弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 当審及び差戻前の上告審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らの本件請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
第二 請求の原因
(請求の原因)
一 被控訴人らは、いずれも高知郵便局集配課(以下「集配課」という。)に勤務
し、集配業務に従事する郵政事務官である。
二 控訴人は、昭和四七年一月一三日、被控訴人ら両名に対し、いずれも無断欠勤
を理由として戒告処分(以下、いずれも「本件戒告処分」という。)をした。
三 しかしながら、本件各戒告処分はいずれも違法であるから、その取消しを求め
る。
(請求の原因に対する認否)
一 請求の原因一、二の事実は認める。
(抗弁)
一 集配課の昭和四六年度の計画休暇付与計画(以下「休暇付与計画」という。)
においては、被控訴人A(以下「被控訴人A」という。)は昭和四六年六月二四日
が、被控訴人B(以下「被控訴人B」という。)は同月二六日が、それぞれ計画付
与の方法による年次有給休暇付与予定日(以下「計画休暇付与予定日」という。)
と定められていたが、所属長は、右各計画休暇付与予定日を事前に変更し、被控訴
人らに対し各日に出勤を命じた。
 しかし、被控訴人らが右命令に従わず、右各日に無断で勤務を欠き、職務を怠つ
たことから、本件各戒告処分が行われたものである。
 そこで、以下、右各計画休暇付与予定日の変更及び職務命令が有効に行なわれた
ものであることを述べる。
二 計画休暇制度について
1 郵政事業に勤務する職員の昭和四六年当時の年次有給休暇の日数
 郵政事業に勤務する一般職の国家公務員(以下「職員」という。)の年次有給休
暇(以下「年次休暇」という。)の付与については、昭和三二年一二月二七日、郵
政省と関係労働組合との間に締結された「年次有給休暇に関する労働協約」(以下
「本件労働協約」という。)に基づき、次のような取扱いがされている。すなわ
ち、年次休暇の発給日数は出勤日数をまつたく考慮せずに、毎年四月一日を基準と
してその日現在在職する職員に対しては年間二〇日とし、そのうち当該職員がその
年度中に満年に達する勤続年数の数に相当する日数(ただし一五日まで)に五日を
加えた日数に相当する日数を労働基準法上の休暇(法内休暇)とし、その年度の発
給日数から法内休暇を差し引いた残余の日数を協定休暇として取り扱うこととして
いる。
 なお、年次休暇の有効期間は、発給年度を含め三年間である。
2 年次休暇の付与の方法
 年次休暇の付与の方法は、職員が年次休暇の付与を希望するときにその都度請求
する自由付与による方法と後記3記載のとおりの計画付与による方法の二つに区分
されている。
3 計画休暇制度の概要
(一) 計画休暇制度導入の経緯
 自由付与の方法による年次休暇の付与は、労働基準法(以下「法」という。)三
九条三項が予想している一般的方法であり、郵政事業に勤務する職員についても、
昭和三三年四月一日より前は、すべて自由付与の方法によつていた。しかし、自由
付与の方法は職員の自発的意思による請求をまつて行うものであるところから、年
次休暇付与日数の多寡が勤務成績に影響するかのごとく危ぐする向きも絶無ではな
く、また、年次休暇の利用実績をみると、職員としては余暇利用による労働力の保
全培養という年次休暇本来の趣旨によるよりも、むしろ、病気、家事の処理、又は
突発的事態の発生に備えるということに重点を置いていた傾向が強く、昭和二三年
以降年次休暇の残日数の繰越しを認めていたこととも相まつて、いつしか休暇の保
有日数が逐年積滞増加してゆく状態に陥つていた。
 そこで、なんらかの方法によつてこれを整理する必要があると同時に、将来発給
する年次休暇についても残日数が生じないように完全消化をはかる必要があること
などが考慮された結果、昭和三二年一二月二七日、関係労働組合との間に、計画付
与の方法によつて付与される年次休暇(以下「計画休暇」という。)の導入を含ん
だ本件労働協約が締結され、昭和三三年四月一日から計画休暇制度が実施されるこ
ととなつた。
(二) 計画付与の対象と計画休暇
 計画付与の対象となる年次休暇(計画休暇)は、前年度の発給日数であつて前年
度中に未使用となつた日数のうち一〇日に達するまでの日数及び前々年度の発給日
数で前年度までの未使用となつた日数(ただし、一一日を限度とする。)である。
 計画休暇の日数のうち、前年度の発給に係る分については、所属長が年度初頭に
おいて職員の請求により業務の繁閑をしんしやくして各人別に当該年度中の休暇付
与予定計画を立て、これによりその休暇を与える。ただし、所属長において、年度
の途中にその計画の変更を必要と認めたときは、当該年度中にその休暇を付与する
場合に限り、右の趣旨に準じてこれを変更することができる。
 また、計画休暇の日数のうち、前々年度の発給に係る分については、所属長がそ
の年度の五月から順次各月について一日ずつ割り振り、かつ、前年度の発給に係る
分に準じてその休暇を与える。
 なお、その年度において有効期間内にある年次休暇の日数のうち、計画付与の対
象となる日数を除いた日数が自由付与の対象となる休暇(以下「自由休暇」とい
う。)である。
(三) 計画休暇付与の手続
 年次休暇の計画付与を受ける職員は、年次有給休暇請求書にその希望する時季
(特定の月日をいう。)を記入した年次有給休暇計画付与希望調書を添付して、所
属長に、その定める期日までに提出し、所属長は、できるだけ当該職員の希望する
時季に割り振るよう考慮して休暇付与予定計画を決定し、これを当該職員に通知す
る。
 ただし、所属長において、当該職員の希望する時季に休暇を割り振ることが困難
と認めたときは、当該職員に対して他に希望する時季を申し出させるとともに、こ
れによるもなおその者の希望する時季に休暇を割り振ることが困難であると認めた
ときは、当該年度中の他の適当と認める時季にこれを割り振つてその計画を決定
し、これを当該職員に通知する。
4 休暇付与予定計画の変更
(一) 計画休暇付与予定日変更に関する差戻前の上告審の判断
 休暇付与予定計画が年度初頭に決定された後における所属長による右計画の休暇
付与予定日の変更につき、本件の差戻前の上告審判決(以下「本件差戻前上告審判
決」という。)は、
(1) 年度初頭に休暇付与予定計画を決定した後における右計画の変更すなわち
計画休暇付与予定日の変更は、法三九条三項所定の時季変更権の行使と異なるとこ
ろはなく、同項ただし書所定のとおり、右付与予定日に計画休暇を付与することが
「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ許される、
(2) 年度の途中において時季変更権を行使し、計画休暇付与予定日を変更する
ことができるのは、計画決定時においては予測できなかつた事態発生の可能性が生
じた場合に限られる、
(3) その場合においても、時季変更により職員の被る不利益を最小限にとどめ
るため、所属長は、右事態発生の予測が可能になつてから合理的期間内に時季変更
権を行使しなければならず、不当に遅延した時季変更権の行使は許されない
との判断を示している。
 したがつて、当審の審理判断は右の判断に拘束される。
(二) 計画休暇付与予定日の変更と「事業の正常な運営を妨げる場合」
 計画休暇付与予定日の変更要件は、法三九条三項ただし書の要件と同一に解すべ
きであり、その事由も、自由休暇の変更が許される事由と同一であるというべきで
ある。したがつて、単に事業の正常な運営を妨げる抽象的な危険が存在するだけで
は、計画休暇付与予定日の変更は、許されない。
 仮に計画休暇付与予定日の変更が自由休暇の場合と比べて緩やかな要件の下に許
されるとすると、計画休暇制度を採用して未消化年次休暇の完全消化をはかろうと
する趣旨が損なわれ、また、二つの変更要件が異なることによつて職場における業
務管理及び職員管理を複雑かつ困難にする要因ともなりかねないことになる。
三 業務の正常な運営を妨げる事態の発生
1 特定の配達区に常勤職員の増配置を必要とする場合
(一) 郵便配達の業務は、不特定多数の利用者によつて差し出された郵便物を送
達するという受身の業務であり、差し出される郵便物数は日々変動するからその予
測は困難である。このため郵政省では、毎年定期的に全国の各郵便局ごとの郵便物
数調査を実施し、この調査結果に基づいて各郵便局ごとに平均的な取扱郵便物数
(以下「平常物数」という。)をとらえ、これを基礎にして、さらに取扱郵便物数
の波動性の傾向、郵便局の規模、配達受持区域内の諸事情等を考慮して、各郵便局
の業務量を算定し、これに見合う配置定員を決定している。
 また、各郵便局においては、所定の配置定員の範囲内で各配達区画間に業務量の
均衡が取れるように取扱郵便物数、郵便局からの往復距離、道路交通事情、利用者
の構成等の諸事情を十分考慮して、配達区画数を決定している。
(二) ところで、郵便物数が、通常の変化の範囲を超え、平常物数を相当上回つ
て増加した場合には、一つの配達区に配置されている常勤職員一名では業務の正常
な運営ができない場合が起こる。このような事態の発生が予測される場合には、増
加した郵便物数等に応じて、平常の要員以上の要員措置(以下「増配置」とい
う。)を講じなければならないが、それには、①当該区担当の常勤職員の時間外労
働、②非常勤職員の雇用、③一つの配置区に二名の常勤職員を配置する措置(以下
「常勤職員の増配置」という。)などがある。
 右の各措置のうちどれを講じるかは、主として郵便物数の増加の程度と関係し、
実際には、郵便物数の増加が平常物数のおよそ五割程度以内であれば右①又は②の
方法で十分対処できるが、郵便物が平常物数の二倍程度以上に増加するような異常
な事態の場合には右③の方法が必要になる。
2 参議院議員選挙の実施
 昭和四六年六月四日(以下、昭和四六年の年月日時については「昭和四六年」の
記載を、昭和四六年六月の年月日時については「昭和四六年六月」の記載をそれぞ
れ省略することがある。)、参議院議員選挙が公示され、二七日を投票日とするこ
とが明らかになつた。
 一般に公職選挙が実施される時期には、選挙管理委員会から出される投票所入場
券、候補者から差し出される法定の選挙葉書、各政党や支持団体からの推薦状、各
種通知連絡用の郵便物などが差し出され、郵便物が増加するが、選挙関係の郵便物
は投票日以後に配達されても価値がなくなつてしまうところから、これらの郵便物
については、少なくとも投票日の前日までに完全に配達すること(以下「完全配
達」という。)が郵政事業の正常な運営として強く要請されかつ期待されていた。
右参議院議員選挙を控えた当時の高知郵便局においても、大量の選挙関係の郵便物
が引き受けられており、これらの選挙関係の郵便物は、その性格上、投票日の前日
である二六日までには完全配達しなければならない事情があつた。
 なお、このような場合、選挙関係の郵便物も一般の郵便物と外見的に区別できる
ものばかりではないから、結局、一般の郵便物と一緒に完全配達を行わなければな
らない。
