弁護士法人ITJ法律事務所

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主         文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 控訴人が,平成13年11月12日付けで行った被控訴人の「CISによるユー
ザーからの苦情申出情報(平成12年度分中部の情報)」の行政文書開示請
求に対する決定処分のうち,別紙1ないし4の黒塗り部分を不開示とした部分
(ただし,申告者の氏名,住所,電話番号及び車両の登録番号を除く。)を取り
消す。
3 被控訴人のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(以下,略語は,原判決に準ずる。)
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,情報公開法に基づき,「CISによるユーザー
からの苦情申出情報(平成12年度分中部の情報)」の行政文書の開示を請求した
ところ,一部開示・一部不開示の決定(本件処分)がなされたことから,本件処分の
うち,黒塗りの方法により本件各文書の一部を不開示とした決定部分(別紙1ない
し4参照,ただし,申告者の氏名,住所,電話番号を除く。)の取消しを求めた抗告
訴訟である。なお,「CIS」は,CustomerInformationSystem(自動車ユーザー相
談等事案情報処理システム)の略称で,国土交通省本省,地方運輸局,陸運支局
及び自動車検査登録事務所において総合的に利用されている,自動車ユーザー
からの検査,整備,車両不具合等に関する苦情,問い合わせ,意見,要望等の効
率的な管理等のためのコンピューターによる管理システムのことである。
原審において,控訴人の主張につき本件処分の適法性を基礎付ける事実の主
張を欠くため,本件処分が違法であるとされて,被控訴人の請求が認容されたとこ
ろ,控訴人が,これを不服として控訴した。
2 争いのない事実等,争点及びこれに対する当事者の主張は,次に改めるほか,原
判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1及び2のとおりであるから,これを
引用する。
(1) 原判決3頁22行目から23行目の括弧書きを「〔その前提として,情報公開法6
条1項により開示すべき行政文書中の記録の部分(以下『部分開示情報』とい
う。)の意義〕」と,4頁22行目の「判断すべきものではないから,」から23行目ま
でを「判断すべきものではない。」とそれぞれ改める。
(2) 原判決7頁26行目の次に行を改め,次のとおり加える。
「(3) 本件各文書を開示することにより害される利益について,本件文書①を例
に,次のとおり分説する。本件の他の文書についても同様に個別的な不開示
事由がある。
ア 申告者の保有する車両の初度登録年月,登録日
 本件文書①の車名欄には,申告者の保有する車両(トヨタエスティマ)の
初度登録年月,登録日が記載されており,これらの記述等は,記録簿申告
情報及び記録簿対応情報を構成するものであるが,これを公にすると,他
の情報と照合することにより特定の申告者を識別することができるほか,さ
らに特定の申告者が特定の内容の申告(申告欄記載のとおりの申告)をし
ていることが明らかとなって,同人の権利利益を害するおそれ,リコール等
の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
イ 関係事業者の名称及び住所
本件文書①の関係者欄には,関係事業者の名称及び住所が記載され
ており,これらの記述等は,記録簿申告情報及び記録簿対応情報を構成
するものであるが,これを公にすると,当該事業者の対応等に関し不満,非
難等が表明されていることが明らかとなって,その権利,競争上の地位そ
の他正当な利益を害するおそれがある。
ウ 申告内容
本件文書①には,申告欄を中心として,特定の年月日に車両(トヨタエス
ティマ)を購入した申告者が「空調作動時に異音が出る。」という車両不具
合があるとした上で,その不具合に関して,申告者の修理・補償等の関係
事業者のなすべき対応に関する要望の内容及びその根拠,関係事業者の
対応・接遇等に関する不満とその非難,車両に関する主観的認識,好悪に
ついての申告内容が記載されている。
この記述等は,記録簿申告情報及び記録簿対応情報を構成するもので
あるが,これを公にすると,関係事業者の権利,競争上の地位その他正当
な利益を害するおそれがある。
エ 回答内容及び指導内容
本件文書①の回答欄には,中部地方運輸局担当者が申告者に「事案の
状況について確認する」旨回答したことを踏まえて,特定の日時に「営業
所」及びその他の関係事業者(関係者1欄記載とは別の関係事業者をい
う。)に照会して受けた回答内容及び指導内容(ここには一般的なものとし
て明確に説明すべきであるというもののほか,本件特有のものとして「必要
