弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主     文
被告人を懲役2年6か月に処する。
未決勾留日数中330日をその刑に算入する。
    この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
押収してある旅券1冊(平成12年押第199号の10)の偽造部分を没
収する。
    本件公訴事実中,平成12年7月28日付起訴にかかる大麻取締法違反
(変更後の訴因大麻取締法違反,関税法違反)の点につき,被告人は無罪。
          理     由
(犯罪事実)
 被告人は,
第1 イタリア共和国の国籍を有する外国人であるが,有効な旅券又は乗員手帳を
所持しないで,マレイシア国クアラルンプール国際空港からマレーシア航空82便
に乗客として搭乗して,平成12年7月9日,福岡市博多区a番地福岡空港に到着
し,もって,不法に本邦に入国した。
第2 同日,同市博多区b番地福岡空港国際線旅客ターミナルビル2階入国検査場
において,上陸審査を受けた際,福岡入国管理局福岡空港出張所入国審査官Fに対
し,スウェーデン王国政府がAに対して発給した一般旅券に貼付された顔写真を被
告人の顔写真に貼り替え偽造された同国ストックフォルム州警察の記名のある同国
ストックホルム州警察作成名義の同国一般旅券1通(平成12年押第199号の1
0)を,真正に成立したもののように装って呈示して行使し,もって,偽造有印私
文書を行使した。
(法令の適用)
罰       条
   第1の行為   出入国管理及び難民認定法70条1項1号,3条1項1号
   第2の行為   刑法161条1項,159条1項
刑 種 の 選 択  懲役刑を選択(第1の罪)
併合罪の処理     刑法45条前段,47条本文,10条(重い第2の罪の刑
に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予    刑法25条1項
没       収  刑法19条1項1号,2項本文(第2の行為につき)
訴訟費用の不負担  刑事訴訟法181条1項ただし書
(未決勾留日数の算入について)
 被告人は,平成12年7月28日大麻取締法違反罪により起訴され,同日,同法
違反を公訴事実として勾留状が発付され,以後勾留されており,その間の,同年9
月21日検察官から訴因変更請求書が提出され,同年9月29日の第1回公判期日
において,訴因変更が許可され(変更後の訴因は大麻取締法違反,関税法違反),
以後勾留が継続されてきた。その後,同年11月17日出入国管理及び難民認定法
違反,偽造有印私文書行使被告事件が起訴され,同月21日同事件を前記大麻取締
法違反(変更後の訴因は大麻取締法違反,関税法違反)に併合する旨の決定がなさ
れ,併合して審理がなされてきたが,出入国管理及び難民認定法違反,偽造有印私
文書行使被告事件については勾留状が発付されていない。
裁判所が同一被告人に対する数個の公訴事実を併合して審理する場合,無罪とし
た公訴事実につき発付された勾留状の執行により生じた未決勾留日数を,他の有罪
とした公訴事実の本刑に算入することができるが,その場合の算入が可能な未決勾
留日数は,併合決定がなされた日以後のものと解するところ,併合決定がなされた
平成12年11月21日から判決当日までの未決勾留日数378日のうち,出入国
管理及び難民認定法違反,偽造有印私文書行使被告事件の審理に必要な日数は50
日程度と考えられるから,378日から50日を減じた残日数328日を四捨五入
した330日を未決勾留日数として本刑に算入する。
(量刑理由)
 本件は,被告人が真正な旅券等を所持せず日本へ入国し(第1),その入国審査
の際,偽造旅券を入国審査官に対して使用した(第2)という事案である。
 被告人は,知人から3,000米国ドルの報酬で日本へ偽造旅券を利用して荷物
を運んで欲しいとの依頼を受けて,報酬欲しさから,旅券が偽造されたものである
ことを十分承知しながら,安易にもこれを利用して本件犯行を敢行したものであ
る。その利欲的犯行動機に同情できる事情はない。犯行は計画的である。しかも,
被告人は,以前にも偽造旅券を使用して日本へ入国した事実を認めていることなど
に照らすと,この種の犯罪に対する規範意識の薄さが窺われる。これらの事実によ
れば,被告人の刑事責任は軽視し得ない。
 しかしながら,被告人は,判示第1及び第2の各犯行をいずれも認め,二度と偽
造旅券を使用して日本へ入国することはしない旨供述するなど,反省の態度を示し
ていること,かなり長期間の身柄の拘束を受けるなど,事実上の制裁を受けている
こと,被告人の帰りを待つ義兄ら家族がいることなどの被告人に有利な事情が認め
られる。
 そこで,これらの諸事情を考慮し,その刑の執行を猶予することとした。
(大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反,関税法違反)被告事件につき,
無罪判決の理由)
第1部 序論
第1 本件公訴事実
 平成12年7月28日付け起訴にかかる大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締
法違反,関税法違反)の訴因変更後の公訴事実は,「被告人は,氏名不詳者と共謀
の上,みだりに,営利の目的で,大麻を本邦に輸入しようと企て,平成12年7月
9日ころ,マレイシア国クアラルンプール国際空港からマレーシア航空82便に搭
乗した際,情を知らない航空会社職員らをして,大麻樹脂約4,097グラムを隠
匿したスーツケースを同機内に搭載させた上,同日午前8時14分ころ,福岡市博
多区a番地福岡空港に到着した同機からこれを取り降ろさせて本邦内に持ち込み,も
って,大麻を輸入するとともに,同日午前8時40分ころ,同市博多区b番地門司
税関福岡空港税関支署入国旅具検査場において,入国に伴う通関検査を受けるに際
し,関税定率法上の輸入禁制品である前記大麻を隠匿したまま,その情を秘してこ
れを輸入しようとしたが,同税関支署係員に発見されたため,その目的を遂げなか
った。」というものである。
第2 検察官及び弁護人の各主張並びに争点
1 検察官は,本件大麻の隠匿態様,被告人の入国経緯・状況,大麻が隠匿され
たスーツケース(以下,「本件スーツケース」という)をエックス線検査した際の
被告人の言動,被告人の弁解が不自然で信用性がないことなどからすれば,被告人
が本件スーツケース内に本件大麻が隠匿されている事実を認識していたことは明白
であり,被告人が氏名不詳者と共謀の上,営利の目的で本件大麻を輸入したことが
認定できると主張する。
 これに対し弁護人は,被告人が大麻が隠匿された本件スーツケースを日本へ持ち
込んだという客観的事実は争わないものの,被告人には,スーツケース内に大麻が
隠匿されていることの認識,本邦内に大麻を輸入したという認識がなく,かつ,輸
入貨物が関税定率法21条1項1号の輸入禁制品である大麻に該当するという認識
もなかったから,大麻取締法違反,関税法違反の故意がなかった旨主張し,被告人