3 二四日の高知市内五〇区の配達業務に常勤職員の増配置をしなければならない
事態の発生と被控訴人Aの計画休暇付与予定日の変更
(一) 高知市内五〇区(以下「五〇区」という。)は、平常の場合、常勤職員一
名がこれを担当し、一日の配達可能通数は配達箇所数によつて若干の差異はあるも
のの約七〇〇通程度であつた。
(二) ところが、前記2記載のように投票日前日までの完全配達の要請に迫られ
ていた状況の下で、二三日になつて大口の郵便物などの差し出しがあり、同区で
は、配達しなければならない郵便物(以下「要配達郵便物」という。)の数(以下
「要配達物数」という。)が平常より三〇〇通くらい多い約一〇〇〇通となつた。
しかも、当日は同区については担当職員による時間外労働の措置もできず、また、
同区は新興住宅地であつて地番が混乱しているなどの事情で配達作業が極めて困難
な区であつたから、非常勤職員による配達という要員措置もできなかつた。
 こうしたことから、集配課副課長C(以下「C副課長」という。)と同課課長代
理D(以下「D課長代理」という。)は、同区の同日の残物数(当日配達できない
郵便物)が約三〇〇通となり、翌二四日の到着郵便物(他の郵便局から送付されて
きた郵便物)及び引受郵便物(高知郵便局で引き受けた郵便物)の合計数(以下
「到着引受郵便物数」という。)は、二三日のそれが増加傾向を示していたことと
週間の波動性の傾向を加味すると約一〇〇〇通となると見込み、結局、翌二四日の
要配達物数は約一三〇〇通になると予測した。そこで、右予測に基づく数の右要配
達郵便物を二四日に完全に配達するためには、同日の同区の配達業務に二名の常勤
職員を配置する必要があることが明らかとなつた。
(三) 被控訴人Aは、昭和四六年当時主として同区の配達業務を担当していたも
のであり、同区の通区者(職員が特定の配達区について精通し、一人で配達できる
状態を「通区」と呼び、通区している者を「通区者」と呼ぶ。)は、被控訴人Aの
ほかには、常勤職員のEがいるだけであつた。したがつて、二四日の五〇区に常勤
職員二名を配達するためには、右Eのほか被控訴人Aを配置しなければならなかつ
た。
(四) そこで、集配課長F(以下「F課長」という。)は、二四日は被控訴人A
の計画休暇付与予定日となつていたが、同日について常勤職員の増配置を必要とす
る事態が生じ、もし同被控訴人に予定どおり翌二四日に計画休暇を付与すれば、増
配置のための要員に不足が生じて業務の正常な運営が妨げられる事態となるところ
から、これらの事態が明らかになつた二三日、同被控訴人の右計画休暇付与予定日
を変更することとし、同日午後一時四五分ころ、右計画休暇付与予定日を変更する
旨被控訴人Aに通知するようにD課長代理に命令した。
(五) 当時、集配課事務室には翌日の各職員の担務を掲示する掲示板(以下「担
務指定板」という。)が設けられており、毎日午後二時ころ、各担務箇所の欄の所
へ職員の名札を掲示し、そこに掲示された職員に翌日の出勤命令と担務の指定を告
知していた。
 D課長代理は、同日午後二時ころ、翌日の担務指定をする際、被控訴人Aの名札
を五〇区担当の欄に掲示した。その後、被控訴人Aは、午後三時一五分ころ配達を
終えて帰局したが、担務指定板を見て知つたのか、D課長代理に対して「明日の休
暇がとれていない。」と申し出たので、D課長代理は、同被控訴人に対し、「明日
の休暇は業務上支障があるので変更する。」旨口頭で通知した。
4 二六日に高知市内三区の配達業務に常勤職員の増配置をしなければならない事
態の発生と被控訴人Bの計画休暇付与予定日の変更
(一) 高知市内三区(以下「三区」という。)は、平常の場合、常勤職員一名が
これを担当し、一日の配達可能通数は、約八〇〇通程度であつた。
(二) 被控訴人Bは、二五日及び二六日と二日間連続して計画休暇付与予定日と
されていたことから、二四日には右計画休暇予定日についての時季変更の要否を決
定する必要があつた。そこで、F課長は、二四日の午前一〇時ころまでに、D課長
代理及びC副課長に対して、三区の二五日及び二六日の郵便物数の予測及び要員事
情を検討させた。
 それによれば、同区では、二四日午前一〇時ころの時点において、二三日の残物
数が約二〇〇通、二四日の一号便の到着引受郵便物数が約七〇〇通あり、また、同
日の二号便で更に二〇〇通前後の到着引受郵便物数が見込まれたことから、二四日
の要配達物数は一号便・二号便を合わせて約一一〇〇通と予測された。他方、同日
は、被控訴人Bが超過勤務に応じなかつたので時間外労働による要員措置が執れ
ず、また、非常勤職員にも同区を配達できる適当な人がいなかつたことから非常勤
職員の雇用による要員措置も執ることができなかつた。そこで、同日には、約三〇
〇通の残物数が出るものと予測された。
 また、翌二五日の到着引受郵便物数は、二四日のそれが平常よりやや多かつたこ
とと週間の波動性の傾向を加味すると経験的に約一〇〇〇通と見込まれた。したが
つて、二四日の残物数と合わせると二五日の要配達物数は約一三〇〇通と予測され
た。他方、二五日の同区の配達担当者としてはGが配置予定であつたところ、同人
は二四日の朝になり突然病気で休んだことから、二五日は病後であるので時間外労
働は無理であると考えられ、また、非常勤職員についても適当な人がいなかつた。
そこで、二五日には要配達物数の増加に対する要員措置を執ることができず、その
ため、同日には、約五〇〇通の残物数が出るものと予測された。
 さらに、翌二六日の到着引受郵便物数は、二五日と同様に約一〇〇〇通であると
見込まれ、これを、二五日の残物数五〇〇通と合わせると、二六日の要配達物数は
約一五〇〇通であると予測された。
 そこで、右予測に基づく物数を二六日に完全配達するためには、同区に二名の常
勤職員を配置する必要が明らかとなつた。
(三) 同区の配達業務は、主としてBが担当するほか、G、Hの二名も担当する
場合もあつたが、Hは、当時同区の通区訓練を実施中の者であつて、道順組立ずみ
の郵便物を配達することはできても、道順組立はできず、かつ、右二六日は市内一
区の担当に指定されていた。したがつて、同日、三区に常勤職員二名を配置するた
めには、右Gのほかに被控訴人Bを配置しなければならなかつた。
(四) 二六日は被控訴人Bの計画休暇付与予定となつていたが、同日について、
右のように常勤職員の増配置を必要とする事態が生じたので、もし同被控訴人に対
して予定どおり二六日に計画休暇を付与すれば、増配置のための要員に不足が生じ
て業務の正常な運営が妨げられる事態となるところから、F課長は、同被控訴人の
二六日の計画休暇付与予定日を変更することとした。
 なお、二五日についても残物数の発生は予測されたが、その量はいまだ常勤職員
を一名増配置する程度には至つておらず、また、業務運行の面からも投票日の前日
である二六日に常勤職員二名を配置して完全に配達できる体制を確保してゆく方が
選挙関係郵便物を含む郵便物の完全配達ができることとなると判断して、二六日に
増配置をすることとしたものである。
(五) F課長は、二四日午前一〇時ころ、D課長代理を通じて、被控訴人Bに対
し、二六日の計画休暇付与予定日は業務に支障があるので変更する旨を口頭で通知
した。
 また、同課長は、念のため、翌二五日午後六時一五分ころD課長代理を同被控訴
人の自宅に訪問させて、同人に対し、二六日の計画休暇付与予定日は業務上支障が
あるので変更したから明日は出勤するようにと伝えさせた。
四 本件において業務の正常な運営を妨げる事態の発生が予測可能となつた時期
1 当審において、予測可能時期となつた時点を確定すべき対象
 本件差戻前上告審判決は、二七日の投票日を控えて、二四日の五〇区及び二六日
の三区の要配達物数が平常より増加することが見込まれるので、それらの即日完全
配達に期するためには右三区と五〇区に常勤職員二名を配置し、その内の一名とし
て被控訴人らを充てる必要が生じたという事態の発生が、いつの時点で予測可能と
なつたか、及びその変更が合理的期間内になされたか否かの各点を審理すべきであ
るとして、本件を当審に差し戻したものである。
 また、一般論としても、特定の日の特定の配達区の要配達物数及び要員措置が分
からないまま、漠とした抽象的な完全配達できない危険が存在するという程度では
時季変更することはできないことは明らかであり、「正常な業務の運営を妨げる事
由」に当たる要配達郵便物を完全配達できないおそれは、具体的な要配達物数と要
員措置との関係から判断しなければならない。
 したがつて、当審では、二四日の五〇区と二六日の三区の各配達業務について、
それぞれ具体的な要配達物数と要員措置が明らかとなり、増配置すべき常勤職員と
して被控訴人らを充てなければならない事態を具体的に予測することができた時期
を確定すべきである。
2 要配達物数の予測が可能な時期
 郵便事業における取扱郵便物数は日々変化するものであり、その予測は困難であ
るが、例えば、年間を通じてみれば年末年始にピークとなるほか、卒業、入学時期
の三、四月や暑中見舞いなどの夏期に増加傾向を示し、また、月間、週間でみて
も、その波動性は概略的に一定の傾向を示めしている。しかし、こうした波動性の
傾向はあるものの、特定の日の要配達郵便物数を、右傾向だけから当該日の相当以
前に予測することは困難である。
 集配課の場合、各日の要配達物数がある程度のがい然性をもつて予測できるの
は、通常は、その前日の午後の時点である。なぜなら、前日の午後の時点では、そ
の日(前日)の要配達物数がすべて確定するので、残物数の有無について具体的な
見込みが立つ。また、右の時点では、その日の到着引受郵便物数の増加傾向の有無
が判然とするので、これと通常の波動性の傾向などによつて、経験的に翌日分の到
着引受郵便物数を予測することができる。そこで、これらを総合することによつ
て、翌日の要配達物数をある程度のがい然性をもつて予測できるのである。
 しかし、右時点以前ではこのような見込みを立てることはできない。
3 常勤職員を一名増配置する必要が発生する事態とその予測の困難性
 増加した郵便物数に対処するために、常勤職員の増配置の必要が生じる場合は、
郵便物数が平常物数の二倍程度以上に増加するような異常な事態に限られる。例え
ば、郵便物の増加要因として、電気料金、ガス料金、電話料金、税金等の払込通知
書、デパートのダイレクトメールなどが一時に多量に差し出されることがあるが、
これらの大口の差出しによつて郵便物が増加しても、せいぜい当該区担当の常勤職
員の時間外労働の方法によつて対処できるのが通例である。
 実際に、要配達物数が平常物数の二倍程度に増加するのは、これらの大口差出し
などの要因よりも、①鉄道の事故・ストライキなどによる運送手段の遅延のため、
二日分又は三日分の郵便物が一時に到着するような場合、②平常の要員配置を確保
していた日の当日になつて急病などにより職員が突然欠務し、その後補充措置がで
きないため常勤職員を配置できない配達区(以下「欠区」という。)が生じ、同区
の残物数を翌日の配達に回さざるを得なくなつた場合、③全体的に郵便物が増加す
る中で、職員の時間外労働などの要員措置ができなかつたため、要配達物数のうち
一部が翌日に繰り越され、しかも、翌日の到着引受郵便物数も増加することが見込
