弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     抗告代理人のした本件抗告申立(当庁昭和三七年(ラ)第二五号)を却
下する。
     抗告人のした本件抗告申立(当庁昭和三七年(ラ)第三三号)を棄却す
る。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 記録によれば札幌地方裁判所昭和三二年(ヶ)第一八八号不動産競売事件につい
て同裁判所が昭和三七年四月三〇日言渡した競落許可決定に対し、抗告人から同年
五月四日即時抗告を申立て同庁受理番号第六四四五号、当庁昭和三七年(ラ)第三
三号として受理された後更に即時抗告期間内である同年五月七日抗告代理人から即
時抗告申立書お提出され当庁昭和三七年(ラ)第二五号抗告事件として受理された
ことが明らかである。従つて抗告代理人によつてなされた後者の抗告申立は一個の
抗告申立権に基いてなされた重複の不服申立で、民事訴訟法第二三一条の規定する
趣旨に従えば不適法であることが明らかであるから、これを却下すべきものとす
る。
 抗告人の申立てた本件抗告の趣旨は原決定を取消す、本件競落は許さない。本件
を札幌地方裁判所に差戻すとの裁判を求めるというのであつて、抗告理由は抗告代
理人の申述した別紙記載のとおりである。
 抗告理由第一点について。
 論旨は本件競売建物につき競落人Aは債務者Bと通謀して虚偽の抵当権並びに賃
借権設定登記をし時価金一、五〇〇万門の右建物を最低競売価額金四六七万円で競
買申出をしたものであるから、同人に対する競落許可は民事訴訟法第六七二条第二
号により許さるべきでないというのである。
 しかし第一番抵当権者である北海道信用保証協会は昭和三二年一〇月一七日本件
不動産競売を申立て、抗告人がこれにつき第三番第四番の各抵当権を有し、最高価
競買を申出たAは本件競売申立前右不動産につき昭和三一年三月二六日既に第六番
の抵当権並びに賃借権設定登記を経由したものであることが記録上明らかである。
従つて仮りにAと債務者Bとが通謀して右建物につき虚偽仮装の抵当権並びに賃借
権設定登記をしたとするもこのことだけで直ちにAにおいて詐計を用いて競売手続
の公正を害したものということができないから、同人は正当な競落人となりえない
との右抗告理由は採用できない。
 抗告理由第二点について。
 論旨は民事訴訟法第六七二条第四号に該当する競落不許の異議原因があるという
のである。
 しかし本件競売期日公告には賃貸借欄に期間昭和三一年三月二三日より満二〇
年、借賃一ケ月金二〇、〇〇〇円、昭和三六年三月分まで前払とし同年四月分より
毎月末日限りその月分を支払うこと及び特約として賃借権を譲渡し又は賃借物を転
貸することを得る登記済の賃貸借の存する旨掲記されていることは所論のとおりで
あつて、記録によれば競売裁判所は執行吏Cの賃貸借取調報告書に本件建物につき
賃借人をAとする賃貸借存在し現況は株式会社公楽(飲食店)代表者Aにおいて占
有使用中なる記載に依拠して右建物につき昭和三一年三月二六日賃借権設定登記さ
れている右登記原因同月二三日付賃貸借契約が真実Bとの間になされたものである
こと又はこれに併存して不動産登記簿に登記されたと同一内容の転貸借関係が存在
するものと認め、賃借権設定登記の記録に従いその期限、借賃、借賃の前払等前記
のとおり公告要件に掲載すことを命じたものであることが認められる。抗告人は右
賃貸借契約は通謀虚偽表示に基づく無効のもので実在しないと主張するのであるけ
れどもこれを認めるに足りる資料がないから、にわかに本件競売期日の公告に存在
しない賃貸借を掲記した違法あるものということができない。
 もつとも記録によれば右賃貸借契約は三年を超える長期の建物賃貸借であつて右
賃借権の登記は本件競売の基礎である債権者北海道信用保証協会の第一順位の根抵
当権が設定登記された昭和三〇年九月一三日の後になされたものであるから、右賃
貸借は右抵当権者従つて抵当権が実行された場合においては抵当不動産の競落人<要
旨>に対抗しえないものであることが明らかであるけれども、右のように不動産競売
期日の公告に競売申立抵当権者に対抗しえない賃貸借を掲載するも民事訴訟
法第六七二条第四号第六五八条第三号に該当する不適法の公告と解すべきでない。
なんとなれば、いづれも不動産競売手続に準用される民事訴訟法第六七二条第四号
第六五八条第三号に競売期日の公告の必要記載要件とされる賃貸借は抵当権者に対
抗しうるものに限られ、抵当権者に対抗できない賃貸借ある場合その期限、借賃、
敷金等を競売期日の公告に掲載することを要しないけれども(大正一二年(ク)第
一四号同年一月一九日大審院決定参照)かような賃貸借も競売建物を目的として現
実に存する限りこれを競売期日の公告に掲記することを禁止する法意と解すべき法
文上の根拠がないばかりでなく、抵当権者従つて競落人に対抗できない賃貸借であ
つても実際上は明渡請求のために日時と費用を要することは通常避け難いところで
あるから、ために抵当物件の評価に事実上の影響を与える点で賃貸借の存在しない
場合とは異なるから現に賃貸借が存する以上すべて競売期日の公告に掲載してこれ
を競買申出人に予め知らしめることはむしろより正確な物件評価に資する所以であ
つて競売手続の公正を害するものとは解せられないからである。抗告人は競売ブロ
ーカーでない一般の競買希望者は競売期日の公告に掲載された賃貸借はすべて競落
人がこれを引受けなければならないと考えるために競買の申出を躊躇し、公正価格
の競買申出を妨げられることになるから抵当権者に対抗しえない賃貸借は公告に掲
載すべきでなく、これを掲載する場合には対抗しえないことを明らかにしなければ
必要記載要件に抵触する違法の公告となる旨の主張をするけれども、賃貸借の対抗
力の有無は民法及び借家法等の実体法規に基づいて現実に定められた契約内容によ
るのであつて、当該賃貸借が公告に掲載されていると否とにより左右されるもので
なく、公告に掲載された賃貸借の対抗力の有無は競買希望者において競売記録を閲
覧すれば容易に知ることができるのであるから、本件競売期日の公告に抵当権者に
対抗しえない賃貸借であることを示すことの附記がされていないからといつて違法
の公告ということができない。従つて右抗告理由は理由がない。
 記録を精査するも原決定を取消すべき違法の点がないから、民事訴訟法第四一四
条第三八四条第九五条第八九条を適用して主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 南新一 裁判官 輪湖公寛 裁判官 藤野博雄)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