,アパレル業
界の商慣習上,原産国についての表示内容を決定するのは輸入者である
bであるから,そもそも,本件違反行為については,原告に過失の前提
となる注意義務はなかったのである。仮に原告に注意義務があったとし
ても,原告のような小売業者には,a社ともg社とも人的な関係はない
のであるから,原産国調査を行うことはできず,また,輸入業者である
bが原産国についての表示内容を決定する権限を有しているのであるか
ら,原告が原産国についての表示内容を決定する立場にはなく,したが
って,本件商品について原告が上記の注意義務を履行することは不可能
であった。さらに,仮に,原告が上記の注意義務を履行することが不可
能であったとまではいえないとしても,原告は,本件商品の初回購入に
当たって,取引責任者をイタリアに行かせ,イタリア国内のショールー
ムで商品の現物を確認させた上,a社が製造してg社が販売している本
件商品をイタリアで注文させたものであり,しかも,本件商品の輸入業
者は信用性の高い老舗商社であるbであったのであるから,小売業者で
ある原告としては,とり得る注意義務はすべて履行したものというべき
である(本件商品の縫製工場を実際に視察することは,a社等との人的
関係がない原告においては,本件商品のコストとの関係でも,事実上不
可能であった。本件審決もそこまでの注意義務は要求していない。。)
原告に注意義務違反はなかったのであるから,原告に本件違反行為につ
いての過失はなく,そうである以上,原告に対する本件審決は違法であ
る。
イ被告
景品表示法の目的は,商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及
び表示による顧客の誘引を防止することにより,公正な競争を確保し,
もって一般消費者の利益を保護することにあるところ(同法1条,こ)
のような法の目的に照らせば,景品表示法4条1項に違反する不当表示
行為すなわち違反行為については「不当表示を行った者」の故意・過,
失を問題とすべきではない。したがって,誤認排除措置(公示)をとる
よう命じる排除命令も再発防止措置をとるよう命じる排除命令も「不,
当表示を行った者」の故意・過失に関係なく発し得るものである。
ただ,再発防止措置をとるよう命じる排除命令については,その要否
や内容を判断する上において「不当表示を行った者」の原産国調査確,
認義務についての違反の有無や違反の程度等が斟酌されることはある
が,これは違反行為の成否について故意・過失を要するかとは別個の問
題である。なお,この原産国調査確認義務は,民事上の不法行為責任及
び刑事上の過失犯の要件となる「注意義務」とは異なるものであって,
不当表示を回避するために取引上要求される確認作業をすべき義務を意
味するにすぎず,具体的には,小売業者が輸入業者に対してどこの国の
製品であるかを漫然と尋ねるだけでは足りないが,商品の実質的変更行
為の具体的内容やそれが行われた実施場所を尋ね,場合によってはそれ
らについての根拠資料の提出を求めたりすることなどで足り,そして,
そのような行為が行われてはじめて上記の原産国調査確認義務が尽くさ
れたといえるのである。しかし,不当表示の発生を実際に防止するとい
うことまでは必要ではない。本件においては,原告はこのような原産国
調査確認義務すら尽くしていないから,原告にこの義務違反があったこ
とは明らかである。
(4)争点4(本件審決が命じる排除措置(本件排除措置)はその必要性が
あるか)
ア原告
(ア)景品表示法6条1項は「必要な事項」のみを命ずることができ,
ると規定している。本件においては,すでに原告において十分な誤認
排除措置及び再発防止措置をとっているから,原告に対してさらに本
件排除措置を命じる必要性がない。
(イ)すなわち,原告は,本件商品について原産国の誤記表示の疑念が
生じた段階で,直ちに本件商品の販売を中止し,平成16年9月から
平成17年1月25日までの間,原告のウェブサイト及び店頭ポップ
によって,事実経緯を一般消費者に告知し,本件商品の回収と代金の
返金を行っている。ウェブサイトは,それが一般消費者に対する情報
提供手段として有効であることが社会的に認知されており(近年の商
法改正により,電子公告も認められた,原告の商品に興味を持っ。)
ている一般消費者の多くが,原告のウェブサイトを見ることが容易に
予想されるのであって,日刊新聞紙に掲載する方法よりも効果的な公
告がなされているといえるのである。また,原告の顧客には何度も原
告の店舗に足を運ぶリピーターと呼ばれる顧客が非常に多く,したが
,,って本件商品を購入した顧客の多くが再び原告の店舗を訪れるから
店頭ポップによる告知も有効である。
(ウ)さらに,本件については,すでにbに対して排除命令が出されて
おり,bはこれを認諾している。本件のように輸入業者が存する場合
には,不当表示について責任を負っている輸入業者に対して排除命令
を出せば,一般消費者の誤認を排除する効果は十分に上がるのであっ
て,それ以上に小売業者である原告に対してまで排除命令を出す必要
はないのである。
また,bに対して排除命令が出されている以上は,これをもって十
分に再発防止措置がとられているというべきである。
(エ)本件排除措置は必要性を欠く違法なものである。
イ被告
(ア)公正取引委員会が排除措置をとるよう命じる必要があるか否か,
命じる必要がある場合にどのような内容の排除措置をとるよう命じる
か,については,公正取引委員会に広範な裁量権が与えられている。
(イ)不当表示による誤認効果が未だ一般消費者に残存している場合に
は,排除措置によってこれを除去すべきであり,他方,すでに誤認効
