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平成22年12月1日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成18年(行ウ)第29号前知事個人秘書業務費返還請求事件
主文
1本件訴えのうち,平成18年度の財団法人岐阜県イベント・スポーツ振興
事業団に対する補助金の概算払の債務の確定及び戻入命令の部分に関する賠
償命令,損害賠償請求及び不当利得返還請求に係る部分を却下する。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,A1,A2及びA3に対し,連帯して1819万7319円(た
だし,790万3476円の限度でA4及び補助参加人と,772万014
6円の限度でA5とそれぞれ連帯して)及びこれに対する平成19年1月2
5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
2被告は,A4及び補助参加人に対し,A1,A2及びA3と連帯して79
0万3476円(ただし,772万0146円の限度でA5と連帯して)及
びこれに対する平成19年1月25日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払うよう請求せよ。
3被告は,A5に対し,A1,A2,A3,A4及び補助参加人と連帯して
772万0146円及びこれに対する平成19年1月25日から支払済みま
で年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
4被告が,第1項ないし第3項の支払を請求することを怠ることは違法であ
ると確認する。
5被告は,A6に対し,790万3476円及びこれに対する平成19年1
月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
6被告は,A7に対し,262万3785円及びこれに対する平成19年1
月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
71項のA2に関する部分に関する予備的請求
被告は,A2に対し,1819万7319円及びこれに対する平成19年
1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。
第2事案の概要
本件は,岐阜県(以下「県」という。)の住民である原告が,同県知事で
ある被告に対し,県の外郭団体である「財団法人岐阜県イベント・スポーツ
振興事業団」(以下「事業団」という。)に派遣された(以下「本件派遣」
という。)県の職員が事業団の理事長の私的用務に秘書として随行しており,
同職員の派遣及び同職員に対する給料等の支出や事業団に対する補助金の支
出は違法である,被告は,県知事,同副知事,県の教育委員会教育長に対し
損害賠償請求を,当時の事業団の会長及び理事長に対し不当利得返還請求又
は損害賠償請求を,上記給与等に係る財務会計行為を専決した職員に対し賠
償命令をすることを怠っているとして,地方自治法242条の2第1項4号
本文に基づき,怠る事実の相手方である県知事,同副知事,県の教育委員会
教育長に対して損害賠償請求を,怠る事実の相手方である当時の事業団の会
長及び理事長に対して不当利得返還請求又は損害賠償請求を,怠る事実の相
手方である上記給与等に係る財務会計行為を専決した職員に対して同法24
3条の2第1項の賠償命令を求めた事案である。
1前提事実
(1)当事者等
ア原告及び選定者らは,いずれも各肩書住所地に居住する岐阜県の住民
である。
イ被告は,岐阜県の執行機関である。
ウ補助参加人は,平成元年2月6日から平成17年2月5日までの間,
岐阜県知事(以下,単に「知事」という。)の職にあった。
補助参加人は,平成17年3月2日から平成18年9月6日までの間,
事業団の会長(以下「会長」という。)の職にあった。
エA1(住所a市b町c−d。)は,平成18年度から知事の職にあ
る。
オA2(住所a市e町f丁目g番地。)は,平成16年4月1日から
平成19年3月末日まで,岐阜県副知事(以下「副知事」という。)の
職にあった。
A2は,平成16年度には事業団理事長(以下「理事長」といい,そ
れぞれの役職として行った行為については,「A2副知事」,「A2理
事長」のようにいう。)を,平成17年度は事業団副会長の職を兼任し
ていた。
カA5(住所岐阜県h市ij−k−l。理事長として行った行為につ
いては,「A5理事長」のようにいう。)は,平成17年度及び同18
年度において,理事長の職にあった。
キA3(住所岐阜県m市no番地p。)は,平成16年4月1日ない
し平成18年11月20日までの間,県教育委員会(以下「教育委員
会」という。)教育長(以下「教育長」といい,同役職として行った行
為については「A3教育長」のようにいう。)の職にあった。
クA6(住所a市qr。)は,平成16年度ないし平成18年度にお
いて,県のスポーツ課長(平成18年4月1日以降は,課名がスポーツ
健康課に変更された。以下「スポーツ課長」といい,同役職として行っ
た行為については「A6スポーツ課長」のようにいう。)の職にあった。
ケA7(住所岐阜県s市tu番地v。)は,平成19年度において,
スポーツ課長の職にあった。
コA4(住所a市wx丁目y番z号。)は,県の職員であり,平成1
2年度まで県の知事部局地域県民部地域計画政策課に所属し,平成13
年度ないし平成15年度には知事公室秘書課に在籍し,平成16年度は
岐阜県事務吏員健康福祉環境部管理室主査(健康)の職に就き,平成1
7年3月2日付けで事業団に派遣され,事業団会長の秘書業務等に従事
した。
サ事業団は,産業・文化・スポーツ等のイベント・コンベンションを積
極的に展開し,世界イベント村ぎふの発展を目指すとともに,県民に広
くスポーツの普及振興を図り,心身ともに健康な県民の育成と明るく豊
かな夢あふれる県土づくりに寄与することを目的として平成18年6月
2日法律第50号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)
34条に基づき設立された教育委員会が所管する財団法人である(事業
団寄付行為(以下「寄付行為」という。)3条)。
同事業団の寄付行為には,次の定めがある。(乙1の1・2)
(ア)4条
この法人は,前条の目的を達成するため,次の事業を行う。
(1)産業・文化・スポーツ等のイベント・コンベンションの誘致・開

(2)生涯スポーツの振興及び競技力の向上に関する事業の実施
(3)(1)及び(2)の事業の推進に関する情報の収集及び提供
(4)岐阜メモリアルセンター等の県から委託された施設の管理運営
(5)関係機関及び関係団体の事業への協力
(6)その他前条の目的を達成するために必要な事業
(イ)15条
この法人に,次の役員を置く。
(1)会長1人
(2)副会長1人
(3)理事長1人
((4)以下略)
(ウ)17条
会長は,この法人の業務を総理する。
(次項以下略)
(エ)平成17年2月23日付寄付行為変更前の16条2項
会長は,岐阜県知事の職にある者をもって充てる。
(オ)16条1項
会長,副会長,理事及び監事は,理事会において選任する。
(2)本件派遣の経緯
ア教育委員会委員長A8と事業団理事長A9(以下「A9理事長」とい
う。)は,平成14年2月12日,公益法人等への一般職の地方公務員
の派遣等に関する法律(以下「派遣法」という。)及び岐阜県公益法人
等への職員の派遣等に関する条例(以下「派遣条例」という。)に基づ
き,教育委員会の職員を事業団に派遣することに関して,「職員派遣に
関する取り決め書」(以下「取決め書」という。)を作成し,次のとお
り合意した。(乙4)
(ア)1条(派遣職員及び派遣期間)
1この取り決めにより教育委員会が事業団に派遣する職員(以下
「派遣職員」という。)は,教育委員会が派遣職員の同意を得て別
に定める。
2略
(イ)3条(派遣職員が従事すべき業務)
派遣職員が従事すべき事業団の業務は,次に掲げるとおりとする。
一産業・文化・スポーツ等のイベント・コンベンションの誘致及び
開催
二生涯スポーツの振興及び競技力の向上に関する事業の実施
三一及び二の事業の推進に関する情報の収集及び提供
四岐阜メモリアルセンター等の県から委託された施設の管理運営
五県から委託された各種スポーツに関する事業の実施
(ウ)4条(報酬)
1教育委員会は,派遣期間中の派遣職員に対し,次に掲げる給与
(勤務条件条例の規定による給与をいう。)の100分の100を
支給する。
一給料
二扶養手当,調整手当(給料及び扶養手当に係るものに限る),
住居手当,期末手当及び寒冷地手当
2事業団は,派遣期間中の派遣職員に対し,前項各号に規定するも
の以外の給与に相当する報酬を支給しなければならない。
3事業団は,前項の規定により支給する報酬の総額を,前2項の規
定により支給される給与及び報酬の総額が,派遣職員が派遣期間中
教育委員会の職務に従事したものとした場合における給与(勤務条
件条例に規定する給与をいう。)の総額を下回らない額にしなけれ
ばならない。
(エ)6条(旅費)
1事業団は,派遣職員に対して旅行を命じた場合は,派遣職員に対
し,旅費の支給その他の所要の費用弁償をしなければならない。
2前項の費用弁償の額は,派遣職員が公務のため旅行したものとし
た場合における旅費(岐阜県職員等旅費条例(昭和32年岐阜県条
例第30号)の規定による旅費をいう。)の額を下回ってはならな
い。
イA4は,岐阜県事務吏員健康福祉環境部管理室主査(健康)の職にあ
ったが,平成17年2月28日,岐阜県知事に対し,派遣法2条1項及
び取決め書に基づき,同年3月2日から平成20年3月1日まで事業団
に派遣されることに同意する旨の同意書を提出した。(乙5)
ウ岐阜県経営管理部長は,平成17年2月28日,同年3月2日付けで,
A4を教育委員会事務局への出向を命ずる専決をした。(乙6の1,乙
15)
エA3教育長は,平成17年3月2日,A4を教育委員会事務局事務職
員に任命し,同事務局スポーツ課主査に補し,同日から平成20年3月
1日まで,派遣法2条1項に基づき事業団へ派遣する旨の専決をした。
(乙6の2,乙13)
オA4は,事業団において,総務企画課の課長補佐兼総務企画係長の職
に就き,下記の事務を分掌した。(乙3の1)
(ア)主任
a理事会の運営に関すること
b寄付行為及び諸規定に関すること
c全国健康スポーツ振興関係団体連絡協議会に関すること
d役員の秘書業務に関すること
e他に属さない事務に関すること
(イ)副主任
a課の総括に関すること
b職員の任免,服務その他人事に関すること
c公印に関すること
d幹部会議に関すること
e視察の案内に関すること
f他課との連絡調整に関すること
(3)財務会計行為について
アA4に対する給料,扶養手当,地域手当(調整手当),住居手当,期
末手当,共済費事業主負担分,児童手当拠出金,労災保険料,教職員互
助組合負担金(以下「給与等」という。)の支出について(乙4,7,
9,15,16,弁論の全趣旨)
(ア)県の知事部局情報システム課長は,平成16年度及び平成17年
度において,A4に対する給与等(但し,教職員互助組合負担金は,
平成17年3月支払分のみ。)として,別紙1「A4に対する給与等
の支出一覧表」の【平成16年度】及び【平成17年度】と記載され
た表の「給与等」「岐阜県支給額」欄のうち「支給総額」欄記載の金
額(但し,給料と手当等の内訳は,「支給内訳」欄記載のとおり)及
び「共済費等事業主負担分」欄のうち「県」欄記載の金額について各
支給日に先立ち,A4に対する支出命令を専決した。
(イ)県の知事部局情報企画課長は,平成18年度のうち同年9月30
日までの間において,A4に対する給与等(但し,教職員互助組合負
担金を除く。)として,別紙1の【平成18年度】と記載された表の
「給与等」「岐阜県支給額」欄のうち「支給総額」欄記載の金額(但
し,給料と手当等の内訳は,「支給内訳」欄記載のとおり)について
各支給日に先立ち,A4に対する支出命令を専決した。
イ補助金について
(ア)平成16年度(乙19の1∼8)
aA9理事長は,平成16年4月1日付けで,岐阜県知事であった
補助参加人に対し,事業団の平成16年度事業計画書,同日現在の
事業団の組織図及び本件補助金対象事業分の同年度収支予算書を添
えて,平成16年度岐阜県保健体育等振興補助金(イベント・スポ
ーツ振興事業団運営事業)(以下,「本件補助金」といい,年度ご
