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裁判例


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   主    文
1 第1審原告Aの控訴及び第1審被告の控訴をいずれも棄却する。
2 第1審原告Aの控訴に係る控訴費用は第1審原告Aの,第1審被告
の控訴に係る控訴費用は第1審被告の各負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 第1審原告Aの控訴につき
(第1審原告A)
(1) 原判決主文第1項を取り消す。
(2) 第1審被告が,平成6年3月14日付けでした,原判決別表「訴外人らに
対する処分」記載の「所有者」欄記載の者に対し,それぞれ「従前地」欄記
載の各土地に対する換地として,「換地」欄記載の各土地を指定するとの
処分を,いずれも取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1審,2審とも,第1審被告の負担とする。
(第1審被告)
(1) 第1審原告Aの控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は第1審原告Aの負担とする。
2 第1審被告の控訴につき
(第1審被告)
(1) 原判決中,第1審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 第1審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1審,2審とも,第1審原告らの負担とする。
(第1審原告ら)
(1) 第1審被告の控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は第1審被告の負担とする。
第2 事実関係
1 事実関係は,次のとおり補正し,下記2の当審における当事者の主張を付加
するほか,原判決の「事実及び理由」の第二記載のとおりであるから,これを
引用する。
(1) 原判決8頁4行目から5行目にかけての「改良区における慣用表現に習
い」とあるのを削除する。
(2) 同9頁8行目の「従前地」を「所有権に関する明細の従前地」と改める。
(3) 同11頁11行目及び同13頁6行目の各「国道一五五線」をそれぞれ「国
道一五五号線」と改める。
(4) 同31頁5行目の「指定してされた」を「指定した」と改める。
2 当審における当事者の主張
(1) 第1審原告Aの主張(本案前の主張)
 本件で訴外人らに対する換地処分の取消しを求めている換地は,いずれ
も土地改良区が調整地として設定した土地であり,一定の入札資格要件を
定めて入札に付し,そこで最高値で落札したものを権利者として換地しよう
としたもので,その手順や最低入札価格等については,入札要件が定めら
れ,本来であれば,恣意や裁量が働く余地がなく,権利者がいわば機械的
に定まる仕組みとなっている。
 上記調整地につき入札した権利者であるB,C,Dは,いずれもこの入札
のための資格要件を満たさない者であり,一方,第1審原告Aは,これらの
土地の取得を希望し,そのうえ,現にこれらの土地の処分にあたっても,定
められた最低価格以上の金額で入札申出もしており,入札要件も満たして
いる。そして,C,Dらが権利者となった調整地の入札については,訴外人
らと第1審原告A以外には入札者がおらず,Bが権利者となった調整地の
入札にあたっては,他に1名入札者があり,第1審原告Aを含め,3名の入
札者があったが,残り1名の申出金額は,第1審原告Aの申出金額を下回
っていた。したがって,前者の場合には,入札要件を満たす者は,第1審原
告Aだけであり,後者の場合も,第1審原告Aの申出の方が金額が高いか
ら,これらの状況では,自動的に第1審原告Aが落札者となり,上記各土地
を換地として取得し,第1審原告Aに対する換地処分の内容にも変更が生
ずることは必至である。
(2) 第1審被告の主張
ア 原判決は,「土地改良法上,農地は農業経営の観点から評価するもの
とされており,農地としての自然的条件(荒地,湧水,砂利層,砂地粘
土,非農地,電柱の有無や畦畔面積,日照などの特殊地かどうか,地
力,灌漑排水),経済条件(広狭,形状,達観,通作距離)のみが評価項
目とされている。」と判示しているが,土地改良法は土地の評価について
全く規定しておらず,法53条1項2号において,「当該換地及び従前の
土地について,省令の定めるところにより,それぞれその用途,地積,土
性,水利,傾斜,温度その他の自然条件及び利用条件を総合的に勘案
して,当該換地が従前の土地に照応していること」と規定し,これを受け
て土地改良法施行規則43条の6は,総合的な勘案は,当該換地及び
従前の土地の用途及び地積並びに同号に掲げる事項に基づいて評定
した当該換地及び従前の土地の等位についてしなければならないとし
て,評価という言葉を用いておらず,土地評価についての誤りは,妥当
性(裁量)の問題にすぎず,違法性の問題は生じない。
 その上,法53条1項2号は,「総合的に勘案して」としていることから,
評価の誤りによって,換地処分が違法となることはない。
イ 土地改良事業による換地処分における照応関係は,従前の土地に所
有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合を除き,同一
所有者の従前の土地全体とこれに対する換地全体とを総合的にみてそ
の間に認められれば足りるのであり,法施行規則43条の5(各筆換地
明細等)の定める各筆換地明細の形式を規定する別記様式第5号の各
筆換地明細(所有権に関する明細等)が地積の合計主義をとっているの
であるから,第1審原告A,同E,同Fの各土地の登記簿面積と買収土地
の面積との差を他の土地の面積から差し引く結果となっても違法とはい
えない。本件において,第1審原告A,同E,同Fを含め,昭和56年ない
し59年度買収のものが17筆15人,昭和59年ないし60年度買収のも
のが21筆15人あるところ,いずれも上記3名と同様の扱いをしている。
したがって,照応性に反するところはない。
ウ 評価について
(ア) 照応の項目について
a 従前の土地と換地の「用途,地積,土性,水利,傾斜,温度その他
の自然条件及び利用条件を総合的に勘案して照応していること(土
地改良法53条1項2号)」が要求されているが,これがすべて要求
されているわけでなく,「用途,地積」の照応が最も重要である。本
件土地のように平坦な土地では,「土性,水利,傾斜,温度」は,重
要性はない。
b 土地改良法施行規則43条の6が「用途及び地積並びに同号に掲
げる事項」として,「用途及び地積」を特に強調しているのも当然で
ある。
c 原判決は,照応していることの証明がない項目において「用途及び
地積」を掲示していないので,これについて照応していることを認め
ている。
(イ) 農業評価と財産評価について
a 原判決は,道路加算や道路の地先負担などの負担地積を定め,
所在地域の違いによる等級差による調整を違法としているが,平坦
地,なかでも都市近郊部における土地(従前の土地及び換地)の評
価において,「傾斜,温度」の評価は全く不要であり,「土性,水利」
についてほとんど差がないので評価不要であるのに対し,「用途,
地積」の照応を図るには,道路との接道関係,土地の所在地域が
重要なのである。
b 土地改良法の「用途,地積」及び「利用条件」の照応上も,道路に
接している従前地について評価上加算され,道路に接していなかっ
た従前地が換地において道路に接することになれば,地先負担を
求められるのは当然であり,この地区の大多数の権利者に支持さ
れている。
c 等級差について
 等級差は,1等地,2等地,3等地の区域を定め,3等地の区域の
従前地が2等地の区域に換地を得る場合には5パーセント,1等地
の区域に換地を得る場合は,10パーセントの面積を補償するもの
で,当工区のようにb,c,dの3つの工区が1つの工区になった地区
(昭和59年4月1日から工区合併し,a工区1本となる。)では,合併
前の各工区の評価委員の評価に対する感覚的基準が異なってい
たため,農業者の実感として違和感なく受け入れられたものであ
る。工区の一本化は,土地改良法の目的である農用地の集団化を
図るため,旧工区を越えて換地をすることも可能となるものであっ
て,昭和57年2月12日の工区総代会で審議して,減算・加算率及
び区域について了解を得ている。
 そして,平成5年3月26日開催の換地会議において,この評価は
承認成立している。
(ウ) 農業評価と財産評価(その2)について
a 「筆別評価内訳表」は,地元評価のうち,農産物生産母体である,
純粋な農地として鑑定した場合の評価であり,「評価地積計算書」
の農業評価には,不動産としての感覚が含まれた評価となっている
ので,両者の点数に違いが生じている。
b 各権利者の現実の価値観において,不公平が生じないように採用
した換地配分面積の算定手段が「評価地積計算書」であり,この算
定手段として用いた点数と土地改良法上の評価としての点数が合