果が消失している場合には,排除措置をとるよう命じる必要性がない
ことになる。
原告のウェブサイトによる告知については,そもそも,ウェブサイ
トによる告知が日刊新聞紙による告知に比べて公示力が著しく低いほ
か,トップページからさらにリンクをたどった先に告知文を掲載する
という間接的な方法である。また,店頭ポップによる告知も,リピー
ターがどの程度の割合で来店するのか不明であり,A4サイズの用紙
に12ポイント程度の文字で記載した告知文は,必ずしも店内で顧客
の注意を引くものではない。
したがって,原告のウェブサイト及び店頭ポップによる告知は,不
当表示による本件商品についての一般消費者の誤認を排除するには不
十分というべきであって,誤認排除のための措置(公示)はなお必要
である。bに対して排除命令が出されていることは,原告に対する排
除命令の必要性を減ずるものではない。
(ウ)再発防止のための排除措置については,本件において不当表示行
為すなわち違法行為がなされるに至った経緯,原告のこれに対する認
識,原産国調査確認義務についての原告の違反態様,同様の不当表示
行為すなわち違法行為が再発するおそれがあるか否か,等を総合考慮
して判断すべきところ,本件においてこれらを考慮すれば,再発防止
のための排除措置もなお必要である。
(5)争点5(原告に本件排除措置をとるよう命じることは平等原則に違反
するか)
ア原告
(ア)bからa社製とされるズボンを購入して一般消費者に販売してい
,(,,た会社は行政処分を受けた原告ほか4社株式会社h株式会社i
株式会社j及び株式会社k)以外に33社あり,被告は,その社名と
取引の事実をすべて把握しているにもかかわらず,原告ほか4社に対
してのみ,明確な基準もなく他社と区別して,排除命令を出したもの
であって,他社に対しては不当表示に関する調査も行わず,警告すら
も出さずに放置している。仮に各社の商品の販売量に差があるとして
も,原告ほか4社に対してのみ排除命令を出して厳罰に処し,他社に
ついては違反行為のすべてを不問にするというのは,著しくバランス
を欠くものであって,原告を含む一部の業者を見せしめとして処罰し
ようという被告の恣意的・差別的な意図が窺われるものである。
(「」。)(イ)被告が平成15年11月10日に株式会社l以下lという
に対してした排除命令は,lが輸入したニット製手袋,繊維製手袋に
ついて,輸入される際に付されていた「中国製」との記載がある表示
物を取り除き新たに「日本製」の記載のある下げ札を取り付けたとい
う故意による悪質な事例であったが,同事例においては,lに対して
のみ排除命令を行い,lから購入した国内の販売業者やlに商標使用
を認めたライセンサーに対しては警告すら出していない。本件におい
て,原告は,bから本件商品を購入しただけにすぎず,lにおける国
内販売業者と異ならない立場にあるから,処分対象から除外されてし
かるべきである。
また,被告は,平成15年10月31日,被服を輸入した後「中国
産」と記載された表示物を故意に取り除いて(あるいはさらに「日本
製」と表示する表示物を故意に取り付けて)卸売業者や小売業者を通
じて販売した岐阜県の婦人服販売業者3社(株式会社m,n株式会社
及びo株式会社。以下これらを「岐阜3社」という)に対して,警。
告処分をしているところ,本件における原告の行為は,単にbに品質
表示タッグ及び下げ札の取付けを依頼しただけにすぎず,本件原産国
表示については過失さえなかったのであり,上記のような悪質な業者
に対して軽い警告処分にとどめながら,原告に対しては重い排除命令
を出すのは不当である。
(ウ)原告に対して本件排除措置を命じることは憲法14条の平等原則
に違反するものである。
イ被告
(ア)景品表示法は,被告に対し,排除命令に関する広範な裁量権を与
えているところ,行政処分が平等原則に違背して違法となるのは,処
分の相手方である事業者以外の違反行為をした事業者に対しては行政
処分をする意思がなく,処分の相手方である事業者に対してのみ差別
的意図をもって当該行政処分をしたような場合などに限られるもので
ある。被告は,排除命令を出すに当たって,違反事業者の規模,違反
行為の地域,違反内容の程度等から,一般消費者の誤認の程度や市場
に与えた影響等を総合的に考慮して合理的な判断を行っている。
原告は,平成16年9月時点で判明していた直近の年間売上高で2
60億円もの売上げを上げており,セレクトショップと呼ばれる高級
衣料品専門店の中でも,消費者や市場に与える影響の大きい有数な事
業者である。そして,原告が平成12年春夏シーズン物から平成16
年春夏シーズン物までの長期にわたり,合計約5700着もの大量の
a社製とされるズボンを仕入れていることを考慮すれば,景品表示法
の趣旨・目的を効果的に達成する観点から,原告に排除措置をとるよ
う命じることには十分に合理性がある。また,原告は,bにとって,
株式会社h,株式会社i,株式会社j及び株式会社kとともに,a社
製とされるズボンの有力な販売先であったのであり,被告は,不当表
示の再発の抑止に資するとの観点から,これら5社に対して審判前の
排除命令を出したものであって,このような被告の裁量権の行使に差
別的な意図はまったくない。
,,,,,(イ)また被告は事案ごとに違反行為の規模市場に与える影響
措置の実効性等を考慮して,処分の要否を決定しており,原告の引用
するlの事例及び岐阜3社の事例は本件とは事案の内容を異にするも
のであり,国内輸入業者が不当表示を作成して取り付けた場合であっ
ても,これに対する小売業者の関与の態様は千差万別であるから,こ
れらの事例と単純に比較して原告に対する排除命令が平等原則に違反