とに,「平成16年度本件補助金」のようにいう。)として3億1
455万6000円の交付を申請した。
上記組織図によれば,平成16年4月1日における事業団事務局
に対する県からの派遣職員は19名であった。
平成16年度収支予算書には,平成16年度の事業団の補助金財
源内訳が記載されており,これによると,財団運営管理費(以下,
単に「管理費」といい,管理費の中には,人件費(賃金を除く),
人件費(賃金),理事会費及び事務局運営費)が含まれる。)の平
成16年度予算額は次のとおりである。なお,括弧内に記載された
金額が平成16年度補助金を財源とする額である。
(a)管理費総額
3億1323万6000円(3億0219万6000円)
(b)人件費(賃金を除く)
2億9049万円(2億8777万6000円)
(内訳の一部)
職員手当8012万9000円
共済費5019万4000円
(c)事務局運営費
567万6000円(514万3000円)
(内訳の一部)
旅費交通費55万円
燃料費25万円
通信費13万円
b岐阜県知事であった補助参加人は,平成16年4月1日,上記交
付申請の内容を適正と認め,上記金額の平成16年度本件補助金を,
事業団に対して概算払の方法により交付することを決定した。
cA6スポーツ課長は,平成16年4月1日,事業団を債権者とし
て,上記金額の平成16年度本件補助金の支出負担行為を専決した。
dA6スポーツ課長は,平成16年4月26日,5月18日,6月
17日,7月16日,8月12日,9月21日,10月14日,1
1月17日,12月13日,平成17年1月13日及び2月18日
において,事業団に対する平成16年度本件補助金の概算払として
それぞれ2621万3000円の支出命令を専決した。
eA2理事長は,平成17年2月25日付けで,A1知事に対し,
平成16年度の事業団の収入見込額及び支出見込額に変更があった
として,変更に係る収入見込額及び支出見込額の内訳が記載された
平成16年度収支予算書(県補助対象分)を添え,平成16年度本
件補助金の交付申請額を2219万9000円減額する旨の変更申
請をした。
上記収支予算書によれば,管理費の平成16年度決算見込額は次
のとおりである。なお,括弧内に記載された金額が平成16年度補
助金を財源とする額である。
(a)管理費総額
2億9245万1000円(2億8191万5000円)
(b)人件費(賃金を除く)
2億7066万9000円(2億6740万7000円)
(内訳の一部)
通勤手当(派遣職員分含む)612万3484円
単身赴任手当(派遣職員分含む)59万5000円
時間外手当(派遣職員分含む)1295万9229円
管理職手当(派遣職員分含む)635万0280円
勤勉手当(派遣職員)1998万4283円
派遣職員分の共済費2490万4297円
(c)事務局運営費
526万円(523万1000円)
(内訳の一部)
旅費交通費(業務旅費,研修旅費等,赴任旅費)105万円
燃料費(公用車燃料)25万円
通信運搬費(切手等)9万円
fA2副知事及び副知事であったA10(以下「A10副知事」と
いう。)は,平成17年3月14日,上記変更申請の内容を審査し
た結果適当と認められるとして,事業団に対する平成16年度本件
補助金額を上記変更申請額分減額する旨の変更交付決定を専決した。
gA6スポーツ課長は,平成17年3月14日,事業団を債権者と
する,平成16年度本件補助金の支出負担額を2219万9000
円減額する旨の支出負担行為を専決した。
hA6スポーツ課長は,平成17年3月16日,事業団に対する平
成16年度本件補助金の概算払として401万4000円の支出命
令を専決した。
iA5理事長は,平成17年4月8日付けで,A1知事に対し,事
業実績報告書及び事業収支決算書を添えて,平成16年度本件補助
金に係る実績報告をした。(以下「平成16年度実績報告」とい
う。)
上記決算書によれば,管理費の平成16年度決算額は次のとおり
である。なお,括弧内に記載された金額が平成16年度補助金を財
源とする額である。
(a)管理費総額
2億8988万3405円(2億7933万2430円)
(b)人件費
2億8523万3203円(2億7472万6203円)
(内訳の一部)
職員手当7390万7060円
共済費5014万9630円
(c)事務局運営費
460万9192円(456万5217円)
(内訳の一部)
旅費交通費102万0850円
燃料費26万1433円
通信運搬費9万6690円
jA2副知事及び副知事であったA10副知事は,平成17年4月
28日,A5理事長による平成16年度実績報告を適正と認めて,
概算払の方法により支出した事業団に対する平成16年度本件補助
金額を2億8816万7448円に確定する旨の専決をした。
kA6スポーツ課長は,平成17年4月28日,事業団に対し,平
成16年度本件補助金額の確定に伴い,同年5月17日を納期限と
して合計418万9552円を県に戻し入れる旨の戻入命令を専決
した。
(イ)平成17年度(乙20の1∼8)
aA5理事長は,平成17年4月1日付けで,A1知事に対し,事
業団の平成17年度事業計画書,同日現在の事業団の組織図及び本
件補助金対象事業分の同年度収支予算書を添えて,平成17年度本
件補助金として3億0709万3000円の交付を申請した。
上記組織図によれば,平成17年4月1日における事業団事務局
に対する県からの派遣職員は19名であった。
平成17年度収支予算書には,平成17年度の事業団の補助金財
源内訳が記載されており,これによると,管理費の平成17年度予
算額は次のとおりである。なお,括弧内に記載された金額が平成1
7年度補助金を財源とする額である。
(a)管理費総額
3億0885万円(2億9895万7000円)
(b)人件費(賃金を除く)
2億8623万円(左記同額)
(内訳の一部)
職員手当7768万9000円
共済費5149万円
(c)事務局運営費
527万6000円(527万3000円)
(内訳の一部)
旅費交通費123万円
燃料費25万円
通信費13万円
bA1知事は,平成17年4月1日,上記交付申請の内容を適正と
認め,上記金額の平成17年度本件補助金を,事業団に対して概算
払の方法により交付することを決定した。
cA6スポーツ課長は,平成17年4月1日,事業団を債権者とし
て,上記金額の平成17年度本件補助金の支出負担行為を専決した。
dA6スポーツ課長は,平成17年4月20日,5月2日,6月1
7日,7月19日,8月18日,9月14日,10月14日,11
月16日,12月16日,平成18年1月17日及び2月22日に
おいて,事業団に対する平成17年度本件補助金の概算払としてそ
れぞれ2580万円の支出命令を専決した。
eA5理事長は,平成18年2月19日付けで,A1知事に対し,
平成17年度の事業団の収入見込額及び支出見込額に変更があった
として,変更に係る収入見込額及び支出見込額の内訳が記載された
平成17年度収支予算書(県補助対象分)を添え,平成17年度本
件補助金の交付申請額を1384万5000円減額する旨の変更申
請をした。
上記収支予算書によれば,管理費の平成17年度決算見込額は次
のとおりである。なお,括弧内に記載された金額が平成17年度補
助金を財源とする額である。
(a)管理費総額
2億9593万7000円(2億8634万4000円)
(b)人件費(賃金を除く)
2億7223万5000円(左記同額)
(内訳の一部)
通勤手当(派遣職員分含む)631万0916円
単身赴任手当(派遣職員分含む)62万4000円
時間外手当(派遣職員分含む)1718万円
管理職手当(派遣職員分含む)557万8280円
勤勉手当(派遣職員)1865万4164円
派遣職員分の共済費2521万6000円
(c)事務局運営費
665万8000円(665万5000円)
(内訳の一部)
旅費交通費(業務旅費,研修旅費等,赴任旅費)240万円
燃料費(公用車燃料)35万円
通信運搬費(切手等)21万円
fA2副知事及びA10副知事は,平成18年3月1日,上記変更
申請の内容を審査した結果適当と認められるとして,事業団に対す
る平成17年度本件補助金額を上記変更申請額分減額する旨の変更
交付決定を専決した。
gA6スポーツ課長は,平成18年3月1日,事業団を債権者とす
る,平成17年度本件補助金の支出負担額を2219万9000円
減額する旨の支出負担行為を専決した。
hA6スポーツ課長は,平成18年3月24日,事業団に対する平
成17年度本件補助金の概算払として944万8000円の支出命
令を専決した。
iA5理事長は,平成18年4月10日付けで,A1知事に対し,
事業実績報告書及び事業収支決算書を添えて,平成17年度本件補
助金に係る実績報告をした。(以下「平成17年度実績報告」とい
う。)
上記決算書によれば,管理費の平成17年度決算額は次のとおり
である。なお,括弧内に記載された金額が平成17年度補助金を財
源とする額である。
(a)管理費総額
2億8580万5296円(2億7598万5039円)
(b)人件費(賃金職員分除く)
2億6404万5718円(左記同額)
(内訳の一部)
職員手当7580万0572円
共済費4884万9481円
(c)事務局運営費
551万2232円(544万6029円)
(内訳の一部)
旅費交通費214万1964円
燃料費33万8472円
通信運搬費20万8881円
jA2副知事及びA10副知事は,平成18年4月26日,概算払
の方法により支出した事業団に対する平成17年度本件補助金を2
億8185万6046円に確定する旨の専決をした。
kA6スポーツ課長は,平成18年4月26日,事業団に対し,平
成17年度本件補助金額の確定に伴い,同年5月25日を納期限と
して1139万1954円を県に戻し入れる旨の戻入命令を専決し
た。
(ウ)平成18年度(乙21の1∼8)
aA5理事長は,平成18年4月1日付けで,A1知事に対し,事
業団の平成18年度事業計画書及び本件補助金対象事業分の同年度
収支予算書を添えて,平成17年度本件補助金として2億5258
万2000円の交付を申請した。
上記予算書によれば,平成18年4月1日現在における県から事
業団に対する派遣職員は22名である。
平成18年度収支予算書には,平成18年度の事業団の補助金財
源内訳が記載されており,これによると,管理費の平成18年度予
算額は次のとおりである。なお,括弧内に記載された金額が平成1
8年度補助金を財源とする額である。
(a)管理費総額
2億5811万6000円(2億4852万3000円)
(b)人件費(賃金を除く)
2億3527万5000円(左記同額)
(内訳の一部)
職員手当6500万1000円
共済費4175万1000円
(c)事務局運営費
613万円(612万7000円)
(内訳の一部)
旅費交通費222万円
燃料費325万円
通信費15万円
bA2副知事及びA10副知事は,平成18年4月1日,上記交付
申請の内容を適正と認め,上記金額の平成18年度本件補助金を,
事業団に対して概算払の方法により交付することを決定する専決を
した。
cA6スポーツ課長は,平成18年4月1日,事業団を債権者とし
て,上記金額の平成17年度本件補助金の支出負担行為を専決した。
dA6スポーツ課長は,平成18年4月14日,5月2日,6月1
2日,7月13日,8月7日,9月12日,10月13日,11月
17日,12月14日,平成19年1月10日及び2月6日におい
て,事業団に対する平成17年度本件補助金の概算払としてそれぞ
れ2100万円の支出命令を専決した。
eA5理事長は,平成19年2月16日付けで,平成18年度の事
業団の収入見込額及び支出見込額に変更があったとして,平成18
年度本件補助金の交付申請額を538万2000円減額する旨の変
更申請をした。
fA2副知事は,平成19年3月1日,事業団に対する平成18年
度本件補助金額を上記金額分減額する旨の変更交付決定を専決した。
gA6スポーツ課長は,平成19年3月1日,事業団を債権者とす
る,平成18年度本件補助金の支出負担額を538万2000円減
額する旨の支出負担行為を専決した。
hA6スポーツ課長は,平成19年3月13日,事業団に対する平
成18年度本件補助金の概算払として1620万円の支出命令を専
決した。
iA5理事長は,平成19年4月10日付けで,A1知事に対し,
事業実績報告書及び事業収支決算書を添えて,平成18年度本件補
助金に係る実績報告をした。(以下「平成18年度実績報告」とい
う。)
上記決算書によれば,管理費の平成18年度決算額は次のとおり
である。なお,括弧内に記載された金額が平成18年度補助金を財
源とする額である。
