弁護士法人ITJ法律事務所

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平成14年2月15日宣告
平成13年・第2234号
判       決
被告人A,B両名に対する各出入国管理及び難民認定法違反被告事件について,
当裁判所は,検察官菊川秀子及び弁護人篠崎純各出席の上審理し,次のとおり判決
する。
主       文
被告人Aを懲役4年及び罰金200万円に,被告人Bを懲役3年及び罰金100万
円に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各60日を,それぞれその懲役刑に算入する。
被告人両名においてその罰金を完納することができないときは,金1万円をそれぞ
れ1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。
被告人Bに対し,この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人両名は,C,Dらと共謀の上、営利の目的で,平成13年10月14日,
千葉県a郡b町c番地所在のd灯台から真方位122度,約45海里付近の公海上
において,船籍不明の船舶に乗船中のいずれも自称中華人民共和国の国籍を有する
外国人であって入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸する目的を有
する自称Eら91名の集団密航者を,日本船籍の船舶「F丸」に乗り込ませて自己
らの管理の下に置いた上,同海域から本邦に向けて輸送し,同日,本邦の領海内で
ある上記d灯台から真方位69度,約12海里付近において,同船により上記集団
密航者を本邦に入らせ,さらに,本邦内において,上陸の場所である同県e郡f町
gh番地i付近のj漁港新港に向けて輸送したものである。
(法令の適用)
罰  条              判示所為中,集団密航者を本法に向けて輸
送した点及び本邦内において集団密航者を上陸の場所に向けて輸送した点につきい
ずれも出入国管理及び難民認定法74条の2第2項,1項,集団密航者を本邦に入
らせた点につき同法74条2項,1項(更にいずれも刑法60条。以上,包括して
出入国管理及び難民認定法74条2項により処断する。)
未決勾留日数の算入         刑法21条(懲役刑に算入)
労役場留置      同法18条
執行猶予(被告人B)        同法25条1項(懲役刑)
(量刑の理由)
 本件は,漁業を営む被告人両名が,地元暴力団G組構成員であるCらと共謀の
上,営利の目的で,中国側密航船から91名もの多数の中国人密航者を公海上で受
け取り,本邦に向けて輸送して不法上陸させようとした事案である。
 犯行は,蛇頭及び日本における暴力団関係者ら多数の者が関与して綿密な計画を
立て,各自が役割を分担して実行された国際的かつ組織的なまことに重大悪質なも
のであり,その中で,被告人Aは,上記Cの依頼を受け,その手伝いに従兄弟であ
る被告人Bを巻き込み,知人に嘘を言って多数の密航者を乗せる遊漁船を借り受け
て用意し,密航者の受取場所を自ら選定し,その場所で多数の中国人密航者を乗せ
た中国側密航船と待ち合わせた上,密航者を遊漁船に乗り移らせて不法入国させ,
本邦に向けて輸送したのであって,犯行の中で重要かつ必要不可欠な役割を果たし
ており,また,被告人Bは,これに同行して密航者を乗り移らせる作業の手伝いを
したのであり,その果たした役割は軽視できるものではない。犯行動機について被
告人Aは,上記Cか
らの依頼であり,断れば報復が予想されたとか,手を貸すことで副業として営むス
ナックの外国人従業員に対するG組組員の嫌がらせを止めてもらえると思ったから
であるなどというが,事の重大性を考えれば,これに対処する手段はいくらでもあ
ったのであり,Cの依頼を断らずにいるうちに断れなくなったという事情は窺える
ものの,主たる犯行動機が報酬にあったことは明らかであるというべきであり,ま
た,被告人Bは,報酬目的のほかに,手伝いを断れば,被告人Aが窮地に陥るから
同被告人の力になってやりたいと考えたからだというが,筋違いな考えというほか
なく,両名の犯行動機には酌量できる余地がない。結果として多数の密航者が本邦
に不法上陸する事態は未然に防止されたとはいうものの,わが国の出入国管理行政
を根底から揺るがす
おそれが極めて高かったのであって,結果を軽くみることは到底できない。加え
て,集団密航事犯が後を絶たない昨今の情勢にかんがみると,一般予防の見地から
も,組織的かつ大規模な集団密航事犯に輸送役として加担した被告人両名に対して
は厳しく対処し,この種事犯の再発防止を図る必要がある。してみると,被告人両
名の刑事責任は重大である。
他方,被告人両名が捜査段階から事実を認め,重大事犯に加担したことを反省して
いること,結果として本件に係る密航者全員が本邦上陸前に検挙されて最悪の事態
には至らなかったこと,両名とも本件の首謀者ではなく,とりわけ被告人Bは被告
人Aに誘われために本件に関与したもので,自ら計画立案に参与するなどしたわけ
ではなく,従属的な役割に終始していること,被告人Aには20年以上前の業務上
過失傷害罪による罰金前科があるのみであり,被告人Bには前科前歴がないこと,
被告人両名がこれまで所属漁業組合で中心的な役割を果たし,周囲の信望を集めて
いたこと,それぞれの家庭状況など被告人両名のために斟酌できる事情もある。
 以上の諸事情を総合考慮すると,被告人Aは到底実刑を免れないが,被告人Bに
ついては懲役刑の執行を猶予するのを相当と判断し,主文のとおり量定する。
(求刑 被告人Aにつき懲役5年及び罰金200万円,被告人Bにつき懲役4年及
び罰金100万円)
  平成14年2月15日
    千葉地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官   下   山   保   男
           裁判官   岡   野  典   章
           裁判官   高   杉  昌   希

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