致しないからといって,土地改良法上の評価である「筆別評価内訳
表」の評価の正当性に影響が及ばないから,本件換地処分の違法
はない。
エ 評価の手段性
(ア) 評価は照応した換地を設計する一手段にすぎず,原判決は,従前
の土地と換地が土地改良法で定められている照応の原則が適ってい
るかどうかの判断を全くしていない。
(イ) 本件において,従前地と換地とは,集団化が著しく図られ,十分に
照応している。第1ないし第17準備書面添付の従前地図,換地図,
重ね図から明らかである。
オ 減歩について
(ア)a 土地改良事業のうち,その性質上換地計画を定める事業,いわ
ゆる圃場整備事業は,原則として減歩を伴うものであり,これがなけ
れば事業はできない。
b 土地改良法53条1項3号に「当該換地の地積の,省令で定めると
ころにより算定した従前の土地の地積に対する増減の割合が,2割
にみたないこと。」と減歩を予定している。
c 本件の調整地(余剰地)は,当初から売却を予定していても,換地
とされる土地で,農用地となる土地であるから許容される。
(イ) 本件換地処分の減歩率は公平か,について
a 原判決は,従前地の面積に比べて換地の面積の割合が小さくなる
原因として,(1)従前地の評価が低いこと,(2)換地の評価が高いこ
と,(3)調整地を取得していることを挙げ,(1)(2)について,土地改良
法上認められない評価事項を加味しているとするが,不当である。
b 他の組合員とのいわゆる横の関係における照応についても,その
証明がないとするが,別紙1「地積増減割合分布表」のとおり,第1
審原告17名の分布は,全体の分布と大差なく,第1審原告らの減
歩の割合が,他の権利者と比べて大きいということはない。
カ 調整地(余剰地)について
(ア) 調整地の処分の適法性について
a 土地区画整理法は,余剰地を許容している規定はないが,一般
に,調整地(余剰地)が認められる。そして,土地区画整理事業も,
土地改良法による土地改良事業も,換地選定の過程で調整地(余
剰地)をもたないことには事業はできない。
b 本件における調整地(余剰地)は,最終的には換地(農用地)として
処理(換地配分)されており,農用地の減少はない。
c 農業に意欲のある組合員(農家・地権者)が調整地(余剰地)を取
得するほうが,農用地の改良,開発,集団化による農業の生産性
の向上に資するものであり,余剰地をもつことが土地改良法の趣旨
に反することはない。
(イ) 調整地(余剰地)の必要性と売却について
a 換地計画の換地交付率は,工事が終了し確定測量が行われた
後,初めて正確に算出されるものであり,結果的に判明するもので
ある。したがって,当初においては余裕をもって減歩をせざるを得な
いのが,技術的な実情である。
b 調整地(余剰地)についても最終的には換地(農用地)として処理さ
れるものである。
c 調整地(余剰地)の地権者への売却は,別途清算の一環として,基
準以上に土地を取得する者には単なる増換地による清算を行うよ
り高額で取得させるほうが公平に適うという判断に基づくものであ
り,その方法も公募,入札等の公平な方法でなされており合理性が
ある。さらに,売却代金を工事費に充てた点についても,工事費が
従前の土地に相応して負担するものであるところ,売却代金を工事
費等に充当して地権者全員の利益とすることも,不当不合理なもの
ではない。
d 本件においても,調整地(余剰地)を換地として配分するにあたっ
て使用した方法が公募,入札の方法であって,公平でかつ合理的
である。
(ウ) 調整地(余剰地)の処理としての売却の合理性について
 100平方メートル以上の土地に限っても,3万9569平方メートルの
面積の調整地(余剰地)が,入札により売買された点について,財産
権を侵害するものか否かについて
a 再度割り戻しを行うことは,せっかく割当てた圃区において,そ
の圃区から他の圃区へ移動しなくてはならない筆を多数生じさせる
こととなり,換地の配分に膨大な作業,費用,時間を要するもので
あり,それに見合うだけの集団化の効果が期待できるものではな
い。
 また,すべて割り戻しを行うことは,結局当初から余裕地を設けず
に換地選定を行うことと同じ作業を,わざわざ複数回,もしくは当初
に戻って行うことになり,調整地(余剰地)を設定したことの意味が
なくなる。
b 割戻率については組合員に十分に説明されたうえで実行されてお
り,第1審原告らにおいてもその意向調査に回答しており,その率,
方法については理解していたものであり,さらに入札にあたっては
現に第1審原告らも参加しており,この点の違法性をもって取消請
求の理由とすることはできない。
c 入札によって,調整地(余剰地)を処分したものは,1区画100平
方メートルを超える区画,89区画の合計は3万9569平方メートル
であり,1区画100平方メートル以下の区画,44区画の合計は,1
675平方メートルである。以上の合計は4万1244平方メートルで
あり,工区面積156.2ヘクタールの2.6パーセントにすぎず,重
大な影響を及ぼす規模ではない。
d さらに,地区の権利者を対象に希望者を募って,残った調整地(余
剰地)を配分し,換地,農用地とすることは換地配分の1つの方法
であり,土地改良法52条3項の農用地の集団化その他農業構造
の改善に資するようにとの趣旨に反するものではない。
e 最高値入札者でないものに落札している実例に対し,別紙2調整
地入札結果一覧表50欄記載のとおり,訴外G,第1審原告A,訴外
C,同Dの順で高い入札単価であったが,前2者は失格とし,落札
は訴外C,同Dであった。その理由は,e土地改良区調整地処理方
法(乙14の2)第6条には,「残地面積100平方メートル超える物件
については,その工区内権利者の希望申出により,処分するものと
する。ただし,処分面積は,原則として従前地評価面積の20パー
セントとする」と定められている。訴外Gは,従前地の評価地積が8
96平方メートルしかなく,これに20パーセントを乗じた数は179.2
平方メートルとなり,入札対象の土地の面積(1658.96平方メート
ル)の1割程度に過ぎず,資格がなかった。第1審原告Aは従前地
評価地積が4372.31平方メートルで,これに20パーセントを乗じ
た数は874.462平方メートルであって,入札対象土地の面積の
半分程度にすぎない。さらに,これより先に行われた第1回処分に
おいて,すでに293.005平方メートルを取得しており,これを87
4.462平方メートルから控除すると581.457平方メートルと入札
対象土地の面積の3分の1程度ではるかに下回ったので失格とな
った。訴外C,同Dの従前地評価地積は5465.61平方メートルで
あり,これに20パーセントを乗ずると1093.122平方メートルであ
り,入札対象の土地の面積を下回っているが,その差は大きくなか
ったので,精算委員会で協議の結果,両名を落札者とした。
キ 事情判決について
 本件土地改良事業はa工区だけでも,換地対象面積が156.2ヘクタ
ール以上,総事業費約10億円,関係する地権者は545名に及ぶ大規
模土地改良事業である。
 本事業は,昭和54年初めに本工区の工事に逐次着手し,農道,用排
水,耕地が整備されたところから逐次仮換地指定をし,耕作できるように
なり,平成元年3月3日に一時利用地の指定がなされ,平成6年3月14
日には換地処分の通知がなされた。仮換地指定が始まってから20年,
一時利用地指定の終了から12年,換地処分から7年以上が経過してお
り,各地権者はこれらの換地処分を前提に耕作はもちろん,新しい建築
等を行っている。さらに,これらの権利関係を前提とする所有権の移動,
その他の権利設定など,新たな法律関係が生じており,既に,これらの
法律関係が安定したものとなっている。
 仮に,第1審原告らの請求を認め,その換地処分を取り消すことにな
れば,第1審原告らに関する土地だけで換地処分をやり直すことは技術
的に不可能であるため,既に安定した権利関係,利用関係を築いている
他の地権者の権利関係,利用関係を覆して,多数の利害関係者に影響
を及ぼすことは避けられず,公の利益に著しい障害を生ずる。
 これに対し,第1審原告らの受ける損害の程度等は大きくなく,金銭に
よる補償で解決できる問題である。
(3) 第1審原告らの主張
ア 土地改良法における土地の評価について
(ア) 総合的に勘案する対象は,自然条件と利用条件であり,これ以外
の条件(例えば,県道沿いにあって,時価,その他の経済的価値が高
いといった観点)を自然条件及び利用条件とあわせ考えることは,上
記の総合的な勘案とはいえない。それ以外の要素を考慮することは,
裁量の問題ではなく,土地改良法上の違法の問題となる。
 評価にあたって,土地改良の目的が,農業生産の基盤の整備及び
開発を図ることにある以上,この目的面からの限定を受けることは,
当然であり,自然条件及び利用条件も農業生産に着目したそれでな
ければならない。
(イ) 本件改良区はその評価にあたって,改良区評価規程を定めたが,
これは財産評価の観点から道路加算や道路の地先負担などの負担