も捜査段階以来,イラン人であるBからイランの国家機密に関する政治的書類が入
っているスーツケースを日本にいる仲間に渡して欲しいと頼まれただけであり,内
容物が実際には大麻だと知らなかった,自分は,Bらに騙されて利用されただけで
あると述べている。
 2 したがって,本件の中心的な争点は,被告人が本件スーツケース内に本件大
麻が隠匿されていた事実を認識していたのかどうかという点である。以下に述べる
とおり,当裁判所は,被告人が本件スーツケース内に本件大麻が隠匿されているこ
とを認識していたと認定するには合理的な疑いが残るものと判断した。以下,この
争点を中心に,検察官の主張をふまえて当裁判所の証拠評価,判断を示すこととす
る。なお,年月日については,証拠書類の作成日を含めて,特に記載しない限り,
平成12年を意味する。
第2部 客観的事実の検討
第1 証拠により認定できる客観的事実
 関係証拠によれば,次の事実が認められ,この事実関係については概ね検察官及
び弁護人の間に争いがない。
 1 スーツケースの大きさ,重量等
被告人が7月9日福岡空港に到着して日本入国時に持ち込み,門司税関福岡空港
税関支署における税関検査の際本件大麻が発見された本件スーツケースは,縦約5
3センチメートル,横は上が約64センチメートル,下が約67センチメートル,
厚みが約25センチメートルあり,上蓋,下蓋共,その内側にスーツケース本体と
同種のプラスチック製の板(以下,「プラスチック製板」という。)を強力に圧着
して,上蓋下蓋共,各プラスチック製板との間に空間を作って二重底になるような
工作がなされている。重量は空の購入時の重さが約5.3キログラム,これに中に
入っていた衣類等以外の本件大麻,その包装物,プラスチック製板等を入れた状態
で約12.3キログラム,前記衣類等を入れると約20.2キログラムになる。
 2 大麻の隠匿状況
 本件スーツケースは,上蓋,下蓋とプラスチック製板の隙間に,上下の蓋いずれ
にも,大麻が隠匿されていた(甲37,8ないし11)。大麻の重さは,それぞれ
2,537.65グラム(縦約41センチメートル,横約60センチメートル,厚
さ約1センチメートル)と,1,559.60グラム(縦約39センチメートル,
横約55センチメートル,厚さ約1センチメートル)であり(甲10,11),い
ずれも板状に加工された状態で,透明ラップで包まれた上,白色粘着テープシート
を張り合わせたもの,黄土色粘着テープシートを張り合わせたもの,数枚の青色カ
ーボン紙を透明粘着テープでつなぎ合わせカーボンの塗布面を外側にした状態のも
ので3層に包まれ,スーツケースの下蓋本体部分の内側に香辛料と思われる若干量
の茶色植物片が散らばっていた(甲7,37,39,45)。
 大麻樹脂を包んでいた白色粘着テープシート及び黄土色粘着テープシートには毛
髪様の物が多数付着している(甲7,検証調書)。
 3 被告人の入国状況等
 被告人は,7月8日,マレイシア国クアラルンプールに所在するcホテルからフ
ァックスで,福岡市内のdホテルに対して,Aの名前で,同月9日から11日まで
のツインルームの宿泊予約をした。(甲32,55)
 被告人は,同月9日,マレイシア国クアラルンプール市所在のクアラルンプール
国際空港から,福岡行きのマレーシア航空82便に搭乗し,その際,本件スーツケ
ースを機内預かり品として預け,同日午前8時14分ころ,福岡空港へ到着し本件
スーツケースを受け取った(甲2ないし4)。
 被告人は,被告人の顔写真を貼り付け偽造されたA名義の旅券を使用して日本へ
の上陸許可を受けた後,同日午前8時40分ころ,門司税関福岡空港税関支署入国
旅具検査場へ赴き,同所において税関検査官に申告すべき物は所持していないと述
べた。しかし,税関検査官が被告人の所持していた本件スーツケースに異常を感じ
たことから,第2旅具検査場において,スーツケースのエックス線検査を実施し,
スーツケースに異影を認めたことから,被告人の了解の下,スーツケースの破壊検
査を行ない,その結果,スーツケースの上蓋,下蓋のいずれも二重底に細工された
部分から,板状に加工された大麻の塊が各1個発見されたため,税関からの通報を
受けて駆け付けた警察官が,同日午後5時5分,大麻取締法違反の被疑事実により
被告人を緊急逮捕した(甲1,34,G証言)。
 このとき,被告人は,同月8日クアラルンプールにおいて発券された,同月10
日関西空港発クアラルンプール行きのマレーシア航空53便の航空券(甲52)を
所持し,所持金はマレイシア100リンギ紙幣2枚,マレイシア50リンギ紙幣1
枚,マレイシア10リンギ紙幣2枚,マレイシア2リンギ紙幣2枚及びアメリカ合
衆国100ドル紙幣4枚であった(甲61)。
被告人が所持していた旅券は,真正旅券の名義人写真を被告人の写真に張り替え
られた偽造旅券であり(甲51),その出入国スタンプの確認状況から窺える渡航
履歴は,1997年8月5日,1998年6月18日,1999年6月19日,同
年9月27日及び2000年1月18日,同年5月14日の米国入国,同年6月1
8日のシンガポール入国,同年7月2日のシンガポール出国,同日のマレイシア入
国,同月8日のマレイシア出国,同月9日の日本(福岡空港)入国歴が認められ,
この他に,出入国の判別は出来ないものの1999年1月20日及び2000年6
月5日のカナダのスタンプが認められる(甲50)。
第2 前記客観的事実の評価とその限界
 1 本件大麻の隠匿状況等の評価
 本件スーツケース内に,これを開けても破壊しない限り分からないように,上蓋
と下蓋がぞれぞれ二重底になるように細工されてそこに大麻が一塊ずつ収納隠匿さ
れていること,大麻特有の臭いを隠すため,あるいは大麻と外見上判らないように
するため,本件大麻を粘着テープシートとラップを使って何層にも包装し,それ自
体で強い臭いを発し周囲の臭いを吸着する作用があるカーボン紙を使って本件大麻
の一番外側をカーボンが塗布されている側を外側にして包装し,香辛料と思われる
植物片まで入れてあることなど,様々な工作がなされていることなどを考えると,
本件大麻の隠匿態様は,非常に巧妙である。また,本件大麻を本件スーツケースに
隠匿するためには,スーツケースを一旦解体する必要がある。
検察官は,ことさら手の込んだ偽装を施して大麻を携行した者は,合理性をもつ
特段の反証がない限り,当該密輸入に深く関わり,その品物の実体を確定的ないし
未必的に認識していたという強い推定を受けるとして,東京高裁昭和60年12月
18日判決を引用しているが,本件においては,被告人自身が本件スーツケースに
工作を加えて本件大麻を隠匿したとか,被告人が本件大麻が隠匿される現場に居合
わせて大麻が隠匿されていることを認識したとか,被告人が隠匿の内容物について
説明を受けたとかいう事実を認めるに足る証拠はないし,被告人は大麻を自己の身
体に直接身に付けたわけではなく,本件大麻が隠匿されたスーツケースを運んだに
すぎない。前記高裁判決は「一般に,密輸入品を自己の両腕,両手首,腰廻り等に
ゴムバンドやベルトで固定し,その上をジャンバーやズボンで覆うなど,ことさら
に手の込んだ偽装を施して携行した者は,合理性をもつ特段の反証がない限り,当