まれる場合など事故的、災害的な事態がほとんどである。
 したがつて、右①ないし③のような事態の発生は、予測が不可能であるか又は予
測できるとしても直前にのみそれが可能なものであるから、常勤職員を一名増配置
すべき事態をその相当以前に予測することは困難である。
4 参議院議員選挙の実施と計画休暇付与予定日の変更との関係
(一) 昭和四六年度の参議院議員選挙は、当該議員の任期が七月三日に満了する
ことになつていたことから、そのための選挙は六月中に実施されるものと一応予測
されていたが、投票日が具体的に明らかになつたのは、同月四日に公示された時で
ある。したがつて、同年度の初頭に休暇付与予定計画を立てるに当たつて、右選挙
に伴う業務の繁閑などをしんしやくすることは不可能であつた。
(二) 次に、選挙の公示があると、右選挙の実施に伴つて郵便物が増加すること
は経験的に一応推測することができ、また、判明した投票日の前日までにはすべて
の郵便物を完全配達すべき必要性も明らかとなる。
 しかし、参議院議員選挙が実施されることによつて増加する郵便物の量は、通常
の場合、総体としてせいぜい一〇パーセント程度であり、これだけでは一つの配達
区に二名の常勤職員を配置する必要を予測できるほどの増加ではない。
 また、選挙関係の郵便物のうち、選挙管理委員会から差し出される投票所入場券
は、選挙管理委員会から事前連絡を得ることができるので、ある程度前に差出物数
と差出日時の把握が可能である。しかし、候補者から差し出される法定葉書につい
ては差出物数は立候補者の数によつてある程度予想はできるものの、それが選挙期
間中のどの時期にどのくらいの量が差し出されるかを予測することはできず、その
他の各政党などや支持団体などから差し出される推薦状や各種通知連絡用の郵便物
などに至つては、差出物数、差出時期のいずれについても予測は不可能である。
 したがつて、本件においても、参議院議員選挙の公示があり、投票日が判明した
としても、その時点で、日別の郵便物数や増加した郵便物を処理するために必要な
日別の人員数などを具体的に予測することは困難であり、まして個々の職員につい
て、特定の日別に事業の正常な運営を妨げるおそれの存否を客観的に判断して計画
休暇付与予定日の変更の要否を決定することは不可能である。
5 被控訴人らの計画休暇付与予定日を変更すべき事態の発生が予測可能となつた
時期
(一) 被控訴人Aの計画休暇付与予定日を変更する事態の予測可能時期
 二一日は月曜日であり、郵便物数の週間の波動性の傾向からみて要配達物数が多
いが、月曜日は、普段から月曜日体制として各配達区について常勤職員の補助者を
配置し、かつ、勤務時間も火曜日から土曜日のそれと比べて三六分長かつた。加え
て、同日は被控訴人Aが一時間の時間外労働もしていた。したがつて、二一日の時
点では、相当な残物数の発生が認められる事情もない。
 また、二二日は、要配達物数が普段の火曜日と比べてやや多かつたものの、週間
の波動性からみて一週間の中では最も要配達物数が少ない曜日であつたから、相当
な残物数の見込まれる事情もない。
 したがつて、被控訴人Aに対して二四日に当初の予定どおり計画休暇を付与する
ことが業務の正常な運営を妨げると判断できるようになつたのは、前記三3記載の
経過で五〇区の二四日の要配達物数が約一三〇〇通になると見込めるようになつた
二三日の時点であり、それより前にこのような事態の発生を予測することは不可能
であつた。
(二) 被控訴人Bの計画休暇予定日を変更すべき事態の発生の予測可能時期
 二一日、二二日の三区の状況は、被控訴人Aの関係で五〇区について述べた事情
と同様である。
 また、二三日は、到着引受郵便物数が平常よりやや多い状況はみられたものの、
同区については、同日は常勤職員一名に加えて非常勤職員一名を増配置する措置を
講じてあつたので、同日に相当な残物数が発生するという状況はなかつた。
 以上のように右二三日までの時点では、いまだ同区につき二六日に常勤職員二名
を配置する必要が生じることは予測できなかつたものである。
 したがつて、被控訴人Bに対して同日に当初の予定どおり計画休暇を付与するこ
とが業務の正常な運営を妨げると判断できるようになつたのは、前記三4記載のよ
うな経過で同月二四日及び二五日の要配達物数及び残物数の見込みがつき、二六日
の要配達物数が約一五〇〇通程度であると見込めるようになつた二四日の時点であ
り、それより前にこのような事態の発生を予測することは不可能であつた。
五 本件の戒告処分
 以上のとおり、被控訴人Aについては二四日、被控訴人Bについては二六日の各
計画休暇付与予定日が、それぞれ所属長から時季変更され、右各日に出勤するよう
に命令を受けていたのに、被控訴人らは、あえてこれを無視し、それぞれ右の各日
に無断で勤務を欠き職務を怠つたものである。
 被控訴人らの右の各行為は、国家公務員法九八条一項、一〇一条一項前段に違反
し、同法八二条各号に該当するから、控訴人は、右各行為に対する懲戒処分として
昭和四七年一月一三日付をもつて被控訴人らに対し本件各戒告処分を行つたもので
あり、右処分にはなんら違法な点はない。
(抗弁に対する認否及び被控訴人らの主張)
一 抗弁一の事実のうち、休暇付与予定計画において、被控訴人Aについて二四日
が、同Bについて二六日が計画休暇付与予定日とされていたこと、被控訴人らが右
各日に出勤しなかつたことは認める。
二1 抗弁二1の本件労働協約が締結されていることは認める。
2 同二2の事実は認める。
3 同二3、4の事実のうち、計画付与の対象となる休暇の日数が控訴人主張のと
おりであること、本件差戻前上告審判決に控訴人主張のような判示がされているこ
とは認め、その余は争う。
4 抗弁二に対する被控訴人らの主張
(一) 計画休暇制度導入の経緯
 本件労働協約の締結前は、年次有給休暇制度に対する郵政当局ないし各郵便局管
理者の認識不足、全体的な定員不足及び臨時雇員のための予算措置の不十分などの
理由から、郵政労働者の休暇は付与されることが容易でなく、したがつて年度内に
休暇を完全に消化することが困難な実情にあり、法所定の有効期限が来ても未消化
のため休暇請求権が消滅するという事態すら発生しがちであつた。本件労働協約
は、こうした事態をふまえ、労働者がその年度内に適宜な時期を選んで休暇をとる
ことを労働者の権利として定めた法(労働基準法)の精神に沿つて締結されたもの
である。
(二) 計画休暇付与手続の運用の実態
 計画休暇の付与の手続は、本来、控訴人主張とおりにされるべきものであるにも
かかわらず、昭和四六年当時の集配課における実際の運用はこのような予定された
方法では行なわれていなかつた。
 すなわち、年度初頭に職員から年次休暇希望調書(以下「希望調書」という。)
をとるが、これについて、所属長が、それを調整したり、業務の繁閑等をしんしや
くしたりすることはなく、職員の希望調書に記載された希望日をそのまま休暇付与
予定計画とするという取扱いをしていた。そして、各希望日の前日に至つて初めて
休暇を付与した場合に生ずべき業務運行上の支障の有無を判断して、これを付与す
るかどうかを決定していたものである。その結果、当初に希望調書に記載された希
望日にこれを付与しないこととした場合には、担務指定板の担務箇所の欄の所に当
該職員の名札を掲示するという方法によつて、計画休暇を時季変更する旨当該職員
に対して通告していた。
 このような取扱いは職員側からみれば、年度当初に希望した日に実際に休暇がと
れるかどうかはその前日になつてみなければ分からないということになるから、自
由休暇をその前日に時季指定したのとなんら変わるところがなくなり、計画休暇と
しての意味がなくなるという結果を招来していた。
(三) 計画休暇付与予定日の変更の要件
 計画休暇付与予定日については、休暇付与予定計画決定時に判明していた事情は
すでにしんしやくされていることからして、右計画決定時に予測できなかつた事態
が発生し、右計画どおりに休暇を付与すると事業の運営に支障が生ずる具体的可能
性が生じた場合に限り、本件差戻前上告審判決が判示している時期的な制約の下
で、これを変更することができるというべきである。
 計画休暇制度は、職員に対して年度初頭に立てた休暇付与予定計画に従つて計画
的な休暇を取得させることを第一義とする制度であるから、計画休暇付与予定日を
変更すべき事由は、自由休暇の場合と同一ではない。
 すなわち、計画休暇付与予定日の変更には、控訴人が主張するように特定の日に
おける特定の配達区の要配達物数が明らかにならなければ変更できないというまで
の必要はない。この点について、仮に控訴人の主張のように解するとすれば、通常
は具体的な要配達物数の予測は当該休暇付与予定日の直前でしかできないことから
して、変更も、原則として、当該休暇予定日の直前となるが、これでは、変更を受
ける職員は確実に休暇がとれるかどうかが当該日の直前まで不明確な状態に置かれ
ることとなつて計画休暇制度の趣旨に反する。のみならず、計画休暇付与予定日を
変更する場合は、できる限り繰り上げ変更するとの計画休暇に関する取扱要領とも
適合せず、また、上告審判決に指摘されたような変更時期に関する制約が実質的に
働かないという不当な結果を招くこととなる。
 また、計画休暇は年度初頭に休暇付与予定計画が作成され、職員も予定日に休暇
が取得できることを期待して休暇利用計画を立てることとなるから、計画休暇予定
日の変更は例外的なことであるべきであり、職員に不利益を被らせてもやむを得な
いと考えられるほど重大な業務上の支障が発生するときにはじめて許されると解す
べきである。
三1 抗弁三1(一)の事実はおおむね認めるが、同三1(二)の事実は知らな
い。
2 同三2の事実のうち、四日に参議院議員選挙が公示されたこと、二七日が投票
日とされたことは認めるが、その余の主張は争う。
3 同三3は争う。
 被控訴人Aは、控訴人主張のころD課長代理から「明日の休暇は落としてく
れ。」と頼まれたが、それ以前に三回も計画休暇を変更されていたので、今回だけ
は当初の計画どおりに与えられるように強く要望したところ、D課長代理はこれを
承認したものである。
4 同三4の主張は争う。
 D課長代理が被控訴人Bに対して二六日の計画休暇付与予定日を変更したい旨の
連絡をしてきたのは、二五日である。しかし、被控訴人Bは、すでに二五日、二六
日と連続した休暇を許可されて休暇に入つていたのであるから、その途中で休暇の
一部を撤回するには、同被控訴人の承諾が必要であるというべきである。
5 抗弁三に対する被控訴人らの主張
(一) 控訴人の主張変更の不当性
 控訴人は、原審及び差戻前当審において、要配達物数が増加した原因について、
本件の被控訴人らの計画休暇を変更した当時は、二七日の参議院議員選挙の投票日
を控えて、立候補者やその支援団体からの投票日直前をねらつた選挙関係郵便物が
一般の郵便物に混入していたところから、年末年始に劣らない繁忙状態であつたと
主張し、これに沿う立証活動をしてきた。ところが、差戻後の当審において本件計
画休暇の変更事由の予測時期が中心的争点となるや、従前の主張を実質的に変更
し、五〇区及び三区の要配達物数の増加は参議院議員選挙の実施と直接関係がな