地積を定め,所在地域の違い等による等級差による調整を図るなどし
たもので,本件換地処分は,この改良区のなした従前地とこれに対応
する換地指定の関係をそのまま採用している点において,違法であ
る。
イ 総(合)計主義について
 縄延びの土地についての評価にあたって,買収対象となった実測土地
を他の土地から差し引くことまでは,合理化できない。
 第1審被告の措置は,組合員の財産権を不当に侵害するものであり,
改良目的とも相即し組合員全体の利益にもつながる道路や河川の改修
に買収により協力してきた一部組合員にのみ,不当な不利益を強要す
るものこととなって,不公平な評価方法である(登記簿面積から,実測に
よる面積を控除して従前地とする扱いは,縄延びが一般化している付近
の買収対象外の組合員との間で不均衡を生ずるが,さらに実測による
控除が登記簿上の面積では不足する時に,当該土地ばかりではなく,そ
れ以外の土地からも控除することは,さらにその取扱いの不均衡を拡大
する。)。
ウ 評価について
(ア) 照応の項目について
 照応の原則の立証責任は,施行者側にあり,その総合的勘案の対
象は,用途,地積だけでなく,等位(土地改良施行規則43条の6)も
含まれ,等位の構成要素をなす「土性,水利,傾斜,温度その他の自
然的条件及び利用条件」について照応していることの立証がなけれ
ば,この点を勘案したことにはならない。
(イ) 農業評価と財産評価について
 (ア)のとおりであり,組合員の財産権の侵害の有無に関する事項で
あり,法により多数決で決せられるとされた事項以外の事項は強行性
があり,評価方法は,多数決で決せられる事項ではない。
 農業評価に,その資産価値的な評価を導入することは許されない。
 また,第1審被告は,等級差という評価を採用しているが,これは農
地としての価値ではなく,資産価値に注目した評価を加えて修正をす
るために用いられたものであって,土地改良法上,農業評価以外の要
素を加えて評価すること自体が問題である。
(ウ) 評価の手段性について
 評価は照応した換地を設計する一手段にすぎないという主張は,誤
りである。照応という抽象的,観念的な概念を直観に頼らず客観的
で,説明可能な尺度として定立されたのが,その評価であり,その基
準である。
エ 減歩率の公平について
 第1審被告は,別紙1地積増減割合分布表を示して,第1審原告の分
布がほぼ同様に分布し,特に不利に扱われていないとする。
 しかしながら,同表は,原判決後に作成されたもので,信用性がない。
 仮に,内容において誤りがないとしても,第1審原告らは個々の評価の
あてはめについて,他の者とは異なった方法で行われていることを主張
しているのであって,第1審原告17名の減歩率の分布状況をとらえ,こ
れが全体の分布と大差なく,第1審原告らの減歩の割合が,他の権利者
と比べて大きいといえないといっても,意味がない。
オ 調整地(余剰地)について
(ア) 土地改良法は,当初から売却を予定して換地とされない調整地(余
剰地)を設けることは許容していない。事業を進める必要上,一定の
土地を調整地として未指定地を作ること自体は許容しているとしても,
安易に売却することは許容していない。
 とりわけ,本件のように,県営事業として,国からも多額の補助金交
付を受けているような事業について,事業費をもつ必要は全くないも
のであり,余分な調整地(余剰地)をもつことは,直ちに減歩率の増加
や換地の分断という組合員の土地所有権や改良目的に反した影響を
与えるものであり,許されない。
(イ) 調整地(余剰地)と農業生産性について
 調整地(余剰地)が,最終的に,組合員に農用地として取得され,総
体として,農用地の減少とならないが,技術的に必要な最小限の調整
地(余剰地)だけを調整地(余剰地)とする場合と,本件のように,当初
から売買目的で技術的な理由以上の不必要な調整地(余剰地)を設
ける場合を比べると,一時利用指定時の段階では,後者の場合が明
らかに減歩率が高くなり,各人に配分される面積は,前者の場合に比
して少なくなる。最終的に調整地(余剰地)が,組合員の元に売買によ
って戻るとしても,割戻し分以上に売買によって調整地(余剰地)を取
得しない人には,土地が還元されることはなく,売買によって取得した
としても,必ずしも,一時利用指定時に配分された土地と一体的な利
用が図られるような土地であるとは限らず,分断されると,集団化の
目的にも反する。
(ウ) 換地とされない土地について
 調整地について,売却という実質でもって,換地手続の中で,売買
名下に,所有権移転登記等をすることはできず,便宜上,換地という
形態が取られる。しかし,その土地は,事業資金用として別枠として,
組合員一般の換地用の土地からはずされ,個々の組合員にとって
は,実質上の減歩となり,そのような調整地を設けることは違法であ
る。
(エ) 調整地の必要性と売却について
 事業資金の捻出等,本来認められない違法な目的のために,余分
な調整地が設けられ,そのため,本来配分される換地が,その分削ら
れ,その削られた土地を取り戻すためには,金員を支払う必要があ
り,その金員は,他の組合よりも高い金額でなければならないというの
では,金銭的に余裕のない組合員(入札者)をさらに苛酷な状況に追
い込むもので,到底公平とはいえない。
 また,売却代金を工事費に充て,地権者全員が利益を受けたとして
も,本来なら,換地の増加分として割り当てられるべき土地が,工事
費の捻出という違法な目的のために削られ,不当に減歩されるもの
で,組合員の土地財産権に対する侵害となる。
 公募や入札の方法についても,資格のないものに入札資格を与え
たり,入札条件を潜脱するような入札方法を許容しており,自ら定めた
実施条件さえ,遵守しない点も問題がある。
(オ) 調整地の処理としての売却の合理性
 組合員に対し,調整地から一律3パーセントの割戻しが行われたと
しても,割戻率を大きくする余地があり,それにより,100平方メート
ル未満の土地が増換地として割り当てることができた可能性がある。
また,100平方メートル以上の調整地の面積は,3万8488.99平方
メートル(甲19),あるいは4万0044.37平方メートル(甲97)であ
り,調整地の面積は大きく,組合員の権利に大きな影響を与えてい
る。
(カ) 調整地の入札について,訴外C,同Dも入札資格がなかったのであ
り,入札対象の土地の面積を下回っている度合いが,相対的に低い
から落札者とするというのは,細かく調整地処理方法を定めた趣旨が
没却され,その都度恣意的な運用がなされていたものである。
 また,上記両名は共同で入札しており,その従前地評価地積は,18
80平方メートル,3582平方メートルであり,両名は最終的に換地と
しては調整地として取得した土地を分別して,訴外Dは788平方メー
トル,同Cは870平方メートル取得している。このように,共同入札を
認め,換地の分別取得を認めることは,結局,入札資格を潜脱するこ
とを認めることとなって,本来許されるべきではない。
 さらに,従前地評価地積の20パーセントを越える例が,21名あり
(甲101),うち工区長ら理事4名が含まれている。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,第1審原告Aの訴外人らに対してなされた換地処分の取消しを
求める訴えは,訴えの利益がないので不適法であるから却下し,その余の第
1審原告らの請求は理由があると判断するが,その理由は,次のとおり補正
し,下記2のとおり,当審における第1審原告ら及び第1審被告の主張に対す
る判断を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第三記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(1) 原判決37頁2行目から同37頁6行目までを次のとおり改める。
「 第1審原告Aは,本件で訴外人らに対する換地処分の取消しを求めている
換地は,いずれも土地改良区が調整地として設定した土地であり,一定の
入札資格要件を定めて入札に付し,そこで最高値で落札したものを権利者
として換地しようとしたもので,その手順や最低入札価格等については,入
札要件が定められ,本来であれば,恣意や裁量が働く余地がなく,権利者
がいわば機械的に定まる仕組みとなっているところ,訴外人らは,入札資
格を満たさず,第1審原告Aが上記調整地の取得を希望し,入札申出をし
かつ入札要件を満たしており,同人が落札することは必至であったことを
理由に,法律上の利害関係がある旨主張する。
 しかし,第1審原告Aが主張するように,同人が調整地を落札することが
必至であるとしても,これは事実上取得する蓋然性が高いというほどのも
のであって,これによって第1審被告が第1審原告Aに対し,上記調整地を
換地処分すべき法律上の義務があるとはいえないから,第1審原告Aの上
記主張は採用できず,同人が行政事件訴訟法9条に定める法律上の利益
を有する者とはいえない。」
(2) 同39頁2行目から5行目までを次のとおり改める。
「(二) 土地改良法は,農地を農業経営の観点から評価することを否定するも