該密輸入に深く関わり,その品物の実体を確定的ないし未必的に認識していたとい
う強い推定を受ける。」と判示したものであるが,本件は,前記高裁判決の事案と
は異なり,被告人は,その身体に本件大麻を密着させて直接携行したものではな
く,前記のような偽装工作がなされて外見上本件大麻の存在を了知し得ないスーツ
ケースを運んだにすぎず,隠匿された大麻を直接目にしたわけではないから,本件
は前記高裁判決が適用される事案ではない。
 前述したとおり,本件大麻の隠匿状況は巧妙であるが,ここまでの検討結果で
は,被告人自らが本件スーツケースに工作を加えて大麻を隠匿したとか,被告人が
隠匿の現場に居合わせて隠匿された物が大麻であると認識したとか,被告人が隠匿
された内容物について説明を受けたとかの事実があったことを証拠上認定できな
い。したがって,その他に被告人と本件大麻を結び付ける証拠が存在するか否かを
更に検討する必要がある。
 2 被告人の入国状況等の評価
捜査関係事項照会回答書(甲28),電話筆記用紙(甲29),被告人の7月1
0日付警察官調書(乙2),同月13日付警察官調書(乙4),8月17日付質問
調書(乙32)によると,被告人は,イタリア国籍を有し,同国で生まれ育った
後,海外での生活経験も長く,タイ国のプーケット島で約7か月間生活したことも
あったが,平成12年5月ころから同国のバンコク市で生活していたことが認めら
れる。本件に際し,被告人は,タイ国バンコク市を出発し,マレイシア国クアラル
ンプール国際空港を経由して日本に入国しており,入国の際に前記の通りの出入国
歴が窺える偽造旅券を使用していること,日本における宿泊ホテルの予約を予めク
アラルンプールから行い,関西空港発クアラルンプール行きとなっている帰りの航
空券をクアラルンプールで購入し,タイ国からの出入国の発覚を避けていること,
日本の税関当局が薬物の持ち出し国として注意を払っているタイ国の通貨を所持し
ていない等,タイ国とのつながりが明らかにならないように細心の注意が払われて
いると評価できる行動が見られる。
 被告人は,バンコクでは,新聞や雑誌に載っている大麻や麻薬に関する記事は読
まないようにしていたのでタイ国内における薬物に関することは全く分からない
(8月17日付質問調書(乙32))と供述しているが,その一方で,大麻に関す
る知識について,タイにおける大麻,麻薬の汚染状況等についてはニュース,新
聞,雑誌等で情報を得た(7月20日付警察官調書(乙8))とも供述しているの
であるから,海外生活の経験が長い被告人がタイ国における大麻等の薬物情報につ
いて無関心であったとは考えられず,少なくとも,日常生活の上で,通常入ってく
る薬物の情報には接し,それを認識していたものと認められる。しかしながら,被
告人は,タイ出国が判明しないようにクアラルンプール経由での日本入国や,タイ
国の出入国が記載されていない偽造旅券の使用等をBから指示されその指示にした
がって行動した,偽造旅券も,Bの指示にしたがって同人に被告人の写真を渡し,
その後同人が偽造旅券を被告人に渡したと述べているので,被告人が自らの考えで
行ったものとまでは認められない。本件全証拠を検討しても,被告人には,日本は
もとより,その他の国でも,大麻等の薬物関係の前科はなく,これまで大麻等の薬
物に関与した経験も認められない。また,被告人が大麻等の密輸組織の一員あるい
はそれに関わりのある人物であるとは認められず,本件大麻の運び役を依頼された
にすぎないものと思われる。このようなことから考えると,Bの指示にしたがっ
て,被告人がタイ国との関係が発覚しないように行動したことをもって,被告人自
身が本件スーツケース内に本件大麻が隠匿されていることまで認識していたものと
みることには飛躍がありすぎて相当ではない。
第3 税関検査における被告人の言動の検討
 1 税関検査における被告人の言動
 関係証拠によれば,次の事実が認められる。
 被告人は,7月9日,入国旅具検査において,被告人の顔写真が貼付されたA名
義の偽造旅券及び航空券を提示し,滞在期間を1日,訪日目的は観光である旨答え
ている。大蔵事務官Hから税関に申告すべき物がないか質問されたところ,被告人
は,特にないと答え,Hからの荷物検査を受けることを承諾している。この際の被
告人の態度には,特段の挙動不審は見受けられなかった。(甲34)
 Hが本件スーツケースに不審をもったため,被告人の同意を得て第2旅具検査場
において検査を続けることになった。同検査場において,大蔵事務官Gは,被告人
が所持していたスーツケースをエックス線検査にかけたところ異影を認めた。G
は,エックス線モニターの画像を被告人に確認させたところ,被告人は,最初は
「知らない,分からない。」と言っていたが,直後に「このスーツケースは高くて
丈夫なのでシリコンが入っている。シリコン,シリコン。」とかなり大きな声で言
っていた。その際,Gは被告人に対して,スーツケースは上蓋下蓋共二重底になっ
ているが,被告人が細工したのか,中に違法な物,日本に持ち込めない物が入って
いないか,間違いなく自分のスーツケースであるかを尋ねたところ,「間違いなく
自分の物である。370マレーシアリンギで買ったものであり,自分は買った物を
持ってきただけで,二重底とか,そのような細工は一切していない。370リンギ
という高価な物なので丈夫に出来ていて中にシリコンが入っている。」と言ってい
た。その後,被告人の承諾を得て,スーツケース本体の破壊検査が実施された。
 破壊検査の際,被告人は立ち上がって検査中の本件スーツケースを真上から見る
ような仕草をしたり落ち着きがない態度であった。破壊検査は,本件スーツケース
を開披し,取っ手の付いている下蓋側の布製内張を全てはがし,プラスチック製板
に千枚通しで穴を開け,その穴から採取針を使って中身の一部を取り出した。採取
針の先端には黒い粘着質のものが付着していたので,被告人の目の前で見せたとこ
ろ,被告人は「シリコン,シリコン。」とつぶやいていた。この黒い粘着質様の物
について仮鑑定を実施したところ,大麻であるとの反応が出た。その後,スーツケ
ース内部のプラスチック製板をはがして,中身を取り出したところ,青色のカーボ
ン紙等で包まれた板状の大麻が出てきた。Gが被告人に対して,これは何かと質問
をしたところ,被告人は知らないと答えた。本件スーツケースの所有者について質
問されると,被告人は最初「自分の物で二重底の中身については知らない。」と言
っていたが,途中から「自分のスーツケースの角には金具は付いていなかったので
これは自分のものではない。どこかで取り替えられた物である。自分のスーツケー
スにこんな物が入っている訳がない。」ということを狼狽したような様子で言っ
た。更に,上蓋についても同様の手順で破壊検査が行われ大麻が発見された。第2
旅具検査場において検査が行われている際,被告人はトイレに行きたいとの申出を
したが,第2検査場の出口付近まで税関職員が両脇について行ったところ,被告人
はもう行かなくてよいといいい,元の場所へ戻った(G証言)。
2 前記1の事実の評価