するということもできない。
()(6)争点6原告に本件排除措置をとるよう命じることは裁量権の濫用か
ア原告
本件において,原告が本件原産国表示の発生を防止することは不可能
であったから,本件審決の主文第1項が原告に対して誤認排除の措置(
公示)をとることを命じ,主文第2項及び第3項が原告に対して再発防
,。止の措置をとることを命じることは不可能なことを命じたものである
このように不可能なことを命じる本件審決は,裁量権を逸脱するもので
あり違法である。
また,前記のl及び岐阜3社の事例からも明らかなように「海外の,
製造業者から国内の輸入業者が商品を輸入し,国内の輸入業者が不当表
示を作成してこれを商品に取り付けた場合には,その商品が国内小売業
者を通じて一般消費者に販売されたときでも,排除命令や警告処分の対
象となるのは国内輸入業者のみであって,国内小売業者は排除命令や警
告処分の対象とはならない」という準則,裁量基準が存在している。。
しかるに,本件においては,被告は,これまでのこの準則,裁量基準を
突如として変更し,国内小売業者である原告に対して,事前に一切の行
政指導をしないままに,抜き打ち的に排除命令を下したものであって,
このような排除命令は裁量権を逸脱したものであり違法である。
イ被告
景品表示法4条1項に違反する不当表示が成立するか否かについて
は「不当表示を行った者」の故意・過失を問題とすべきではない。ま,
た,本件審決が命じる本件排除措置はいずれも容易になし得るものであ
って,不可能なことを強いるものではない。現に,株式会社kは審決を
受け入れて命じられた排除措置を実施している。
また,原告が主張するような準則,裁量基準は存在しない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所は,原告の本件請求を棄却すべきものと判断する。その理由は以
下のとおりである。
2争点1(原告が景品表示法4条1項3号に該当する不当な表示を行った事
業者(不当表示を行った者)に当たるか否か)について
(1)原告は,前記のとおり「不当表示を行った者とは「表示内容を決定,,
し又は表示内容の決定に実質的に関与した者」のことをいい「表示内容,
の決定に実質的に関与した者」とは,自ら表示内容を決定したわけではな
いが,その関与の態様,内容決定に影響を与え得る権限の強弱,内容決定
に対する判断能力などを総合的に勘案して,実質的に自ら決定したのと同
様と判断される者のことをいうものと解すべきである」旨を主張する。。
(2)そこで検討するに,景品表示法の目的は,商品及び役務の取引に関連
する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止することにより,公正
な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護することにあり(同法1
条,このような目的を達成するために,景品表示法は「事業者は,自),
己の供給する商品又は役務の取引について,次の各号に掲げる表示をして
はならない」と規定して(同法4条1項柱書,事業者に対し,不当に。)
顧客を誘引し公正な競争を阻害するおそれがある表示をすることを禁じて
おり,そして,その違反行為があった場合には,公正取引委員会は「当該
事業者に対し,その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを
防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な
事項を命ずることができる。その命令は,当該違反行為が既になくなって
いる場合においても,することができる」と規定して(同法6条1項,。)
一般消費者の誤認を排除する措置及び再発を防止する措置をとるよう命じ
る排除命令を事業者に対して発することができることとしている。
以上のような法の趣旨に照らし,また,同法4条1項は不当表示を行っ
た違反者に対して民事的・刑事的な非難を加えてその責任を問うたり刑罰
を課したりするものではないことをも考慮して,同法4条1項3号に該当
する不当な表示を行った事業者(不当表示を行った者)の範囲について検
討すると,商品を購入しようとする一般消費者にとっては,通常は,商品
に付された表示という外形のみを信頼して情報を入手するしか方法はない
のであるから,そうとすれば,そのような一般消費者の信頼を保護するた
めには「表示内容の決定に関与した事業者」が法4条1項の「事業者」,
(不当表示を行った者)に当たるものと解すべきであり,そして「表示,
内容の決定に関与した事業者」とは「自ら若しくは他の者と共同して積,
極的に表示の内容を決定した事業者」のみならず「他の者の表示内容に,
関する説明に基づきその内容を定めた事業者」や「他の事業者にその決定
を委ねた事業者」も含まれるものと解するのが相当である。そして,上記
の「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」と
は,他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者
から説明を受けてこれを了承しその表示を自己の表示とすることを了承し
た事業者をいい,また,上記の「他の事業者にその決定を委ねた事業者」
とは,自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者
に表示内容の決定を任せた事業者をいうものと解せられる。
(3)本件において,査第7号証,査第9号証,査第10号証,審第1号証
