弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人高木喬の上告理由一について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認する
ことができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同三について
 原審の適法に確定した事実は、次のとおりである。
 中古自動車の販売業者である上告人は、訴外Dから買い受けた本件自動車を、昭
和四二年九月四日被上告人に転売し、被上告人は、同日代金五七万五〇〇〇円全額
を支払つてその引渡を受けた。ところが、本件自動車は、訴外E販売金融株式会社
(以下「訴外会社」という。)が所有権留保特約付で割賦販売したものであつて、
その登録名義も訴外会社のままであり、Dは、本件自動車を処分する権限を有して
いなかつた。そして、訴外会社が、留保していた所有権に基づき、昭和四三年九月
一一日本件自動車を執行官の保管とする旨の仮処分決定を得、翌一二日その執行を
したため、本件自動車は、被上告人から引き揚げられた。被上告人は、右仮処分の
執行を受けて、はじめて本件自動車が上告人の所有に属しないものであることを知
り、上告人に対し、民法五六一条の規定により、同年一二月二二日限り本件売買契
約を解除する旨の意思表示をした。
 右事実によると、上告人が、他人の権利の売主として、本件自動車の所有権を取
得してこれを被上告人に移転すべき義務を履行しなかつたため、被上告人は、所有
権者の追奪により、上告人から引渡を受けた本件自動車の占有を失い、これを上告
人に返還することが不能となつたものであつて、このように、売買契約解除による
原状回復義務の履行として目的物を返還することができなくなつた場合において、
その返還不能が、給付受領者の責に帰すべき事由ではなく、給付者のそれによつて
生じたものであるときは、給付受領者は、目的物の返還に代わる価格返還の義務を
負わないものと解するのが相当である。これと同旨と解される原審の判断は、正当
として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することが
できない。
 同二及び四について
 売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務
の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき
義務を負うものであり、この理は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物
の所有権を取得して買主に移転することができず、民法五六一条の規定により該契
約が解除された場合についても同様であると解すべきである。けだし、解除によつ
て売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付が
なかつたと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解
除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要があるのであり、売
主が、目的物につき使用権限を取得しえず、したがつて、買主から返還された使用
利益を究極的には正当な権利者からの請求により保有しえないこととなる立場にあ
つたとしても、このことは右の結論を左右するものではないと解するのが、相当だ
からである。
 そうすると、他人の権利の売主には、買主の目的物使用による利得に対応する損
失がないとの理由のみをもつて、被上告人が本件自動車の使用利益の返還義務を負
わないとした原審の判断は、解除の効果に関する法令の解釈適用を誤つたものとい
うべきであり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、右使用利益の点について更
に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが、相当である。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    吉   田       豊
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    本   林       讓

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