のではなく,農地としての自然的条件(荒地,湧水,砂利層,砂地粘土,
非農地,電柱の有無,畦畔面積,日照などの特殊地性,地力,灌漑排
水),経済的条件(広狭,形状,達観,通作距離)を評価項目として勘案
することにより,換地と従前地の財産的同等性を保障していると解され
る。」
(3) 同40頁5行目及び8行目の「巾員」を「幅員」と改める。
(4) 同43頁8行目,同44頁3行目,同49頁10行目,同52頁5行目,同54
頁5行目,同57頁8行目,同58頁3行目,同60頁3行目,同64頁10行
目から同11行目にかけての各「国道一五五線」をそれぞれ「国道一五五
号線」と改める。
(5) 同53頁10行目の「主張」を「陳述記載」と改める。
(6) 同55頁2行目の「残りの土地が」を削除する。
(7) 同55頁6行目の「143・08平方メートル」を「149・08平方メートル」と改
める。
(8) 同59頁9行目の「対象事業」を「対象」と改める。
(9) 同66頁9行目の「配分することとしたこと」を「配分することとし」と改め
る。
(10) 同66頁11行目の「計算結果すると」を「計算の結果からすると」
と改める。
(11) 同71頁5行目の「主張する」を「供述する」と改める。
(12) 同73頁2行目から3行目までの「土地改良法上認められる評価方法と
異なり,」を削除する。
2 当審における第1審被告の主張に対する判断
(1) 第1審被告の第2,2(2)アの主張について
 第1審被告は,土地改良法が土地の評価について全く規定しておらず,
同法を受けた土地改良法施行規則43条の6においても,評価の文言が使
われていないことを理由に土地の評価の誤りは,妥当性の問題であって違
法の問題は生じないと主張する。
 しかし,旧農業基本法9条は,「国は,農業生産の選択的拡大,農業の生
産性の向上及び農業総生産の増大を図るため,・・・農業生産の基盤の整
備及び開発,農業技術の高度化,資本装備の増大,農業生産の調整等必
要な施策を講ずるものとする」と定め(なお,この趣旨は,平成11年7月1
6日公布の法律第106号食料・農業・農村基本法21条,23条,24条に受
け継がれている。),土地改良法はこの趣旨を受けて,「この法律は,農用
地の改良,開発,保全及び集団化に関する事業を適正かつ円滑に実施す
るために必要な事項を定めて,農業生産の基盤の整備及び開発を図り,も
って農業生産性の向上,農業総生産の増大,農業生産の選択的拡大及び
農業構造の改善に資することを目的とする」と定め(同法1条1項),この目
的を達成するために行う土地改良事業における換地計画は,「耕作又は養
畜の業務を営む者の農用地の集団化その他農業構造の改善に資するよう
に定めなければならない」(同法52条3項)としている。また,同法53条1
項2号は,土地の財産的同等性を保障するものとして,換地計画は,「当該
換地及び従前の土地について,省令の定めるところにより,それぞれその
用途,地積,土性,水利,傾斜,温度その他の自然条件及び利用条件を総
合的に勘案して,当該換地が,従前の土地に照応していること」を要するも
のと定め,同法施行規則43条の6は,上記「総合的な勘案は,当該換地
及び従前の土地の用途及び地積並びに同号に掲げる事項に基づいて評
定した当該換地及び従前の土地の等位についてしなければならない」と規
定し,同法53条3項,4項において,従前の土地の全部又は一部について
所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合の換地の方法
について規定している。これらの規定は,土地改良事業が,土地の財産権
的同等性を保障しつつ,農用地の集団化等農業構造の改善を図るもので
なければならない趣旨を定めるものであり,土地改良法上評価式換地法で
はなく,地積重視換地方式をとっているとしても,従前地と換地との財産的
同等性を保障するため,土地の評価をすることは,同法の上記趣旨に合致
するものというべきであるから,その評価を誤った場合には,違法性の問
題が生ずるというべきである。
(2) 第1審被告の第2,2(2)イの主張について
 第1審被告は,土地改良事業による換地処分における照応関係は,従前
の土地に所有権及び地役権以外の権利又は処分の制限がある場合を除
き,同一所有者の従前の土地全体とこれに対する換地全体とを総合的に
みてその間に認められれば足りるのであり,法施行規則43条の5(各筆換
地明細等)の定める各筆換地明細の形式を規定する別記様式第5号の各
筆換地明細(所有権に関する明細等)が地積の合計主義をとっていること
を理由に第1審原告A,同E,同Fの各土地の登記簿面積と買収土地の面
積との差を他の土地の面積から差し引く結果となっても違法とはいえない
旨主張する。
 しかし,上記第1審原告らの各土地の登記簿面積と買収土地面積との差
を他の土地の面積から差し引く結果となることは,従前地と換地との関係
が地積の合計主義をとっており,従前土地と換地との照応関係は,原則と
して同一所有者の従前の土地全体とこれに対応する換地全体とを総合的
にみてその間に認められれば足りるとしても,登記簿地積が買収面積より
小さい以上,当該土地について縄延びがあったものであり,当該土地の面
積をゼロとしないばかりか,他の土地から差し引くこととして,その控除分
について補償しないのであって,土地改良区において個人の財産権を無
償で取り上げる結果となるから,照応関係について総合的に考慮するとし
ても,上記算定方法は看過できない違法性を有するというべきである。
 この点,第1審被告は,上記第1審原告らのほかにも,登記簿地積より買
収面積の多かった土地は,昭和56年から同59年度で17筆15人,昭和5
9年から同60年度買収のものが21筆15人存在することをあげているが,
このような事実があったとしても,これをもって違法性がないとはいえない。
(3) 第1審被告の第2,2(2)ウ(イ)の主張について
 第1審被告は,都市近郊部における土地の評価において,用途,地積の
照応を図るには,道路との接道関係,土地の所在地域が重要であり,従前
地が換地において道路に接道することになれば,地先負担を求められるの
は当然である旨主張する。
 しかしながら,土地改良事業は,農地の整形化,集団化などにより農業
生産の基盤の整備を図り,もって,農業生産の増大,農業構造の改善に資
することを目的とするものであるから,換地を定めるに当たって考慮すべき
事項は,用途,地積,等位等の農業生産上の諸条件に限られ,従前地と
換地との照応関係は,これらの諸条件を総合的に勘案した結果,両者が
均衡を失しない場合に照応関係に欠けるところがないと解されるのであっ
て,換地において一般道路との接道により財産的評価が増加することは考
えられるものの,これをもって直ちに農業生産力が増大するものとはいえ
ず,法53条2項,同施行規則43条の6も一般道路との接道による加算,
地先負担に対する規定をしていないので,第1審被告の主張は採用できな
い。
(4) 第1審被告の第2,2(2)ウ(ウ)の主張について
 第1審被告は,筆別評価内訳表と,評価地積計算書の農業評価とは,点
数に違いが生じているものの,評価地積計算書は,各権利者の現実の価
値観において不公平が生じないよう算定したものであるから,土地改良法
上の評価である筆別評価内訳表の評価の正当性に影響が及ばない旨主
張する。
 しかしながら,筆別評価内訳書が土地改良法上の評価とするなら,評価
地積計算書の農業評価と同一でなければならないのに,これが異なってい
ること自体,筆別評価内訳表の正当性に影響を及ぼすこととなるから,第1
審被告の上記主張は採用できない。
 また,証人Hの証言によれば,第1審被告の照応性の検査は,農地とし
ての評価の基準でしか評価しないことが認められるから,なおさら,筆別評
価内訳書と評価地積計算書の農業評価と同一でなければならない。
(5) 照応性について(第1審被告の第2,(2)ウ(ア),エ,オ,カの主張につい
て)
 第1審被告は,本件において,従前地と換地とは,集団化が著しく図ら
れ,十分に照応している旨主張し,第1審原告らはこれを争うので,以下検
討する。
ア 換地方法について
 まず,換地を行うにあたって,土地改良法の趣旨に従い,本件におい
ても,従前地の位置,用途,地積等を勘案して原位置またはその附近に
おいて,農家単位に集団化することを原則とし(甲1),あるいは,各人の
最も密集した位置又はその附近に集団化する(乙2)とされており,いず
れにしても従前地附近において集団化あるいは団地化した換地が原則
であり,著しい飛換地をする場合には,その合理性が必要である。そこ
で,第1審原告らの各従前地の換地方法について検討する。
(ア) 第1審原告Aについて
 第1審原告A所有のaf,g,h,i所在の従前地は,八田川の北の部分
で合計1139平方メートルであったところ,これらを1か所にまとめて,
大字a地内に換地することは可能であるのに,遠隔地のj541,543
の土地を従前地として,ak233(998平方メートル)を換地としてお
り,換地による集約が不合理で恣意的である旨主張する。しかし,第1