及び参考人pの審訊における供述によれば,平成11年8月ころ,原告の
担当社員(バイヤー)は,bのブランド事業部(衣料品を海外から輸入し
て専門店等に販売する業務を主として担当する部署)の営業担当社員であ
るqから,そのプレゼンテーションの中で,a社製とされるズボンについ
て,イタリア製である旨すなわち原産国はイタリアである旨の説明を口頭
で受けて,この説明を信用し,a社製とされるズボンを購入することを決
,,,め平成12年2月ころから本件商品をbより購入し始めたこと原告は
本件商品の購入について,その発注の際にオーダーシート(審第1号証)
をbに交付し,これによって購入商品を特定するとともにその購入商品に
付する原告の商品管理番号等を伝え,また,品質表示タッグ,下げ札及び
ダブルネームラベルの作成と取付けを依頼し,さらに,品質表示タッグ及
び下げ札に原産国の表示を記載することをも依頼していたこと,そして,
原告は,その原産国の表示の記載がイタリアとされることを了解していた
こと,bは,これに基づき「イタリア製」と記載した本件品質表示タッ,
グ及び本件下げ札をc株式会社に作成させ(審第2号証,d株式会社を)
してこれらを本件商品に取り付けさせたこと,bは,平成12年2月ころ
から平成16年7月ころまでの間,本件商品合計約5700着を原告に販
売したこと,原告は,これらの商品を「e「f」と称する自己の小売」,
店舗(セレクトショップ)において一般消費者に販売していたこと,原告
の経営するセレクトショップは,通常の量販店とは異なり,原告が独自の
視点から品質,色,デザイン,流行等を考慮して商品を選択しその上でこ
,,れを一般消費者に提示して販売するという小売店舗であり一般消費者は
そのような原告の独自の視点による商品の選別に共感を覚えまたそれを信
頼して商品を購入するものであって,そのような「原告が独自の視点から
選択している」ということが一般消費者において商品の購入を決める一
(,),,つの要因となっていたものであること査第7号証査第9号証なお
(,,本件商品はルーマニアで縫製されたものであり査第4号証査第7号証
査第9号証,査第13号証,本件商品の原産国告示による「原産国」は)
「ルーマニア」であったこと(すなわち,本件商品の縫製地はルーマニア
であり「原産国」とは「その商品の内容について実質的な変更をもた,,
らす行為が行なわれた国」であって(原産国告示備考2号,縫製は,衣)
料品たる外衣の基本的形状を実現し,外衣としての機能を付与する直接的
な行為(工程)であり,品質の善し悪しを大きく左右する行為であって,
「」,それは商品の内容について実質的な変更をもたらす行為といえるから
「原産国」は「ルーマニア」であった,が認められる。これらの事実。)
は,上記の実質的証拠に基づいて被告が認定した事実でもある。
(4)以上によれば,原告は,bから本件商品の原産国はイタリアであると
の説明を受けてこれを信用し,bに作成及び取付けを依頼した本件品質表
示タッグ及び本件下げ札に本件商品の原産国がイタリアであると記載され
ることを了解していたこと,原告はこのような本件品質表示タッグ及び本
件下げ札が取り付けられた本件商品を自己の経営するセレクトショップに
おいて販売していたこと,が認められ,これによれば,原告が景品表示法
()4条1項3号に該当する不当な表示を行った事業者不当表示を行った者
に当たること,すなわち「表示内容の決定に関与した事業者,すなわ,」
ち「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」,
に当たることは明らかである。
(5)したがって,被告が実質的証拠に基づいて認定した事実に基づいてし
た本件審決の判断(本判決と同旨の判断)は相当である。原告が景品表示
法4条1項3号に該当する不当な表示を行った事業者(不当表示を行った
者)に当たらないとする原告の上記主張は採用することができない。
3争点2(本件品質表示タッグ及び本件下げ札に表示された本件原産国表示
は,景品表示法4条1項3号の「表示」に該当するか)について
(1)原告は,前記のとおり「景品表示法4条1項3号の「表示」に該当,
するためには,当該表示が顧客を誘引するための手段であることが必要で
,。,あるが本件原産国表示は顧客を誘引するための手段ではないなぜなら
原告は,本件商品のデザインや品質に着目して販売しているのであって,
本件商品が「イタリア製」であることを顧客誘引の手段とはしていないか
らである」旨を主張する。。
(2)そこで検討するに,景品表示法4条1項3号は「商品又は役務の取,
引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であっ
て,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公
正取引委員会が指定するもの」と規定し,このような表示をなすことを禁
止しているところ,この規定を受けて被告が定めた原産国告示は,2項柱
書で「外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であ,
って,その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が
判別することが困難であると認められるもの」と規定し,同項2号におい
て「その商品の原産国以外の国の国名,地名,国旗,紋章その他これら,
に類するものの表示」と規定し,さらに,備考2において「この告示で,
「原産国」とは,その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が