(a)管理費総額
2億8580万5296円(2億7598万5039円)
(b)人件費(賃金職員分除く)
2億6404万5718円(左記同額)
(内訳の一部)
職員手当7580万0572円
共済費4884万9481円
(c)事務局運営費
551万2232円(544万6029円)
(内訳の一部)
旅費交通費214万1964円
燃料費33万8472円
通信運搬費20万8881円
jA2副知事及び副知事であったA11は,平成19年4月27日,
A5理事長による平成18年度実績報告を適正と認めて,概算払の
方法により支出した事業団に対する平成18年度本件補助金額を2
億3922万0701円に確定する旨の専決をした。
kA7スポーツ課長は,平成19年4月27日,事業団に対し,平
成18年度本件補助金額の確定に伴い,同年5月25日を納期限と
して797万9299円を県に戻し入れる旨の戻入命令を専決した。
ウ事業団のA4に対する手当等及び出張旅費等の支出の経緯
(ア)A4は,別紙4「A4の補助参加人の出張随行一覧表」の「年月
日」欄の各日に先立ち,それぞれ事業団総務経理課長から「会長秘書
用務」として旅行命令を受け,同別紙の「用務先」,「用務内容」,
「出張先」各欄のとおり出張をした(以下「本件各出張」という。)。
(イ)A4は,本件各出張の前又は後に,旅費(鉄道賃,旅行諸費及び
宿泊料)の請求をし,その支払を受けた。(乙22の1∼54)
(ウ)A4が本件出張に使用した事業団が保有する公用車のガソリン代
は,事業団が保有する他の自動車の分のガソリン代と合算して,B協
同組合より各月毎に請求がされ,事務局運営費又はメモリアルセンタ
ー管理費として同協同組合に対して支払われた。(乙23の1∼2
0)
(エ)A4が従事した業務に使用する携帯電話の使用料は,各月毎に,
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ東海から請求を受け,事務局運営
費として同社に支払われた。(乙24の1∼20)
(オ)A4の本件出張に伴い生じた有料道路使用料のうち,ハイウェイ
カード使用分は,イベント誘致費又は事務局管理費として株式会社C
に対しハイウェイカード代金として支払われた。(乙25の1∼5)
(カ)同有料道路使用料のうち,ETC利用分は,各月毎に株式会社十
六ディーシーカードから請求を受け,同社に支払われた。(乙25の
1∼16)
(キ)同有料道路使用料のうち,職員により立替払をした分は,それぞ
れ立替払をした日の前又は後に立替払をした職員から立替金の請求が
なされ,それぞれ立替払をした職員に対し実費が支払われた。(乙2
5の17∼25)
(4)本訴に至る経緯
ア平成18年9月20日,21日に,本件派遣に関しての新聞報道がな
された。(甲2の1・2)
イ原告ほか28名(以下「原告ら」という。)は,平成18年10月2
日,地方自治法242条1項に基づき,岐阜県監査委員に対し,次の措
置を講ずるよう請求した(以下「本件監査請求」という。甲1)。
(ア)補助参加人に対して,平成17年3月から平成18年8月までの
期間(以下「本件期間」という。)に補助参加人の出張に随行した職
員らに支給した随行の旅費,日当等の諸経費のすべて及び支給した給
与,諸手当の9割を不当利得返還請求又は損害賠償請求すること。
(イ)上記(ア)の請求をしない場合,県知事ら関係職員に対して上記同
額の賠償請求すること。
ウ岐阜県監査委員は,平成18年11月30日付けで,原告らが監査請
求の対象とする平成17年3月から同年10月1日までの期間における
財務会計上の行為については監査請求期間を徒過しており,徒過したこ
とにつき正当な理由もないため不適法であるとして却下し,同年10月
2日以降の財務会計行為に係る請求に関しては,事業団への補助金の支
出及び随行職員への給与等の支払はいずれも違法性,不当性が認められ
ないとして,本件監査請求を棄却した(甲1)。
エ原告は,平成18年10月2日,本訴を提起した。(顕著な事実)
2関連法令等
(1)派遣法(但し,平成22年3月31日法律第19号による改正前のも
の)
1条(目的)
この法律は,地方公共団体が人的援助を行うことが必要と認められ
る公益的法人等の業務に専ら従事させるために職員(地方公務員法
(昭和25年法律第261号)第4条第1項に規定する職員をいう。
第7条を除き,以下同じ。)を派遣する制度等を整備することにより,
公益的法人等の業務の円滑な実施の確保等を通じて,地域の振興,住
民の生活の向上等に関する地方公共団体の諸施策の推進を図り,もっ
て公共の福祉の増進に資することを目的とする。
2条(職員の派遣)
1項任命権者(地方公務員法第6条第1項に規定する任命権者及び
その委任を受けた者をいう。以下同じ。)は,次に掲げる団体
(以下この項及び第3項において「公益的法人等」という。)の
うち,その業務の全部又は一部が当該地方公共団体の事務又は事
業と密接な関連を有するものであり,かつ,当該地方公共団体が
その施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるもの
として条例で定めるものとの間の取決めに基づき,当該公益的法
人等の業務にその役職員として専ら従事させるため,条例で定め
るところにより,職員(条例で定める職員を除く。)を派遣する
ことができる。
一民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設
立された法人
二以下略
2項任命権者は,前項の規定による職員の派遣(以下「職員派遣」
という。)の実施に当たっては,あらかじめ,当該職員に同項の
取決めの内容を明示し,その同意を得なければならない。
3項第1項の取決めにおいては,当該職員派遣に係る職員の職員派
遣を受ける公益的法人等(以下「派遣先団体」という。)におけ
る報酬その他の勤務条件及び当該派遣先団体において従事すべき
業務,当該職員の職員派遣の期間,当該職員の職務への復帰に関
する事項その他職員派遣に当たって合意しておくべきものとして
条例で定める事項を定めるものとする。
4項前項の規定により第1項の取決めで定める職員派遣に係る職員
の派遣先団体において従事すべき業務は,当該派遣先団体の主た
る業務が地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認
められる業務である場合を除き,地方公共団体の事務又は事業と
密接な関連を有すると認められる業務を主たる内容とするもので
なければならない。
4条(派遣先団体の業務への従事等)
1項派遣職員は,その職員派遣の期間中,第2条第1項の取決めに
定められた内容に従って,派遣先団体の業務に従事するものとす
る。
2項派遣職員は,その職員派遣の期間中,職員派遣された時就いて
いた職又は職員派遣の期間中に異動した職を保有するが,職務に
従事しない。
6条(派遣職員の給与)
1項派遣職員には,その職員派遣の期間中,給与を支給しない。
2項派遣職員が派遣先団体において従事する業務が地方公共団体の
委託を受けて行う業務,地方公共団体と共同して行う業務若しく
は地方公共団体の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると
認められる業務であってその実施により地方公共団体の事務若し
くは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められる
ものである場合又はこれらの業務が派遣先団体の主たる業務であ
る場合には,地方公共団体は,前項の規定にかかわらず,派遣職
員に対して,その職員派遣の期間中,条例で定めるところにより,
給与を支給することができる。
7条(派遣職員に関する地方公務員等共済組合法の特例)
1項派遣職員に対する地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第
152号)の規定の適用については,派遣先団体の業務を公務と
みなす。
2項派遣職員は,地方公務員等共済組合法第39条第3項の規定に
かかわらず,引き続き職員派遣をされた日の前日において所属し
ていた地方公務員共済組合(同法第3条第1項に規定する地方公
務員共済組合をいう。)の組合員であるものとする。
3項派遣職員に関する地方公務員等共済組合法の規定の適用につい
ては,同法第4章及び第6章中「給料」とあるのは「組合の運営
規則で定める仮定給料」と,「期末手当等」とあるのは「組合の
運営規則で定める仮定期末手当等」と,同法第113条第2項各
号列記以外の部分中「地方公共団体(市町村立学校職員給与負担
法(昭和23年法律第135号)第1条又は第2条の規定により
都道府県がその給与を負担する者にあつては,都道府県。以下こ
の条において同じ。)の負担金」とあるのは「公益的法人等への
一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成12年法律第5
0号)第2条第3項に規定する派遣先団体(以下「派遣先団体」
という。)の負担金」と,同項各号中「地方公共団体の負担金」
とあるのは「派遣先団体の負担金」と,同法第116条第1項中
「地方公共団体の機関,特定地方独立行政法人又は職員団体」と
あり,及び「地方公共団体,特定地方独立行政法人又は職員団
体」とあるのは「派遣先団体」と,「第113条第2項(同条第
5項から第7項までの規定により読み替えて適用する場合を含
む。)及び第4項」とあるのは「第113条第2項」とする。
8条(派遣職員に関する児童手当法の特例)
派遣職員に関する児童手当法(昭和46年法律第73号)の規定の
適用については,派遣先団体を同法第20条第1項第4号(ママ)に
規定する団体とみなす。
(2)派遣条例(同条例において「法」とは派遣法のことをいう。乙9)
2条(公益的法人等への派遣)
1項任命権者は,法第2条第1項の規定により,次の各号のいずれ
かに該当する公益的法人等(同項の公益的法人等をいう。以下同
じ。)として人事委員会規則で定めるものに職員を派遣すること
ができる。
一岐阜県が基本金又はこれに準ずるもの(括弧内略)の二分の
一以上を出資している公益的法人等
二以下略
2項略
3項法第2条第3項の規定により職員派遣に当たって合意しておく
べきものとして条例で定める事項は,次に掲げるとおりとする。
一派遣先団体における派遣職員の福利厚生に関する事項
二派遣先団体における派遣職員の業務の従事の状況の連絡に関
する事項
4条(派遣職員の給与)
1項派遣職員(括弧内略)のうち法第6条第2項に規定する場合に
該当するものには,当該職員派遣の期間中,給料,扶養手当,地
域手当,住居手当,期末手当及び寒冷地手当のそれぞれ百分の百
以内を支給することができる。
2項略
(3)岐阜県人事委員会の定める岐阜県公益的法人等への職員の派遣等に関す
る条例施行規則(以下「派遣条例施行規則」という。同規則において「条
例」とは派遣条例をいう。乙10)
2条(職員派遣をすることができる公益的法人等)
条例第2条第1項各号のいずれかに該当する公益的法人等として人
事委員会規則で定めるものは,別表第1に掲げるとおりとする。
別表第1
条例第2条第1項第1号に該当する公益法人等
財団法人岐阜県イベント・スポーツ振興事業団ほか略
(4)地方自治法
232条の2(寄附又は補助)
普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は
補助をすることができる。
(5)岐阜県補助金等交付規則(以下「交付規則」という。乙11)
1条(目的)
この規則は,法令,条例及び他の規則に特別の定めのあるもののほ
か,補助金等の交付の申請,決定等に関する事項その他補助金等に係
る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより,補助金等に
係る予算の執行の適正化を図ることを目的とする。
2条(定義)
1項この規則において「補助金等」とは,県が県以外の者に対して
交付する次に掲げるものをいう。
一補助金
二以下略
2項この規則において「補助事業等」とは,補助金等の交付の対象
となる事務又は事業をいう。
3項この規則において「補助事業者等」とは,補助事業等を行う者
をいう。
4項ないし6項略
3条(補助事業者等及び間接補助事業者等の責務)
補助事業者等及び間接補助事業者等は,補助金等が税金その他の貴
重な財源で賄われるものであることに留意し,法令,条例又は規則
(以下「法令等」という。)の定め及び補助金等又は間接補助金等の