 7月9日,入国旅具検査において,本件スーツケースのエックス線検査の結果異
影が認められ,本件スーツケースが解体されて隠匿された本件大麻が発見される前
後までの被告人の言動をみると,弁解が二転三転している状況がある。
 この点につき検察官は,被告人が本件スーツケース内に政治的書類が隠されてい
たと信じていたのであれば,税関によるエックス線検査で異影が発見された際,異
影物が書類であると申告するのが自然であるのに,被告人はシリコンである旨繰り
返したのであって,被告人の言動は政治的書類と考えていたという弁解と矛盾して
いる,また,被告人は異影物が書類である旨の指摘をしなかったことについて,大
麻が発見されて気が動転していたし,旅券が偽物であることが発覚することを恐れ
た旨弁解するが,エックス線検査により異影が発見されたのは異影物が大麻である
と判明する前であるから,大麻が発見されて気が動転したというのは理由にならな
いし,旅券が偽造であることが発覚することを恐れたというのであれば,なおさら
書類であることを申告して一刻も早く疑いを解くのが自然であるのに,そのような
素振りをみせず,大麻が発見されてシリコンという弁解が通じなくなると一転して
本件スーツケースが自分の物ではないと言い張ったものであるから,被告人の弁解
は信用できないと主張する。
 そこで,被告人の弁解内容を詳細にみると,7月26日付検察官調書(乙21)
において,「税関で本件スーツケースをエックス線を通してみたとき,シリコンに
見えたのでシリコンと言った」,8月21日付質問調書(乙34)において,「エ
ックス線を通した画像が雪,綿のように見えたので,本件スーツケースの蓋の中に
保護のためにシリコンが入っていると思った。シリコンの向こう側に政治的書類が
入っていると思った。」と述べ,公判において,偽造旅券であることを心配した,
Bから依頼された書類は秘密的なものであるから税関職員に書類であると言わなか
った(第9回公判)と供述している。
確かに,検察官が主張するとおり,被告人が本件スーツケースの内容物を政治的
書類と認識していたのであれば,税関の検査において疑いがかけられている状況下
で,しかも,被告人の弁解によればBから受け取るべき報酬さえ半額未払いの状態
であるから,スーツケース内に書類が入っていると説明して疑いを晴らせばよいよ
うにも思われるが,他面で,被告人の弁解によれば,Bからの依頼自体が,他人に
見られては困る物の運搬であり,上手く行けば残りの報酬をもらえるのであり,被
告人としても,未だ税関職員による隠匿物の発見を防ぎたかったものとも思われる
から,その場を何とかして言い逃れて早く税関を通過したいという気持から,税関
職員を納得させる方便として,とっさの思いつきで「シリコン,シリコン」と繰り
返したのではないかとも思われるから,このことをもって特に不自然とまではいい
がたい。更に,破壊検査で本件大麻が発見された際,被告人が自分のスーツケース
ではないと述べたことも,それまでは大麻が隠匿されているという認識をもたなか
ったが,スーツケース内に隠匿された物が大麻と判明したのであるから,早くその
場を離れて身の安全を確保したいという考えによるものとみれば,やはり,それほ
ど不自然とはいえない。また,被告人としては,税関に長時間引き留められれば,
当然のことながら旅券につき偽造ではないかと疑われて詳細に検査されることを予
想し,偽造旅券であることの発覚を心配したということも,それなりの合理性があ
る。
 被告人の弁解は検察官の主張のように被告人が政治的書類とみていたことを前提
とすれば不合理と思われる一面もあるが,被告人が本件スーツケースの内容物に不
審さを抱いていた程度で,逮捕につながるような大麻等の違法な薬物という認識ま
ではもっていなかったとみれば(後述するとおり,本件当時,被告人が政治的書類
が入っているという認識をもっていたとみるには疑問が残るが,Bが自分自身やそ
の仲間によっては運べない物,被告人としては不審な物という程度の認識をもって
いたのではないかと思われる。),被告人が政治的書類と即答しなかったことをも
って,それほど不自然な言動とはいえないし,被告人としては,自分が運んできた
スーツケースに大麻が入っているとは考えられないという思いにより,大麻が発見
される時点までは本件スーツケースが自分の物であることを前提とした言動をと
り,その後,破壊検査で大麻が発見されると,被告人としては予想外の大麻が出て
きたからこそ,その時点で本件スーツケースにつき自分の物ではないという弁解を
したと見る余地もあるように思われ,そうであれば,被告人の言動に不自然さはな
いことにもなる。
結局,税関検査における被告人の言動は多様な評価を可能とするものであって,
これをもって,一義的に被告人が大麻の認識を有していたことの徴表とみることに
は,疑問が残ると言わざるを得ない。したがって,税関検査における被告人の弁解
が二転三転していることをもって,隠匿物が大麻であるという確定的なあるいは未
必的な認識があったものと評価することは飛躍がありすぎて相当ではない。
第4 毛髪鑑定の検討
 1 毛髪鑑定関係の審理経過
 大麻やこれを包装していた粘着テープ等には毛髪様のものが多数付着しており,
このうち,大麻の包装物に付着していた毛髪様の物と(甲7,19,42,I証
言),被告人から採取した頭毛(甲21,22)について捜査段階で鑑定が行わ
れ,その中で形態学的な比較が行われた。その結果,本件大麻が包装されていた白
色粘着テープシートから採取された頭毛の1本と被告人の頭毛について,その長
さ,形状,色調,毛幹の太さ及び髄質の出現形態において類似の所見が認められる
と共に,被告人の頭毛と比較すると形態学的に類似性が認められる頭毛及び被告人
の頭毛を鑑定資料として使って血液型検査を行ったところ,いずれもO型であると
の鑑定結果が出た。このため,白色粘着テープシートに付着していた頭毛1本と被
告人の頭部から採取された頭髪は「極めて類似する」との鑑定結果が出ている(甲
24)。
 この点についての審理経過をみると,弁護人が第1回公判において,本件大麻の
包装物に付着していた毛髪の採取経過に関する捜査書類,鑑定書につき不同意の意
見を述べたため,毛髪の採取等に従事した証人G,I,J,毛髪鑑定を担当したK
を証人尋問した後,第8回公判において,鑑定書(甲24)が証拠として採用され
た。この鑑定書の内容は,前記のとおりであり,仮に,大麻の包装物に付着してい
た毛髪が被告人の頭毛であることが立証されれば,被告人が大麻の隠匿に直接関与
したことが裏付けられることになり,大麻の存在についての認識も認められるとこ
ろであるから,これが捜査段階から検察官立証の重要な柱となっていたものと思わ
れる。
その後,第7回公判において,被告人が自分の血液型につき,ABO式のA型で
あると供述したので,第9回公判において,医師Lを鑑定人として,被告人から採取
した血液を鑑定資料としてABO式による鑑定を行ったところ,被告人の血液型は
A型であることが判明した。
 2 毛髪鑑定の信用性
L医師による鑑定結果は被告人の身体から採取した血液を鑑定資料とした信頼性の
