弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人坂根徳博の上告理由について
 原審の確定した事実によれば、(一) 被上告人とDとの間に締結されていた原判
決判示の本件保険契約は、D所有の自動車につき被上告人を保険者、Dを被保険者、
保険金額を一〇〇〇万円とし、昭和四〇年一〇月に改訂され昭和四七年まで存在し
た自動車保険普通保険約款(以下「本件約款」という。)に基づく自動車対人賠償
責任保険契約であつて、保険者である被上告人において被保険者であるDに対し同
人が前記所有自動車によつて他人の生命又は身体を害することにより法律上損害賠
償義務を負担することによつて被る損害を填補することをその内容とするものであ
つたところ、本件保険契約で定められた保険期間内に前記D所有の自動車を加害車、
上告人を被害者とする原判決判示の本件事故が発生した、(二) 本件約款第三章第
一四条第一項には、「被保険者がこの保険契約に基づいて損害のてん補を受けよう
とするときは、事故発生の日から六十日以内または当会社が書面で承認した猶予期
間内に保険金請求書、損害額を証明すべき書類および当会社が特に必要と認める書
類または証拠を保険証券に添えて、当会社に提出しなければならない。」と、また、
同第一五条には、「当会社は前条の書類または証拠を受領した日から三十日以内に
保険金を支払う。当会社が前項の期間内に必要な調査を終了することができないと
きは、その終了後遅滞なく保険金を支払う。」とそれぞれ定められていた、(三) 
本件事故を原因とするDの上告人に対する損害賠償については、両者間に争いがあ
り、示談が成立しないで訴訟に発展し、右訴訟においてDが上告人に対し損害賠償
として四一五〇万円と遅延損害金を支払うべき旨の第一審の判決が言い渡され、右
判決は昭和五〇年五月二八日確定するに至つた、(四) 被上告人は、右判決の確定
前Dに対し約定の保険金一〇〇〇万円を支払つた、というのである。
 右(一)の事実によれば、Dは、本件保険契約所定の保険期間内に所定の本件事故
が発生したことにより、被上告人に対し、所定の保険金額の範囲内において保険金
請求権を取得し、これを行使しうるに至つたものといわなければならないが、しか
し、このことから直ちに、右保険金請求権の取得と同時に、あるいはその請求をし
た時ないしはその時から一定の期間を経過した時に、債務の履行期が到来するもの
とすることはできない。一般に、損害保険契約は、保険事故の発生により被保険者
が被る損害の填補を目的とし、その場合における填補額は、被保険者が現実に被つ
た具体的損害の額に限られるものであるところ、本件保険契約のような責任保険契
約においては、被保険者が事故により第三者に対して損害賠償責任を負うことによ
つて被る損害を填補することを目的とし、したがつて、被保険者が現実に第三者に
対し損害賠償責任を負担するに至つたときでも、その賠償額が具体的に確定されな
い限り、契約上填補すべき損害額も確定せず、保険契約者としては現実に支払うべ
き保険金の額を確認することができない関係にあるから、それより前の段階におい
て保険金支払債務の履行期が到来したとし、その後における履行遅滞の責任を保険
契約者に負わしめることは妥当とはいえない。それ故、保険契約上右と異別の約定
が存するときは格別、そうでない限り、損害賠償額が確定されるまでは、保険契約
者の保険金支払債務の履行期は到来しないものと解するのが相当である。そして、
本件保険契約における前記(二)の諸条項は、右の趣旨を前提とするものと解されこ
そすれ、これと異なる特段の定めをした趣旨のものとは認められない。
 ところで、前記(三)、(四)の事実によれば、本件においては、責任関係の当事者
であるDと上告人との間でDが上告人に対して負担すべき損害賠償の額につき争い
があり、上告人においてDを被告として損害賠償請求の訴を提起し、右訴訟の第一
審係属中に被上告人がDに対して約定の保険金全額を支払つたというのであり、右
の事情のもとにおいては、被上告人による右保険金支払当時、被保険者であるDが
被害者である上告人に対して負担すべき損害賠償の額は未だ確定していなかつたと
いわざるをえないから、被上告人は、その保険金支払債務の履行期到来前にこれを
履行したものというべく、いかなる意味においても被上告人は右保険金支払債務に
つき履行遅滞があつたものということができないことは明らかである。
 以上と同趣旨の原判決の判断は正当であり、論旨は、右と異なる独自の見解に立
つて原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    戸   田       弘

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