交付の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うよう
に努めなければならない。
4条(補助金等の交付の申請)
補助金等の交付の申請をしようとする者は,知事の定めるところに
より,申請書に関係書類を添えて,知事に提出しなければならない。
5条(補助金等の交付の決定)
1項知事は,補助金等の交付の申請があつたときは,当該申請に係
る書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により,その内容
を調査し,当該申請に係る補助金等を交付すべきものと認めたと
きは,速やかに補助金等の交付の決定をするものとする。
2項略
10条(補助事業等及び間接補助事業等の遂行)
1項補助事業者等は,法令等の定め並びに補助金等の交付の決定の
内容及びこれに付けた条件その他法令等に基づく知事の処分に従
い,善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければなら
ず,補助金等の他の用途への使用をしてはならない。
2項略
11条(状況報告)
補助事業者等は,知事の定めるところにより,補助事業等の遂行の
状況を知事に報告しなければならない。
13条(実績報告)
補助事業者等は,知事の定めるところにより,補助事業等が完了し
たとき(補助事業等の廃止の承認を受けたときを含む。)は,補助事
業等の成果を記載した実績報告書に必要な書類を添えて知事に報告し
なければならない。補助金等の交付の決定に係る県の会計年度が終了
した場合も,同様とする。
14条(補助金等の額の確定等)
知事は,補助事業等の完了又は廃止に係る補助事業等の成果の報告
を受けた場合においては,報告書等の書類の審査及び必要に応じて行
う現地調査等により,その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の
交付の決定の内容及びこれに付けた条件に適合するものであるかどう
かを調査し,適合すると認めたときは,交付すべき補助金等の額を確
定し,当該補助事業者等に通知するものとする。
16条(補助金等の交付)
知事は,原則として,第14条の規定による補助金等の額の確定後
において補助金等を交付するものとする。
17条(決定の取消し)
1項知事は,補助事業者等が補助金等を他の用途に使用し,その他
補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付け
た条件その他法令等又はこれに基づく知事の処分に違反したとき
は,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができ
る。
2項略
3項前2項の規定は,補助事業等について交付すべき補助金等の額
の確定があつた後においても適用があるものとする。
4項第7条の規定は,第1項又は第2項の規定による取消しをした
場合について準用する。
18条(補助金等の返還)
1項知事は,補助金等の交付の決定を取り消した場合において,補
助事業等の当該取消しに係る部分に関し,既に補助金等が交付さ
れているときは,期限を定めて,その返還を命ずるものとする。
2項知事は,補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場
合において,既にその額を超える本件補助金等が交付されている
ときは,期限を定めて,その返還を命ずるものとする。
(6)岐阜県保健体育等振興補助金交付要綱(以下「交付要綱」という。乙1
9の1,乙20の1,乙21の1)
1条
県は,保健,体育及び給食の普及並びに振興を図るため,関係団体
が行う事業に要する経費に対し,予算の範囲内で補助金を交付するも
のとし,その交付に関しては,交付規則(括弧内省略)に定めるもの
のほか,この要綱に定めるところによる。
2条
補助対象事業は次に掲げるものとする。
一ないし十七略
十八イベント・スポーツ振興事業団運営事業
十九以下略
6条(状況報告)
規則第11条の規定により,補助事業者は,知事の要求があったと
きは,別記第4号様式による事業遂行状況報告書を作成し,知事に提
出しなければならない。
7条(実績報告)
1項規則第13条の規定による実績報告書及びその添付書類の様式
は,別記第5号様式のとおりとする。ただし,これによることの
できないものは別にこれを定める。
2項前項の実績報告書の提出期限は,補助事業が完了した費から起
算して30日を経過した日又は翌年度の4月10日のいずれか早い
日までとする。
8条(交付の方法)
次に掲げる事業に係る補助金は,前金払又は概算払をすることがで
きる。
一ないし十三略
十四イベント・スポーツ振興事業団運営事業
十五以下略
(7)岐阜県保険体育等振興補助金(イベント・スポーツ振興事業団運営事
業)交付要領(以下「交付要領」という。乙19の1,乙20の1,乙2
1の1)
2条(目的)
岐阜県における産業,文化,スポーツの振興の中核施設となる「岐
阜メモリアルセンター」の施設管理,運営を行う事業団の運営に要す
る経費を補助することにより,法人運営の円滑化を図り,本県の産業,
文化,スポーツの振興と県活性化を図る。
3条(補助対象事業)
補助の対象となる事業団の運営に係る経費とは次の各号をいう。
(1)人件費
(2)会議費
(3)法人運営費
(4)法人事業費
(5)配置事業費
4条(補助対象経費)
補助の対象となる経費は,前条に掲げる事業に要する次の経費とす
る。
共済費,福利厚生費,賃金,報酬,給料,プロパー退職手当積立金,
手当,会議費,報償費,旅費,消耗品費,役務費,通信運搬費,備品
購入費,使用料及び賃借料,予備費,その他事業の実施に直接必要な
経費
(8)岐阜県職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関する条例(以下「勤
務条件条例」という。)
3条(給料)
給料は,第31条から第34条までに規定する勤務時間(以下「正
規の勤務時間」という。)による勤務に対する報酬であつてこの条例
に定める管理職手当,初任給調整手当,扶養手当,地域手当,住居手
当,通勤手当,単身赴任手当,時間外勤務手当,休日勤務手当,夜間
勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,特殊勤務手当,特地
勤務手当(括弧内略),へき地手当(括弧内略),寒冷地手当,産業
教育手当,定時制通信教育手当,農林漁業普及指導手当,災害派遣手
当,武力攻撃災害等派遣手当,義務教育等教員特別手当,期末手当,
勤勉手当及び退職手当を除いたものとする。
3原告の主張
(1)補助参加人,A1,A2,A3及びA4(以下「補助参加人ら」とい
う。)の共同不法行為について
ア本件派遣は,①補助参加人が平成17年2月の知事職退任間近のころ
に「会長秘書をよこせ」と要求したこと,②A1知事の周辺者から,補
助参加人に秘書を提供しようとの意図が示されたことで,県幹部や県の
人事関係者らが画策したことの双方又はいずれかの結果として,補助参
加人の知事職在職当時の県秘書課職員の一人であるA4を,本人の同意
及び事業団幹部の了承の上で行われたものであり,補助参加人らが相通
じて,補助参加人の個人秘書業務に従事させる目的で,教育委員会を通
じてした迂回人事であって,派遣法1条及び地方公務員法35条に違背
する違法な県職員派遣である。
イA4が,かつて県の知事公室秘書課に在籍していたこと,健康福祉環
境部管理室に異動してから本件派遣までの期間が1年に満たないこと,
平成17年3月から平成18年9月5日までの間のA4の勤務可能日数
は土日祝日を除いた370日程度であるところ,別紙2のとおり,A4
は,同期間中計281回にわたり補助参加人の私的用務に随行したこと
からすれば,事前準備や調整,事後の用務の存在等を考えれば,その勤
務時間のほとんどにおいて補助参加人の私的用務の秘書業務に従事して
いたというほかない。
このことからも,本件派遣が補助参加人らの上記違法目的によってな
されたものであるといえる。
ウ県は,補助参加人らの上記行為により,県が本件派遣後にA4に対し
て支給した給与等相当額,並びに,事業団に対して交付した本件補助金
のうち,A4に対する諸手当等(勤務条件条例の定める諸手当のうち取
決め書4条1項2号の定める扶養手当,調整手当(給料及び扶養手当に
係るものに限る),住居手当,期末手当及び寒冷地手当を除いたもの),
共済費事業主負担分(共済費事業主負担分,児童手当拠出金,労災保険
料及び教職員互助組合負担金)相当額,A4が補助参加人の私的用務に
随行した際の旅費等(旅行諸費,宿泊料,運賃,急行料金等,車賃,燃
料費(ガソリン購入費),有料道路通行料及び携帯電話使用料)相当額
(詳細は別紙1及び別紙3)のとおり)の損害を被った。
エしたがって,県は,民法709条,719条に基づき,①A1,A2
及びA3に対し,連帯して1819万7319円(ただし,790万3
476円の限度でA4及び補助参加人と,772万0146円の限度で
A5とそれぞれ連帯して)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である
平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払を,②補助参加人及びA4に対し,A1,A2及びA
3と連帯して1819万7319円の内金790万3476円(ただし,
772万0146円の限度でA5と連帯して)及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する権利がある。
オ被告は,補助参加人らに対し,上記損害賠償を請求することを怠って
いる。
(2)本件期間におけるA4の給与等に関する支出命令の違法性と当該職員の
損害賠償責任について
アA4の給与等に関する支出命令の違法性
(ア)本件派遣は,違法な目的をもってなされたものであり,派遣法1
条及び地方公務員法35条に違背し違法である。
したがって,岐阜県経営管理部長が平成17年3月2日付けでした
A4に対する教育委員会事務局への出向命令の専決及びA3教育長が
平成17年3月2日にした,A4を教育委員会事務局事務職員に任命
し,同事務局スポーツ課主査に補し,同日から平成20年3月1日ま
で,派遣法2条1項に基づき事業団へ派遣する旨の専決はいずれも地
方自治法2条16項,17項により無効となる。
本件派遣は,A4の給与等に関する支出命令の前提行為となるもの
であるから,違法又は無効な本件派遣を前提として,平成17年3月
から平成18年9月までの間になされたA4の給与等に関する支出命
令(以下「各支出命令」という。)は,その違法性を承継し,やはり
違法となる。
(イ)派遣法6条1項は,「派遣職員には,その職員派遣の期間中,給
与を支給しない。」と規定し,同条2項において,例外的に支給でき
る場合を定めているところ,A4は,別紙4の「年月日」欄記載の該
当日において,原告の主張欄のとおり,補助参加人の私的用務に関す
る秘書業務(以下「私的秘書業務」という。)に従事しているが,同
業務は同条2項に定める例外的な場合にあたらない。
したがって,本件派遣以降にA4の給与等に関する支出命令をする
ことは,同法6条に反し違法である。
イ当該職員及び相手方の責任と損害額又は不当利得額
(ア)A1について
知事は,原因行為であるA4の教育委員会への異動命令について取
消権を有するにもかかわらず,A1知事は,これを取り消さないまま,
A4の給与等に関する支出命令について黙認した。
知事は県のすべての支出につき権限があり,A1は,故意又は過失
により,本件派遣及びA4の給与等に関する各支出命令をしたから,
当該職員として,民法709条に基づき,各支出命令により県に生じ
た損害額合計1029万3843円及びこれに対する訴状送達の日の
翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(イ)A2について
A2は,平成17年3月1日ころ,副知事と理事長の職を兼務して
おり,補助参加人を会長に就任させ,A4を補助参加人の秘書業務に
従事させるために教育委員会への転任の専決をしたものであり,故意,
重過失又は過失により本件派遣をしたから,主位的に民法709条に
基づき,予備的に当該職員として,地方自治法243条の2に基づき,
A4の給与等に関する各支出命令により県に生じた損害額合計102
9万3843円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19
