弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 検察官の上告趣意は、原判決の憲法一三条、三一条の解釈の誤り、最高裁判所判
例の違反、関税法の解釈適用の誤りを主張するものである。
 そこで検討するに、関税法(平成六年法律第一一八号による改正前のもの。以下
同じ。)一〇九条を限定解釈し、被告人の本件行為は同条に該当しないとして、被
告人に無罪の言渡しをした原判決は、憲法の解釈を誤り、ひいては関税法一〇九条
の解釈適用を誤ったものであって、破棄を免れない。その理由は、以下のとおりで
ある。
 第一 本件の経過
 一 本件公訴事実の要旨は、次のとおりである。
 1 被告人は、昭和六一年二月一九日、性交類似行為の場面等を露骨に撮影した
ビデオテープ一巻及び同様の写真を掲載した雑誌一冊を携帯して、空路サンフラン
シスコ国際空港から東京都大田区内の東京国際空港に到着した上、右貨物を手提げ
袋等に隠匿して所持したまま同空港内東京税関羽田旅具検査場を通過し、輸入禁制
品である風俗を害すべき図画を輸入した。
 2 被告人は、Aと共謀の上、同日、Aにおいて、性交類似行為の場面等を露骨
に撮影したビデオテープ四巻、同様の写真を掲載した雑誌六冊、カレンダー一冊、
新聞一枚及びカタログ一冊を携帯して、空路サンフランシスコ国際空港から前記東
京国際空港に到着した上、前記東京税関羽田旅具検査場において、右貨物をスーツ
ケース内等に隠匿して所持したまま右検査場を通過し、輸入禁制品である風俗を害
すべき図画を輸入しようとしたが、税関職員に発見されたため、その目的を遂げな
かった。
 二 第一審は、公訴事実と同旨の犯罪事実を認定し、関税法一〇九条一項、二項、
関税定率法(成六年法律第一一八号による改正前のもの。以下同じ。)二一条一項
三号(同号の「風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」を以下「わいせ
つ表現物」という。)等の関係法令を適用して、被告人を罰金八万四〇〇〇円に処
し、前記ビデオテープ等を没収する旨の判決を言い渡した。
 これに対し、被告人が控訴を申し立てたところ、原判決は、右ビデオテープ等が
わいせつ表現物に当たり、その輸入及び輸入未遂の事実を認めることができるとし
ながら、個人的鑑賞のための単なる所持を目的としたわいせつ表現物の輸入行為を
処罰の対象とすることは、法が個人の自律にゆだねられるべき道徳の領域に介入す
るものであって許されないと考えられるから、関税法一〇九条の規定を条理に照ら
し憲法一三条、三一条にも抵触しないように合目的的に解釈すると、関税法一〇九
条にいう「関税定率法第二十一条第一項(輸入禁制品)に掲げる貨物を輸入した者」
には個人的鑑賞のための単なる所持を目的としてわいせつ表現物を輸入した者を含
まないと解すべきであるとした上、本件わいせつ表現物の輸入及び輸入未遂の各行
為は、いずれも個人的鑑賞のための単なる所持を目的としているから、関税法一〇
九条には該当しないとして、第一審判決を破棄し、被告人を無罪とした。
 第二 当裁判所の判断
 一 関税定率法二一条一項三号は、わいせつ表現物の輸入をその目的のいかんに
かかわらず一律に禁止し、関税法は、関税定率法二一条一項に掲げる貨物を輸入し
た者(一〇九条一項)及び同項の罪を犯す目的をもってその予備をした者又は同項
の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者(同条二項)にっいて罰則を定めている。
 二 関税定率法二一条一項三号の規定によるわいせつ表現物の輸入規制が、憲法
二一条に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和五七年(行ッ)第一五六
号同五九年一二月一二日大法廷判決・民集三八巻一二号一三〇八頁)の示すところ
であり、その余の憲法の規定に違反するものでないことも、右大法廷判例の趣旨に
徴し明らかである。
 三 我が国の刑法一七五条がわいせつ表物の単なる所持を処罰の対象としていな
いことにかんがみると、その輸入規制を最小限度のものにとどめ、単なる所持を目
的とする輸入を規制の対象から除外することも考えられなくはない。しかしながら、
わいせつ表現物がいかなる目的で輸入されるかはたやすく識別され難いだけではな
く、流入したわいせつ表現物を頒布、販売の過程に置くことは容易であるから、わ
いせつ表現物の流入、伝播により我が国内における健全な性的風俗が害されること
を実効的に防止するには、その輸入の目的のいかんにかかわらず、その流入を一般
的に、いわば水際で阻止することもやむを得ないというべきであり、このことは、
前記大法廷判決の説示するところである。そして、右のように行政上の規制に必要
性と合理性が認められる以上、その実効性を確保するために、右の規制に違反した
者に対して、それが単なる所持を目的とするか否かにかかわりなく、一律に刑罰を
もって臨むことが、憲法一三条、三一条に違反しないことは、右大法廷例の趣旨に
徴し明らかであるというべきである。
 四 そうすると、これと異なり、関税法一〇九条により、単なる所持を目的とし
た行為まで一律に処罰の対象とするのは、憲法一三条、三一条に違反するとして、
被告人に無罪の言渡しをした原判決は、憲法の解釈を誤り、ひいては関税法一〇九
条の解釈を誤ったものであって、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるか
ら、破棄を免れない。この点に関する上告趣意は理由がある。
 よって、その余の上告趣意に対する判断を省略し、刑訴法四〇五条一号、四一〇
条一項本文により原判決を破棄し、同法四一三条本文に従い、本件を東京高等裁判
所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官石川達紘 公判出席
  平成七年四月一三日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    三   好       達

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