であれば」行うべきであるとして告げた指導内容を含む。)が記載されてい
る。
この記述等は,記録簿対応情報を構成するものであるが,これを公にす
ると,法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあ
る。」
(3) 原判決8頁2行目の「(2)は」を「(2)及び(3)は」と改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人の請求は,車両の登録番号に関する部分を除き,理由が
あるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
2 部分開示情報の意義について
(1) 部分開示情報の意義についての判断は,次に改めるほか,原判決8頁5行目
から10頁18行目までのとおりであるから,これを引用する。
ア 原判決8頁17行目の「主張した上,」から18行目までを「主張する。」と,9
頁19行目の「このように,」から21行目の「同項本文は,」までを「ところで,情
報公開法6条1項本文は,」とそれぞれ改める。
イ 原判決9頁25行目の「すなわち,」から10頁1行目までを次のとおり改め
る。
「これによると,開示請求に係る行政文書のある一部分につき,①不開示情
報の記録されている部分が容易に区分されて除かれた後の当該行政文書の
一部分であること,及び,②有意の情報が記録されていないと認められるもの
ではないことの各要件を満たす場合であれば,当該一部分は,情報公開法6
条1項に基づき開示しなければならないもの(すなわち,部分開示情報)となる
のであり,同条項の趣旨及び文理からみて,当該一部分が有意でないとは認
められず,また,当該一部分が他の不開示情報の一部分であるとか,不開示
情報との区分が困難等の事情もないにもかかわらず,当該一部分が一個の
情報の一部であることを根拠に部分開示情報に当たらなくなるものとは解され
ない。例えば,1件の行政文書にA,B2つの情報が記録されている場合で,
各情報がある部分において重複しているときに,A情報が不開示情報である
場合には,これを除くと残部はB情報の一部になることが明らかであり,この
ような場合に残部が部分開示情報に当たらないと解すべき理由はない。控訴
人の上記主張(原判示)は,一個の情報の一部分は『情報』ではないという見
解の下に,行政文書中の部分的な記録につき,上記①及び②の要件を満た
し得るものであっても,当該一部分に記録された内容が『一個の情報』ではな
い場合には,なお,部分開示情報に当たらないと解すべきことをいうものとみ
られるが,有意性が否定されていない当該一部分について,それが『一個の
情報』ではないといった形式的な根拠から部分開示情報に当たらないと解釈
することは,必要以上に部分開示情報の範囲を限定するもので,情報公開法
の趣旨,目的と整合せず,採用することができない。
そして,部分開示情報に関する証明責任について検討するに,情報公開法
1条が『この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する
権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を
図』ること等を目的とする旨定め,同5条等において行政文書の原則的開示を
定めていること,及び不開示部分の内容を知らない開示請求者に部分開示情
報に当たることの立証責任を負わせることは不能を強いるに等しいことなどを
考慮すれば,情報開示請求訴訟においては情報開示請求を拒否できる事由
の存在についての立証責任を行政機関側において負担すると解するのが相
当であり,本件についてみれば,部分開示情報に当たらないことを処分庁が
立証すべきであって,その立証が成功しなければ,不開示処分は違法となっ
て取り消されるべきものと解される。また,立証の程度については,事柄の性
質上,不開示部分の内容を逐一明らかにするまでの必要はないものの,不開
示部分が部分開示情報に当たらないことにつき,合理的な範囲内で詳細な立
証をする必要があると解される。
また,上記②の要件に関し,」
ウ 原判決10頁9行目の「独立した情報」を「部分開示情報」と改める。
(2) 以上によると,本件各文書が,申告情報,対応情報及び調査情報等の2ない
し3個の情報から構成されるとの前提で,それより細分化された個々の記述ある
いは黒塗り部分の情報は,それらが「有意」の内容を有するか否かにかかわら
ず部分開示情報に当たらない旨をいう控訴人の上記主張は,採用できない。
3 本件各文書中の黒塗り部分(別紙1ないし4の当該部分,ただし,申告者の氏名,
住所,電話番号を除く。)は部分開示情報に当たるか。
(1) 車両の登録番号,初度登録年月及び登録日について
ア 証拠(甲3ないし6,別紙1ないし4)によれば,本件各文書の各車名欄の苦
情申出の対象となった車両の登録番号,初度登録年月及び登録日は,本件
各文書の他の開示された部分と併せれば,有意な情報となると認められ,ま