く、それ以外の郵便物の増加と時間外労働の要員措置ができなかつたことによる郵
便物の残留が原因であると主張し、これに沿う立証をしている。
 右の主張立証の変更は、時機に遅れたものであるから、許されるべきでない。
(二) 集配課における業務運行の実情
(1) 昭和四六年六月当時の集配課においては、ほとんどの区において毎日のよ
うに郵便物の残留が生じ、二号便は手付かずとなり、翌日の一号便に組み入れられ
て配達されていた。したがつて、日常の業務運行では、一号便についてまで残留が
見込まれるような場合には時間外労働が要請されたが、二号便のみが残留するとい
う程度では時間外労働などの措置は講じられていなかつた。
 そして、滞留している郵便物は、月曜日に、当日は原則として休暇を付与せずに
集配課に属する全員を出勤させ、各班に一、二名の補助要員を付け、各配達区から
一部分の区域を削つて新たな配達区を一、二作つて配達することによつて対処して
いた。
 このような状態は、五〇区及び三区においても例外ではなく、ほとんど毎日残留
を生じていた。すなわち、五〇区は、本来、一日二度配達すべき配達区(以下「二
度配達区」という。)であるにもかかわらず、午前午後を通じて一号便を配達する
区域と同様に扱われ、二号便は最初から翌日にまわされている状況であつたが、そ
れでも一号便が残留することが多かつた。また、三区は二度配達区であつたが、二
号便に手が付かず、二〇〇ないし三〇〇通程度の残留が生じていた。
(2) また、右当時の集配課においては、職員の通区能力が極めて低く、一つの
区に通区している職員数が少なかつた。五〇区に通区しているのは被控訴人AとE
の二名のみであり、三区についても被控訴人BとGの二名のみである。郵政当局の
目安では、通区者は一つの配達区につき五名とされているにもかかわらず、実際に
は目安の半分にもなつていないのは、普段の郵便物の排送に追われて通区の訓練を
する人員的余裕がなかつたからである。
 また、当時、集配課では、病欠者が多く、要員の差し繰りが自由ではなかつた。
 こうしたことから、五〇区では被控訴人AとEの二人に同時に休暇を与えること
ができず、被控訴人Aは昭和四六年度中に七回も計画休暇付与予定日が変更され
た。
(三) 本件の各計画休暇付与予定日の変更事由の不当性
 本件で被控訴人らの計画付与予定日を変更すべき事由として控訴人が主張する事
由は、次のとおり、いずれも変更が許される事由たり得ない。
 郵便事業においては、ある特定の日の特定の配達区に平常物数を超える郵便物が
到達するという事態の発生は、年度当初に当然予測されていることである。したが
つて、計画休暇付与予定日の前日になつて特定の配達区に平常物数を超える郵便物
が到着することが現実に予測される事態となつたことが、「計画決定時においては
予測できなかつた事態発生の可能性が生じた場合」といえないことは当然であり、
このことを理由に計画休暇付与予定日の変更を行うことは許されない。
 また、前述のとおり昭和四六年六月当時、高知郵便局集配課においては郵便物の
残留が生じることは、特別異常なことではなく、また、残留する郵便物の中にある
参議院議員選挙関係の郵便物は特別により分けて優先的に配達するという措置が執
られていたのであるから、被控訴人らの計画休暇付与予定日を変更すべきほどの重
大な業務上の支障があつたものとはいえない。
 さらに、時間外労働を行わせることができなかつたことにより郵便物の残留が生
じ、要配達物数が増加したとの事由は、当局側の責任範囲に属する事由であつて、
計画休暇付与予定日を変更する理由にはならない。
 なお、被控訴人Bに対する計画休暇付与予定日の変更は控訴人の主張とは異な
り、三区の二六日の担当予定者であつたGが二四日、二五日に連続して病気休暇を
とつたことから、二六日に三区が欠区となることを懸念して、二五日夕方に変更さ
れたものである。しかし、右変更前に右Gに確認をとれば、同人が二六日に出勤す
ることは判明したはずであるから、業務に支障があつたものとはいえない。
四1 抗弁四1ないし5はすべて争う。
2 抗弁四に対する被控訴人らの主張
(一) 予測可能時期を確定すべき対象
 どのような場合に計画休暇付与予定日の変更が許されるかについては、前記二4
(三)に述べたとおりであるが、本件の場合では、選挙が行なわれる場合には、選
挙期間中には相当程度の要配達物数の増加が見込まれる上、全郵便物を投票日前日
までに配達しなければならないという要請があるのであるから、職員の通区能力や
配達区の事情などを考慮したとき、計画休暇付与予定日に予定どおり休暇を付与す
ると投票日前日までに完全配達できない事態が発生する可能性があれば、その予測
が可能となつた時点で右計画休暇付与予定日を変更すべきである。
 控訴人は、二四日の五〇区及び二六日の三区にそれぞれ被控訴人らを増配置しな
ければならない事態が具体的に予測できるようにならなければ、被控訴人らの計画
休暇付与予定日を変更できないとの前提の下に、右の具体的な業務支障の予測時期
が、業務の正常な運営が妨げられる事態の発生が予測可能となつた時期であるとし
て主張を展開しているが、右主張はその前提において誤つている。
 その理由は、二4(三)に述べたとおりであるが、このことは年度当初に休暇付
与計画を作成する場合の「業務の繁閑をしんしやくする」というときに、控訴人が
主張するような具体的な業務支障の発生の予測まで必要としていないことからも明
らかである。仮に年度当初の休暇付与予定計画作成時に参議院議員選挙の投票日が
二七日であることが判明していたら、右計画の決定に、このことがしんしやくされ
るべきであるのは当然である。
(二) 参議院議員選挙と業務の正常な運営を妨げる事態の発生の予測可能性
 被控訴人らは、前記のとおり、本件事案では被控訴人らの計画休暇付与予定日を
変更すべき事由は存在しなかつたと考えるものであるが、仮に右事由が存在したと
すれば、こうした事態の発生は、以下の事情から予測可能であつたはずである。
 参議院議員選挙の投票日が決定すれば、それ以降、各日の要配達物数を完全配達
する必要性が生じること及び要配達物数が増えることは明らかである。そして、そ
の増加量が控訴人主張のとおり約一割程度であつたとしても、前記のとおり五〇区
及び三区では、平常時から二号便に相当する二〇〇ないし三〇〇通程度の郵便物の
残留が生じている状態であるから、そのようなところへ右の増加があれば、残留が
さらに増え、担当職員の時間外労働でも対処できず、また全般的に郵便物の増加が
予定されていれば非常勤職員を雇用しても対処できない程度になる可能性が高いこ
とは容易に予測できる。
 仮に、予測される郵便物数の増加が本来なら時間外労働で対処できる程度であつ
ても、時間外労働は職員側にそれができない事情があればたちまち困難になるとい
う不確実なものである。また、非常勤職員には、相当程度の通区能力のある非常勤
職員は極めて少数しかいないから、非常勤職員の雇用による措置に多くを期待する
ことは無理なことである。
 加えて、当時の集配課では、前記のとおり職員の通区状態が極めて悪く、かつ病
気休暇が多く発生して、要員の差し繰りが自由でないという状況であるが、投票日
前の何日かは完全配達を期すということであれば、病気休暇の穴埋めや病気休暇翌
日の残物数の排送についても準備する必要があることは容易に分かることである。
 したがつて、右のような状態の下では、常勤職員の休暇の取得を制限しない限
り、参議院議員選挙投票日前日までに要配達郵便物を完全に配達することができな
いことは容易に予測できたというべきである。
(三) 右事態の発生が予測可能となつた時期
(1) 右(二)から明らかなとおり、高知郵便局集配課の当時の状況を前提とす
れば、被控訴人らの計画休暇付与予定日を変更しなければならないことは、投票日
が二七日に設定されたことが分かつた時点で予測可能となつたと解すべきである。
 この年の参議院議員選挙は議員の任期との関係で六月中の日曜日に行なわれるこ
とははつきりしており、休暇付与計画を決定する四月中には、六月のどの日曜日に
行なわれるかは判明している。したがつて、本件では、休暇付与予定計画決定時に
すでにしんしやくすることが可能であつたものである。
 仮に、休暇付与予定計画決定の時点では不明確であつたとしても、参議院議員選
挙の公示がされた六月四日の時点では、投票日がはつきりしたから、前記の事態の
予測が可能となつたというべきである。
(2) また、要員配置の見直しという点を考慮しても、集配課では四週間ごとの
要員配置を明らかにした勤務予定表を実施日の一〇日前から職員に知らせている
が、本件の各計画休暇付与予定日を含む一七日からの予定表は九日までには作成さ
れているから、遅くとも右九日までには、前記事態の予測が可能であつた。
(四) 本件計画休暇変更の時期の不当性
 本件計画休暇付与予定日の変更は、前記(三)のとおりの時期に予測が可能であ
つたにもかかわらず、いずれも休暇付与予定日の直前になつてなされたもので、不
当に遅延してされたものというべきであるから不適法であり、変更の効果を生じな
い。
五 抗弁五は争う。
(再抗弁)
 昭和四六年当時における集配課における休暇付与計画の決定及びその変更に関す
る手続が本件労働協約の趣旨に従つた取扱いがされていなかつたことは、前記抗弁
に対する認否及び被控訴人らの主張二4(二)のとおりである。また、高知郵便局
の管轄する高知市及びその周辺では都市化現象が生じ、それに伴つて郵便量も増加
してきたが、これに対する定員増、臨時雇員のための賃金費の確保などの適切な対
策がおろそかにされていたため、集配課では、増加する郵便物の量に対する集配勤
務者数の不足は覆い難く、時間外労働の増加、休暇の不付与ないし変更という異常
な措置で対応していたものである。
 また、前記抗弁に対する認否及び被控訴人らの主張三5(二)(三)記載のとお
り、被控訴人らの欠勤は高知郵便局集配課の業務になんら支障を与えていない。
 これらのことからすれば、本件の職務命令自体が不当であり、また、仮にそうで
ないとしても、懲戒処分を科する程度の事情はないのであるから、本件処分は懲戒
権の濫用である。
(再抗弁に対する認否)
 再抗弁事実は否認する。
 昭和四六年当時、集配課においては、休暇付与予定計画の決定に当たり、各職員
から提出された希望調書に記載された希望日をそのまま休暇付与予定日として決定
するという取扱いをしていたものであるが、この措置は、休暇付与予定日に対する
職員の希望をできる限り尊重するとの配慮からされたものである。また、集配課に
ついては、同課の取扱郵便物の増加に見合う要員として、昭和四五年度中に三名、
昭和四六年度中に九名の定員が増員されていたのであるから、集配勤務者の定員が
不足していた事実はない。
 また、被控訴人らが欠勤したことにより、いずれも現実に業務に支障が生じた。
 すなわち、二四日の五〇区の要配達物数は約一三〇〇通であつたが、被控訴人A
が欠勤したため、担当者はEのみとなつた。同区は集団住宅地域であつて、地番が
混乱している上に宛名が不完全な郵便物が多数に上るなど配達作業が困難な区であ
り、非常勤職員による配達は不可能に近い状況であるので、当日の配達業務は右E
