弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 本件上告理由は、末尾に添えた書面記載の通りである。
 上告理由一について。
 議会議員の選挙において、選挙権を有しない者の無効投票があつた場合には、そ
の投票が何人のために投ぜられたかは不明なのであるから、すべての候補者につい
て、その者のために投票された可能性があるものとして取扱わなければならない。
そして、それは當選者であると、落選者であるとを問わないこと所論の通りである。
 しかし、かゝる無効投票の可能性は、候補者のいずれか一人について生ずるので
あつて、候補者のすべてについて同時に生ずるものではないから、すべての候補者
の得票数から無効投票数を差引くべしとの所論は、もとより正しくない。そこで、
當選した候補者の一人ひとりについて、無効投票が投ぜられたものと仮定して、そ
の得票数からこれを差引き、しかもその殘余の得票数が最高位落選者の得票数より
多い者は、無効投票によつて當選に影響を受けなかつたものと言うことができるし、
その残余の得票数が最高位落選者の得票数と同数若しくはそれよりも少い者は、無
効投票によつて當選に影響を受けたものと判断し得るわけである。
 そして、このような計算方法によつて當選の有効か無効かを判断すべきことにつ
いては、すでに當裁判所の判決において示したところである(昭和二三年(オ)九
八号同年一二月一八日第二小法廷判決)。原審も右と同じ考え方から「五票の無効
投票を原告等(上告人等)両名の各得票数の中から差引けば次点者谷口与之助の得
票数八七点より少数となる」ものとして、上告人等両名の當選を無効であると判断
したのである。されば、原審の判断には、所論のような不合理はないのであるから
論旨は理由がない。
 同二、三点について。
 原審は、本件訴訟を當選訴訟に當る場合と認めて審判したのであつて、選挙訴訟
に當る場合と認めたものではない。たゞ、本件訴訟を選挙訴訟として取扱つていた
被上告人委員会の裁決が、その結論において「當選の効力に関する問題としての処
置と同一結論に歸着し」ているという理由で、被上告人委員会の裁決を「結局正當
である」として、上告人等両名の請求を棄却したのである。そして、本件のように、
無効投票による當選の無効を主張する訴訟が、選挙訴訟ではなく當選訴訟であるこ
とは、當裁判所がすでに判例として示すところであるから(昭和二三年(オ)八号
同年六月一日第三小法廷判決)、原審の右の判断は正當である。論旨三は本件訴訟
が選挙訴訟ではなく當選訴訟として取扱うべきものであることを主張するものであ
つて、原審と同一の見解に歸するのであるから、原判決を攻撃する理由となるもの
ではなく、また論旨二は、原審が本件訴訟を選挙訴訟ではなく當選訴訟として取扱
うべきものであるとする論拠を地方自治法六七条に求めたその解釋論に矛盾誤解が
あることを主張するものであるか、本件訴訟を當選訴訟と解する点においては、原
審と上告人等とは同一の見解に立つのであるから、これまた、原判決を攻撃する理
由とはならない。
 よつて本件上告を理由ないものと認め、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い主
文の通り判決する。
 以上は當小法廷裁判官全員の一致した意見である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   違

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