た,その記録の位置からして,他の部分と容易に区分し得るものと認めること
ができる。
イ 控訴人は,これらが情報公開法5条1号本文前段の不開示情報(個人識別
情報)の一部に当たる旨主張する。
そこで検討するに,車両の登録番号については,証拠(甲8)及び弁論の全
趣旨によれば,その番号に基づき自動車登録ファイルの登録事項等証明書
の交付申請をする等により,当該車両の所有者個人を特定し,ひいては申告
者を識別することが可能となるものと認められるから,上記不開示情報に当た
るということができる。
しかし,初度登録年月及び登録日については,その開示により個人が識別
される結果が生ずることに関する具体的な立証はなく,かえって,一般人にと
って,そのような個人の識別は容易でないとも認められる(甲8)。控訴人は,
初度登録年月及び登録日の開示により当該関係事業者等一定の範囲の者
にとって申告者を特定識別する手掛かりとなり得るとも主張するが,既に開示
されている車名や相談・不具合の申告内容等に加えて初度登録年月及び登
録日が開示されれば申告者を特定識別できるような立場の者が存すると想定
することは困難であって,本件各文書については,初度登録年月及び登録日
の開示が申告者を特定識別する手掛かりとなるとは認め難い。そうすると,初
度登録年月及び登録日は,いずれも直ちに上記不開示情報の一部に当たる
と認めることはできない。
ウ したがって,車両の登録番号は部分開示情報に当たらないが,初度登録年
月及び登録日は,部分開示情報に当たらないとは認められないこととなる。
(2) 関係者1欄に記載された関係事業者の名称及び住所について
ア 証拠(甲3ないし6)によれば,本件各文書の関係者欄の関係者2欄には記
録はなく,関係者1欄の記録(関係者の名称及び住所)は,単独の情報として
も有意でないとはいえず,本件各文書の他の開示された部分と併せれば,有
意な情報となると認められ,また,その欄の位置からして,他の部分と容易に
区分し得るものと認めることができる。
イ 控訴人は,これらが情報公開法5条2号イの不開示情報(法人等情報)に該
当する旨主張する。
ところで,控訴人は,本件文書①の関係者1欄には,関係事業者の名称及
び住所が記載されていると主張していることからみて,本件各文書の同欄に
はいずれも関係事業者の名称及び住所が記載されているものとみられるが,
証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,そこにいう関係事業者とは,メーカー
の系列会社であるディーラー又は正規輸入事業者を兼ねているディーラーで
あると推認することができる(同欄に,これ以外の立場の者が記載されている
ことの具体的主張立証はない。)。そして,これらのディーラーは,その業務
上,ユーザーからの苦情を受けることがしばしばあるとみられるから,特段の
事情がない限り,本件各文書における苦情等の情報が開示されることから直
ちに信用毀損等の正当な利益等の侵害が生ずるものとはみられない(本件に
おいてそのような特段の事情の主張立証はない。)。また,本件各文書の苦
情等の情報につき,既に苦情申出の対象となった車名が開示されている以
上,正規輸入事業者については,その名称等が既に事実上特定されていると
いうことができるのであって,本件における名称等の開示により更に正当な利
益等の侵害を受けるものとはみられず,メーカーの系列会社であるディーラー
については,販売者としてユーザーに責任を負う立場にある点でメーカーと同
視し得る立場にあるというべきところ,メーカーは車名が特定された車両の苦
情情報開示による影響を受けるのであるから,同ディーラーがこれと同様に
開示の影響を受けても正当な利益を害するものとはいえない。そうすると,各
関係者1欄における関係事業者の名称及び住所を開示することにより当該事
業者の正当な利益を害するものと認めることはできない。
ウ したがって,関係者1欄に記載された関係事業者の名称及び住所は,部分
開示情報に当たらないとは認められないこととなる。
(3) 申告内容について
ア 証拠(甲3ないし6)によれば,本件各文書の各申告欄の黒塗り部分は,申
告内容の一部分であるところ,その内容についての具体的主張立証が存しな
いため,これらの黒塗り部分に有意な情報が記録されているか否かは判然と
しない。しかし,立証がない以上,既に開示された他の部分と併せてみた場合
に有意でないと断定することもできない。また,各申告欄は,申告欄以外の部
分と容易に区分し得るものと認めることができる。
イ 控訴人は,本件文書①の申告欄を例に,そこには申告者の修理・補償等の
関係事業者のなすべき対応に関する要望の内容及びその根拠,関係事業者
の対応・接遇等に関する不満とその非難,車両に関する主観的認識,好悪に
ついての申告内容が記載されており,これを開示すると,関係事業者の権
利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとして,その情報