年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金を賠償する義務を負う。
(ウ)A3について
A3は,平成17年3月1日ころ,教育長の職にあり,故意又は重
過失により,教育委員会の委任を受け,原因行為である本件派遣のう
ち事業団への出向命令を行ったから,当該職員として,地方自治法2
43条の2に基づき,A4の給与等に関する各支出命令により県に生
じた損害額合計1029万3843円及びこれに対する訴状送達の日
の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(エ)A4について
A4は,本件派遣の違法性を認識し,合意の上で,自ら私的秘書業
務に従事しているから,自己に対する違法な各支出命令の相手方とし
て,民法709条に基づき,県に生じた損害額合計1029万384
3円の内金790万3476円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
である平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(オ)補助参加人について
補助参加人は,本件派遣の違法性を認識しながらA4を私的秘書業
務に従事させることで,本来自身がA4に給付すべき給与等相当額を
不当に利得したのであるから,A4に対する違法な各支出命令の相手
方として,民法709条又は民法703条に基づき,県に生じた損害
額合計1029万3843円の内金790万3476円及びこれに対
する訴状送達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償し又は各支出命令
により生じた自己の不当な利得金1029万3843円の内金790
万3476円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年
1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金を返還する義務を負う。
ウ被告は,A1,A2,A3,A4及び補助参加人に対し,上記賠償命令,
損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることを怠っている。
(3)事業団に対する本件補助金支出に関する交付決定,支出負担行為,支出
命令,債務確定及び戻入命令(以下「各財務会計行為」という。)の違法
性並びに各財務会計行為に係る当該職員及び相手方の損害賠償責任又は不
当利得返還責任について
ア各財務会計行為が違法であること
(ア)本件補助金支出の前提行為である本件派遣が違法であるから,本
件補助金支出のうち,違法な本件派遣に基づく部分に係る各財務会計
行為は,その違法性を承継し,いずれも違法となる。
(イ)仮に,本件派遣自体が違法でないとしても,A4は私的秘書業務
に従事していたのであるから,県から事業団へ交付された本件補助金
のうち,事業団からA4へ給付すべき手当等として支出された部分及
びA4が従事した私的秘書業務に伴う旅費等の費用として支出された
部分は,本件補助金の目的外の支出であるから違法な支出であり,こ
れに係る各財務会計行為もすべて違法となる。
イ当該職員及び違法な財務会計行為の相手方の責任と各人の負うべき損
害賠償額,賠償命令額又は不当利得返還請求額
(ア)A1について
知事は,原因行為である違法な本件派遣を行い,A4の教育委員会
への異動命令について取消権を有するにもかかわらず,A1知事は,
これを取り消さなかった。
知事は県のすべての支出につき権限があり,A1は,故意又は過失
により,本件派遣及び各財務会計行為をしたから,A1は,当該職員
として,民法709条に基づき,各財務会計行為により県に生じた損
害額合計790万3476円及びこれに対する訴状送達の日の翌日で
ある平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合
による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(イ)A2について
A2は,平成17年3月1日ころ,副知事と理事長の職を兼務して
おり,補助参加人を会長に就任させ,A4を補助参加人の秘書業務に
従事させるために教育委員会への転任の専決をしたものであり,本件
期間中,副知事として平成16年度ないし同18年度において,故意
又は重過失により違法な本件補助金の債務の確定を専決したほか,平
成17年度において理事長で,平成18年度において副理事長であっ
たから,主位的に各財務会計行為の相手方として民法709条に基づ
き,予備的に当該職員として,地方自治法243条の2に基づき,こ
れらにより生じた損害額合計790万3476円及びこれに対する訴
状送達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(ウ)A3について
A3は,平成17年3月1日ころ,教育長の職にあり,故意又は重
過失により,教育委員会の委任を受け,原因行為である本件派遣のう
ち事業団への出向命令を行ったから,当該職員として,地方自治法2
43条の2に基づき,本件派遣を原因とする違法な各財務会計行為に
より県に生じた損害額合計790万3476円及びこれに対する訴状
送達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(エ)A5について
A5は,平成17年度及び同18年度において理事長職にあり,4
が私的秘書業務に従事していることを承知し,A4を同業務に従事さ
せていた事業団の責任者であるから,各年度にかかる本件補助金のう
ち,A4の私的秘書業務に関して生じた経費及びA4の手当等として
支出された部分については,当該部分に係る各財務会計行為の相手方
として,民法709条に基づき,県に生じた損害額合計772万01
46円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年1月2
5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を賠
償する義務を負う。
(オ)A6について
A6は,平成17年度及び同18年度において,スポーツ課長とし
て,故意又は重過失により,本件補助金の支出負担行為,支出命令を
専決し,副知事の債務確定を実質的に補助し,戻入命令を専決したか
ら,各年度にかかる本件補助金のうち,A4の私的秘書業務に関して
生じた経費及びA4の手当等として支出された部分に係る支出負担行
為,支出命令,戻入命令を専決し,副知事の債務確定を補助した当該
職員として,地方自治法243条の2に基づき,各財務会計行為によ
り県に生じた損害額合計790万3476円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(カ)A7について
A7は,平成19年度において,スポーツ課長として,故意又は重
過失により,本件補助金の支出負担行為,支出命令を専決し,副知事
の債務確定を実質的に補助し,戻入命令を専決したから,各年度にか
かる本件補助金のうち,A4の私的秘書業務に関して生じた経費及び
A4の手当等として支出された部分に係る支出負担行為,支出命令,
戻入命令を専決し,副知事の債務確定を補助した当該職員として,地
方自治法243条の2に基づき,各財務会計行為により県に生じた損
害額合計262万3785円及びこれに対する訴状送達の日の翌日で
ある平成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合
による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(キ)A4について
A4は,本件派遣の違法性を認識し,合意の上で,自ら私的秘書業
務に従事していたのであるから,本件期間における本件補助金のうち,
事業団より,自身の従事した私的秘書業務に関して生じた経費及び手
当等として支出された部分について,当該補助金に係る違法な各財務
会計行為の相手方として,民法709条に基づき,各財務会計行為に
より県に生じた損害額合計790万3476円及びこれに対する訴状
送達の日の翌日である平成19年1月25日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
なお,A4は,各財務会計行為の直接の相手方ではないが,転得者
も財務会計行為の相手方と言いうる。
(ク)補助参加人について
補助参加人は,本件派遣の違法性を認識し,A4を私的秘書業務に
従事させることで,本来自身がA4に給付すべき出張随行経費等相当
額を県の損害により不当に利得したのであるから,事業団が,A4が
私的秘書業務に従事するために生じた経費及びA4への手当等として
支出した部分の本件補助金に係る違法な各財務会計行為の相手方とし
て,民歩709条又は民法703条に基づき,県に生じた損害額合計
790万3476円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成
19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金を賠償し又は同財務会計行為により生じた自己の不当な利得
金790万3476円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平
成19年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金を返還する義務を負う。
ウ被告は,A1,A2,A3,A5,A6,A4及び補助参加人に対し,
上記賠償命令,損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることを怠って
いる。
(4)本件訴えの適法性について
ア怠る事実であること
本件訴えは,県の職員の任命権(専決権)を有するA1知事,A2副
知事及びA3教育長が,補助参加人と意を通じて,A4を知事職を退任
した補助参加人の個人秘書業務に従事させるために,教育委員会を介し
て事業団へ派遣するという迂回人事(本件派遣)を行ったのであり,本
件派遣は,一種の談合というべき不法行為であって,補助参加人らに対
する当該不法行為に基づく損害賠償請求権又は本件派遣が違法であるが
ゆえに法的根拠を失ったA4への給与等の支払及び補助参加人の出張随
行旅費等としての本件補助金の交付による補助参加人への不当利得返還
請求権の行使を怠ることを怠る事実として損害賠償請求権又は不当利得
返還請求権の行使を行うよう求め,これらの行使を怠る事実が違法であ
ることの確認を求めるものであって,原告の主張する怠る事実はいわゆ
る真正怠る事実にあたるから,監査請求期間の制限はない。
イ正当理由の存在
仮に,原告の主張する怠る事実がいわゆる不真正怠る事実にあたると
しても,上記不正な目的をもって本件派遣が行われ,A4が,補助参加
人の会長職の業務とは無関係な私的業務に随行し,A4の給与等を県が
直接支払い,同人の随行旅費等を県が事業団に交付する本件補助金から
支出させたことは,県の住民が知ることができぬよう秘密裏に行われて
きた。
県の住民である原告らは,平成18年9月20日の新聞報道により初
めて上記事実を知ったのであって,同年10月2日に速やかに本件監査
請求を行った。
したがって,本件住民監査請求が,各財務会計行為から1年間の監査
請求期間を経過してなされたことには正当理由がある。
4被告の主張
(1)本件訴えが不適法であることについて
ア監査請求を経ていないこと
原告は,本件監査請求を平成18年10月2日に行っていることから,
平成18年度の補助金支出については,概算払は監査対象であるが,そ
の精算行為(額の確定に伴う戻入)は平成19年4月27日に行ってお
り監査対象とはならず,監査請求前置を経ておらず不適法である。
イ監査請求期間の徒過
(ア)住民訴訟は監査請求前置主義をとっており,その趣旨は,当該普
通地方公共団体の自治的,内部的処理によって,不当又は違法な財務
事務処理を予防,是正させることが地方自治の本旨に合致すること,
費用をかけずに迅速な処理が可能となること,不当事項の是正もなさ
れ得ることなどにあるため,住民監査請求を経たといえるためには,
監査委員の監査時点で,違法又は不当についての実体的判断による予
防の機会が与えられることが必要である。
(イ)原告らは,平成18年10月2日に,県の外郭団体である事業団
