弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役八月に処する。
         理    由
 控訴趣意のうち事実誤認を主張する部分について。
 所論は、要するに、被告人は本件自転車を拾つたもので盗んだものではないか
ら、本件は占有離脱物横領罪<要旨>に該当し窃盗罪は成立しないというのである。
よつて按ずるに、原判決の挙示する証拠並びに原審において適法な証拠調を
経た司法警察員作成の現場確認報告書を総合考察すると、本件被害者Aは昭和三十
六年三月四日夜友人Bと共に原判決の判示するC飲食店において飲酒し、翌五日午
前一時頃相当酩酊して同飲食店を退去したが、その際同店表側に置いてあつた自己
所有の判示自転車をひいてBと共に帰途についたものの、同店西北方約三十米の反
対側道路端附近において些細なことでBと口論し、右Bが先にその場を立去つたの
で、自分も次いでその場を立去り、自転車のないことに気付き交番に行き届け出で
たが、酔つているからその辺にあるのだろうと相手にされなかつたので、結局その
まま帰宅したこと、右Aは、酩酊のため自転車を放置した場所について、C飲食店
前であつたか、Bと口論した前記場所であつたかも失念していたこと、他面被告人
は同午前五時頃前記場所を通りかかり、道路端に倒れている右自転車を発見し、こ
れをひいて同所から約三千米北方のD方前まで行き、偶々起き出ていた同人方家人
に右自転車の所有者の所在を尋ねたところ、附近に交番があるからそこに届け出る
ようすすめられたが、ここで不法領得の意思を生じ、そのままこれに乗り日光方面
に向つたことを認めることができる。そうだとすれば、右自転車は、Aが前記場所
にこれを放置してその場を立去つた際、Aの事実上の支配を離れたものと認めるの
が相当であり、その時から数時間を経て、前記のようにこれを発見拾得し、不法領
得の意思をもつてこれを持ち去つた被告人の前記所為は、占有離脱物横領罪を構成
し、窃盗罪は成立しないのである。してみれば、被告人の窃盗事実を認定した原判
決は事実の認定を誤つたもので、この誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるか
ら、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 なお本件起訴にかかる窃盗の事実と後記認定の占有離脱物横領の事実とはもとよ
り公訴事実を同じくし、かつ、被告人は原審で本件自転車を領得した事実を自認し
て居り、弁護人は控訴趣意において、被告人の所為は占有離脱物横領の罪をもつて
律すべきであると主張して居るので、原審で取調べた証拠により本件公訴事実を占
有離脱物横領の事実と認定したからといつて、被告人の防禦に何ら不利益を来たさ
ないのであるから、更めて訴因変更の手続を経ることなく、当審において直ちに判
決し得るものと解する。
 よつて量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条により
原判決を破棄し、同法第四百条但書により当裁判所において次のとおり自判する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は昭和三十六年三月五日午前五時頃東京都足立区a町b番地C飲食店附近
道路端においてAが同所に遺失した中古自転車一台(時価五千円位相当)を拾得保
管中同所北方約三千米の道路上においてこれが届出をする意思を捨て、これに乗つ
て日光方面に赴いてこれを横領したものである。
 (証拠の標目省略)
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法第二百五十四条に該当するので所定刑中懲役刑を選択
し、その所定刑期範囲内で被告人を懲役八月に処し、原審及び当審の訴訟費用は刑
事訴訟法第百八十一条第一項但書により被告人にこれを負担させないこととし、主
文のとおり判決する。
 (裁判長判事 岩田誠 判事 司波実 判事 小林信次)

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