だけで行なわざるを得ず、約三〇〇通が当日配達できずに残留した。
 また、二六日の三区の要配達物数は約一一〇〇通であつたが、被控訴人Bが欠勤
したため担当者はGだけとなつた。このため、F課長は、下知地区の速達配達のた
めに配置していた非常勤職員Iを同日の午後から三区に回して、右GとIの両名で
業務運行の確保を図ろうとしたが、右Gは病後で時間外労働ができず、右Iは同区
に不慣れなこともあつて、約二〇〇通が残留した。また、右Iが下知地区の午後の
速達配達から抜けたため、同地区の速達配達業務は常勤職員一名だけになり、著し
く困難を来した。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 本件処分の存在とその内容
 被控訴人らは、いずれも高知郵便局集配課に勤務し、集配業務に従事する郵政事
務官であること、控訴人が、昭和四七年一月一三日、被控訴人ら両名に対し、本件
各戒告処分をしたことは、当事者間に争いがない。また、成立に争いがない乙四号
証、同六号証によれば、被控訴人Aは昭和四六年六月二四日、被控訴人Bは同月二
六日がそれぞれ計画休暇付与予定日とされていたが、被控訴人らは、これらの計画
休暇付与予定日が変更され、それぞれ右の各日には出勤を命ぜられていたにもかか
わらず欠勤したため、国家公務員法九八条一項及び一〇一条一項前段に違反し、同
法八二条一号及び二号に該当するとして、本件各戒告処分がされたものであること
が認められる(休暇付与予定計画において、被控訴人Aについては二四日が、被控
訴人Bについては二六日が、それぞれ計画休暇付与予定日とされていたこと、被控
訴人らが、それぞれ右各日に出勤しなかつたことは、当事者間に争いがない。)。
二 計画休暇制度
 成立に争いがない乙一号証、同二号証、同三号証、原審証人J、同K、差戻後当
審証人Lの各証言によれば、次の事実が認められる。
1 本件労働協約及び昭和三三年五月二四日国の経営する企業に勤務する職員等の
給与等に関する特例法六条の規定に基づき制定された「郵政事業職員勤務時間、休
憩、休日および休暇規定」(以下「本件休暇規定」という。)は、職員の年次有給
休暇につき、次のとおり定めている。
(一) 休暇の発給日数及び種別
 一休暇年度(四月一日から翌年の三月三一日まで)における年次休暇の発給日数
は、その年の四月一日現在の在職者については二〇日とする。そのうち、当該職員
がその年度中に満年に達する勤続年数の数に相当する日数(ただし、一五日を超え
ない。)に五日を加えた日数を法三九条所定の休暇である法内休暇の日数とし、二
〇日から法内休暇の日数を差し引いて得た日数を協定休暇の日数とする。
(二) 休暇の有効期間
その発給年度の終了後二年間とする。
(三) 休暇の付与方法
 計画付与と自由付与に区分してこれを与える。
 計画休暇の日数は、前年度の発給日数であつて前年度において与えられなかつた
日数のうち一〇日に達するまでの日数及び前々年度の発給日数であつて前年度まで
に与えられなかつた日数とする。
 自由休暇の日数は、その年度において前記休暇の有効期間内にある年次休暇の日
数のうち、計画付与の対象とならない部分の日数とする。
(四) 計画付与の方法及び手続
 計画休暇の日数のうち前年度の発給に係る部分については、所属長が年度の初頭
において職員の請求により業務の繁閑等をしんしやくして各人別に当該年度中の休
暇付与予定計画を立て、これによりその休暇を与える。ただし、所属長において年
度の途中にその計画の変更を必要と認めたときは、当該年度中にその休暇を付与す
る場合に限り、右に準じてこれを変更することができる。
 計画休暇の日数のうち前々年度の発給に係る分については、所属長がその年度の
五月から順次各月について一日ずつ割り振り、かつ、前年度の発給に係る分に準じ
てその休暇を与える。
 計画休暇の付与を受ける職員は、所属長に対し、所定の期日までに年次有給休暇
請求書にその希望する時季(特定の月日をいう。)を記入した希望調書を添付して
提出する。所属長は、できるだけ当該職員の希望する時季に割り振るよう考慮して
休暇付与予定計画を決定し、これを職員に通知する。ただし、所属長において、こ
れを困難と認めたときは、その旨当該職員に通知し、他に希望する時季を申し出さ
せるとともに、これによるもなおその者の希望する時季に休暇を割り振ることが困
難であると認めたときは、当該年度中の他の適当な時季にこれを割り振つてその計
画を決定し、これを職員に通知する。
(五) 自由付与の方法
 自由休暇については、所属長は、職員のその都度請求する時季にこれを与えなけ
ればならない。ただし、所属長において請求された時季に年次休暇を与えることが
業務の正常な運営を妨げると認めた場合においては、休暇の有効期間内の他の時季
にこれを与えることができる。
2 また、本件休暇規定を受けて、郵政省の内部規定として、右規定の運用方針及
び取扱要領が定められ、これによれば次のようなことが定められている。
(一) 休暇付与予定計画を各職員ごとに決定したときは、職員の出勤簿の各月欄
上部欄外余白にその付与予定年月日を表示(朱書)し、あるいは職員別年次有給休
暇計画付与台帳を設備して職員の随時閲覧に供するなどの適宜の方法により、常
時、関係職員に周知の上、計画休暇が円滑に行なわれるように十分配慮する。
(二) 所属長は、年次有給休暇請求書の受理に当たつて、整理上必要があると認
めた場合(例えば、休暇の請求が同一時季に多数競合した場合、あるいは職員の請
求する時季について特別の理由があると思料される場合等)においては、必要に応
じ、請求する時季について特別の理由の有無を質し、理由のある場合には、その理
由を聴取の上、備考欄に記入し、かつ、所属長において記入した旨を付記してお
く。
(三) 休暇付与計画の決定後の変更は、所属長が業務の運行上必要と認める場合
に限られ、変更する場合は、できる限り繰り上げ付与する。
(四) 計画休暇付与予定日の変更は当該年度中に限られ、必ず同年度内に付与を
完了する。
3 本件労働協約において右のような計画休暇の制度が採用されたのは、当時、職
員の年次有給休暇日数が与えられた年度中に消化されず、相当の日数が後年度に持
ち越され、その数が逐年増加するという事態が生じていたので、このような休暇を
計画的に消化し、右事態の解消を図ることを目的とするものであつた。
三 計画休暇付与予定日の変更
 本件労働協約に基づいて年度初頭に決定された休暇付与予定計画を年度途中で変
更する場合について、本件差戻前上告審判決は次のとおりの判断を示している。
1 計画休暇の請求及び変更は、それが法内休暇であるか協定休暇であるかを問わ
ず、法三九条三項所定の基準に従うべきであり、年度の初頭において職員の請求に
より立てられる休暇付与予定計画の計画休暇付与予定日は法三九条三項にいう「労
働者の請求する時季」に相当し、所属長による変更がない限り、右計画休暇付与予
定日につき休暇が成立し、職員の就労義務が消滅する。
2 所属長による休暇付与予定計画の変更すなわち計画休暇付与予定日の変更は、
法三九条三項所定の時季変更権の行使と異なることがなく、同項ただし書所定のと
おり、右付与予定日に計画休暇を変更することが「事業の正常な運営を妨げる場
合」にのみ許される。
3 年度の途中において時季変更権を行使し、計画休暇付与予定日を変更すること
ができるのは、計画決定時においては予測できなかつた事態発生の可能性が生じた
場合に限られる。
4 その場合においても、時季変更により職員の被る不利益を最小限にとどめるた
め、所属長は、右事態発生の予測が可能になつてから合理的期間内に時季変更権を
行使しなければならず、不当に遅延した時季変更権の行使は許されない。
四 集配課における業務の概要
 その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公
文書と推定すべき乙二一号証、原審・差戻前当審・差戻後当審証人L、原審・差戻
前当審証人C、差戻前当審証人M、原審証人Gの各証言によれば、昭和四六年六月
当時の高知郵便局集配課における業務の概要は次のようなものであつたことが認め
られ、これに反する証拠はない。
1 郵便物の配達は、市内五九区、市外一七区に区分された配達区を単位として行
われ、平常は、各配達区とも一名で担当する。
 配達すべき郵便物は、午前七時ころまでに集配課に到着するものとその後午後一
時ころまでに到着するものとがあり、それぞれをいずれも当日中に配達する配達区
(二度配達区)と配達日の朝に到着した分とその前日の午後に到達した分と合わせ
て配達する配達区とがある。
2 集配課の定員は一三五名のところ現在員は一三九名おり、また、平常時におい
ても、非常勤職員を一〇名前後雇用していた。そして、毎週火曜日から土曜日まで
は、年次休暇及び病気休暇などの短期の欠務に備える要員として毎日一〇名が予定
されており、また、日曜配達休止に伴う調整要員二名があつたから、右の期間にお
いては、毎日合計一二名までは平常の要員配置に影響することなく年次休暇又は病
気休暇を取ることができる。
3 各配達区を担当する者の具体的業務内容は、すでに郵便課において各配達区ご
とに区分ずみの到着引受郵便物を三〇区程度に大区分することから始まり、さらに
これを配達する順路に従つて並べ替えて整理し(道順組立作業)、その後に整理の
済んだ郵便物を持つて戸別に配達をする(配達作業)というものである。
4 右の道順組立作業及び配達作業が一人でできる状態は「通区」と呼ばれている
が、このような状態に達するためには、相当期間の訓練と習熟を要する。
 当時、集配課では、一人が三つ程度の配達区を通区し各配達区に四名程度の通区
者がいることを目標としていたが、当時の実情は、全体に右の目標の通区率に達せ
ず、一つの配達区に通区者が二、三名という配達区があつた。
五 集配課における要員の配置と計画休暇の取扱い
 成立に争いがない甲六号証の一ないし一二〇、原審証人Lの証言により真正に成
立したものと認められる乙一二号証、同一三号証、原審・差戻前当審・差戻後当審
証人L、同C(後記措信できない部分を除く。)、差戻後当審証人N、原審・差戻
前当審証人D、差戻前当審証人M、原審証人G、同O、同Pの各証言及び被控訴人
A(差戻前当審)、同B(差戻前当審・差戻後当審)の各本人尋問の結果並びに弁
論の全趣旨によれば、集配課における要員の配置と計画休暇の取扱いについて、次
の事実が認められる。
1(一) 昭和四六年当時の集配課においては、職員の勤務の指定、要員配置及び
年次休暇の処理(計画休暇の変更も含む。)は、F課長の指示の下に、C副課長及
びD課長代理(以下、右の両名を合わせて指すときは「C副課長ら」という。)が
担当していた。
(二) 集配課の業務の繁閑は、その日の要配達物数によつて左右される受身的な
性格を有しているところから、毎日の要員配置は、その日の各配達区における要配
達物数に応じて適切に行う必要がある。
 しかし、各配達区ごとの要配達物数を正確に把握できるのは、早くても郵便課に
おいて配達区ごとの区分作業が終了した段階であるが、右作業の確定を待つていて
は要員措置を執る時間的余裕がないことから、F課長は、C副課長らをして、要員