審原告Aは,a地内に他に3筆換地を有しているから,従前地が遠隔
地であったとしても,必ずしも上記換地が恣意的であるとまではいえな
い。
 しかしながら,従前地l408‐2(842平方メートル)と同409(353平
方メートル)の各土地は団地化しているところ,指定された換地は,ak
122(598平方メートル)と同126(212平方メートル)の各土地に分
けられており,換地による集約化,団地化がなされておらず,合理的
な理由はない。
(イ) 第1審原告Iについて
 第1審原告I所有の従前地m217‐1(53平方メートル),同329‐1
(247平方メートル)の土地は,an74(289平方メートル)に,m222‐
2(104平方メートル),g5369(115平方メートル)は,ak256(253
平方メートル)の土地にそれぞれ換地されたが,それぞれ農地として
は,狭隘であり,とりわけ,ak256の土地は,同人の換地ak261(14
15平方メートル)の土地に隣接しているが,その間に水路があって,
一団としての利用は困難であり,同所256の土地のみでは農地として
の利用が不便であって,換地の方法として合理的とはいえない。
(ウ) 第1審原告Jについて
 証拠(甲43,85)及び弁論の全趣旨によれば,亡Kの従前地h154
‐1(1296平方メートル),同164(330平方メートル)の換地an91(1
435平方メートル)は,仮換地,一時利用指定の段階では,同所94
(1685平方メートル)を仮換地として指定を受けたが,改良区は,同
人の所有地に調整地を設けたものの,同土地の買手がなかったこと
から,同人が仮換地として指定を受けていた同所94の土地の北東端
248平方メートルを,94‐2,94‐3,94‐4と分けて調整地とし,同人
に割り当てられた94の仮換地の面積を減らして,94‐1(換地として
の地番は,91)(1435平方メートル)として,その土地の面積分を同
人の別の仮換地に割り当て,上記細分化した調整地を他に処分して
いることが認められる。
 一団の土地として利用するなら,換地91の土地を細分化する必要
性,合理性はないといわざるを得ない。
 この点,第1審被告は,仮換地として指定を受けた換地a91,同9
3,同94,同95番相当分1685平方メートルを,亡Kは,三角地は嫌
だから変更して欲しいとの希望申し出により,換地a91番に相当する
土地1435平方メートルを一時利用地として指定した。その際,換地a
93,同94,同95番を調整地として,これに見合う分として換地an33
番相当分1250平方メートルを亡Kに一時利用地として指定し,その
まま換地処分された旨主張する。
 しかしながら,一体としての土地の面積を減らされる方向での変更
に同意するというのは不合理であり,これを認めるに足りる証拠はな
いので,上記主張は採用できない。
(エ) 第1審原告L,同Mについて
証拠(甲76,85)及び弁論の全趣旨によれば,同人らの従前地o4
526(211平方メートル)は,換地ak83(45平方メートル)とak204‐
2(194平方メートル)に分けられているところ,ak83(45平方メート
ル)土地は,間口4.8メートル,奥行9.4メートルの土地であり,これ
は3パーセントの増換地部分として指定されたものであること,同人ら
に相談なく指定されたものであること,狭隘な土地のため機械耕作は
困難なことがそれぞれ認められる。
 この点,第1審被告は,Mの母であるNとの話合いで位置を決めた
旨主張するが,甲76によれば,Nは自己所有地の隣地に指定して欲
しい旨改良区に希望を出していることが認められるので,第1審被告
の上記主張は採用できない。
イ 従前地の評価について
(ア) 評価方法について
a 証拠(甲1,乙2,27,証人Hの証言)によれば,
農地の評価のための調査事項としての「荒地,湧水,砂利層,砂
地,地味,田面の乾湿」については,評価委員が3人1組になって,
現地評価し,広狭,形状,達観,通作距離については,Hが,公図,
航空写真に基づいた図面により評価していたことが認められる。
 この点,第1審原告らは,従前地の自然的条件の各調査事項「荒
地,湧水,砂利層,砂地粘土,非農地,地力,灌漑排水」について,
地域によっては現地評価がなされていない旨主張するが,上記主
張を認めるに足りる証拠はないので,採用できない。
b 改良区評価規程(甲1,乙27)及び第1審被告評価基準(乙2)に
よれば,広狭は枚数,形状は団地で評価することとなっている。
 この点,第1審被告は,耕作単位での評価で合理性がある旨主張
する。
 しかしながら,換地処分が1筆毎に評価されるものであることか
ら,同じ1団地の土地であっても,1団地となっている1枚の土地の
うちの1筆の土地の大小により,評価が異なることがあり得るので,
必ずしも合理的な判断基準とはいえない。
 仮に,上記基準が合理的であるとしても,本件においては,Hが,
広狭,形状について,航空写真に基づく図面及び公図(乙4)により
机上で判断したのみであって,これが評価委員によって検証された
ものではないから,評価結果に疑問なしとしない。
(イ) 通作距離について
a 第1審原告らは,従前地の経済的条件のうち,通作距離について,
本件換地計画が策定され,換地規程の基準時となっている昭和53
年9月26日時点では国道155号線の建設計画も策定され,国道1
55号線の買収と本件の換地は同時並行的に進められているもの
で,従前地の土地の通作距離の評価に当たっては,換地処分のあ
った時点で従前地の評価をすべきである旨主張する。
 しかしながら,同国道が計画道路にすぎない以上,通作距離の基
準道路として考慮しないとしても不合理であるとはいえない。
b 一方,換地については国道155号線を考慮し,従前地については
一切これを度外視することはアンバランスで,土地改良事業の結果
国道155号線ができて,土地の価値が増したわけでもないのであ
れば,換地のみ評価し,従前地について評価しないのは不合理で
あり,こうした取扱いは,改良区評価規程(甲1)によると,既得権と
して上記基準の2分の1を認めると規程されていることと明らかに矛
盾する。
 また,訴外Oの従前地g5257‐2(国道155号線買収済)につい
ては,仮換地時には道路加算は全くなされていなかったが(甲56
の1),評価見直し時点では75平方メートル道路加算がなされてお
り(甲56の2),これは国道155号線への接道を評価したものにほ
かならず,役員に有利で,一貫しない不公平な評価がなされてい
る。
c 個別の通作距離の不当性について
(a) 第1審原告Aについて
 同人の従前地l408の2,409については,通作距離で1点減
点されているが,両側に水路のついた県道のp‐q線(旧道)に接
している(乙4)。
 この点,第1審被告は,県道p‐q線は廃止されたので,減点1
が相当である旨主張するが,同県道が廃止されたことにより通作
の利便性を欠いたことを明らかにすべきところ,その証明がない
ので,減点する合理性に欠ける。
 なお,同人は,従前地g5329,5330合併地については,接道
していないが,最寄りの道路から5メートル未満の土地で,減点2
ではなく1が相当である旨主張するが,接道していない以上,減
点2が相当である。
 また,第1審原告Aは,以下のものが不合理である旨主張す
る。
f5200‐1  3点が0点
f5201‐2  2点が0点
g5329外    2点が0点
h所在の土地全て 各4点が0点
 しかしながら,甲85のみでは通作距離に関して減点0とする裏
付けとする根拠とは認めがたく,他に上記主張を認めるに足りる
証拠がないので,採用できない。
(b) 第1審原告Pについて
 同人の従前地g5273‐6,5310‐1,5310‐2については,い
ずれも10メートル幅以上の県道に隣接した土地で,減点は相当
でない旨主張するところ,乙4によれば,5310‐1の土地につい
ては道路に接していることがうかがわれ,他の土地については裏
付けがないので,採用できない。この点,第1審被告は,上記各
土地はいずれも道路には接していない旨主張するが,5310‐1
の土地については,接道しているので上記主張は採用できない。
(c) 第1審原告Qについて
 同人の従前地g5282‐1は,乙4によれば,市道r・a線に接して
いることがうかがわれるところ,通作距離による減点はないはず
であるのに,1点の減点がなされているのは不当である。
 この点,第1審被告は,上記土地は,地区外にある市道r・a線
に接していない旨主張するが,乙4に照らして,採用できない。
(d) 第1審原告Rについて
 同人は,従前地ao4565‐1の土地について,通作距離で3点
の減点がなされているが,ここには堤防沿いに約3メートル幅の
道路があり,減点としては1点程度が相当であり,他の人には,
堤防付きの道路については道路として通作距離の計算がなされ
ているのに,これが認められないのは不合理である旨主張する。
 しかしながら,乙4及び弁論の全趣旨によれば,4565‐1の土
地は,堤防沿いの管理用道路のそばにあるが,幅が2メートルも
