弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告は之を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人鈴木貢、同小沢秋二の上告理由は別紙記載の通りで之に対する当裁判
所の判断は次の通りである。
 鈴木代理人の上告理由について
 原判決は原審証人A、同B、同C、同D、同Eの各証言を綜合して一宮市が上告
人に対し本件土地の換地を提供すべきことを申出た事実のないこと、本件調停が成
立するに至つたのは上告人に於て一宮市が本件土地の換地を提供すべきものと信じ
たことに基くものでないこと、従て本件調停の成立につき上告人の主張するような
要素の錯誤は存在しないことを認定したものであることは所論の通りであるが原判
決挙示の右各証拠に依れば右の如き認定を為し得ないわけではないと同時に右証人
Eの証言、甲第一号証並本件調停条項等に依てまたこれらの証拠と上敍人証とを綜
合しても必ずしも判示認定と反対の事実を認定しなければならないものでもない。
 又原判決は本件調停条項第五項の意義及びこれと他の条項との関係を審理判断し
た上前記認定事実と相容れない事実はすべて之を排斥した趣旨と解するを相当とす
るから原判決には所論のような違法はなく論旨は畢竟原審の専権に属する事実認定
の当否、証拠の取捨判断を批議するに過ぎないもので上告適法の理由となすに足り
ない。
 小沢代理人の上告理由第一点について
 控訴審に於ける口頭弁論の最初の期日の延期は顕著な事由が存しないときでも当
事者の合意あるときは之を許すべきであるが当事者の合意がないときは顕著な事由
の存する場合でなければならない。
 <要旨>而して右の顕著な事由とは病気其他止むことを得ない事由のため出廷し弁
論をすることが出来ない場合を云い、事実及証拠についての調査が十分に行
はれていないと云う丈では之に該当しないことは民事訴訟法第百五十二条第四項第
五項民事訴訟の継続審理に関する規則第二十四条第二十二条の規定に徴し明かであ
る。本件に於いて原審の第一回口頭弁論期日(昭和二十八年六月十七日)に上告代
理人は出廷し同日受任したばかりであるから事実取調のため右期日の延期を求める
旨申立たところ被上告代理人は事実取調につき充分の期間があつたから右期日延期
の申立に同意出来ない旨述べたので原審は上告代理人の延期中立を却下し弁論を命
じ引続き双方代理人に於て弁論をなし夫々控訴の趣旨、事実上の陳述並証拠の提出
を為した上地に主張並立証なき旨述べたので原審は判決言渡期日を指定して弁論を
終結したことは原審口頭弁論調書の記載に照し明瞭である。然らば上告代理人の期
日延期甲請に対し授上告代理人は同意しないし、受任早々で事実の取調がしたいと
の事由は期日延期のための顕著な事由と云へないこと前記説明の通りであるから原
審が上告人の延期申請を却下したのは正当な訴訟指揮権の範囲に属し毫も違法では
ない、この事は請求異議の訴が所論のような性質を有していても他の訴訟と別異に
取扱うべき理由とはならない。加之上告代理人は右期日に於て事実上の陳述証拠の
提出を為した上他に主張並立証なき旨表明し弁論をしているのであるから同代理人
の弁論は何等制限を受けていないこと明かである、論旨は徒らに原審の適法な職権
の行便を非難するに過ぎないもので採用に値しない。
 同第二点について
 原判決挙示の証人B、同A、同C、同Dの各証言を信用するか否かは事実審裁判
所の自由に決し得るところであつて、右各証人の供述が所論の如く被上告人の供述
と看做され得るものなること、並該各証肩は証拠価値なきものなることの経験法則
又は論理上の法則があるわけではないから右各証言を事実認定の資料となし得ない
ことはない。論旨も亦原審の専権に属する証拠の取捨判断を論難するだけのもので
上告適法の理由ではない。
 仍て本件上告はその理由ないものと認め民事訴訟法第四百一条第八十九条第九十
五条に則り主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 石谷三郎 裁判官 栗田源蔵)

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