配置をすべき日の前日の午後二時ごろ、当該日の各配達区ごとの要配達物数を予測
させ、これをもとに、職員の通区状態を考慮しながら、要員配置計画を立案させ
て、要員配置を決定した。
 同人らが右の時点でこのような予測を行つた理由は、右時点であれば、その日の
午後の到着引受郵便物も集配課に到着ずみであるからその日の各配達区の要配達物
数が全部確定し、これを基礎にその日に残留すると見込まれる物数を推し計ること
ができ、さらに、直近の取扱郵便物数の量や週間の曜日別の波動性の傾向を加えて
翌日の到着引受郵便物数も予測できるので、翌日の要配達物数について、ある程度
根拠をもつた予想をすることができたためである。
 もつとも、右の方法によつて予測を立てた場合にも、予想に係る到着引受郵便物
数と実際のそれとの間にはかなりの誤差があることもあつたが、当日の要配達物数
について、右以上の根拠をもつて事前に具体的物数を予測する方法はなかつた。
(三) F課長は、毎日、右のようにして翌日の要員配置を決定すると、午後二時
三〇分ころ、D課長代理をして、集配課事務室の担務指定板の各担務箇所を表示し
た欄に翌日のその区の担当者の名札を掲示させ、これによつて、職員に対し、翌日
の仕事の担当職務を知らしめ、そこに指定された勤務に就くように職務命令を伝達
した。
(四) また、F課長は、D課長代理をして、四週間を単位とする各職員の勤務の
内容及び年休を周知させるために、その最初の週より一週間前に勤務指定表を作成
させた。
2(一) 集配課においては、昭和四六年度よりかなり以前から、計画休暇につい
ては、前述の本件労働協約、本件休暇規定及び右規定の運用方針などに定められた
ところと異なり、年度初頭において、業務の繁閑を考慮したり、同一時季に競合し
たものに対する調整などの作業はまつたくしないまま、職員から出された希望調書
に記載された日をそのまま計画休暇付与予定日とする取扱いが行なわれていた。
(二) 昭和四六年度についても、集配課の休暇付与予定計画を決定すべき立場に
あつたF課長は、同年度の計画休暇について、四月一〇日ころまでに各人から希望
調書を徴しただけで、同年度の年間を通して予想される業務の繁閑や同一時季に競
合した希望日の調整などをすることなく、右希望調書に記載された日をそのまま各
人の計画休暇付与予定日とした。
 なお、年度初頭には、右計画休暇付与予定日を職員に周知させる措置はとられて
いなかつた。
3(一) F課長は、毎日行つていた翌日の要員配置を検討する過程で、特定の職
員に年度初頭の休暇付与予定計画のとおり計画休暇を与えると翌日の要員配置に支
障が生じることになると判断した場合には、時季変更権を行使して、右職員の計画
休暇付与予定日を変更し、同人に当該日の出勤を命じていた。
(二) 昭和四六年当時の集配課では、このようにして計画休暇付与予定日が時季
変更される頻度は全体としてかなり高く、被控訴人らについても、本件の各時季変
更も含め、昭和四六年度中に、被控訴人Aは六日、被控訴人Bは三日が時季変更さ
れている(なお、被控訴人らの同年度の計画休暇付与予定日の全日数はいずれも一
〇日である。)。
(三) (一)のようにして時季変更を行う場合、F課長の命を受けたD課長代理
が翌日の担務指定板の担務箇所の欄へ当該職員の名札を掲示し、職員は、自分の名
札が、同指定板の計画休暇の欄に掲示されずに担務箇所の欄に掲示されていること
によつて、自己の翌日の計画休暇付与予定日が時季変更され、翌日は右に掲示され
た職務を担当すべき職務命令が発せられていることを了解するという方法がとられ
ていた。
 もつとも、時季変更に不満を持つ職員の中には、D課長代理に対し、変更理由の
説明を求めたりする者も少なくなく、このような者に対しては、D課長代理は、口
頭で、変更の理由を説明し、当該職員の希望日を聞いた上で振替日を指定したりす
ることもあつた。
4 F課長は、昭和四六年度の集配課の休暇付与計画については、右のように各日
の要員配置を検討する過程の中で特定の者に計画休暇を付与する場合に生じる業務
支障の有無を個別的に検討する以外には、特に決定ずみの休暇付与予定計画の見直
しをすることはなかつた(勤務指定表を作成する段階においても、このような作業
は行なわれていなかつた。)。
5(一) ある特定の配達区において、要配達物数が担当職員の通常の配達可能物
数を超える場合に、これに対処するための増配置としては、①担当職員による時間
外労働、②非常勤職員の雇用、③常勤職員の増配置があるが、一般に、③の常勤職
員の増配置がされるのは、要配達物数が平常物数の二倍程度に達するようなときで
あり、右の程度に達しない増加量のときには、①又は②の措置で対処されていた。
(二) 集配課では、六月当時、労働組合との間に、時間外労働協定が締結されて
いたが、それによれば、一日の時間外労働は二時間以内に限られ、一箇月間に命じ
得る総時間も一五時間程度に制約されていた。
 また、当時、集配課では、時間外労働については事前に職員に意思を打診し、職
員が拒絶した場合には、時間外労働を命じないという運用がされていた。
(三) 集配課では、昭和四六年当時、平常時においても平均一〇人前後の非常勤
職員を雇用していたが、道順組立までできる者は、特に長期にわたつて雇用されて
いる僅かの者以外にはいなかつた。
なお、差戻後当審証人Cの証言中には、時間外労働は、職員の意思いかんにかかわ
らず、毎日のように命じたが、職員がこれに応じないことがあつた旨の供述がある
が、右供述は、成立に争いがない乙二〇号証の一、二の記載内容及び差戻後当審証
人Nの証言及び差戻後当審における被控訴人B本人尋問の結果と対比すると容易に
措信できない。
 その他、前記各認定を覆すに足る証拠はない。
六 本件時季変更権の行使
1 F課長が被控訴人らの各計画休暇付与予定日を時季変更した理由に関する控訴
人の主張は、事実摘示三2ないし4に記載のとおりである。
 被控訴人らは、差戻後当審における右の点に関する控訴人の主張は、要配達物数
の増加の原因について従前の主張を変更するものであり、時機に遅れた攻撃防御方
法の変更であるから許されるべきでないと主張する。
 しかし、控訴人の差戻後当審における主張は、差戻前当審までにおける従前の主
張を本件差戻前上告審判決で指摘された問題点に従つてさらに補充したものと解す
ることができるから、被控訴人らの右主張は採用できない。
2 前掲乙二〇号証の一、二、原審・差戻前当審証人C、差戻後当審証人N、同
Q、原審・差戻前当審証人D、原審証人E、同G、同Pの各証言及び被控訴人A
(原審・差戻前当審・差戻後当審)、同B(原審・差戻後当審)の各本人尋問の結
果によれば、昭和四六年六月当時の集配課の業務の実情は次のようなものであつた
ことが認められる。
(一) 五〇区は、高知市潮江地区のうち高見、北高見方面を配達区域とするもの
である。同区の配達区域は、新興住宅地であつて家と家との間にかなり距離があ
り、かつ、山手であることから途中徒歩でなければ配達できない箇所が多く、ま
た、地番も混乱していること、県営住宅などがあることから、宛名の不完全な郵便
物が多いので、配達が非常に困難な配達区である。
 同区は、主に被控訴人Aが担当しており、同区に通区している常勤職員は被控訴
人Aのほかには、Eがいるだけで、非常勤職員による配達はほとんど不可能な配達
区である。
 同区は、当日の朝の到着引受郵便物と前日午後の到着引受郵便物とを一緒にして
一日一度配達をする配達区であり、昭和四六年六月当時の同区の一日当たりの平常
の到着引受郵便物数は七〇〇ないし八〇〇通から一〇〇〇通程度の間で変動し、ま
た、一人一日当たりの配達可能物数は約七〇〇通であつた。
(二) 三区は、高知市下知地区のうち桜井町方面を担当する配達区であり、戸数
が多いため、配達が比較的困難な配達区である。
 同区は、主に被控訴人Bが担当しており、同区に通区している常勤職員は被控訴
人Bのほかには、Gだけである。もつとも、常勤職員のHと非常勤職員のIは、道
順組立までしてある郵便物については、同区の配達をすることが可能であつたが、
Hは一区を主に担当し、Iは下知地区の速達郵便物の配達を主に担当していた。
 同区は、午前中の一号便のほか当日午後の到着引受郵便物を当日中に二号便とし
て配達する二度配達区であり、昭和四六年六月当時の一日当たりの平常の到着引受
郵便物数は六五〇通から九五〇通程度の間で変動し、一人一日当たりの配達可能物
数は約八〇〇通であつた。
(三) 当時、市内の配達区の多くで、当日中に配達すべき予定の郵便物のうち相
当量が配達できずに翌日に繰り越す事態が慢性的に生じており、二度配達区であり
ながら、当日の一号便の配達を終えるのがやつとで二号便には手が付けられない配
達区がかなり存在した。三区及び五〇区でも、週のうちで郵便物が増え始める水曜
日ころから週末にかけては、三区は毎日約三〇〇通程度、五〇区は毎日約二五〇通
から三〇〇通程度の郵便物が配達できずに残るという状態であつた。
(四) しかし、当時は、右のような事態が慢性化していたこともあつて、例え
ば、二度配達区の場合では、担当職員に時間外労働の措置が要請されるのは、二号
便だけでなく一号便さえ残るような程度に達したときに限られ、右の程度に達しな
い限り、格別の措置も執られずに、残つた郵便物を翌日の要配達郵便物の中に組み
込んで、一日遅れて配達するということが多く、残物数の処理のために担当職員が
時間外労働をした場合でも、残物数の全部が配達できることは少なかつた。
 また、残物数が生ずるとか予想される翌日の到着引受郵便物数が多くなつたとい
う程度では、常勤職員の増配置の措置が執られることはまれにしかなかつた。
(五) そこで、逐次滞留してゆく郵便物は、集配課の職員全員の出勤体制を敷い
た上で勤務時間を他の曜日より延長して処理に当たる毎週月曜日に、補助区などを
設けて処理されていた。
 なお、差戻後当審証人Cの証言中には「完全配達できない見込みがある場合に
は、すべて時間外労働を命じた。」旨の供述があるが、前掲乙二〇号証の一、二の
記載及び差戻後当審証人N、同Qの各証言及び差戻後当審における被控訴人B本人
尋問の結果と対比すると、容易に措信できない。
 その他、前記各認定を覆すに足る証拠はない。
3 前掲乙二一号証、原審・差戻前当審・差戻後当審証人C、同L、原審・差戻前
当審証人D、差戻前当審証人M、原審証人P、同G、同Eの各証言及び被控訴人A
(差戻前当審)、同B(原審・差戻前当審)の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣
旨によれば、次の事実が認められ、これを覆すに足る証拠はない。
(一) F課長、L副課長及びC副課長らは、四月ころには、その年の六月ころに
参議院議員の通常選挙が行なわれるであろうということは、改選議員の任期の点か
ら一応予測していたが、投票日の具体的日程までは知り得なかつた。F課長らが、
右選挙の投票日が六月二七日(日曜日)であると知つたのは、同月四日に参議院議
員選挙の公示がされる直前ころである。
(二) 参議院議員の通常選挙が実施されると、右選挙期間中には、公職選挙法の
規定により候補者に認められた法定葉書並びに選挙管理委員会から選挙人などにあ