高い方法で行われているから,その信用性に全く疑問はない。このように,被告人
から採取した血液を鑑定資料として判定された血液型と被告人の毛髪を鑑定資料と
して判定された血液型とが矛盾している。毛髪鑑定を担当したK証人は,毛髪を鑑
定資料として行われた血液型検査は難しく,過去に何例か血液型が正しく判定され
なかったとの報告もあると証言しているが,本件においても,被告人から採取した
頭毛を鑑定資料として行われた血液型の判定は誤っている。
 被告人から採取した頭毛を鑑定資料として使用した血液型の判定が信用できない
以上,白色粘着テープシートから採取された毛髪様のものを鑑定資料として行われ
た血液型の判定結果も信用性に疑問があるが,反面では白色粘着テープシートから
採取された毛髪様のものが正確に判定されてO型の判別がなされた可能性も否定で
きない。したがって,大麻を包んでいた白色粘着テープシートから採取された頭髪
様のものについての血液型と被告人の血液型とが一致しないのではないかという強
い疑問がある。したがって,毛髪鑑定自体の一般的な信頼性の有無について検討す
るまでもなく,被告人の頭髪と大麻を包んでいた白色粘着テープシートから採取さ
れた頭髪様のものについて形態学的な面の他に血液型も一致することを重要な根拠
の一つとして,「極めて類似する」としている毛髪鑑定の結果(甲24)について
は到底信用性を認めることはできない。
 捜査段階以来,検察官は,毛髪鑑定(甲24)をもって,被告人が本件スーツケ
ース内に本件大麻が隠匿されていることの認識があったとみることの重要な証拠の
一つとしていたものと思われるが,これを検討した結果は以上のとおりであり,捜
査段階における毛髪鑑定の結果に証拠価値は認められない。
第3部 逮捕後における被告人の弁解内容の検討
第1 被告人の弁解内容
 逮捕後における被告人の弁解状況,弁解内容を概観すると,次のとおりである。
 被告人は,7月9日逮捕された際の警察官に対する弁解録取と同日の大蔵事務官
による質問の段階では,偽名(A)を名乗り本件スーツケースは自分の物ではな
く,誰かにすり替えられた旨供述した(乙1,23)。
 翌10日付警察官調書(乙2)において,被告人は,本名を明らかにすると共
に,以前に1度関西空港から日本へ入国して名古屋へ行き,名古屋で本件の関係者
であるアラビア人に会った旨供述した。また,同日付警察官調書(乙3)におい
て,スーツケースがすり替えられたというのはとっさに考えた嘘であり,バンコク
で知り合ったアラビア人の男から,スーツケースには汚れた金,すなわち何らかの
犯罪に関係する金が入っているが,3,000米国ドルの報酬で日本へ運ぶように
依頼を受けた旨供述している。
 同月14日付警察官調書(乙5),同月21日付警察官調書(乙9)において,
「5月ころ,タイ国のバンコクにおいて,Bなるイラン人と知り合い,Bから,6
月3日ころ,3,000米国ドルの報酬,飛行機代,ホテル代,小遣いを渡すの
で,偽造旅券を使用して日本へ入国し,Bの日本の友人へ「政治的書類」を届けて
欲しいと依頼された。被告人は,Bの話に疑問を抱き,その信用性を確認するため
日本にいるBの友人に会いたいとBに言うと,Bの費用でCなる人物と共に1度日
本へ行ってみることになった。6月14日か15日にバンコクからソウルへ行き,
ソウル経由で同月16日偽造旅券を使用して関西空港から入国した。関西空港では
被告人らは厳しい税関検査を受けた。その後名古屋へ行き,そこで,DとMなる人
物に会い,Cと別れ,DとMと食事をした。会話の中で,Dは靴屋を経営し,日本
人女性と結婚している旨話していた。Dらとの会話の中で,Bの話は真実であり,
Bやその友人を信頼できると考え,Bの依頼を引き受けようとの気持ちが強くなっ
た。食事を終え,ホテルにチェックインする際,Dはホテルでトラブルがあったと
きには自分に連絡がくると話していた。同月19日,名古屋空港からバンコクへ帰
国した。」旨供述した。また,7月15日付警察官調書(乙6),同月19日付検
察官調書(乙20)において,「バンコクへ帰国後,Bに会い,同人から,自分の
国から送ってきた書類を日本へ持っていって欲しい,仕事の条件は3,000ドル
の報酬,経費として1,500ドルを用意するとの説明をあらためて受け,その依
頼を引き受けることにした。7月6日,Bから1,500ドルを渡され,被告人の
旅券はタイの出入国が多いので使えないとの説明を受けた上で,クアラルンプール
を経由して福岡へ行くことになった。クアラルンプールのホテルでは同月8日,B
の友人のNなる人物がスーツケースを持ってきて,蓋を開け,蓋の内側部分に書類
が入っている旨説明した。このとき,A名義の偽造旅券及び500ドルを受け取っ
た。同月9日,クアラルンプールから日本へ入国した。Bの依頼を引き受けたのは
金に困っていたからである。」旨供述している。
 同月23日付警察官調書(乙13)において,本件スーツケース及び偽造旅券を
受け取った日時場所について供述を変え,同警察官調書,同月24日付(乙1
4),同月25日付(乙15),同月27日付(乙16)警察官調書,8月2日付
質問調書(乙26)において,「7月6日,バンコクを出発する際Bから本件スー
ツケース,偽造旅券を受け取った。スーツケースを渡すとき,Bは蓋の部分に書類
が入っていると話した。被告人は,クアラルンプールのホテルにおいてスーツケー
スの蓋の部分を観察し,隙間がないか覗いたりしたが中を見ることができなかった
ので,スーツケースを上下に振って音を確認した。このとき少しの重量はあると思
ったもののそれほど違和感を感じなかった。紙の音がしたと思ったので蓋の中身は
書類か最悪でも偽ドル紙幣だと思った。6月16日関西空港から入国した際も偽造
旅券を使用した。」旨供述している。
本件当時使用した偽造旅券を渡された経緯,状況につき,8月8日付質問調書
(乙27)において,「7月2日Bから電話があり,旅券用の写真を2枚用意する
ように言われ,同月3日か4日,Bと一緒にバンコク市内の写真屋へ行き,そこで
とった写真2枚をBに渡した。同月6日,Bから本件スーツケース等を受け取った
際,本件に使用した偽造旅券も受け取った。」旨供述している。また,8月11日
付質問調書において,「7月6日バンコクからクアラルンプールまでは被告人が持
っている本物の旅券を使用し,クアラルンプールのホテルで,同月7日Bの友人の
Nなる人物に本件で使った偽造旅券を渡し,翌8日,Nから,偽造旅券を返しても
らったところ,クアラルンプールの偽の入国スタンプが押されており,この偽造旅
券をクアラルンプールからの出国,日本への入国に使用した。」と供述している。
 その後の取調べにおいて,Bからの依頼を引き受けた動機について,金に困って
のことではなく,書類を日本まで運ぶだけで3,000米国ドルの報酬金をもらえ
るのは素晴らしいと思い,軽く考えて引き受けたに過ぎない旨述べ(8月16日付
質問調書(乙31)),更に,従前,スーツケースを受け取ってからダイヤルキー
を触って本件スーツケースを開けたことがないと供述していた(8月17日付質問
調書(乙32))のを,その後クアラルンプールのホテルでダイヤルキーを触って