が情報公開法5条2号イの不開示情報(法人等情報)に当たる旨(したがっ
て,黒塗り部分はその不開示情報の一部である旨)主張する。
確かに,申告者の主観に基づく憶測,非難,好悪などに関する記録は,こ
れが誹謗中傷にわたり,あるいは不正確,虚偽を伴う場合などには,その開
示により,信用を毀損し,あるいは,真実でない事実が客観的な事実であるか
のような誤解を招くなどして,法人等の正当な利益を害するおそれがあるか
ら,記録された情報の内容によっては,不開示情報に当たる場合があるという
ことはできる。
しかし,本件において,本件各文書の申告欄の黒塗り部分が全て上記の不
開示情報の一部であるか否か,そうでないとすれば,どの部分に上記のよう
な不開示情報に当たる程度の実質をもった申告者の主観に係る内容が記録
されているのか等について,これを認めるに足りる具体的な主張立証はなさ
れておらず,かえって,本件文書①の申告欄の1行目,本件文書②の申告欄
全部,本件文書③の申告欄全部,本件文書④の申告欄の1,2行目の各黒
塗り部分などには,もっぱら年月日,場所その他の固有名詞などが記載され
ており,申告者の主観に基づく憶測等が記載されてはいないとみられる。ま
た,本件文書①及び②の各申告欄のその余の黒塗り部分も,そこに申告者
の主観に基づく憶測等が記載され,しかも,その内容が上記不開示情報に当
たる程度のものであることについては,本件の証拠からこれらを認めることは
困難である。
そうすると,本件各文書の申告欄の黒塗り部分を個別にみたとき,これが
情報公開法6条1項の「不開示情報が記録されている部分」であることの立証
がないといわざるを得ない。
ウ また,控訴人は,本件各文書の申告欄の黒塗り部分に,申告者の車両の購
入年月日,関係事業者との交渉経緯に関する記述等申告者を識別し得る手
掛かりとなる情報が記録され,あるいは申告者が交渉相手方に示していない
手の内等が記録され,これを開示することにより申告者個人の権利利益を害
するおそれがあり,情報公開法5条1号本文前段,後段の不開示情報がある
とも主張する。しかし,車両の購入年月日については,上記(1)イに判示の車
両の初度登録年月及び登録日についてと同様,個人識別情報の一部に当た
ると解することはできないし,関連事業者との交渉経緯に関する記述も,これ
が申告者を識別し得るものと解することはできない。また,申告者が交渉相手
方に示していない手の内等についても,本件各文書中のどの黒塗り部分にそ
のような申告者の手の内等が記録されているのか,また,その記録内容が開
示により申告者の交渉に障害を生じさせる程度のものか否かといった点につ
き具体的な主張立証はなく,黒塗り部分を個別にみたとき,いずれの黒塗り部
分についても,そのような不開示情報が存すると認めることは困難である。
エ さらに,控訴人は,申告者が,自らが申告した事実が公にされ,広く周知され
る状態になれば,申告することをちゅうちょし,あるいは率直な内容を申告す
ることをはばかる結果,リコールに関する事務等が適正に遂行されないおそ
れがある等として,本件各文書の申告欄の黒塗り部分が情報公開法5条6号
柱書の不開示情報(事務・事業情報)に当たる旨主張するが,本件の証拠か
らは黒塗り部分が申告者個人の権利利益を害するおそれがあると認められ
ないことは上記のとおりである上,一般人において申告者を特定することがで
きない場合に,本件各文書の申告内容につき,既に開示されている部分に加
えて黒塗り部分を開示することが,直ちにその後の申告を一般的に抑制し,
萎縮させる等の効果をもつことについての的確な立証はなく,黒塗り部分の
開示によって上記事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれが生ずると認
定することはできない。
オ したがって,本件各文書の申告欄の黒塗り部分は,本件の証拠の限りで
は,部分開示情報に当たらないとは認められないこととなる。
(4) 結果ないし回答の内容について
ア 証拠(甲3ないし6)によれば,本件各文書の結果欄ないし回答欄の黒塗り部
分は,結果の内容ないし回答の内容の一部分であるところ,その記録内容に
ついての具体的主張立証が存しないため,これらの黒塗り部分に有意な情報
が記録されているか否かは判然としない。しかし,有意でないとの立証がない
以上,既に開示された他の部分と併せてみた場合に有意でないと断定するこ
ともできない。また,結果欄ないし回答欄は,それ以外の部分と容易に区分し
得るものと認めることができる。
イ 控訴人は,本件文書①の回答欄を例に,そこには,特定の日時に「営業所」
及びその他の関係事業者(関係者1欄記載とは別の関係事業者)に照会して
受けた回答内容及び指導内容(任意的な指導・助言を含む。)が記載されて
おり,これを開示すると,関係事業者の権利,競争上の地位その他正当な利
益を害するおそれがあるとして,その情報が情報公開法5条2号イの不開示