ない管理用道路であり,しかも,その道路にも接していないので,
3点が相当である。
 また,同人の従前地af5188の土地については,通作距離で3
点の減点がなされているが,本件土地の西側約20メートル離れ
たところに,土地改良区域外であるが5メートル幅の市道があり,
通作距離としては1点程度の減点が相当で,3点の減点は不合
理であり,第1審被告は,通作距離の道路としての評価に当たっ
て,上記のような地区外の通路については,これを道路として見
ないと主張し,地区内のみに焦点を置いた評価方法をとるとしな
がら,他方,農地の一体化,団地化の判断に当たっては,地区外
の土地との一体的利用の可能性があることを考慮するとしてお
り,前後矛盾する旨主張する。
 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,5188の土地につい
て,その西側区域外に市道r・a線があるが,同土地と同市道とは
40メートル以上離れており,評価基準どおり減点3点が相当であ
る。また,通作距離の道路としての評価及び土地の一体的利用
については,諸条件を勘案し総合的に判断しており,地区内外の
みを基準にしていないので,必ずしも矛盾はない。
(e) 第1審原告Iについて
 乙4によれば,同人の従前地i59の土地は,その南側に区域外
の道(大池の周辺の道)に近接しており,4点の減点は不合理で
ある。また,i58の土地は,その北西部に2.5メートル幅の道の
ついた水路があり,車の乗り入れも同土地から近接したところま
で可能であることがうかがわれ,4点の減点は不合理である。さ
らに,g5369の土地についても,同様に道付の水路に隣接して
いるのに4点の減点がなされており,不合理である。
 この点,第1審被告は,58の土地の北西部に水路があったこと
は争わないが,水路付近の畦道は,通作距離の道路としての評
価対象に採用しておらず,4点減点が相当であり,59の土地の
南側区域外にある通路については,道路としての評価対象に採
用していないので,減点4点であって,5369の土地についても
同様である旨主張するが,上記認定に照らして採用できない。
(f) 第1審原告Lについて
 同人の従前地f5122については,通作距離で4点の減点がな
されているが,土地改良区域外であるものの,同土地の北西部
に道路があって,上記土地に隣接しているので,3点の減点が相
当である旨主張する。
 しかしながら,乙4によれば,5122の土地は,地区外にある市
道r・a線に隣接していないので,上記主張は採用できない。
(g) 第1審原告Eについて
 同人の従前地s所在の土地については,通作距離でいずれも3
ないし4点の減点がなされているが,弁論の全趣旨によれば,い
ずれも堤防沿いの土地で,2ないし2.5メートル幅の道に隣接し
ていることが認められるので,3ないし4点もの減点は不合理で
ある。
 この点,第1審被告は,水路付きの畦道については,通作距離
の道路としての評価対象にしていないため,s所在の従前地につ
いては,上記点数が合理的である旨主張する。
 しかしながら,改良区評価規程及び第1審被告評価基準(甲1,
乙2,27)では,通作距離の基準となる道路の幅員の記載はあ
るものの,畦道を評価の対象としない旨の記載がないので,第1
審被告の主張は採用できない。
(ウ) その他の土地の自然的条件(荒地,砂利層,地味)についての
評価について
 第1審原告らは,筆別評価内訳表「従前地」欄記載の網掛け部分
の評価について,点数が不合理である旨主張するが,甲85のみで
は,第1審原告ら主張事実を認めることはできず,他に第1審原告
主張事実を認めるに足りる証拠はないので,採用できない。
(エ) 等級差について
 第1審被告は,本件において等級差という評価方法を採用してい
るところ,乙48及び証人Sによれば,a地区は面積が大きく,地形
が複雑であるため,従前地及び換地の評価が困難であったうえ,山
間地の日陰で傾斜がきつく土質も悪く生産性が上がらない農地か
ら,平地の日当たりが良く河川の堆積土で生産性の高い農地まで
の地域格差を含んでいたので,農地と劣悪な農地との格差は,他
の工区の格差よりもはるかに大きく,工事後も山間地の農地は平
地の農地に比べれば生産性は低く,農地としての評価は低くなるこ
と,本件工区のうちb工区には山間地の農地が多く,d工区には平
地の農地が多く,c工区はその中間であるが,山間地の従前地に平
地の農地が換地として与えられる場合,あるいはその逆の場合に
は,農業者の実感として評価差の均衡を図る必要があることを理由
に,1等地,2等地,3等地の区域を定めて,3等地の区域の従前地
が2等地の区域に換地を得る場合には5パーセント,1等地の区域
に換地を得る場合には10パーセントの面積を補償することとしたこ
と,そして,昭和57年2月12日の工区総代会で審議して,減算,加
算率及び区域について了解を得たこと,なお,等級差による評価を
したのは,平成3年7月であったが,これは,①現地換地が多く,現
実に等級差の計算が発生するような換地を与えられる者は数少な
いと考えたため,最後にまとめて計算することとしたこと,②広範囲
な土地改良事業であって,工事終了地区から順次一時利用地をし
ていたので,途中から一部の者だけ等級差を付けることは不公平
であるから,最後にまとめて計算することとしたこと,③工事が終了
し,確定測量が終わらないと減歩率が確定しないため,最後にまと
めて計算したことが認められる。
 しかしながら,等級差の理由が上記のとおりであるなら,改良区
評価規程(乙27)あるいは第1審被告評価基準(乙2)に記載してあ
る農地としての評価基準である自然条件(荒地,湧水,砂利層,砂
地粘土,非農地,地味,田面の乾湿)によって評価されていると考
えられ,これにさらに等級差という評価基準を設けるのは二重の基
準により農地を評価することとなって,合理的とは言えない。
ウ 換地の評価について
(ア) 第1審原告Tは,同人に換地指定された土地は,3メートル幅の道
路と6メートル幅の道路に挟まれているところ,広い道路を正面道路と
して高い評価がなされているが,同じような道路の状況,土地の道路
との位置関係,土地の形状にある工区長Sの土地については,広い
道路を側面道路として,換地の価値を不当に低く評価して換地面積を
増やすという操作をしている旨主張する。
 しかしながら,証人Hの証言によれば,Sの土地については,第1審
原告Tの主張の広い道路は,市道(6メートル)と農道(3メートル)との
間に高低差及び水路があり,同人の土地が市道付きと評価すること
ができないことが認められるので,第1審原告Tの主張は採用できな
い。
(イ) 第1審原告Uは,同人に換地された土地について,県道に接して高
い評価が加えられているが,同土地の現状は,車道の外,田畑側に
歩道,ガードレールがあり,県道と土地との間にも高低差がある旨主
張し,証拠(甲44の1ないし3,92の1ないし4,乙6の1ないし4)によ
れば,上記主張事実が認められる。
 この点,第1審被告は,接続する県道の歩道から大型耕作機械を入
れることができ,多少高低差があるものの進入に支障はなく,ガードレ
ールについても,進入しやすいように進入部分が切れており,耕作の
ための進入に不都合はなく,換地の評価は適正である旨主張する。
 しかしながら,ガードレールに切れ目部分があり,幅員2.5メートル
耕作用道路があるとしても,不整形で,凹凸があって農作業するため
の大型耕作機械を搬入するには支障が生ずるばかりか,トラック等の
作業用自動車を歩道上に違法駐車せざるを得ないことは明らかであ
って,第1審被告の主張は採用できない。
エ 地役権の評価について
(ア) 第1審原告V,同Wについては,従前地,換地いずれも高圧線下の
土地があり,このような土地については評価減をする旨の改良区評価
規程があり(乙27,別表6,乙28,証人H),これによると従前地,換
地とも地役権設定登記の有無を問わず一律に,40パーセントの評価
減をすることになっている。この評価減の適用については,従前地,
換地双方とも実測面積を基準に,その40パーセントの評価減をする
ものである(H証言)。ところが,第1審原告V,同Wについてはこのよ
うな計算はされていない。これらの者については,換地になったため,
かえって地役権の負担がいずれも面積で2倍以上に増え,次のとお
り,不公平な取扱いとなっていることが認められる。
(イ) 第1審原告Vについては,同人所有のh76‐2の従前地465平方メ
ートルは,高圧線が通り,地役権設定がなされ,そのため190平方メ
ートル分が控除されている(甲48)。この土地については,他の土地
(f5079)と合わせて1032平方メートルの一筆の土地の換地が指定
されているが,換地の評価に当たっては,全体の面積に地役権の負
担がかかる(甲59,60)にもかかわらず,310.94平方メートルしか
控除されていない(甲48)。その負担増は3倍増となっているが,換地
の評価にあたって地役権の評価減が全く考慮されていない。改良区
評価規程によれば,1032平方メートルの40パーセントである412.