本件スーツケースを開けた(8月18日付質問調書(乙33))との供述に変え,
前回(6月)日本へ来た際の偽造旅券と真正旅券の使い分けの方法,Bから受け取
った物について等々と供述を変えるなど供述を変遷させており,最終的に公判廷に
おいてもこれに沿う供述をしている。
第2 被告人の弁解内容の検討(その1)
 スーツケースの内容物に関する被告人の弁解,本件犯行に至る経緯についての供
述内容には変遷が見られること,Bの友人から名古屋で聞いた話について,なぜB
の依頼内容を信じたのか具体的な供述はなされていないこと,捜査官から供述の矛
盾を指摘されるたびに供述を変えていること等,被告人の捜査段階からの供述には
不自然と思われる点があることは否定し得ない。
 しかしながら,被告人の弁解状況,弁解の経緯並びにその裏付け捜査の経緯等を
みるに,被告人は,逮捕された翌日である7月10日付警察官調書(乙2)におい
て,「日本にこれまで1回だけ来たことがあります。6月今回の件で日本にいる関
係者と会うためにやって来ました。この時はバンコクを出発して韓国のソウル経由
で関西空港から日本へ入国して名古屋へ行き,名古屋のレストランでアラビア人と
会いました。名古屋に3,4日間滞在した後,名古屋空港からバンコクに向け帰国
しました。」と述べて,以前名古屋に来たことがあることについて捜査の早い段階
から供述している。また,7月13日,被告人が警察官の取調に対して,「6月1
6日Cというイタリア人と一緒に関西空港から入国したが,その際Cと一緒に厳重
な検査を受けた」旨供述したため7月13日裏付け捜査がなされたところ,その日
のうちに,被告人がO名義の旅券を使用して6月16日,関西空港から本邦に入国
し,同月19日名古屋空港からタイ国のバンコクへ出国した記録が認められ,入国
時には,C’というイタリア人男性と一緒に厳重検査を受けたが,薬物等の違法な
物品は所持していなかった事実が確認されている(「出入(帰)国及び外国人登録
記録等に関する照会について(回答)」と題する書面(甲26),「入国事実の調
査について」と題する書面(甲27))。また,被告人は,7月14日付警察官調
書(乙5)において,名古屋のホテルに宿泊する際,Dが「ホテルで何かトラブル
があったら,ホテルから自分(D)のところに電話があることになっている。」と
言っていた旨供述しているが,被告人が名古屋で会ったというDという人物に関し
ては,起訴後,弁護人の調査の結果,名古屋市内にある名古屋国際ホテルの台帳
に,前記入国時に被告人が使用した旅券番号とD’なる人物の携帯電話の番号が記
載されており(弁25),記載されている携帯番号の使用者はE(1965年9月
11日生)なる人物であり,同人は4月17日から11月30日までの間,携帯電
話を契約しており(弁27),外国人登録原票によると,Eという,イラン国籍の
男性が東京都大田区中馬込に居住しており,その妻は日本人であることが認められ
る(弁28)。
 したがって,逮捕後早い時期からの被告人の弁解内容が相当具体的なものであっ
た上,捜査機関が把握していない内容を被告人の方から弁解してそのうちのかなり
の部分が裏付けられている。即ち,被告人の弁解の中で,被告人が6月16日イタ
リア人C’(被告人がいうCと理解できる。)と共に関西空港から本邦に入国して
名古屋へ行き,そこでアラブ系のDという人物(「D」と「D’」は同一人物と思
われるし,「D’」の携帯電話の使用者はEであるから,「D’」とEは同一人物
であるものと考えられる。)と会ったこと,被告人が名古屋のホテルに宿泊する
際,Dが「ホテルで何かトラブルがあったら,ホテルから自分(D)のところに電
話があることになっている。」と言っていたこと,Dの妻は日本人であることが,
被告人の供述後の捜査あるいは弁護人の調査により客観的な事実として裏付けられ
ている。更に,名古屋で宿泊した前記ホテルの台帳に被告人の本名が記載されてい
ることから考えると,被告人は本名を名乗っていたものと認められるのに対し,同
台帳に記載された「D’」とEの氏名に類似性がないことを考えると,被告人は少
なくとも氏名をDと聞かされた人物につき,その本名を知らされていなかったもの
と思われる。しかも,被告人が6月に名古屋で接触した人物がイラン人であるか
ら,被告人がいうBなる人物がイラン人であるという点もそれなりの信憑性を帯び
てくるし,そうなると,被告人が依頼された内容が「イラン」に関する物であった
という点も一概に否定できない。
 加えて,6月16日,初めて日本へ来た被告人が,それから1か月も経たない7
月9日に再び日本へ来ており,しかも,1回目の日本滞在期間は4日間,2回目で
ある今回の滞在予定期間は往復航空券から考えると2日間であり,日本へ来たこと
のなかった外国人が1か月もない短期間のうちに2回も日本へ来て短期滞在をする
となると,2回の滞在目的が相互に関連性を有する可能性が高いものと思われる。
 これらの事実は,被告人の弁解,即ち,被告人がBなる人物からイランの国家機
密に関する政治的書類を運んでくれるように依頼されてこれを承諾し,大麻を運ぶ
ことになるとは知らされないまま本件スーツケースを運搬したもので,Bらに利用
されたに過ぎないという弁解の前提をなしている。
 以上述べた事情から考えると,最終的な本件当時の被告人の認識内容はともかく
として,被告人が6月に日本へ来るに当たって,Bなる人物から,イランの国家機
密に関する政治的書類の運搬を依頼されたこと自体は,一概に否定できないものと
思われる。Bなる人物が国外にいることなどのため,大麻が隠匿された本件スーツ
ケースの日本への持ち込みに関与したとされる,被告人以外の関係者からの事情聴
取ができていない上,Bからの当初の依頼内容に疑問をもったからこそ6月に日本
へ来てBの関係者と接触して被告人の疑問が解消されたという弁解について,それ
を前記の限度で裏付ける事実が存在するのであるから,本件の経緯に関する被告人
の弁解の信用性が全くないとはいえない。これらの裏付けがある事実は,被告人の
弁解の前提事実の骨格であり,それなりに意味をもつことに注意が必要である。
 もとより,これらの事実は,主として本件の経緯に関するものであり,本件自体
を直接構成する事実ではないので,これを過大に評価することはできず,その評価
には慎重でなければならない。6月に被告人が日本からタイ国へ戻った後,本件ま
でに,主としてBとの間でどのようなことがあったのか,その内容を十分検討し,
それが本件当時の被告人の認識にどうような影響を及ぼすのか更に検討が必要であ
る。
第3 被告人の弁解内容の検討(その2)
 被告人は,捜査段階以来,タイのバンコクで,Bなるイラン人の男性から,イラ
ンの国家機密に関わる政治的書類を日本にいる仲間に渡して欲しいと依頼されて7
月6日本件スーツケースを渡された旨弁解している。被告人がBなる人物から依頼
されたと弁解する内容は,日本に政治的書類を持っていくだけのことであるのに,
B自ら,あるいは自分の仲間を使ってこれを運ぶことなく被告人を利用し,Bが
3,000米国ドルの報酬を支払うほか,経費,並びに6月にも被告人が日本を訪