情報(法人等情報)に当たる旨(したがって,黒塗り部分はその不開示情報の
一部である旨)主張する。
しかし,甲第3号証(別紙1)によれば,本件文書①の回答欄において,控
訴人が他の関係事業者に照会して受けた回答内容は,同種事例の情報につ
いて把握していない旨,あるいは「空調の容量が大きくなったため,ファンスイ
ッチを最大にすると音が大きくなりビビリ音が出る。新型エスティマの商品性
の問題と思われるが,やがて改善されるであろうとのことであった」等の回答
に過ぎず,前者の如き回答の開示が何らかの利益侵害を生ずることは考えら
れず,後者についても,申告情報と基本的には同内容のものであって,これら
の回答の回答者名等の記録内容を開示することによって,その権利,競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。また,指
導内容に関する黒塗り部分(本件文書①の別紙回答欄の13行目から14行
目)については,控訴人はその開示により事業者側の十全な交渉が妨げられ
るおそれがあることをいうともみられるが,もともと事業者側において,行政庁
から受けた指導内容を秘匿してユーザー等と有利に交渉すべき正当な利益
があるとはみられない上,本件文書①の当該黒塗り部分の開示により特に十
全な交渉が妨げられるおそれがあると認めるに足りる事情等の立証もなく,
同部分の開示により十全な交渉が妨げられるおそれがあるとの事実は認め
難い。そうすると,本件文書①の回答欄の黒塗り部分が上記不開示情報の一
部に当たるということはできない。
また,控訴人は,概括的には,本件各文書の結果欄ないし回答欄に,関係
事業者に対する誹謗中傷,申告者の苦情等に対する関係事業者の交渉方針
等に関する事項が含まれる旨主張しているが(原判示),本件文書①に関す
る上記主張内容に照らし,本件文書①の回答欄にはそのような事項は記録さ
れていないことが明らかであるし,証拠(甲4)によれば,本件文書②について
も,その結果欄における黒塗り部分の外形上,そのような事項が記録されて
いるとは認め難い。本件文書③及び④については,外形上は,黒塗り部分に
そのような事項が記録されているか否か不明であるが,いずれにしても,個々
の黒塗り部分について,その開示により法人等の正当な利益が害されるおそ
れがあることについての個別的な主張立証はないのであるから,同黒塗り部
分が上記不開示情報の一部に当たると認定することはできない。
ウ 控訴人は,本件各文書の結果欄ないし回答欄の黒塗り部分には,申告者を
識別できる情報があり,また,同部分の開示により回答者個人の権利利益を
害するおそれ,リコールに関する事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
があり,情報公開法5条1号本文後段,同条6号柱書の各不開示情報がある
とも主張するが,上記黒塗り部分に,取消請求の対象から除外され,あるい
は個人識別情報に該当する旨判示した申告者の氏名,住所,電話番号及び
車両の登録番号以外で申告者を識別できる情報の記載があることを認めるこ
とのできる証拠はないし,また,上記(3)ウ,エと同様,本件の証拠上,黒塗り
部分に上記個人の権利利益を害するおそれがあるなどの不開示情報が存す
ることや,黒塗り部分の開示によって上記事務等の適正な遂行に支障を及ぼ
すおそれが生ずることを認定することは困難である。
エ したがって,本件各文書の結果欄ないし回答欄の黒塗り部分は,本件の証
拠の限りでは,部分開示情報に当たらないとは認められないこととなる。
(5) 以上によると,申告者の氏名,住所,電話番号を除く本件各文書の黒塗り部分
のうち,車両の登録番号を除く部分は,これを不開示とすべき事由があると認定
することができず,その限度で,不開示事由があるとしてなされた本件処分は違
法である(なお,控訴人は,当審口頭弁論期日において,本件文書②ないし④に
ついても,その内容に即した不開示事由を主張する予定をいうが,本件の審理
経過に鑑み,既にその機会は十分にあったというべきであるし,上記は主張の
予定のみをいうもので,各黒塗り部分に不開示情報が存することにつき,合理的
な範囲内である程度詳細な立証をすること等を予定したものともみられないか
ら,当裁判所は口頭弁論を終結することとしたものである。)。
第4 結論
よって,被控訴人の請求は,車両の登録番号を除き理由があるから,原判決を
上記に従って変更し,訴訟費用の負担については,請求の大部分が認容されるこ
と及び訴訟の経過等を考慮して全部控訴人に負担させることとして,主文のとおり
判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官  田   村   洋   三
裁判官  小   林   克   美
裁判官  戸   田       久
(別紙1ないし4添付省略)

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