に勤務する県派遣職員が,その勤務時間のほとんどを当該事業団の業
務とは関係のない補助参加人の個人秘書業務に従事していたことを理
由として,同人が補助参加人に随行して出張した際の旅費の全額と当
該派遣職員に支給した給与の6割に相当する金額を補助参加人ほか数
名に返還させることなどを求める本件住民監査請求を行った。本件住
民監査請求の対象である財務会計行為は,県の事業団に対する本件補
助金の支出及びA4に対する給与の支出並びにこれらの支出相当額の
損害賠償請求を怠る事実である。本件補助金の支出については,概算
払の方式により毎月,給与については定額が毎月,それぞれ支出され
ているから,本件監査請求のうち平成17年10月1日以前の支出に
関する部分は監査請求期間徒過を理由に不適法却下されている。した
がって,当該部分については,実体的判断による予防の機会が与えら
れていないから,原告らの訴えのうち当該部分を対象とするものは,
監査請求前置の要件を欠く不適法なものであり,却下を免れない。
ウ不真正怠る事実であること
(ア)原告は,被告が不当利得返還請求又は損害賠償請求を行わないこ
とをもって,県の財産の管理を怠る事実が存在すると主張する。
(イ)怠る事実には原則として監査請求期間の制限はないが,怠る事実
を対象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が
財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効で
あるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とす
るもの(不真正怠る事実)である場合には,当該行為のあった日又は
終わった日を基準として監査請求期間を適用すべきである(最高裁昭
和62年2月20日第二小法廷判決)。
(ウ)原告らは,本件監査請求にあたり,事業団に勤務する県の派遣職
員が,そのほとんどを事業団の業務とは関係のない補助参加人の個人
秘書業務に従事していたことを理由に,被告が,補助参加人に対し,
派遣職員が同人に随行して出張した際の旅費全額並びに同職員の給与
及び諸手当の9割相当額を不当利得返還請求又は損害賠償請求するこ
とを怠ることを怠る事実として主張しており,県の事業団に対する本
件補助金の支出並びに同職員に係る給与及び諸手当の支出について,
これらの支出が財務会計法規に違反し違法な支出であることに基づい
て発生する不当利得返還請求権又は損害賠償請求権の不行使をもって
財産の管理を怠る事実としているものである。これはまさに不真正怠
る事実である。
エ正当理由の不存在
監査請求期間を徒過したことについての正当理由の有無は,住民が相
当の注意力をもって調査した時に客観的にみて当該行為を知ることがで
きたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相
当の期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁
昭和63年4月22日第二小法廷判決)。
本件補助金及び給与の支出は,それぞれ各支出年度の県の予算に計上
され,その執行として行われており,秘密裡に行われたものではなく,
原告らが事業団に対し,A4に関する「出張伺い兼自家用車使用承認
書」及び「時間外勤務・休日勤務及び夜間勤務命令簿」等を情報公開請
求を行うなど,相当の注意力をもって調査を行えば,当該支出を容易に
知り得たものであることから,正当理由があるとはいえない。
また,事業団は改正前民法34条に基づき設立された公益法人であり,
財団の業務及び財務に関する資料(寄附行為,事業報告書,収支計算書
等)を事務所に備え置き,一般の閲覧に供することとされている(岐阜
県教育委員会の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則11
条2項)から,原告らは,財団事務所及び教育委員会事務局で,これら
関係書類を閲覧することが可能であり,閲覧に供されているもののうち,
収支計算書等を閲覧すれば県から本件補助金が支出されていることを容
易に知ることができた。
オしたがって,本件訴えのうち,平成17年10月1日以前の公金支出
に係る部分については,監査請求期間1年の期間制限を定める地方自治
法242条2項に抵触し,適法な監査請求を経ていないから不適法であ
る。
(2)原告の主張(1)に対する反論
本件派遣に関して,原告が主張する共同不法行為は存在しない。その理
由は次のとおりである。
ア事業団に対する県職員の派遣の必要性
事業団は,県の外郭団体であり,効率性や機動性などのメリットを生
かしながら県民サービスの向上を図るため,行政の行うべき分野の補完
・代替・支援等に重要な役割を果たすことが期待される団体であり,派
遣条例等において岐阜県が職員を派遣することができる団体であるから,
県は,事業団に対して,必要に応じて人的援助を行うため,派遣法,派
遣条例等に定める手続に従って県職員の派遣を行っている。
そもそも,事業団は,その前身である財団法人岐阜県スポーツ振興事
業団が昭和53年に設立され,県民体育館の管理運営を受託して以来,
現在に至るまで,岐阜メモリアルセンター(以下「メモリアルセンタ
ー」という。)をはじめ,岐阜県長良川球技場,スポーツ科学トレーニ
ングセンター,岐阜アリーナなど数多くの県有スポーツ施設の管理運営
業務(以下「県有施設の管理運営業務」という。)を実施してきた。こ
のような団体に対する職員の派遣は,県有スポーツ施設の設置者である
岐阜県が,公益団体による施設管理業務の適正な実施を担保する上で必
要なものであった。このような県の積極的な関与の下,公の施設の効用
を最大限に発揮できるように,岐阜県は事業団に施設の効率的・効果的
な管理運営を実施させるとともに,その他岐阜県のスポーツ施策と密接
に関連する各種委託事業,自主企画業務における協調体制を構築してき
た。
イ本件派遣を行う必要性
事業団は,寄附行為に掲げるとおり,県民に広くスポーツの普及振興
を図り,心身ともに健康な県民の育成と明るく豊かな夢あふれる県土づ
くりに寄与することを目的として,県有施設の管理運営業務,県の各種
スポーツ施策と密接に関連する委託業務,自主企画業務など幅広い業務
を行っている。
補助参加人を会長に選任したのは,知事職を4期16年にわたって勤
め,地方自治の更なる発展を目的に「闘う全国知事会」を標榜し,全国
知事会会長を務めた補助参加人の知名度は,事業団のイベント・コンベ
ンション誘致活動の効果的・効率的推進役としては,極めて有用な存在
であり,その経歴や各種団体等の役職への就任,幅広い人的つながりが
あることから生じる様々な機会を通じ,各種講演会や有識者との面談等
の活動を行う中で,産業・文化・スポーツの各分野における事業団の活
動に関し,情報収集・情報発信を行うことが期待できたためである。そ
のため,補助参加人の会長としての職務は極めて広範な分野にわたり,
懇談,面談,講演,情報交換及び視察等様々な形態が予想されたのであ
る。実際,例えば,補助参加人は,事業団の会長就任後,すぐに平成1
7年の愛知万博のレセプションに参加するとともに,旧建設省都市局長
を努めた経歴・人脈を活かし,国土交通省に要望に赴き,関係団体の事
業への協力に努めたほか,事業団の会長職のほかに,プロ野球有識者会
議の座長を務めていたことから,その活動を通じて長良川球場でのプロ
野球公式戦・オープン戦の更なる開催誘致に努めるなど,事業団の目的
に資する積極的な活動を行っていた。
補助参加人の会長就任に伴い,事業団の業務増が想定されたことから,
秘書業務及び企画業務等を担当する職員が必要であった。
A4は,昭和56年3月に県職員に採用されて以降,衛生環境部,議
会事務局,総務部,商工労働部,地域県民部といった幅広い部局におい
て,主に管理調整業務に従事しており,各種政策の企画調整的な業務に
精通し,その多様な知識の活用が望まれていた。また,平成13年4月
には知事公室秘書課に配属され,県の幹部との連絡調整など秘書業務に
従事した経歴があることから,A4の係る経歴は事業団における円滑な
事務の遂行にあたり必要不可欠なものであった。
そこで,県は,県の事務事業を補完,支援させるべく,派遣法の趣旨
に適うものとして,会長の秘書業務及び企画業務を担当すべき人的支援
として,A4を事業団に派遣することとして,本件派遣を行った。
ウ本件派遣の適法性
(ア)A4は,平成17年3月2日付けで,経営管理部長の専決により,
知事部局から教育委員会への転任(地方公務員法17条)を命じられ,
これにより,同日付けで,教育委員会事務局の職員としての身分を有
することとなり,さらに,教育長の専決により,同日から事業団への
派遣(本件派遣)を命じられた。本件派遣に当たっては,派遣法及び
派遣条例に定めるところにより,事業団と任命権者である教育委員会
の間で定められた取決め書の内容について,同法2条2項に基づいて,
事前にA4に明示し,同意を得ている。
(イ)事業団の派遣法にいう「公益法人等」該当性
県では,派遣法2条1項を受けて,派遣条例を定めているが,派遣
条例では,派遣することができる公益法人等について,「岐阜県が基
本金又はこれに準ずるものの2分の1以上を出資している公益法人
等」など4類型を定めるとともに,具体的な公益法人等の名称は人事
委員会規則に委任し(2条1項),当該委任を受けて定められた派遣
条例施行規則は,2条(別表第1)により,派遣対象の公益法人等を
具体的に定めている。
事業団は,前述のような目的を有し,県が2分の1以上を出資して
いる団体であることから,派遣条例2条に該当する団体として,県
(人事委員会)は,事業団を派遣対象の公益法人等に該当するものと
して,派遣条例施行規則2条及び別表第1に具体的に規定している。
(ウ)教育委員会は,事業団が以上のとおり派遣法に基づく職員の派遣
の対象となる公益法人等であることから,派遣法2条等に基づき,事
業団との間で,「取決め書」を交わし,A4を事業団へ派遣した。
エ以上のとおり,本件派遣は,事業団の活動のため必要があってなされ
たものであり,適法な手続によってなされたものであり,A4が随行し
た補助参加人の出張は,別紙4「被告らの主張」欄のとおり,いずれも
会長としての業務にかかわるものであることからも,本件派遣が原告の
主張の違法な目的に出たものではないことは明らかである。
したがって,原告が主張する補助参加人らによる共同不法行為は存在
せず,県は,同人らに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有して
いないから,被告は違法に同請求権の行使を怠っていない。
(3)原告の主張(2)に対する反論
アA4の給与等に関する支出命令の適法性について
(ア)本件派遣は違法な目的でなされたものではない。
(イ)違法性を承継しないこと
原告は,職員の出向等の任命行為を先行行為として,これに起因す
る給与支出及び補助金支出の財務会計行為を後行行為とし,先行行為
の違法は後行行為の違法を導くとして住民訴訟の対象としているもの
と解される。しかし,住民訴訟の目的は,普通地方公共団体の執行機
関又は職員による地方自治法242条の2第1項所定の財務会計上の
違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住
民に与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することにあるも
のである(最高裁昭和53年3月30日第一小法廷判決)から,住民
訴訟の対象は,財務会計上の行為又は怠る事実に限られるものである。
したがって,当該職員の財務会計上の行為をとらえて当該職員の損害
賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に
違法事由が存在する場合であっても,その原因行為を前提としてされ
た当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なもの
であるときに限られると解するべきである(最高裁平成4年12月1
5日第三小法廷判決)。
また,地方公共団体の区域内における教育行政については,原則と
して,これを地方公共団体の長から独立した機関である教育委員会固
有の権限とすることにより,教育の政治的中立と教育行政の安定の確
保を図るとともに,他面,教育行政の運営のために必要な,財産の取
得,処分,契約の締結その他の財務会計上の事務に限っては,これを
地方公共団体の長の権限とすることにより,教育行政の財政的側面を