8平方メートルが評価減となるべきである。
 この点,第1審被告は,従前地の合計861平方メートルに対し,換
地面積は,1032平方メートルであって,換地の地積の増加により,
地役権存在による換地の評価減を考慮した旨主張する。
 しかしながら,従前地の評価(465×0.6+396=675)と換地の
評価(1032×0.6=619.2)を比較すると,換地の面積は従前地
の面積より減少していることになるから,第1審被告の主張は採用で
きない。
(ウ) 第1審原告Wについては,乙23及び弁論の全趣旨によれば,換地
として取得した土地として,an20田1318平方メートルがあり,これに
は全域高圧線設置による地役権の負担があること,これに対応する
従前地にも,同じく地役権の負担があるが,地役権の負担を負う部分
の土地は,6筆で,その面積は,合計603.61平方メートルと換地の
方が2倍以上多くなっていること,地役権による評価減を加えると,換
地の方が面積が増えるべきところ,従前地総計1328.61平方メート
ルであるのに対し,換地1318平方メートルと逆に換地の方が面積が
減っていること,換地の評価減は,改良区評価規程によれば,1318
×0.4=527.2平方メートルとなされるべきところ,317.10平方メ
ートルしかなされていないことが認められる。
 これに対し,第1審被告は,従前地の合計2796.61平方メートル
のうち,地役権設定地積は603.61平方メートルであり,換地の面積
2841平方メートルのうち,地役権設定はan20番で,地積は1318
平方メートルであり,従前地の合計地積より換地の合計地積を増加さ
せることにより,地役権存在による換地の評価減を考慮した旨主張す
る。しかしながら,地役権の設定してある従前地の評価と換地の評価
を改良区評価規程に従うと第1審原告Wの主張のとおりとなるから,
第1審被告の主張は採用できない。
(エ) 以上によれば,地役権の評価についても恣意的な運用がなされて
いるというべきである。
オ 減歩について
(ア) 第1審原告Aについて
 本件土地改良区の平均減歩率(ただし,従前地の面積と換地の面
積を単純に比較して減歩率を出したもの)が,9パーセントであるとこ
ろ,Aの場合,一時利用指定(仮換地)の際の減歩率は,従前地415
0平方メートル,指定地3556平方メートルと減歩率14.3パーセント
のところ,換地処分ではさらに18.6パーセントと高くなっている。これ
は,甲85によれば,①従前地at,田,3653平方メートルについて
は,本来,本件土地改良区域外の土地で,改良事業の円滑な遂行の
ため,区域内の土地と交換(減歩等をせず,等面積の交換)をしたも
ので,この土地及びこれに対する換地を,換地処分の中に入れること
は,便宜的な取扱いであり,本来換地処分でない土地を減歩率の計
算上入れることは妥当でなく,従前地及び換地から除外すべきであ
る,②換地であるa122田の一部80.66平方メートル及び同126番
212.37平方メートルは,換地で取得したものではなく,調整地処分
によって現金を拠出して買った土地だから,減歩率の計算上はこれを
除外すべきである,③改良区は,一時利用後の評価見直しで177平
方メートルの過渡しと主張するのであって,この分は減歩と同様の評
価が加えられたものとして,減歩率の計算に当たってこれを除外すべ
きである,④以上によると,従前地は,4389平方メートルから従前地
211平方メートルを控除した4150平方メートル,換地については,4
078平方メートルから換地計230平方メートル,調整地処分取得分2
93平方メートル,過渡し分177平方メートルを控除し,3378平方メ
ートルとなるものであって,単純面積比で18.6パーセントとなる。
 そして,第1審原告Aの場合,仮換地後に増換地による3パーセント
の割戻しがあって,通常減歩率が下がるのが当然であるのに,逆の
結果になっているところ,工区長のSの減歩率は,6.99パーセントに
過ぎず,2倍以上の開きがあり,減歩率が極めて不公平な結果となっ
ている。
 この点,第1審被告は,土地改良法53条1項2号が要件としている
のは,「用途,地積,土性,水利,傾斜,温度,その他の自然条件及び
利用条件を総合的に勘案して,当該換地が従前の土地に照応してい
ること。」であって,地積のみの項目で照応することを要件としているも
のではなく,したがって,地積のみを他の者と比較して不公平とする第
1審原告Aの主張は失当である旨主張する。
 しかしながら,従前地と換地との照応関係は,同一の所有者の従前
の土地全体とこれに対する換地全体とを総合的にみてその間に認め
られれば足りるとしても,その要素の1つとして地積を考慮することは
法の要請するところであるから,第1審原告Aの主張が直ちに失当と
は言えない。
 また,第1審被告は,第1審原告Aについて,3パーセントの割戻し
があっても過渡しがあるため,減歩率が上がっているとして,実測値
更正+66,評価点検更正-58,等級差評価+69,特別計算更正+
100,合計過渡し+177,+177+3パーセント割戻し分(-118)
=+59(甲78,乙48)とするが,各項目の数字の具体的根拠につい
ては明らかとなっていないので,その合理性に疑問がある。
(イ) 第1審原告Tについて
 換地処分の所有権に関する明細の従前地,換地の総面積は,131
5平方メートル,1058.29平方メートルで,減歩率は19.52パーセ
ントである。また,土地改良法上の減歩率をみても,15.5パーセント
となる(争いがない)。
 第1審原告Tは,換地指定されたak103の田は,6メートル幅の農
免道路と3メートル幅の農道に挟まれ,6メートル道路をもって正面道
路として高い評価がされており,同じような道路の状況,土地の道路と
の位置関係,土地の形状にある工区長のSの土地については(甲
5),第1審原告Tの土地の評価と同様,明らかに幅員の広い市道側
(6メートル幅)を正面道路として計算すべきで,仮換地の際には,実
際にこのように評価計算されていたが,換地の際に,工区長に不当に
有利に計算方法が変更され,これを側面道路として換地の価値を不
当に低く評価して換地面積を増やすといった不当な操作がしてある。
仮に,上記のような評価が相当であるなら,第1審原告Tに対しても同
様の評価が換地に対してなされるべきであり,そうであるならば換地
面積が増え,減歩率が下がる旨主張する。
 この点,第1審被告は,換地については,評価基準表(乙2,2枚目)
により評価しており,「正面道路,側面道路」という評価基準は採用し
ていないから,不当な操作がしてあるとの主張は失当である旨主張す
る。
 しかしながら,改良区評価規程では,上記評価基準を採用している
から,直ちに,第1審被告の主張が正当ともいえないが,Sの土地に
ついては,上記ア(ア)のとおり,広い市道側と農免道路の間に水路が
あり,高低差もあることから一体と見られないことが認められ,第1審
原告Tの主張のように評価できないので,この点では,同人の主張は
採用できないものの,減歩率については,平均減歩率9.48パーセン
トに比して,高率であると言わざるを得ない。
(ウ) 第1審原告Pについて
 同人の換地処分の所有権に関する明細の従前地,換地の各総面
積は,3772平方メートル,3254平方メートルであるが,換地のうち,
211平方メートルは入札で金銭を出捐して購入したものであり(甲3
2),本来従前地があってその換地として取得したものではないので,
減歩率の計算にあたって,これを換地取得分として計算するのは妥当
ではない。これを控除すると,換地は3143平方メートル(甲32)とな
り,減歩率は16.68パーセントとなって,平均減歩率9.48パーセン
トに比して大きい。
 なお,同人は,国道155号線の買収に関連して,従前地計36.3平
方メートルに対する換地漏れがあり,これを従前地に加えると,減歩
率は17.46パーセントとなる旨主張するが,換地漏れの事実を認め
るに足りる証拠はない。
(エ) 第1審原告Fについて
 同人の換地処分の所有権の明細に関する従前地,換地の各総面
積は,それぞれ928平方メートル,765平方メートルで,減歩率は1
7.56パーセントであって,平均減歩率9.48パーセントに比して大き
いことは明らかである。
(オ) 第1審原告Eについて
 同人の換地処分の所有権に関する明細の従前地,換地の各総面
積は,それぞれ2197平方メートル,1828平方メートルで,減歩率
は,16.80パーセントである。
 この点,第1審被告は,同人の減歩率は16.8パーセントであり,換
地交付基準地積からみたEの地積増減の割合は,マイナス12.6パ
ーセントであり,不合理に高率であるとはいえない旨主張するが,平
均減歩率9.48パーセントに比して大きいことは明らかである。
(カ) 第1審原告Uについて
 同人の換地処分の所有権に関する明細の従前地,換地の各総面
積は,934.3平方メートル,765平方メートルで,単純計算では,減
歩率は,18.12パーセントであるが,従前地に公衆用道路として記
載されている2筆の土地は,本来,換地対象外の土地で,従前地とし
て予定されていたものではなく,便宜上換地の形式を取ったものにす
ぎず,これを控除すると,従前地は,915平方メートルで,減歩率は1
6.39パーセントとなっており,平均減歩率9.48パーセントに比して
大きい。
 また,同人は,換地対象となっているu3891‐2,3876‐3の土地
は,農免道路で既に買収済の土地で,本件の圃場整備とは全く関係
のない土地で,現に仮換地,一時利用指定の時には換地対象外とさ
れていたが,登記未了であったため,換地会議の際に改良区の中に
追加して入れたものであることが認められ,圃場整備の本来対象外