。」。,「」行なわれた国をいうと規定しているそうとすれば上記の原産国
以外の国の国名の表示は定型的に不当に顧客を誘引し公正な競争を阻害す
るおそれがある表示と被告が認めたものということができ,そして,この
判断は合理性を有するものである。なお,この原産国告示は,景品表示法
5条の規定により,公聴会を開いて関係事業者及び一般の意見を聴取した
上で,被告において定めたものである。
原告は,上記のとおり「本件商品が「イタリア製」であることを顧客,
誘引の手段とはしていない」旨を主張する。確かに,一般消費者が本件。
,,,商品のようなブランド衣料品を購入する場合には商品の企画デザイン
品質管理等を行うブランドに着目して商品を購入することが通常であろう
と考えられるから,その意味で,一般消費者において原産国(縫製された
国)がどこであるかについての関心は相対的に低くなることは否定できな
い。しかし,縫製は,前記のとおり,企画しデザインされた衣料品の基本
的形状を実現し,衣料品としての機能を付与する重要な行為(工程)であ
って,縫製の完成度いかんによって品質の善し悪しが大きく左右されるの
であるから,そうであれば,一般消費者が本件商品を購入する場合にはな
お十分に縫製国すなわち原産国がどこであるかを意識しているとみるのが
相当であり,むしろ,本件商品のようなブランド衣料品であればこそその
購入に際しては縫製国すなわち原産国を強く意識していると考えるのが自
然であり相当であって,本件商品を購入する一般消費者においてもその原
産国がどこであるかは強い関心事であるというべきである。したがって,
この点からも,本件品質表示タッグ及び本件下げ札に表示された本件原産
国表示は,顧客を誘引するための手段であるということができる。仮に原
告がその主観において本件原産国表示を顧客誘引のための手段であるとは
考えていなかったとしても,そのことは上記の判断に影響を与えるもので
はなく,また,たとえ原告が平成16年9月1日以降商品を「ルーマニア
製」と訂正表示して販売を再開した後も消費者に対する売上げに変化がな
かったとしても(審第3号証,そのこともまた上記の判断を左右するも)
のではない。
本件品質表示タッグ及び本件下げ札に表示された本件原産国表示は,景
品表示法4条1項3号の「表示」に該当するものである。
(3)したがって,被告が実質的証拠に基づいて認定した事実に基づいてし
た本件審決の判断(本判決と同旨の判断)は相当である。本件原産国表示
が景品表示法4条1項3号の「表示」に該当しないとする原告の上記主張
は採用することができない。
4争点3(本件原産国表示がなされたこと(本件違反行為)について原告に
過失があることが必要か)について
(1)原告は,前記のとおり「景品表示法6条1項による排除命令を発す,
るためには,誤認排除措置(公示)をとるよう命じる排除命令及び再発防
止措置をとるよう命じる排除命令のいずれについても,排除命令の対象事
業者において不当表示がなされたことすなわち違反行為があったことにつ
いて過失があったことが必要である。しかし,本件違反行為については,
原告に過失の前提となる注意義務がなかった。仮に原告に注意義務があっ
たとしても,原告が上記の注意義務を履行することは不可能であった。さ
らに,仮に原告が上記の注意義務を履行することが不可能であったとまで
はいえないとしても,小売業者である原告としてはとり得る注意義務はす
べて履行したものである」旨を主張する。。
(2)そこで検討するに,前記のとおり,景品表示法の目的は,商品及び役
務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するこ
とにより,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護すること
にあり(同法1条,排除命令は,このような法の趣旨・目的に従い,不)
当表示行為があった場合すなわち違反行為があった場合に,不当な顧客の
誘引を防止し,不公正な競争状態を公正な競争状態に復し,もって一般消
費者の利益を保護するために被告に与えられた権限であり(同法6条1
項,その内容は,当該違法行為を取りやめること(差止め,同様の行))
為の再発を防止するための措置をとること,当該違法行為によって生じた
一般消費者の誤認を排除するための措置(公示)をとること,を命じるこ
とである。そして,行政処分たる排除命令が,対象事業者に対する非難可
能性を基礎とする民事上・刑事上の制裁とはその性質を異にするものであ
ることを考慮すると,景品表示法4条1項に違反する不当表示行為すなわ
ち違反行為については,不当表示行為すなわち違反行為があれば足り,そ
れ以上に,そのことについて「不当表示を行った者」の故意・過失は要し
ないものというべきであり,故意・過失が存在しない場合であっても排除
命令を発し得るものというべきである。
したがって,景品表示法6条1項による排除命令を発するためには不当
表示行為すなわち違反行為を行った者の故意・過失が必要であるとする原
告の上記主張は採用することができない(景品表示法4条1項の不当表示
についての故意・過失とは別個に同法6条1項の排除命令の発令要件とし
ての故意・過失を観念することは相当でない。。)
(3)もっとも,被告が原告に対して再発防止のための必要な措置を講じる
よう命じるについては,その要否や内容を判断する上において,不当表示
,,行為すなわち違法行為がなされるに至った経緯原告のこれに対する認識
原産国調査確認義務についての原告の違反態様,同様の不当表示行為すな