地方公共団体の一般財政の一環として位置付け,地方公共団体の財政
全般の総合的運営の中で,教育行政の財政的基盤の確立を期すること
としたものである(地方教育行政の組織及び運営に関する法律1条,
23条及び24条)。このような教育委員会と地方公共団体の長との
権限の配分関係から考えると,教育委員会がした教育委員会事務局職
員の任免その他の人事に関する処分(地方教育行政の組織及び運営に
関する法律23条3号)については,地方公共団体の長は,右処分が
著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から
看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,右処分を尊重しその内容
に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは
許されないものと解するべきである(最高裁平成4年12月15日第
三小法廷判決)。
本件については,教育委員会が事業団の会長の多忙を理由に,当該
教育委員会事務局の職員の身分を有する職員であるA4を事業団に派
遣したものである。そして,本件派遣は派遣法,派遣条例に則って適
正に行われたものであることから,著しく合理性を欠きそのためこれ
に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するという場
合ではない。A4は,派遣先の事業団において,あらかじめ事業団と
教育委員会との間で結ばれた取決めに定められた業務に従事し,当該
取決めに定められた報酬分担に従って,A4に対して県が負担すべき
給与の支払という財務会計上の措置を採るべき義務があるものである。
したがって,本件派遣後のA4に対する給与等の支出命令本件給与
の支払は,その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされ
た違法なものということはできず,原告の主張するように先行行為を
本件派遣であるA4の任命,派遣行為とし,後行行為を給与支出とと
らえたとしても,住民訴訟である本件において違法性の承継は問題と
ならない。
(ウ)本件派遣後におけるA4に対する給与等の支出命令が派遣法に反
するものでないこと
a派遣法6条2項は,派遣職員の給与に関し,以下の2つの場合に
は地方公共団体の職務に従事することと同様の効果をもたらすもの
であるとして,地方公共団体が条例で定めることにより,給与を支
給することができると定めている。
(a)派遣職員が従事する業務が,地方公共団体の委託を受けて行
う業務,地方公共団体と共同して行う業務若しくは地方公共団体
の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務
であってその実施により地方公共団体の事務若しくは事業の効率
的若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合
(b)(a)の業務が派遣先団体の主たる業務である場合
b本件派遣の派遣先である事業団の主たる業務は,次のとおり,上
記a(a)の地方公共団体の委託,共同,補完・支援の各業務に該当
するから,派遣条例4条1項,取決め書4条に基づき,県がA4に
対して直接給与等を支給することは,派遣法6条2項に該当し適法
である。
事業団の目的,事業については,寄附行為3条,4条記載のとお
りであり,事業団は県民に広くスポーツの普及振興を図り,心身と
もに健康な県民の育成と明るく豊かな夢あふれる県土づくりに寄与
することを目的として,事業団の自主事業のほか県からの受託事業
を行っている。
事業団は,その前身である財団法人岐阜県スポーツ振興事業団の
頃から県が地方自治法244条1項に基づき設置した公の施設であ
るメモリアルセンターの管理運営を行っており,スポーツ施設の管
理運営に係るその豊富なノウハウを活用しながら,平成17年度ま
では旧地方自治法244条の2に基づく管理受託者として,また平
成18年度からは現行の地方自治法244条の2に基づく指定管理
者として,そのほかスポーツ科学トレーニングセンター,岐阜県長
良川球技場,岐阜アリーナ等の県有施設の管理運営業務を行ってき
た。(乙26,乙27,乙28)施設設置者である県も,県有施設の
管理運営業務を事業団に委託することにより,事業団と一体となっ
て,最小の経費で最大の利用者サービスを提供できるようにすると
ともに,地方公共団体の事務事業の効率的・効果的な実施を行うこ
とができる団体としてその業務を行わせてきた。
県有施設の管理運営業務の事業規模は,下記のとおり事業団の決
算額の約5割以上を占めており,事業団は,派遣法6条2項の「地
方公共団体の委託を受けて行う業務」を主たる業務として行ってい
る。
平成16年度
決算額13億0734万0892円
うち県有施設の管理運営業務費7億0527万7935円
(約54%)
平成17年度
決算額10億9156万7818円
うち県有施設の管理運営業務費6億9907万3243円
(約64%)
平成18年度
決算額8億3884万0048円
うち県有施設の管理運営業務費4億9868万8389円
(約59%)
事業団は,そのほかにも県民に広く生涯スポーツの普及振興を図
ることを目的とする広域スポーツセンター育成事業やスポーツ指導
者招へい事業,県内のスポーツ選手や指導者の強化・育成を図るこ
とを目的とする競技力向上推進事業,さらには実業団女子駅伝の支
援業務等の事業を県の各種スポーツ施策と密接に関連する事業とし
て県からの委託を受けて実施している。
一方,事業団は,自主事業として,「スポーツフェア」の運営や
各種スポーツ教室の開催といった事業団の自主企画イベント事業・
イベント誘致事業やこれら各事業に付随する広報・PRのほか,情
報サービス事業として,ポスター「イベントカレンダー」や情報誌
「生涯スポーツ情報」の発行等の事業を実施しており,これら事業
の実施によって,広く県民に対しスポーツの普及振興を図ることが
でき,県の推進する「スポーツ王国・ぎふ」づくりに寄与している。
したがって,事業団は,派遣法6条2項の「地方公共団体の事務
若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務」も主た
る業務として行っている。(乙26,33ないし35)
c派遣法に基づき,派遣条例4条1項では,派遣職員のうち,同法
6条2項に該当する場合には,当該職員派遣の期間中,給料,扶養
手当,地域手当,住居手当,期末手当及び寒冷地手当のそれぞれ1
00分の100以内を支給することができる旨規定している。
事業団と教育委員会は,派遣法,県条例に基づき,取決め書に報
酬の条項を設け,教育委員会は,派遣期間中の派遣職員に対し,給
料,扶養手当,調整手当(給料及び扶養手当に係るものに限る。
(現在の地域手当を指すもの。)),住居手当,期末手当及び寒冷
地手当のそれぞれ100分の100以内を支給する(4条1項)と
ともに,事業団は,1項に規定するもの以外の給与に相当する報酬
を支給する(同条2項)と合意したものである。
d以上により,本件派遣後におけるA4に対する給与等の支出命令
は,派遣法,県条例に則って行われた適法なものである。
ウ当該職員及び相手方の責任と損害額又は不当利得額
原告が主張する上記各人の責任の存在及び損害額又は不当利得額につ
いてはすべて争う。
なお,普通地方公共団体の長は,一定の範囲の財務会計上の行為をあ
らかじめ特定の吏員に委任している場合であっても,当該財務会計上の
行為の適否につき,法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該
当するが,その場合には,当該財務会計上の行為の委任を受けた吏員が
財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反
し,故意又は過失により,当該吏員が財務会計上の違法行為をすること
を阻止しなかったときに限り,普通地方公共団体が被った損害につき賠
償責任を負うものであり(最高裁判決平成5年2月16日第三小法廷判
決),仮にA4に対する給与等の支出命令が違法であっても,A1知事に
上記義務違反はなく,専決権を与えられた者が,違法な支出命令をする
ことを,故意又は過失により阻止しなかったとはいえない。
(4)原告の主張(3)に対する反論
ア各財務会計行為がいずれも違法でないこと
(ア)本件派遣が違法でないことは,前記3(1)被告らの主張のとおりで
ある。
(イ)仮に,本件派遣が違法であるとしても,それによって,ただちに
各財務会計行為がその違法性を承継するものではない。
(ウ)A4が従事した業務は,別紙4「被告らの主張」欄のとおり,い
ずれも会長の秘書業務であり,県が,事業団がA4に対して支出すべ
きこれに伴う経費やA4の手当等の支払に充てることは,本件補助金
の交付目的から外れるものでなく,事業団に対して本件補助金を交付
したことは違法ではない。
(エ)本件補助金のうちA4に対する手当等に相当する部分は,派遣法
6条2項に定める条例に基づくものではないが,同法6条1項に反す
るものではない。その理由は次のとおりである。
a派遣法制定の背景
派遣法制定の背景には,①地方分権の進展や住民ニーズの多様化
・高度化に伴い,地方公共団体は限られた財源,人材等を有効に活
用しながら行政サービスを効率的・効果的に提供することが求めら
れており,地方公共団体においては,地域の振興や住民の生活の向
上等の諸施策に機能的かつ弾力的に対応するため,行政諸施策との
調和を図りながら,民間の資金や能力,ノウハウ等を活用するため
に,公益法人等との適切な連携・協力による諸施策の推進を図るこ
とが必要となっていること,②こうした公益法人等に対しては,地
方公務員の専門的知識能力の活用による円滑な事業推進や,地方公
共団体の各種行政施策との調整などの観点から,地方公共団体から
の職員派遣が必要とされていること,③地方分権のさらなる進展
に伴い,地方公共団体の役割が増大し,地域における人材の有効活
用等を通じた地方公共団体と公益法人等との適切な連携・協力によ
る行政課題への対応がますます必要となってきていることといった
事情が存在した。
したがって,上記背景を前提にして,派遣先団体に対して人的援
助を行うことの必要性,公益法人等の業務の円滑な実施の確保の必
要性,これを通じた地域の振興,住民の生活の向上等に関する地方
公共団体の諸施策の推進によって公共の福祉の増進を図るとの要請
から,地方公共団体が職員派遣を実施するために制定されたもので
ある。
b派遣法6条2項の解釈
上記の制定の背景から,派遣法6条2項にいう「給与」とは何か,
支給できるのは,同条項に定める条例に基づく場合のみに限られる
のかといった点に関しての解釈は分かれており,地方公共団体の議
会の議決を経て成立する条例に規定することを要件に,地方公共団
体が派遣職員の給料等と諸手当のうち,諸手当を除く給料等だけを
支給できるのか(見解①),条例に規定すれば諸手当も含めて支給
できるのか(見解②),更に条例に規定しなくても補助金に係る予
算を定めるにあたって地方公共団体の議会の議決を得ていることか
ら補助金支出の方法でもっても派遣先団体が諸手当も支給できるの
か(見解③)という3つの見解がある。
大阪高裁平成21年1月20日判決(以下「大阪高裁判決」とい
う。)が示される前は,大阪府などの他の地方公共団体においても
派遣職員の人件費を補助金等の方法で負担しており,本件監査請求
がなされた平成18年10月2日ころは,他府県においても上記見
解③の解釈をとり,諸手当の支給を補助金の方法により交付してい
た。
派遣法6条は給与の定義をしておらず,その範囲を限定していな
いが,仮に,諸手当はこれに含まない趣旨であると解すると,派遣
元で勤務する公務員には,諸手当はすべて支給されているにもかか
わらず,その公務員が派遣されると,当該公務員は派遣先団体での
独自財源でもって諸手当の受給を保障されない限り実質減給扱いと
なり不当な差別待遇を受けたに等しい。よって,派遣法6条にいう
給与とは,時間外勤務手当,通勤手当,勤勉手当といった諸手当を
分離せず文理上含む趣旨と解すべきである。
以上からすれば,派遣元の地方公共団体が,給与としていかなる
範囲まで支給するのか,その支給方法は何によるのかは,派遣元の
地方公共団体の財政事情と,派遣先団体が行う事業による社会福祉
的な公益効果と,当該職員派遣の必要性とを主たる検討要素として
種々の事情を検討した上で決められる事項であり,上記のいずれの