の土地が,換地対象となっている点で違法である旨主張するが,弁論
の全趣旨によれば,従前地u3891‐1,3876‐3の土地は,事業計
画変更手続(平成5年4月28日変更計画確定)により,地区内として,
第1審原告Uが所有権を有していた土地であり,適法な換地処分であ
ることが認められるので,第1審原告Uの上記主張は採用できない。
(キ) 以上のとおり,減歩率について,上記第1審原告らの各換地につい
ては,平均減歩率に比して高率の減歩率となっているところ,第1審
被告は,従前地と換地の照応関係について,地積以外の項目につい
ても具体的かつ合理的な主張,立証をなしていない。
 また,第1審被告は,他の組合員とのいわゆる横の関係における照
応について,別紙1「地積増減割合分布表」のとおり,第1審原告17
名の分布は,全体の分布と大差なく,第1審原告らの減歩の割合が,
他の権利者と比べて大きいということはない旨主張するが,全体の分
布が第1審被告主張のとおりであるとしても,個々の第1審原告らの
減歩率が不公平であるので,第1審被告の主張は,横の関係におけ
る照応関係の主張としては当を得ないと言わざるを得ない。
カ 調整地(余剰地)について
(ア) 土地改良法には,土地区画整理法96条,104条,108条に規定
されている保留地,あるいは旧耕地整理法30条2項に規定されてい
る替費地のような事業費用その他一定の目的にあてるため施行者が
対象区域内の土地を選びこれを何人にも換地しないことに指定した土
地(余剰地)に関する規定がないのみならず,土地改良法53条の3,
同法53条の3の2には,従前地を換地として定めない場合として,一
定の条件の下で土地改良施設用地や道路用地等公共用地として土
地改良区等が当該土地を取得する創設換地制度を規定しているにす
ぎないことを考慮すると,土地改良法は,余剰地の設定処分を許容し
ていないものと解するのが相当である。一方,事業を進める必要性か
ら換地計画において一定の土地を調整地として未指定地を作出する
こと自体は,農地の集団化等により農業の生産性の向上,農業総生
産の増大等を図るという同法の趣旨(1条)に直ちに反するとまではい
えない。 しかし,調整地を売却処分してその売却代金を事業費用等
に当てることは,上記各条項に照らして,同法の趣旨に反するものと
考えられる。
(イ) この点,第1審被告は,調整地(余剰地)の地権者への売却は,別
途清算の一環として,基準以上に土地を取得する者には増換地によ
る清算を行うより高額で取得させる方が公平に適い,公募,入札等の
方法でなされて合理的であり,売却代金を工事費に充てた点も,工事
費が従前の土地に相応して負担するもので,地権者全員の利益とな
るので違法とはいえない旨主張する。
 しかしながら,甲45,46,証人H及び弁論の全趣旨によれば,土地
改良区(a工区)は,平成5年度末には調整地の売却による収入を得
た結果,約7億円の剰余金を有しているが,そのうち,事業費に充てら
れるものは約3億円で,研修費として2000万円,清算金として2億1
400万円を予算化しているものであって,土地改良区は,当初から,
調整地の売却代金をもってその代金を事業費等に充てることを予定し
ていたものであり,第1審被告主張の上記別途清算は,換地計画で定
められた清算と異なる清算を土地改良区が行ったものであることが認
められ,とりわけ,本件土地改良事業が愛知県及び国から多額の補
助金,助成金を得ており,これを事業費等に充てるのが本来の同法
の趣旨であることを考慮すると,これに反することは明らかである。
 さらに,本件における調整地の売却面積は,第1審被告主張によっ
ても,1区画100平方メートルを超える89区画の合計は3万9569平
方メートルであり,1区画100平方メートル以下の44区画の合計は1
675平方メートルで,工区面積156.2ヘクタールの2.6パーセント
にすぎないとしても,合計4万1244平方メートルに及ぶものであっ
て,軽視できる面積とはいえない。なお,甲76,77,証人S及び弁論
の全趣旨によれば,土地改良区は,平成3年10月ころ,調整地の再
配分についての意向調査を行ったものの,N(当時の地権者),第1審
原告I,訴外Xの意向は金銭ではなく,隣地への配分を希望したが容
れられず,狭小(100平方メートル以下)な飛換地として処理されたこ
とが認められ,地権者に配分する限り農用地の減少を招かないとして
も,農地の集団化を図るという法の趣旨に反する配分結果となってい
る。
(ウ) 第1審被告は,最高値入札者でないものに落札している実例に対
し,別紙2調整地入札結果一覧表50欄記載のとおり,訴外G,第1審
原告A,訴外C,同Dの順で高い入札単価であったが,前2者は失格と
し,落札は訴外C,同Dとなり,その理由として,e土地改良区調整地
処理方法(乙14の2)第6条には,「残地面積100平方メートル超える
物件については,その工区内権利者の希望申出により,処分するも
のとする。ただし,処分面積は,原則として従前地評価面積の20パー
セントとする」と定められていること,訴外Gは,従前地の評価地積が
896平方メートルしかなく,これに20パーセントを乗じた数は179.2
平方メートルとなり,入札対象の土地の面積(1658.96平方メート
ル)の1割に過ぎず,資格がなかった。第1審原告Aは従前地評価地
積が4372.31平方メートルで,これに20パーセントを乗じた数は87
4.462平方メートルであって,入札対象土地の面積の半分程度にす
ぎないこと,さらに,これより先に行われた第1回処分において,すで
に293.005平方メートルを取得しており,これを874.462平方メー
トルから控除すると581.457平方メートルと入札対象土地の面積の
3分の1程度ではるかに下回ったので失格となったこと,訴外C,同D
の従前地評価地積は5465.61平方メートルであり,これに20パー
セントを乗ずると1093.122平方メートルであり,入札対象の土地の
面積を下回っているが,その差は大きくなかったので,清算委員会で
協議の結果,両名を落札者としたことを挙げている。
 しかしながら,第1審被告主張によっても,改良区が自ら定めた調整
地処理方法(乙14の2)を厳守することなく,訴外C,同Dには入札資
格がないのに,同人らに落札を認めていること,また,甲101によれ
ば,従前地評価地積の20パーセントを越える落札例が21名あり,う
ち工区長ら理事4名が含まれていることが認められ,これらの事実に
照らすと,本件においては,入札方法においても,恣意的な運用がな
されていることがうかがわれる。
(エ) 以上によれば,本件改良事業における調整地は,技術的に必要な
最小限の調整地を設けたものとはいえず,第1審原告らに不必要な
減歩を強いたものであり,土地改良法の農用地の集団化の目的にも
反するものとして,その違法性が軽微なものとは到底いえないもので
あるといわざるを得ない。
(7) 以上のとおり,第1審原告らに対する本件換地処分は,換地方法,従
 前地の評価,換地の評価,減歩率において適正になされているものでは
 なく,照応の原則に反するものであり,調整地(余剰地)の作出,その 処
分方法についても,看過できない違法性を有している。
3 事情判決について
 第1審被告は,本件について事情判決をすべきである旨主張するので,以
下検討する。
 乙2及び弁論の全趣旨によれば,本件事業は,換地対象面積が156.2ヘ
クタール以上,総事業費約10億円に及ぶ土地改良事業であるところ,換地
処分後,8年以上を経過し,本件の換地処分を前提とした各受益者の耕作地
等の利用や権利の設定等が始まっていることがうかがわれ,本件換地処分
を取り消すと,第1審被告は改めて第1審原告らに対する換地処分をしなけ
ればならないことになり,他の既に確定している換地処分の受益者に影響を
及ぼすことが十分予測される。
 しかしながら,上記のとおり,本件換地処分の各瑕疵は,照応の原則に反
するのみならず,第1審原告らに過大な負担を負わせるものであって,上記
のとおりの事情をもって,本件換地処分が違法でもこの処分を取り消すこと
が公共の福祉に適合しないとして第1審原告らの請求を棄却することになれ
ば,違法な換地処分を受けた者はいかなる場合にも救済の道を奪われること
になり,これを無視できるほど公共の福祉が大であるとは到底考えられない。
 また,第1審原告ら以外の者に対する換地処分が既に確定し,第1審被告
もその処分の公定力によりこれを変更することができないから,改めて第1審
原告らに対する換地処分をする際,その瑕疵を是正するに足りる換地対象地
が確保しえないことがあるとしても,清算金の措置等により本件換地処分を
是正することは不可能ではなく,そのことをもって本件について事情判決をす
べきものとはいえない。
 したがって,本件において,行政事件訴訟法31条を適用することは相当と
はいえない。
第4 結論
 以上のとおりであるから,第1審原告Aの訴外人らに対してなされた換地処
分の取消しを求める訴えを却下し,第1審原告らのその余の請求を認容した
原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないから,これをいずれも棄却す
ることとし,各控訴費用の負担について民事訴訟法67条,61条を適用して,
主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官    大  内  捷  司
裁判官    島  田  周  平
裁判官    玉  越  義  雄
(別紙省略)

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