わち違法行為が再発するおそれがあるか否か,等を総合考慮して判断すべ
きであるが,これと景品表示法4条1項に違反する不当表示行為すなわち
違反行為の成否・存否とは別個の問題である(原告に原産国調査義務違反
があったことは後記5(7)で認定するとおりである。。)
5争点4(本件審決が命じる排除措置(本件排除措置)はその必要性がある
か)について
(1)原告は,前記のとおり「景品表示法6条1項は「必要な事項」のみ,,
を命ずることができると規定している。本件においては,すでに原告にお
いて十分な誤認排除措置及び再発防止措置をとっているから,原告に対し
てさらに本件排除措置を命じる必要性がない」旨を主張する。。
(2)そこで検討するに,前記のとおり,景品表示法6条1項は,被告に対
して,同法4条1項に違反する不当表示行為すなわち違反行為があるとき
は,一般消費者の誤認を排除する措置及び再発を防止する措置をとるよう
命じる排除命令を事業者に対して発することができるとしており,排除命
令は,不当な顧客の誘引を防止し,不公正な競争状態を公正な競争状態に
復し,もって一般消費者の利益を保護するために被告に与えられた権限で
ある。そして,被告がこの権限を行使して排除措置とることを違反者に命
,,じるか否か命じる場合にどのような内容の排除措置をとるよう命じるか
については,被告に広範な裁量権が与えられているものである。
(3)本件審決は,審第9号証,審第10号証及び参考人pの審訊における
供述により「原告は,本件商品の原産国がルーマニアであると判明した,
後,原告が開設しているウェブサイトに「a社製品の原産国誤記表示に,
ついてお詫びとお知らせ」と題し「……弊社が日本総輸入代理店で,
あるb株式会社より仕入れ,……販売致しました,イタリア国a社の製
造にかかる「商品」の原産国の表示につきまして,……お客様に誤解を
与える表示がありました。このイタリア国a社の製造による商品は,実際
の生産国がルーマニア国生産であるにも拘わらず,当該輸入代理店の事実
誤認によるイタリア国生産との報告のもとにイタリア国の原産国表示にて
販売していたことが判明致しました。……」と記載した上,対象商品の
商品名,ブランド名,販売期間,ブランドネームの写真等を掲載し,さら
に,原告は,本件商品取扱店舗のレジカウンター上に「a社製品の原産,
国誤記表示についてお詫びとお知らせ」と題し「……下記の商品に,
付記しておりました原産国の表示に誤りがありました(正ルーマニア。
国生産誤イタリア国生産)……」と記載し,対象商品の商品名,ブ
ランド名,販売期間,ブランドネームの写真等を掲載したA4判の大きさ
の店頭告知を設置し,同内容の告知を店舗内の本件商品販売コーナーにも
設置した」と認定したが,この認定は,実質的証拠に基づく合理的なも。
のである。
これによれば,原告はウェブサイトでの告知及び店頭の告知により一応
一定の顧客に対して本件原産国表示の誤りを知らせたものと認められる。
(4)しかしながら,ウェブサイトでの告知及び店頭の告知では,自ら積極
的に原告のウェブサイトにアクセスして情報を入手しようとする顧客(し
かも,その中で,原告のウェブサイトのトップページからさらに原産国誤
記表示のタイトルのリンクをたどって告知文の内容にまで至る顧客)や自
ら原告のセレクトショップに足を運ぶリピーターに対しては告知効果があ
るものの,これらのいわば能動的な顧客以外の一般消費者(本件原産国表
示により誤認を生じてしまった一般消費者)に対しては何ら告知効果はな
いものである。そして,本件商品がブランド衣料品であるということや,
原告の事業規模の大きさ,さらには本件原産国表示が小売市場に与えた影
響,等を考慮すると,原告のウェブサイトでの告知及び店頭の告知では未
だ一般消費者の誤認を排除するための措置としては不十分というべきであ
って,被告が原告に対し日刊新聞紙等による公示を前提としたさらなる誤
認排除のための措置(公示)を命じたことは,被告に与えられた裁量権を
逸脱するものではないというべきである。
原告は「ウェブサイトは,それが一般消費者に対する情報提供手段と,
して有効であることが社会的に認知されており,日刊新聞紙に掲載する方
法よりも効果的な公告である」旨を主張するが,排除命令において命じ。
る公示は,一般消費者に対して,事実と異なる表示(不当表示)があった
こと及び当該事業者がその誤認を生じさせる不当表示を行ったことを広く
一般消費者に知らせ,もって一般消費者の誤認を排除することを目的とす
るものであるから,そのような目的を十分に達成するためには,やはり原
告のウェブサイトでの告知では足りないというべきであって,多数の国民
が毎日目を通すあるいは通し得る巨大なメディアである日刊新聞紙に掲載
して公示させることが最も適切かつ効果的な方法であるというべきであ
る。
また,原告は,近年の商法改正による電子公告制度を例に挙げて,ウェ
ブサイトによる公示力の高さを主張するが,電子公告制度の利用は,定款
にその旨を定めなければならないこと(会社法939条1項3号,ウェ)
ブサイトのアドレス等の必要事項の登記義務があること(同法911条3
項29号イ,法務大臣の登録を受けた調査機関の調査を受ける必要があ)
ること(同法941条,法務省が所管する電子公告リンク集サイトに掲)
載されること,などの種々の条件や規制に服するのであって,ウェブサイ
トへの掲載が日刊新聞紙への掲載と同等又はそれ以上の公示力があるとは
認め難いものである。
(5)もっとも,原告に対して再発防止のための措置を講ずるよう命じるに
ついては,前記のとおり,不当表示行為すなわち違法行為がなされるに至
った経緯,原告のこれに対する認識,原産国調査確認義務についての原告