問した際の経費を負担している。そもそも日本に政治的書類を運ぶだけであれば,
真正の旅券を持っていた被告人が日本に入国する際,わざわざ偽造旅券を使用する
必要性は考えにくい。被告人自身,最初はけん銃や薬品ではないかとの疑いを抱い
たと供述している。Bが前記のようなことまでして運搬させている以上Bとしても
被告人に対する報酬や経費の支払いに見合うだけの物を運搬してもらおうと考えて
いたものと思料されるが,Bが政治的書類を自ら,あるいは自己の仲間を使わず
に,わざわざそれほど親しい間柄でない被告人に依頼するのは不自然であると被告
人が考えてもおかしくない状況があり,被告人がBの依頼内容を真実であると鵜呑
みにしたものとは考えにくい。更に,被告人は,本件スーツケース内の隠匿物が書
類ではないかと思った理由につき,「クアラルンプールのホテルで本件スーツケー
スを上下に振ってみて確認したら,カサカサと紙の音がした。」旨供述するが,前
記認定のように本件スーツケース自体かなりの大きさがあり,政治的書類を運ぶだ
けにしては大きすぎて不自然であり,衣類等を除いたスーツケースの重量は約1
2.3キログラム,衣類等を入れると約20.2キログラムになり,そのようなか
なりの重量の本件スーツケースを上下に振ることが可能なのか疑問である上,仮に
本件スーツケースを上下に振ることが可能であったとしても,本件スーツケース中
のプラスチィック製板には接着剤が付けられて強力に圧着されており,このプラス
チィック製板を取り外すためにはドライバーやバールを使用しなければならないほ
どであり,取り外す際にプラスチィック製板に亀裂が入るほどの力が必要であった
ことを考えると,本件スーツケースを上下左右に振ったり,揺すったりしても被告
人がいうような音がするとは考えられない。これらの点に照らすと,本件スーツケ
ース中の内容物につき本件当時においても,「政治的書類」であると考えていたと
する被告人の供述は信用性が乏しい。
 6月に被告人が名古屋からタイへ戻った後の被告人の行動をBとの関係でみる
と,被告人の弁解を前提とすれば,7月2日Bから被告人に電話があり,旅券用の
写真を2枚用意するように言われ,同月3日か4日,Bと一緒にバンコク市内の写
真屋へ行き,そこでとった写真2枚をBに渡したところ,同月6日,Bから本件ス
ーツケース等を受け取った際,本件に使用した偽造旅券も受け取ったことになる
(8月8日付質問調書(乙27))。また,被告人は,Bから,被告人の旅券にタ
イ国のビザが押されていると日本入国時の税関による検査が厳しくなるので,その
ようなビザの押されていない偽造旅券を使う必要があると説明を受けた際,旅券に
タイ国のビザが押されていると何故日本の税関による検査が厳しくなるのかにつ
き,その理由はよく判らなかった,Bに対してもその理由を尋ねなかった,今回逮
捕されて,タイ国から大麻を日本に輸入する人間が多いからだと判った,旨供述し
ている(7月26日付検察官調書(乙21))。
被告人には,薬物関係の前科前歴はなく,タイ国で日常生活を送る上で通常接す
る薬物情報以上にタイ国での薬物事情にどの程度通じているのか判然としない。ま
た,被告人が日本における税関検査や日本における薬物の密輸入阻止の実情に精通
しているわけでもない。被告人が本件以前に大麻等の薬物に関与したこと示す証拠
はない。更に,本件全証拠を検討しても,被告人が大麻の密輸組織の一員であると
か,これに密接に関係しているものとは認められず,運び屋として利用されたにす
ぎないものと思われる。被告人はBから本件大麻が隠匿された本件スーツケースを
受け取ったが,被告人自身が本件大麻を隠匿したとか,隠匿の現場に居合わせたと
か,隠匿物の実体について説明を聞いたとみるべき証拠はない。タイを出国してク
アラルンプールでNなる人物との接触状況についての被告人の供述を十分検討して
も,被告人が6月に名古屋からタイ国へ戻った後の行動から,被告人が本件スーツ
ケース内の隠匿物について,その実体を知ったのではないかと評価できるだけの事
実は認められない。被告人がBから,タイからの入国であることが発覚しないよう
にする旨の話を聞いてその指示どおりに行動し旅券の偽造に使用された写真をBに
渡すなどして,タイからの入国であることが発覚しないように行動したことをもっ
て,被告人が本件スーツケース内に大麻が隠匿されていることの認識があったもの
とみることは,飛躍がありすぎて相当ではない。
 また,本件スーツケース内に隠匿された物についての認識に関する被告人の弁解
を更に検討すると,被告人は,本件スーツケースは自分のものではなくすり替えら
れた(乙1,23),アラビア人の男から汚れた金が入っているので運んで欲しい
と頼まれた(乙19),Bから汚れた金か書類が入っていると言われた(乙22)
等と供述していたが,その後はBの依頼の内容は政治的書類を日本へ運んで欲しい
というものであったので書類が中に入っていると思った旨供述し(乙5,6,9,
20,21,26),Bから本件スーツケースを受け取ったときは,スーツケース
の中身は政治的書類であり最悪でも偽ドル紙幣と思った,その後クアラルンプール
のホテルにいた時点では政治的書類か最悪でも偽ドル紙幣と思った(乙13,1
4,15)と供述したこともあるが,最終的には,政治的書類か悪くとも申告すべ
き米国ドル紙幣であり,偽ドル紙幣であると言ったのは間違いであり,最悪でも申
告しなければならないアメリカドル紙幣であると思った(乙28)旨供述し,最終
的には違法な物であるとの認識はなかったと供述し,公判廷でもその旨供述してい
る(第9回公判期日)。被告人が,違法な薬物を持ち込む認識はなかった旨一貫し
て否認していること,大麻の隠匿方法からすると,被告人自身がスーツケースに大
麻が隠匿された状態で受け取ったのであれば大麻が隠されていることの説明でも受
けない限り大麻が入っていることの認識をもてないこと,被告人自身これまで大麻
等の薬物につき関係を持っていなかった旨供述し,被告人が大麻等の薬物と関係を
もったことを窺わせる証拠もないこと等,被告人が日本へ持ち込むことを禁止され
ている大麻等の違法な薬物であるとの認識をもったことを窺わせる事情はない。被
告人としては,Bが自ら運ぶことができないような,あるいはBの仲間に依頼でき
ないような不審なもの,特定はできないが,日本への入国時に税関検査で発見され
ては困る物が入っているかもしれないという程度までしか考えていなかったのでは
ないかという疑いが残る。
 前述したとおり,6月に被告人が日本へ来た際,関西空港で税関職員により厳重
検査を受けているが,被告人の7月21日付警察官調書(乙9)によると,そのと
きは身体自体の検査のみならず,靴,所持していたリュックサック等まで厳しく検
査され,更に税関職員から麻薬等の本を見せられ,その本に掲載されている薬物を
持っていないか質問されたことが認められる。被告人はこの経験により税関におけ
る薬物検査が厳重であることを身をもって知ったのである。このときの入国は韓国
のソウルからであったが,本件時はクアラルンプールからの入国である。本件大麻
