弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中、被上告人B1の請求に関する部分及び同B2の請求に関する
上告人敗訴の部分を破棄する。
     前項の各部分につき、本件を広島高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人坂下宗生、同谷口玲爾、同坂本秀徳の上告理由第一について
 一 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人は、貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)所定の登録
を受けた貸金業者である。
 2 上告人は、平成四年九月三〇日、Dに対し、一五〇万円を、利息及び遅延損
害金の利率を年三九・八〇パーセントとし、平成四年一〇月から同九年九月まで毎
月二五日に六〇回にわたって元金二万五〇〇〇円ずつを経過利息と共に返済すると
の約定で貸し渡し、被上告人B2は、同日、上告人に対し、右消費貸借契約に係る
Dの債務を連帯保証する旨を約した。
 3 上告人は、平成五年六月四日、Dに対し、一〇〇万円を、利息及び遅延損害
金の利率を年三九・八〇パーセントとし、平成五年七月から同一〇年六月まで毎月
三日に六〇回にわたって元金一万六〇〇〇円ずつ(最終回は五万六〇〇〇円)を経
過利息と共に返済するとの約定で貸し渡し、被上告人B1は、同日、上告人に対し、
右消費貸借契約に係るDの債務を連帯保証する旨を約した。
 4 上告人は、右各消費貸借契約及び連帯保証契約の締結に際して、D及び被上
告人らに対し、それぞれ貸付契約説明書及び償還表と題する書面を交付した。右各
貸付契約説明書には、右2の返済期日について「毎月二五日」、右3の返済期日に
ついて「毎月三日」と記載されていたが、右期日が日曜日その他の一般の休日に当
たる場合の取扱いについての記載はなかった。
 5 D及び被上告人らは、上告人に対し、原判決の別紙充当計算表1及び2のと
おり、元本並びに約定の利率による利息及び遅延損害金を支払った。これを利息制
限法所定の制限利率に引き直して計算すると、被上告人B1の連帯保証に係る消費
貸借契約については六六万一一二〇円、被上告人B2の連帯保証に係る消費貸借契
約については五二万八八六一円の過払い(以下「本件過払い」という。)が生じて
いることになる。
 二 本件は、被上告人らが、上告人に対し、本件過払いが上告人の不当利得であ
るとしてその返還を求める事件である(被上告人B1の請求金額は六五万五一三四
円、被上告人B2の請求金額は九一万八六〇五円)。上告人は、法一七条一、二項
及び一八条一項(いずれも平成九年法律第一〇二号による改正前のもの。以下同じ。)
に規定するところに従い、D及び被上告人らに対し、法一七条一項各号及び二項に
掲げる事項について契約の内容を明らかにする書面(以下「一七条書面」という。)
並びに法一八条一項各号に掲げる事項を記載した書面(以下「受取証書」という。)
を交付しており、法四三条所定の要件が満たされているから、本件過払いは有効な
利息又は遅延損害金の債務の弁済とみなされると主張している。
 原審は、右事実関係の下において、(一)返済期日として定められた日が休日に
当たる場合に返済期日をその前日とするのか翌日とするのかは当該契約条項の解釈
にゆだねられ、書面にその旨の記載がない場合に当然にそのいずれかに定まるもの
ではない、(二)上告人が交付した前記貸付契約説明書及び償還表は、その記載自
体において返済期日が休日に当たる場合の取扱いが不明確であるから、「各回の返
済期日及び返済金額」(法一七条一項八号、二項、貸金業の規制等に関する法律施
行規則(昭和五八年大蔵省令第四〇号)一三条一項一号チ)の記載としては不十分
である、(三)したがって、法四三条の規定によりみなし弁済の効果を生ずるため
の要件である一七条書面の交付がされたとはいえないから、受取証書の交付の有無
について判断するまでもなく、本件過払いを有効な利息又は遅延損害金の債務の弁
済とみなすことはできないとして、本件過払いの限度で(被上告人B1については
前記請求金額の限度で)被上告人らの請求を認容した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約におい
て、返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで、その日が日曜日その他の一般の
休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合には、その地方においては別異
の慣習があるなどの特段の事情がない限り、契約当事者間にX日が右休日であると
きはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認されるもの
というべきである。現代社会においてはそれが一般的な取引の慣習になっていると
考えられるからである(民法一四二条参照)。
 そして、右黙示の合意があったと認められる場合においては、一七条書面によっ
て明らかにすべき「各回の返済期日」としては、明示の約定によって定められた「
毎月X日」という日が記載されていれば足りると解するのが相当である。けだし、
契約当事者間に右黙示の合意がある場合には、一七条書面にX日が右休日に当たる
場合の取扱いについて記載されていなくても、契約の内容が不明確であることによ
り債務者や保証人が不利益を被るとはいえず、法が一七条書面に「各回の返済期日」
を記載することを要求した趣旨に反しないからである。
 2 これを本件について見ると、上告人がD及び被上告人らに交付した各貸付契
約説明書には、返済期日として「毎月二五日」又は「毎月三日」と記載されるにと
どまり、これらの日が右休日に当たる場合の取扱いについての記載はなかったので
あるが、前記の推認を否定すべき特段の事情があったことの主張立証はないから、
上告人とD及び被上告人らとの間に二五日又は三日が右休日に当たる場合にはその
翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認されるものというべ
きである。したがって、右各貸付契約説明書は、「各回の返済期日」の記載に欠け
るところはなく、法一七条の要件を満たすものということができる。
 四 そうすると、原判決中、これと異なる判断の下に、一七条書面が交付された
とはいえないことを理由に法四三条の適用を否定し、被上告人らの請求の全部又は
一部を認容すべきものとした部分には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この
違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由
があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中の右部分は破棄を免
れない。そして、右部分について、受取証書の交付の有無について更に審理を尽く
させるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    藤   井   正   雄
            裁判官    大   出   峻   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