の違反態様,同様の不当表示行為すなわち違法行為が再発するおそれがあ
るか否か,等を総合考慮して判断すべきであるが,前記2(3)の認定のと
おり,原告は,bから本件商品がイタリア製である旨すなわち原産国はイ
タリアである旨の説明を受けこれを信用し,品質表示タッグ及び下げ札に
原産国の表示を記載することを依頼するとともに,その原産国の表示がイ
タリアとされることを了解し,このような品質表示タッグ及び下げ札が取
り付けられた本件商品を自己の経営するセレクトショップで販売していた
こと,原告は,輸入業者であるbに対して本件商品の原産国がイタリアで
あることの具体的な根拠を尋ねておらず,その根拠資料の提出も求めてい
ないこと,原告は現在も衣料品の小売販売を継続しているが,原告は本件
商品についての原産国調査確認義務を怠ったことを強く否認していること
に徴すると,原告のこれからの衣料品販売において本件のような原産国調
査確認義務違反の行為が起こる可能性は否定できないというべきであるこ
と,等を考慮すると,被告が原告に対し再発防止のための排除措置をとる
よう命ずることが被告に与えられた裁量権を逸脱するものとはいえないと
いうべきである。
(6)したがって,被告が実質的証拠に基づいて認定した事実に基づいてし
た本件審決の判断(本判決と同旨の判断)は相当である。本件排除措置が
その必要性がないのになされたものであるとの原告の上記主張は採用する
ことができない。
(7)なお,原告に原産国調査確認義務違反があったか否かについて検討す
ると,原告は,前記2(3)の認定のとおり,bから,a社製とされるズボ
ンについて,イタリア製である旨すなわち原産国はイタリアである旨の説
明を口頭で受けて,これを信用し,a社製とされる本件商品の購入を始め
たこと,原告は,bに対して品質表示タッグ,下げ札及びダブルネームラ
ベルの作成と取付けを依頼し,bが作成して取り付ける品質表示タッグ及
,,び下げ札に原産国がイタリアと記載されることを了解していたことbは
これに基づき「イタリア製」と記載した本件品質表示タッグ及び本件下,
げ札を作成して本件商品に取り付けたこと,しかし,原告は,a社製とさ
れる本件商品の販売に当たって,小売業者として原産国告示にいう「原産
国」がどこであるかを調査し確認すべき義務があったにもかかわらず,輸
入業者であるbに対して本件商品の原産国がイタリアであることの具体的
な根拠を尋ねたりその根拠資料の提出を求めたりはしなかったこと,が認
められるのである。すなわち,原告には,原産国調査確認義務として,輸
入業者であるbに対して,本件商品の原産国がどこであるかを尋ねるほか
に,原産国をイタリアと説明したことについて具体的な根拠を尋ね,返答
いかんによっては,その説明の根拠資料の提出を求め,さらには,a社か
らの送り状等によって原産国を今一度確認するよう求めるなど,小売業者
としてなすべき義務があったにもかかわらず(これらの義務は容易に履行
できるものであって,原告に困難を強いるものではなく,また,時間や費
用がかかるものでもない,そして,これらの義務が履行されていれば,。)
bは改めて原産国はどこかという観点から本件商品を調査し,a社からb
に対する送り状には原産地が「ルーマニア」と記載されていたのであるか
ら(査第9号証,bは本件商品の原産国がルーマニアであることに気付)
いたはずであったのに(仮に気付かなかったとしても,原告の上記原産国
調査確認義務が履行されていることに変わりはない。原産国調査確認義務
はbをして実際に気付かせることまでを要求してはいないからである,。)
原告は,上記のとおり,bの説明を信用し,bが原産国をイタリアと説明
したことについて具体的な根拠を尋ねておらず,その根拠資料の提出を求
めたりしてもおらず,さらには,a社からの送り状等によって原産国を確
認するよう求めることなどもしていないのであるから,そうとすれば,原
告に上記の原産国調査確認義務を怠った義務違反があったことは明らかで
あるというべきである。仮に原告の取引責任者が,初回の購入に当たり,
,,イタリアに赴きイタリア国内のショールームで商品の現物を確認した上
イタリアで注文したものであったとしても,また,輸入業者がbであった
としても,原告は,ひっきょう,本件商品の原産国については,bから原
産国はイタリアであるとの口頭の説明を受けてこれを信用したにすぎない
から,これらも上記の判断を左右するには足りないものである。
6争点5(原告に本件排除措置をとるよう命じることは平等原則に違反する
か)について
(1)原告は,前記のとおり「bからa社製とされるズボンを購入して一,
般消費者に販売していた会社は,合計38社あるのに,排除命令を受けた
のは原告ほか4社のみであって,被告は,他社に対しては不当表示に関す
る調査も行わず,警告すらも出さずに放置している。仮に各社の商品の販
売量に差があるとしても,原告ほか4社に対してのみ排除命令を出して厳
罰に処し,他社については違反行為のすべてを不問にするというのは,著
しくバランスを欠くものであって,原告を含む一部の業者を見せしめとし
。」て処罰しようという被告の恣意的・差別的な意図が窺われるものである
旨を主張する。
(2)そこで検討するに,前記のとおり,景品表示法6条1項は,同法4条
1項に違反する不当表示行為すなわち違反行為があるときは,被告が事業
者に対して排除命令を発することができるとしており,被告がこの権限を
行使して排除命令を発するか否か,発する場合にどのような内容の排除命
令を発するか,については,被告に広範な裁量権が与えられているもので