の隠匿状況が巧妙ではあるが,直接身に付けていないリュックサックについてまで
も税関による薬物関係の厳重検査の経験をもつ被告人が短期間のうちに大麻と認識
した上で大麻を本件スーツケースに隠匿して日本へ持ち込むことは,考えにくい。
 6月に被告人が名古屋からタイへ戻ってから本件までの行動,本件当時の認識内
容について被告人の弁解内容を検討した結果は以上のとおりである。本件当時にお
ける本件スーツケースに隠匿された内容物についての被告人の弁解も,政治的書類
であると認識していたという点は信用性に乏しいが,だからといって,大麻である
ことを認識していたものとまでは認定できない。逮捕後の被告人の弁解内容を検討
しても,本件スーツケース内に隠匿された内容物が大麻であるという実体を,被告
人が確定的に,あるいは未必的に認識していたものとみることには疑問が残る。
第4部 総合評価等
第1総合評価
 これまで述べたところを総合すると,証拠上認められる客観的事実を評価した結
果,被告人が大麻の隠匿を確定的にあるいは未必的に認識していたとみることには
無理がある。また,税関検査における被告人の言動は二転三転しているが,これ
も,大麻の認識までは結びつかない。逮捕後の被告人の弁解内容は,6月に被告人
が日本へ来た経緯,名古屋へ来たときの状況については前述した範囲で裏付けがあ
り,6月の来日に際し,Bから政治的書類の運搬を依頼されたという点について
は,一概に否定しがたいものがある。名古屋からタイへ戻った後の被告人の行動に
ついての被告人の弁解をみても,本件当時被告人が大麻と認識したものとまで認定
できるほどの評価にはならない。逮捕後の被告人の弁解は,本件当時,政治的書類
と認識していたという点の信用性は認めがたいが,かといって,大麻と認識してい
たものとまではいえない。したがって,これらを総合して証拠を評価しても,被告
人が本件スーツケースに大麻が隠匿されていたことを確定的あるいは未必的に認識
していたものと認定するには合理的な疑問が残る。
第2 関税法違反の故意
 被告人が,捜査段階で,本件スーツケース内に,政治的書類でなければ偽造され
た米国ドル紙幣が入っていたと考えていたとも受け取れる供述をしており,関税定
率法21条1項1号以外に同項3号の該当性が問題になるので,この点についても
検討する。
被告人の供述内容をみると,警察官に対して,Bから本件スーツケースを受け取
ったときは,スーツケースの中身は政治的書類であり最悪でも偽ドル紙幣と思っ
た,その後クアラルンプールのホテルにいた時点では政治的書類か最悪でも偽ドル
紙幣と思った(7月23日付警察官調書(乙13),同月24日付警察官調書(乙
14),同月25日付警察官調書(乙15))と供述したこともあるが,検察官に
対しては,Bから汚れたお金が隠されていると教えられ,この金が隠されたスーツ
ケースを日本に持ち込み,その後被告人に連絡をとってきた者に渡すよう指示され
た(7月10日付弁解録取書(乙19)),7月10日に行われた検察官の弁解録
取において,本件スーツケースにお金が隠されていると思った旨嘘をついた,その
理由は,本件スーツケースを日本に持ち込んだ際,税関職員によって大麻が隠され
ていたと言われて気が動転したからである,本件スーツケースの中にはイランの国
家機密に関わる秘密書類が隠されていると思って日本に持ち込んだ(7月19日付
検察官調書(乙20)),本件スーツケースに隠されているのはイランの国家機密
に関わる政治的な書類と考えていた,警察官に対して「汚い金だと思っていた」な
どと述べたのは,突然警察に逮捕されて混乱したからである(7月26日付質問調
書(乙26))と供述している。起訴後,大蔵事務官に対しては,最終的には,政
治的書類か悪くとも申告すべき米国ドル紙幣であり,最悪でも申告しなければなら
ないアメリカドル紙幣であると思った(8月11日付質問調書(乙28)),最悪
でも偽ドル紙幣という表現は,偽ドル紙幣ではなく,政治的資金で当然税関に申告
しなければならないお金という意味である(8月17日付質問調書(乙32)),
警察官に対して「汚れた金」と言ったのは,あくまでも「申告すべき米国ドル紙
幣」という意味である(8月21日付質問調書(乙34))と供述している。公判
廷でも,本物のドル紙幣と思った旨供述している(第10回公判)。
 このように被告人は,当初警察官に対して偽ドル紙幣が入っているのではないか
という供述をしているが,その供述が一時的なものであることや,検察官に対して
最終的にはそのような供述をしておらず,その後も,大蔵事務官に対して,あるい
は公判において,本物のドル紙幣と思ったと供述していることからすると,偽ドル
紙幣と思った旨供述したことは,いわば,思いつきで,言い逃れ的に供述したもの
にすぎないと考えられる。したがって,これを捉えて被告人の認識であるとみるの
は相当ではない。被告人には本件スーツケース中の内容物が何らかの不審なもので
あるという認識があったものといえるが,関税定率法21条1項3号に掲げられて
いる偽造紙幣という認識があったことまでは認められないから,同号関係の故意も
認定できない。
第5部 結論
以上検討したとおりであり,被告人が本件当時,自己の運搬してきたスーツケー
ス内に隠匿された物が大麻であるとの認識を未必的にしろ有していたものと認める
には合理的な疑いが残る。結局,本件公訴事実中,平成12年7月28日付起訴に
かかる大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反,関税法違反)については,
犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条後段により被告人に対して
無罪の言い渡しをする。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役7年,罰金100万円,大麻,マレーシアリンギ紙幣,米国ドル紙
幣,航空券1冊,旅券偽造部分の没収,追徴8万8,974円)
  平成13年12月3日
    福岡地方裁判所第2刑事部
      裁判長裁判官    林       秀   文
         裁判官  一   木   泰   造
         裁判官  永   井   美   奈

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
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応募方法
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
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連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
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応募方法
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