てた投票所入場券及び不在者投票用の投票用紙・投票用封筒(以下、右の三種の郵
便物を合わせて「法定葉書等」という。)が差し出されることが確実であり、ま
た、過去の実績からして、選挙期間中、全体として普段より郵便物の量が一割前後
増加すること通例であるから、集配担当の責任者としては、これらに対処すること
が必要となる。
 右のうち、法定葉書等は、選挙を実施する上で特に重要な文書であり、これらの
郵便物には「選挙用」など一般の郵便物と区別できるような表示がされていた。そ
して、これらは、その性格上、投票日の前日までに必ず名宛人に交付されるべきも
のであることから、郵政当局は、右参議院議員選挙が公示される直前に、郵政部長
ら名で各集配局長に対して「参議院議員の通常選挙に伴う選挙郵便物の取扱いにつ
いて」と題する通達を出すなどして、右法定葉書等については絶対に遅配が生じな
いように特に注意を促していた。
(三) F課長は、投票日が二七日と判明した直後に、L副課長、C副課長らと、
選挙期間中の業務運行の確保の方法などを検討したが、選挙に関して差し出される
郵便物は、右の法定葉書等に限られず、例えば政党など候補者の支持機関などから
選挙人にあてた推薦状や広報文書など一般の郵便物として差し出されるものの中に
も、選挙に関するものがかなり含まれ、これらの郵便物も、投票日の前日までに配
達されなければその目的を失うこと、法定葉書等の配達も、後述の投票日直前の特
別な配達を除けば、すべて一般の郵便物と一緒に配達されるので、一般の郵便物の
正常な配達が右法定葉書等の迅速な配達につながることなどを考慮して、選挙直前
には極力全部の郵便物の完全配達をするという方針を立てた。
 その上で、特に法定葉書等については、前記通達の趣旨に則り、いかなる場合で
も投票日前日までに完全に配達を遂げることができるように、各配達区の担当者
に、投票日が近くなつた時点から毎日、その日配達できなかつた郵便物の中に法定
葉書等が残つていないかどうかの点検を命じ、投票日の前日には右の法定葉書等だ
けをより分けて特別に配達させることとした。
(四) 右選挙期間における選挙関係の郵便物の実際の配達状況をみると、投票所
入場券及び不在者投票の投票用紙・投票用封筒は、選挙期間の前半から中盤までに
そのほとんどが差し出されて配達を遂げており、法定葉書についても投票日の四日
くらい前の時点ではすでに大半の配達を遂げて、右以降は、各配達区とも転送され
た法定葉書の配達を行う程度になつており、また、一般の郵便物の量も投票日の前
の週においては、特に目立つて増加するという傾向はみられなかつた。
4 本件時季変更権の行使
(一) 被控訴人Aに対する時季変更権の行使
 前掲乙一三号証、原審・差戻前当審・差戻後当審証人C、原審・差戻前当審証人
Dの各証言及び被控訴人A(原審・差戻前当審・差戻後当審)本人尋問の結果によ
れば、次の事実が認められる。
(1) C副課長とD課長代理は、二三日午後二時ころ、翌日二四日の要員配置を
行うため、二四日の各配達区の要配達物数を予想したところ、五〇区については、
二三日の要配達物数が約一〇〇〇通であり、被控訴人Aはその日の午前中に当日の
時間外労働の要請を断つていることから、通常の配達可能物数に照らして、二三日
には三〇〇通程度が配達できずに残ること、また、二三日の到着引受郵便物数が増
加傾向を示しており、二四日は郵便物が増加する傾向のある木曜日に当たつている
ことから、同日には、一〇〇〇通程度の到着引受郵便物があることをそれぞれ予測
し、結局、二四日の要配達物数は一三〇〇通程度になるであろうと予想を立てた。
 そこで、同人らは、二四日の五〇区にいつもと同じ一名の常勤職員しか配置しな
いとすると、一人一日当たりの配達可能物数は約七〇〇通程度であるから、約六〇
〇通の郵便物が配達できずに残ることになるが、二四日は投票日が間近に迫まり、
前記のとおり投票日の前日までに極力郵便物全部を配達する方針を立てていたこと
から、二四日の同区に常勤職員の増配置をして郵便物を完全配達することが必要で
あると考えた。
 そして、前記のとおり五〇区を通区している常勤職員は、Eの他には被控訴人A
しかいなかつたことから、被控訴人Aの二四日の計画休暇付与予定日を変更すべ
く、F課長に相談したところ、同課長は、右の判断を支持して、被控訴人Aの右計
画休暇付与予定日を変更することを決定した。
(2) D課長代理は、右決定に従い、同日午後二時三〇分ころ、担務指定板の五
〇区の欄にEと被控訴人Aの両名の名札を掲示し、被控訴人Aは、同日午後三時す
ぎころ、右担務指定板を見て、二四日の計画休暇付与予定日が変更されたことを知
つた。
(3) 二四日は、五〇区は、Eが一人で平常どおり配達し、約三〇〇通程度の郵
便物が配達できずに残つた。
 なお、差戻後当審証人C、同Lの各証言中には、五〇区については、二三日にデ
パートから大口の郵便物が差し出されたために要配達物数が増加した旨の供述があ
るが、これを裏付けるに足る資料もなく、右各供述はにわかに措信し難い。また、
被控訴人Aは、D課長代理から「明日の休暇は落としてくれ。」と頼まれたけれど
も、同被控訴人が予定どおり休暇を与えるように強く要望した結果、同課長代理
は、同被控訴人の右要望を受け入れたと主張するが、前掲の各証拠によれば、被控
訴人Aが、担務指定板で計画休暇の変更されたことを知り、D課長代理に対して
「これまで二、三回変更されており、今度も変更されたら困る。」と抗議したこと
は認められるけれども、D課長代理が右抗議を受け入れて時季変更権の行使を断念
したことまでも認めるに足りる証拠はない。
 その他、前記各認定を覆すに足る証拠はない。
(二) 被控訴人Bに対する時季変更権の行使
 原審・差戻前当審・差戻後当審証人C(後記措信できない部分を除く。)、原
審・差戻前当審証人D(後記措信できない部分を除く。)、原審証人Gの各証言及
び被控訴人B(原審・差戻前当審・差戻後当審)本人尋問の結果によれば、次の事
実が認められる。
(1) 被控訴人Bは、二五日と二六日の二日間連続して計画休暇付与予定日とさ
れていたので、二五日午後の担務指定板の掲示によつて二六日の計画休暇付与予定
日が変更された場合にはこれを知る術がないため、二四日の午前一〇時ころと午後
三時ころの二回にわたり、D課長代理に対して、右二日間の計画休暇は間違いなく
とれるかどうかを尋ねたところ、右の機会には、同課長代理は、計画休暇付与予定
日を変更するつもりがないことを告げた。
(2) C副課長らは、二五日、二六日は三区の担当としてGを充てる予定でいた
ところ、右Gが、二五日の朝、電話で腹痛のため病気休暇をとる旨の連絡をして勤
務を休んだので、二五日の同区を配達する常勤職員がいなくなつた。そこで、C副
課長らは、その日に同区が欠区になるのを避けるため、同区に非常勤職員のIのほ
かもう一人の非常勤職員(氏名不詳)の二名を配置し、前日に被控訴人Bが道順組
立をしながら配達できなかつた約二〇〇通を配達させたほか、右以外の要配達郵便
物の中から、会社、官庁宛の配達可能な郵便物約三〇〇通を抜き出して配達させ
た。しかし、配達できたのは、右の合計約五〇〇通程度で、その余の郵便物につい
ては配達ができず、約五〇〇通の残物数が生じた。
 また、C副課長、D課長代理は、二五日の午後二時ころ、二六日の担務指定を行
つた際に、三区については、二五日に常勤職員を配置できず、前記の道順組立未了
の約五〇〇通の郵便物については、すべて翌日の要配達郵便物の中に組み込まれる
ことが確実であると判断し、また、二六日には一〇〇〇通程度の到着引受郵便物が
あるであろうと見込んだので、二六日の要配達物数は一五〇〇通程度になると予想
を立てた。そうすると、一人一日当たりの配達可能物数が約八〇〇通程度である同
区では、二六日中に郵便物全部を極力全部配達するためには、常勤職員の増配置を
する必要があり、これに充て得る職員は通区の状況からして、Gのほかには被控訴
人Bしかいなかつたので、被控訴人Bについて、二六日に予定されていた計画休暇
付与予定日を変更することとし、その旨F課長に相談した。
 同課長は右の判断を支持し、被控訴人Bの計画休暇付与予定日を変更することと
した。
(3) そこで、F課長は、D課長代理に指示して、二五日午後二時三〇分ころ、
二六日の担当職務を担務指定板に掲示する際に、三区の担当欄にGと被控訴人Bの
両名を掲示させた上、D課長代理を二五日午後六時ころ、被控訴人Bの自宅に派遣
して、二六日の計画休暇付与予定日を変更する旨を伝達させた。
(4) 二六日の三区には、前日の残物数五〇〇通のほか、午前午後合わせて八〇
〇通前後の到着引受郵便物があり、午前中はGが一人で配達し、午後からは非常勤
職員のIも手伝つたが、約二〇〇通の郵便物が配達できずに残つた。しかし、残物
数の中には、法定葉書等は含まれていなかつた。
 控訴人は、二四日の午前中には、すでに三区について二六日に増配置をすること
を決め、被控訴人Bの二六日の計画休暇付与予定日を変更することを決定して、同
日午前一〇時ころ、D課長代理が被控訴人Bに対して「二五日はよいが二六日は変
更する。」と告げたと主張し、原審及び差戻前当審・差戻後当審証人Cの証言、原
審証人Dの証言中には、右主張に沿う供述がある。しかし、右供述は、被控訴人B
本人尋問(原審及び差戻前当審・差戻後当審)の結果と食い違うだけでなく、右証
人D自身、差戻前当審において再度証人として証言し、「二四日には、Bに対して
二六日の計画休暇付与予定日を変更すると告げたことはない。」と供述して、原審
における自己の供述内容を翻している。また、被控訴人Bが連続した休暇に入る前
に二六日の計画休暇付与予定日についても変更するかどうかの判断をする必要があ
つたとしても、右の判断は、二四日の午後の到着引受郵便物の到着を待つて行う方
がより正確な判断ができるはずであるところ、二四日午前中に変更するかどうかを
告げなければならない合理的な理由は見当たらず、しかも、控訴人主張のとおりの
時期に被控訴人Bに対して時季変更権を行使する旨を告げているとすれば、単なる
念押しのためだけに、D課長代理をわざわざ被控訴人B宅まで派遣することは不自
然である。加えて、原審証人H、同Gの各証言によれば、Hは二四日の計画休暇付
与予定日を二三日の午後の担務指定時に時季変更されたが、その際、右Hが「二五
日又は二六日に振替指定して欲しい。」旨を申し入れたところ、D課長代理は「B
が計画休暇になつているから、いずれの日にも振り替えるわけにゆかない。」と説
明して、これを拒絶していることが認められる。これらの諸事情を総合すると、控
訴人の主張に沿つた前記各供述は到底措信できず、他に前記認定を覆して、控訴人
の主張に沿つた事実を認めるに足る証拠はない。
 その他、前記各認定を覆すに足る証拠はない。
七 本件各時季変更権行使の適否
1 本件選挙の際、法定葉書、投票所入場券、不在者投票用紙などについては、二
三日以前にほとんどの配達が終了しており、転送などの関係で投票日の直前まで遅
れたものについても、投票日前日にこれらを通常の郵便物の中からより分けて特別
に配達することが予定されていたことは前記認定のとおりであるが、参議院議員選
挙が実施される場合には、右の郵便物以外にも、各政党や候補者の支持機関などか
