弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人代理人鍛治利一の上告理由は末尾添附別紙記載の通りでありこれに対する
当裁判所の判決は次ぎの如くである
 論旨第一点について。
 原審挙示の証拠によれば原審のした様な認定をすることが出来る。論旨は原審の
採用しない証拠(証人Dの証言中原審認定に反する部分は原審これを措信せずとし
て排斥して居る、)等を引用して原審の専権に属する事実の認定を非難するに過ぎ
ない、小切手が先日附で発行されることは取引上よくあることだから、所論小切手
が六月八日の日附であり、被上告人が酒田市に行つたのが同じ月の五、六日であつ
たとしても、その為めに原審の認定に所論の様な違法ありとすることは出来ない、
小切手が何故先日附で発行されたかという様な間接の事情は判決に書く必要あるも
のではない農業会名義の小切手だからといつてこのことにかわりはない、論旨は採
用に価しない。
 論旨第二点について。
 原審は甲第一号証だけで事実の認定をしたのではない、他の証拠と対照した上で
消費貸借と認めたのであつて、原審の挙示した証拠によればそういう認定も出来る
こと第一点について書いた通りである、本論旨も畢竟原審が適法に為した証拠の取
捨判断、事実の認定に関する専権行使を非難するに過ぎないもので上告適法の理由
とならない。
 論旨第三点について。
 原審は判決理由の前段においても「被控訴人は前記一〇万円を控訴人に手渡した
際、別段証文などの差入を求めないばかりか寧ろどうせ二、三日中に返して貫はね
ばならない金であるから証文などはいらないといつたほどであるのに、控訴人から
進んで右甲第一号証を作成交付したのであつて、かような事情からして被控訴人と
してもその記載文面について深く介意することなく、渡されるままにこれを受取つ
て帰つたに過ぎないことが窺い得られる」と認定して居るのであつてかようなこと
も固より有り得ないことではない、右の如く被上告人が甲第一号証の記載文面など
はろくに読まなかつたとすれば、右文面によつて所論の様な認定をしなければなら
ないことはないわけである、従つて原判決に所論の様な違法ありとすることは出来
ない、論旨は結局事実認定に関する原審の適法な専権行使を非難するに帰し上告適
法の理由とならない。
 よつて民事訴訟法第四〇一条、第九十五条、第八十九条に従つて主文の如く判決
する。
 以上は関与裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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