ある。したがって,個々の排除命令が他の事業者との関係で平等原則違背
として違法となるのは「被告が,処分の相手方である事業者以外の違反,
行為をした事業者に対しては当初から行政処分をする意思がなく,処分の
相手方である事業者に対してのみ差別的意図をもって当該行政処分をした
ような場合などに限られる」と解される。。
しかるところ,原告の平成16年9月時点において判明していた直近の
年間売上高は260億円であり(査第10号証,bにとって,原告は,)
株式会社i,株式会社jとともに,a社製ズボンの有力な販売先であり(
この3社でa社製ズボンの購入の7割を占めていた(査第7号証,査。)
第9号証,原告は「e「f」と称するセレクトショップにおいて,),」,
平成12年2月ころから平成16年7月ころまでの間に合計約5700着
の本件商品を一般消費者に販売したものであること(査第10号証,原)
告は,本件商品の一部については,下げ札に「a」に加えて「e」と記載
し,いわゆるダブルネームの表示を行っていたこと(査第10号証,が)
認められ,原告の事業規模の大きさ,本件商品の販売量の多さ,本件商品
が原告が独自の視点によって商品を選択し一般消費者にその商品を提示し
て販売するという形態のセレクトショップで販売されていたこと,一般消
費者の原告が経営するセレクトショップに対する信頼には厚いものがあっ
たと窺われること,などにかんがみれば,本件原産国表示が一般消費者及
び市場に与えた影響には極めて大きなものがあったということができ,原
告に排除命令を出すことによって輸入衣料品市場における今後の不当な原
産国表示の現出を抑える効果も期待できることを考慮すれば,原告に対し
て本件排除措置をとるよう命じることは相当であって,それが平等原則に
違反した被告の差別的意図によるものとは認められず,被告がその裁量権
を逸脱したものともいえないものである。
(3)原告は,l及び岐阜3社との関係において本件排除措置が平等原則に
違反する旨を主張するが,排除措置をとるよう命じるにあたっては,違反
行為の態様のみならず,違反事業者の規模,違反行為によって公正な競争
が阻害された市場の地域,違反行為が一般消費者に対して与えた影響の大
きさ,等を総合的に考慮して判断すべきところ,そのような観点からは,
原告主張の上記2例と本件とでは事案を異にするのであって,小売業者が
輸入業者から購入した衣料品を一般消費者に販売したという共通点のみを
捉えて排除命令の軽重を単純に比較することは,妥当でないというべきで
ある。したがって,本件排除措置をとるよう命じることが上記2例との関
係で平等原則に違反して被告に与えられた裁量権の範囲を逸脱する違法な
ものであるとの原告の主張も,採用することができない。
7争点6(原告に本件排除措置をとるよう命じることは裁量権の濫用か)に
ついて
(1)さらに,原告は「本件において,原告が本件原産国表示の発生を防,
止することは不可能であった。本件審決の主文第1項ないし第3項は不可
能なことを命ずるものである。また,前記第2の4(6)アで述べたような
準則,裁量基準が存在していた」旨を主張する。。
(2)しかし,前記4(2)のとおり,景品表示法4条1項に違反する不当表示
行為については「不当表示を行った者」の故意・過失を必要としないの,
であり,この点をしばらくおくとしても,本件原産国表示がなされた責任
はすべてbにあって原告にはまったくなく原告がなし得る再発防止策はな
い旨の原告の主張は採用することができず,原告にも原産国調査確認義務
があり,原告がこれを履行していれば,bは本件商品の原産国がルーマニ
アであることに気付いたはずなのである(なお,仮に,原告の原産国確認
要請等にもかかわらずbが原産国の誤表示に気付かなかったとしても,原
告がこの原産国確認要請等をしていれば原産国調査確認義務を履行したも
のと認められることは,前記5(7)で述べたとおりである。。)
また,主文第1項は,原告に対し一定の公示を命じるものであり,その
履行は極めて容易である。主文第2項は,今後の不当表示を防止するため
に必要な措置を講じること等を命じるものであって,その履行も容易であ
(,,()る例えばbとの間で将来的な原産国表示に関する不当表示誤表示
を防止するため,納品書等の書類の書式を検討したり(例えば,原産国の
確認のチェック欄を設けたり,原産国に関する判断の根拠の記載欄を設け
たりする,可能な場合にはa社からの送り状のコピーを添付したりす。)
る。主文第3項は今後は不当表示をしてはならない旨の不作為を命じ。)
るものであって,その履行も容易である。本件審決の主文は原告に不可能
なことを命じるものではない。
さらに,原告が主張するような準則,裁量基準が存在することを認める
に足りる証拠もない(そもそも,準則,裁量基準が存在する事実は被告が
認定していない事実である。。)
8まとめ
以上のとおりであって,本件審決について原告が主張する違法は認められ
ないから,本件審決の取消しを求める原告の本件請求は理由がない。
第4結論
よって,原告の本件請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行
政事件訴訟法7条・民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官原田敏章
裁判官氣賀澤耕一
裁判官長久保守夫
裁判官原田敏章
裁判官森一岳は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官原田敏章

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