らの推薦状や各種の広報文書などの選挙に関係した郵便物が差し出されることは公
知の事実であり、このような郵便物も、投票日までに配達されなければその本来の
意味がほとんど失われるものである。そこで、郵便集配業務においては、通常の郵
便物の中に混在して差し出されるこれらの郵便物についても、投票日の前日までに
できる限り完全に配達すること、そのために投票日が間近に迫つたころからは毎日
の郵便物を完全に配達してゆくことは、郵便事業の社会的使命からして当然であ
る。
 また、常勤職員の増配置をする場合に、これに充てることが可能な常勤職員は、
五〇区についてはEと被控訴人A、三区についてはGと被控訴人Bのほかにはいな
かつたことは、前記の通区状況に照らして明らかである。
 したがつて、二七日に参議院議員選挙の投票日を控え、その前日までには極力全
部の郵便物について完全配達を遂げる方針を立てて業務の運行をしていた集配課に
おいて、二四日の五〇区及び二六日の三区について、いずれも予想される要配達物
数が常勤職員一名による一日当たりの配達可能量を大きく上回り、常勤職員の増配
置の措置を執らなければ全郵便物を二六日までに完全に配達できないおそれが生じ
ていた前記の各事情の下で、被控訴人Aに対して二四日に計画休暇を与えること又
は被控訴人Bに対して二六日に計画休暇を与えることは、いずれも法三九条三項た
だし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たると解すべきである。
2 次に、年度の途中において時季変更権を行使し、計画休暇付与予定日の変更が
できるのは、計画決定時においては予測できなかつた事態発生の可能性が生じた場
合に限られ、しかも、その場合においても、所属長は、右事態発生の予測が可能に
なつてから合理的期間内に時季変更権の行使をしなければならない。そこで、所属
長において、右事態の発生がいつの時点から予測可能であつたかを検討する。
(一) 本件の時季変更は、二七日の参議院議員の通常選挙の投票日の前日までに
選挙関係の郵便物を完全配達をすることが必要であつたために行なわれたものであ
るところ、F課長が、本件参議院議員選挙の投票日が二七日とされたことを知つた
のは、公示日である四日の直前ころであることは前記認定のとおりであるから、同
課長において、右選挙の実施に伴い、投票日の前日である二六日までに全部の郵便
物を完全配達すべき業務上の必要が生じたことが明らかになつたのも、右公示日
(四日)の直前ころであると解される。
 したがつて、少なくとも、右の時点以前においては、本件各時季変更の原因とな
つた前記の事態の発生を予測して、これに基づいて休暇付与計画を決定又は変更す
ることは不可能であつたと認められる。
(二) そこで、F課長が投票日が二七日と決まつたことを知つた時点で、被控訴
人らに対する計画休暇付与予定日の時季変更が必要であるとの判断が可能であつた
か否かを検討する。
 一般に、各配達区を担当する職員の一日の配達可能物数はほぼ決まつているか
ら、要配達郵便物が完全に配達できるかどうかは、主としてその日の要配達物数と
これに対する要員措置との関係で決まることとなるが、参議院議員の通常選挙の期
間中の全体を通して郵便物の量が普段の一割前後増加することが通例であつても、
右の程度の物数の増加だけからでは、特定の日に完全配達するために常勤職員の増
配置が当然に必要であるとはいえない。
 しかし、六月当時の普段の業務の状況は、五〇区については、一日一人当たりの
配達可能物数が約七〇〇通程度であるところ、普段の到着引受郵便物数は七〇〇な
いし八〇〇通から一〇〇〇通程度の間で変動していたこと、普段水曜日ころから週
末にかけては毎日のように二五〇通ないし三〇〇通程度の郵便物が残留していたこ
と、同区の通区者は、Eと被控訴人Aの二名だけであり、また、配達が非常に困難
な区であるので、非常勤職員による配達はほとんど不可能であつたことなどの事情
が認められ、また、三区については、一日一人当たりの配達可能物数が約八〇〇通
程度であるところ、普段の到着引受郵便物数は六五〇通ないし九五〇通程度の間で
変動していたこと、五〇区と同様に普段水曜日ころから週末にかけては毎日のよう
に三〇〇通程度の郵便物が残留していたこと、同区の通区者はGと被控訴人Bの二
名だけであつたこと、配達が比較的困難な区であり、同区の配達を手伝うことが可
能な非常勤職員としてはIがいたが、同人は主に下知地区の速達の配達を担当して
いたことなどの事情が認められ、さらに、到着引受郵便物数は、一週間のうちで
は、水曜日ころから週末にかけて増加する傾向があること、担当職員の時間外労働
は、当時の労働協約によつて一日二時間までに制限されており、従来から時間外労
働の措置をとつても郵便物を完全に配達できないことが多かつたこと、また、当時
は、職員が要請を断つた場合には、時間外労働の措置は断念されていたことなど
が、五〇区と三区に共通する事情として認められることは前記認定のとおりであ
る。
 右各区の右のような普段の業務の実情からすれば、到着引受郵便物数が毎日変動
することを考慮にいれても、通常の場合における右の変動の幅、週間の波動性の傾
向及び当時慢性的に生じていた郵便物の残留の状態などから、二四日(木曜日)の
五〇区及び二六日(土曜日)の三区のいずれについても、これらの日に要配達物数
が常勤職員一人当たりの配達可能物数を相当数超過する可能性が大きいのに対し、
右超過分について、非常勤職員による配達はほとんど不可能であり、担当職員によ
る時間外労働によつて確実に処理できる見込みも乏しいのであるから、通常の業務
の運行と異なり、その日の要配達郵便物を必ず完全配達すべき業務上の必要性があ
る右の各日については、具体的に常勤職員の増配置を必要とするがい然性が認めら
れるというべきである。
 したがつて、F課長は、投票日が二七日と判明し、その前日である二六日までに
郵便物を完全配達をすべき必要性が明らかになつた公示日(四日)の直前のころの
時点で、右の普段の業務の実情と通区状況から、二四日の五〇区又は二六日の三区
につき、被控訴人らを充てて増配置を行わなければ要配達郵便物が完全に配達でき
ず、業務の正常な運営が妨げられる事態が発生することを具体的に予測することが
可能であつたと認められる。
 なお、控訴人は、常勤職員の増配置の必要が生じるのは要配達物数が平常物数の
二倍程度以上に増加するような場合に限られ、こうした事態発生の判断は、その直
前にのみ可能であるとして、郵便物の具体的物数の把握ができる当該日の前日の午
後より前の時点では、右事態発生の予測が困難であつたと主張する。
 しかし、通常の業務の運行と異なり、その日の要配達郵便物を必ず完全配達する
ことが必要である場合においては、要配達物数が常勤職員一人の配達可能物数を相
当程度超えることが予想され、しかも、非常勤職員の雇用や担当職員の時間外労働
によつて右超過分が確実に処理できる見込みが乏しければ、要配達物数が平常物数
の二倍にまで至らなくても、常勤職員の増配置を行う必要が生じるのであるから、
要配達物数が平常物数の二倍にまで達するかどうかが具体的に予想できない限り常
勤職員の増配置を必要とする事態の発生の予測ができないとはいえない。本件にお
いても、公示日(四日)の直前ころの時点で、常勤職員の増配置を必要とする事態
発生の予測が可能であつたことは前説示のとおりである。
 また、控訴人の主張によれば、集配課の配達業務を担当する職員の計画休暇付与
予定日の時季変更は、原則として計画休暇付与予定日の前日とならざるを得ないこ
ととなる。しかし、これでは、所属長において右以前にすでに明らかになつている
業務の状態などから時季変更の必要性の有無が具体的に判明している場合であつて
も、職員は、当該計画休暇に入る直前まで時季変更がされるかどうかが不確実な状
態に置かれ、また、現実に時季変更権が行使された場合には、差し迫つた時間内に
休暇の利用予定の変更などを余儀なくされる。さらに、このような運用が原則とな
れば、職員が年次休暇を計画的に利用することが困難となり、計画休暇制度の趣旨
が著しく損なわれる結果にもつながる。
 これらのことからすれば、本件計画休暇制度における時季変更権の行使について
は、控訴人の右主張を採用することはとうてい困難であり、前記の公示日(四日)
の直前ころの時点で予測できる程度に具体的な常勤職員の増配置を必要とする事態
発生のがい然性があれば、被控訴人らに対する時季変更権の行使が許されるという
べきである。
3 F課長が、被控訴人らの計画休暇付与予定日の変更が必要であると予測できた
のは公示日(四日)の直前ころであるにもかかわらず、実際に時季変更権の行使を
したのは、被控訴人Aに対しては二三日午後二時三〇分ころ、被控訴人Bに対して
は二五日午後六時ころである。
 本件における時季変更が必要な事態の発生は、前記のとおり参議院議員選挙の具
体的な投票日が確定したことと六月当時の集配課の普段の業務の実情及び通区状況
に基づいて予測が可能であるから、F課長は、投票日が判明した直後にC、L両副
課長らと選挙期間中の業務運行の確保の方法などの検討を行つた際に、休暇付与予
定計画の変更の要否について併せて検討すれば、その直後に、被控訴人らに対して
時季変更権を行使できたはずである。それにもかかわらず、その後当該休暇付与予
定日の直前まで時季変更権の行使がされなかつたのは、F課長及びC副課長らが、
当時、計画休暇付与予定日の時季変更権の行使は当該日の前日までに行えば足りる
と考え、そのために、業務の運行について年度初頭には分からなかつた事由がその
後に明らかになつても休暇付与予定計画がそのとおり実施可能かどうかについての
検討を速やかに行わず、当該休暇付与予定日の前日午後の要員配置を検討する過程
の中で初めて行うという運用をしていたことに原因があると解される。
 したがつて、F課長が、被控訴人らに対して行つた右各時季変更権の行使は、そ
れを必要とする事態の発生の予測が可能になつた後、合理的な期間を徒過して不当
に遅延してなされたことは明らかであるから、その効力を生じないというべきであ
る。
八 結論
 以上によれば、被控訴人らに対する時季変更権の行使はいずれも無効であり、被
控訴人Aについては二四日に、被控訴人Bについては二六日にそれぞれ有効に休暇
が成立し、被控訴人らには就労義務がなかつたものであるから、被控訴人らが右各
日に出勤しなかつたことを理由としてなされた本件各戒告処分は、その余の点につ
いての判断に及ぶまでもなく、取り消されるべきである。
 よつて、被控訴人らの本訴請求はいずれも理由があり、右各請求を認容して本件
各戒告処分を取り消した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これ
をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法七条、
民事訴訟法九六条後段、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 柳沢千昭 福家寛 市村陽典)

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