見解に基づく取扱いも裁量の逸脱,濫用にわたらない限り適法とい
うべきである。
したがって,その一例として,派遣先団体で独自財源をもって派
遣職員の諸手当が支給できない場合には,見解③の解釈によること
も適法な解釈となる。
c派遣法6条2項に定める条例に基づかない支給の適法性
上記の考え方によれば,県がA4に対する諸手当を本件補助金の
交付という方法によったことが,適法か否かは,行政裁量の逸脱・
濫用にわたるといえるか否かによることになる。
県が派遣条例4条において支給する給与の範囲を定めた趣旨は,
諸手当は,派遣先団体の業務の実施にかかる手当であり,他方,給
料,扶養手当,地域手当(調整手当),住居手当,及び期末手当と
いった給料等は,職員の生活給的な給与であって,前者については,
派遣先団体で個別に負担することが適切であるとの考え方に基づく
ものである。
職員派遣は,前記派遣法制定の背景事情から,派遣先団体に対し
て人的援助を行うことの必要性,公益法人等の業務の円滑な実施の
確保の必要性,これを通じた地域の振興,住民の生活の向上等に関
する地方公共団体の諸施策の推進によって公共の福祉の増進を図る
との要請から行われており,その要請が働く団体は,独自財源を有
しており,人件費の補助を不要とするようなものだけではない。か
えって,独自財源を保有する団体に対してのみ職員派遣を容認し給
与を支給しないことにすることは,要請に応えたことにはならず,
派遣法1条の趣旨目的には反するというべきである。
したがって,派遣職員に対する諸手当を派遣条例に定めず,補助金
支出の方法でなされたからといって,常に派遣法6条1項の禁止に
抵触し,同条2項の条例に基づいていないことを理由に禁止されて
いるとするのは,極めて形式的かつ硬直的である。前記見解③も適
法な解釈であり,財務会計法規上は,補助金に係る予算を定めるに
あたって岐阜県議会の議決を得ていることから,実質的には派遣条
例に基づき支給されるのと変わりなく,A4が受給した諸手当の金
額が適正であるならば形式上派遣条例自体に基づかないことを理由
に違法と判断すべきではない。
dA4に対して本件補助金として支給された手当等の金額の適正さと,
補助金という交付方法を選択する必要性
(a)各手当額について
通勤手当は,通勤(職員が勤務のため,その者の住居と勤務公
署との間を往復すること。以下同じ。)のために要する費用を直
接負担している職員に対して,それを補てんするために支給され
る手当であり,職員の通勤費による生計費の圧迫を緩和しようと
するもので,生活補助的な性格を有している。通勤手当の支給対
象者は,①通勤のため交通機関又は有料道路を利用してその運賃
又は料金(以下「運賃等」という。)を負担することを常例とす
る職員,②通勤のため自動車等を使用することを常例とする職員
等であり,支給額は①については原則として運賃等相当額,②に
ついては自動車等の使用距離(片道)に応じて給与条例で定める
額が支給される。
時間外勤務手当は,正規の勤務時間外に勤務することを命ぜら
れ,勤務した場合に当該勤務した時間に対して支給される手当で
あり,一般に労働者に対して時間外勤務を命じた場合には,労働
基準法37条の定めるところにより割増賃金の支給が義務づけら
れており,時間外勤務手当もこれに照応するものである。時間外
勤務手当の支給対象者は,正規の勤務時間外に勤務することを命
ぜられ,正規の勤務時間外に勤務した職員であり,支給額は勤務
1時間あたりの給与額に給与規則に規定された支給割合と時間外
勤務時間数を乗じて得た額が支給される。
勤勉手当は,民間における賞与等の特別給に相当するものであ
り,精勤に対する報償として年に1回又はそれ以上支給される能
率給としての性格を有する手当である。勤勉手当の支給対象者は,
6月1日及び12月1日(以下「基準日」という。)に在職する
職員及び基準日前1か月以内に退職又は死亡した職員であり,支
給額は勤勉手当基礎額に,給与規則に規定された職員の勤務期間
による割合(期間率)と職員の勤務成績による割合(成績率)を
乗じて得た額が支給される。
(b)上記諸手当について補助金の方法により給付する必要性
これら諸手当について,通勤手当については,派遣職員の通勤
先は派遣先団体であり,派遣先団体が通勤方法等の認定をするこ
とが適切であること,時間外勤務手当については,派遣職員は派
遣先団体の業務に従事しており,派遣職員の時間外勤務時間の管
理は派遣先団体において行うことが適切であること,勤勉手当に
ついても,派遣職員は派遣先団体の業務に従事しており,派遣職
員の勤務期間及び派遣職員の勤務成績による割合(成績率)の認
定は,派遣先団体が行うことが適切であることから,便宜上,支
払実務上,派遣先団体から直接支給している。
⒞事業団に対し,A4に対する各手当額分の財政支援をすべき必
要性
事業団の自主財源は,剰余金をその原形復旧のために積み立て
ている駐車場特別会計分を除いて,主に県の出資する基本財産の
運用収入である。その基本財産運用収入についても,現在のよう
な超低金利の状況では,自主事業費及び人件費の一部に充当され
るに留まり,その財源の大部分は県からの補助金及び委託料に依
存しているという状況である。なお,事業団の収入のうち,県か
らの補助金収入・受託収入が占める割合は,次のとおりである。
(乙33,乙34,乙35)
平成16年度
決算額13億0734万0892円
うち県補助金収入・受託収入10億6443万4635

(約80%)
平成17年度
決算額10億9156万7818円
うち県補助金収入・受託収入10億4412万8284

(約93%)
平成18年度
決算額8億3884万0048円
うち県補助金収入・受託収入7億9147万9052

(約91%)
とりわけ,補助金については,地方自治法232条の2に定め
る公益上の必要性から,財団の運営経費として財政的な援助を行
ったものであり,派遣職員の諸手当のみならず,プロパー職員等
の給与,手当などを含む人件費として,事業団の管理費の大きな
ウェイトを占める。このうち,派遣職員の時間外勤務手当,通勤
手当,勤勉手当は,派遣先団体の業務実施に係る経費であるとこ
ろ,これら諸手当を岐阜県が負担することが不適当であるとする
と,そもそも自主財源に乏しい公益的法人に対する人的援助自体
が不可能となる。さらには,事業団が行う県有施設の管理運営業
務及び岐阜県のスポーツ施策と密接に関連する委託事業において
もその目的を達成することが困難となり,その結果,地方公共団
体の事務・事業を補完する場合には,派遣職員への給与支給を認
めている派遣法6条2項の規定の実質的な趣旨が没却されること
になり妥当ではない。
仮に,派遣職員が事業団で従事している業務につき,派遣元の
岐阜県から一切の補助金等の財政支援が許されないとした場合,
派遣職員(人的支援)の必要性が認められるにもかかわらず,人
的支援が不可能となる。そうなれば,事業団の主たる業務である
県有施設の委託事業や県のスポーツ施策と密接に関連する委託事
業等においても,その効率的・効果的運営・実施はできず,岐阜
県と連携して県行政を補完・支援するスポーツ振興等の分野にお
いて停滞が生じることとなる。
イ当該職員及び各財務会計行為の相手方に責任がないことについて
仮に派遣職員への人件費相当額を補助金の方法により交付することが,
派遣法6条2項に反し違法であるとしても,派遣法を所管する総務省が,
派遣法の施行にあたって明示した通知等においても,派遣職員の人件費
に充てる補助金支出を禁止する旨の記載がないこと,大阪高裁判決の原
審である神戸地裁平成20年4月24日判決は,派遣法6条2項の規定
に基づく給与の支給と,地方自治法232条の2の規定に基づく補助金
の支出とは,直接関係するものではなく,当該派遣先団体への自治法の
規定に基づく補助金の支出については,派遣法の適用関係とは別途判断
されるべきであり,派遣職員の人件費を援助するための補助金支出が許
されるか否かにつき,地方自治法232条の2の定める「公益上の必要
性」という要件を満たす限り許されると判示しており,同判決と大阪高
裁判決で異なった判断が示されており,司法においても判断が分かれて
いたこと,これらの判決がなされる以前は,大阪府などの他の地方公共
団体においても派遣職員の人件費を補助金等の方法で負担していた状況
に照らせば,大阪高裁判決の判断が示される前になされた本件の補助金
支出に係る財務会計行為を行った各職員について,財務会計法規上の注
意義務違反があるとまではいえず,過失はない。
第3当裁判所の判断
1本件訴えの適法性について
(1)地方自治法242条1項は,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公
共団体の違法,不当な財務会計上の行為又は怠る事実につき監査請求をす
ることができるものと規定しているところ,同条2項は,上記の監査請求
の対象事項のうち行為については,これがあった日又は終わった日から1
年を経過したときは監査請求をすることができないものと規定している
(以下「本件規定」という。)。これは,財務会計上の行為は,たとえそ
れが財務会計法規に違反して違法であるか,又は財務会計法規に照らして
不当なものであるとしても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象と
なり得るとしておくことは,法的安定性を損ない好ましくないことから,
監査請求をすることができる期間を行為が完了した日から1年間に限るこ
ととするものである。これに対し,上記の対象事項のうち怠る事実につい
てはこのような期間制限は規定されておらず,住民は怠る事実が現に存す
る限りいつでも監査請求をすることができるものと解される。これは本件
規定が継続的行為について,それが存続する限りは監査請求期間を制限し
ないこととしているのと同様に,怠る事実が存在する限りこれを制限しな
いこととするものと解される。
しかしながら,いかなる場合にも上記の原則を貫かなければならないと
解すべきものではなく,本件規定の趣旨に照らして,その例外を認めるべ
き場合もある。すなわち,監査請求が実質的には財務会計上の行為を違法,
不当と主張してその是正等を求める趣旨のものにほかならないと解される
にもかかわらず,請求人において怠る事実を対象として監査請求をする形
式を採りさえすれば,上記の期間制限が及ばないことになるとすると,本
件規定の趣旨を没却することにもなるものといわざるを得ない。そして,
監査請求の対象として何を取り上げるかは,基本的には請求をする住民の
選択に係るものであるが,具体的な監査請求の対象は,当該監査請求にお
いて請求人が何を対象として取り上げたのかを,請求書の記載内容,添付
書面等に照らして客観的,実質的に判断すべきものである。
このような観点からすると,怠る事実を対象としてされた監査請求であ
っても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか
又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の
行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為が違法とされ
て初めて当該請求権が発生するのであるから,監査委員は当該行為が違法
であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができな
いという関係にあり,これを客観的,実質的に見れば,当該行為を対象と
する監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ず,当該行為のあった日又
は終わった日を基準として本件規定を適用すべきものである。しかし,怠
る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であり,上記のよう
にその制限が及ぶというべき場合はその例外に当たることにかんがみれば,
監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の
存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務
会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係に
はない場合には,これをしなければならない関係にあった最高裁昭和62
年2月20日第二小法廷判決の場合と異なり,当該怠る事実を対象として
された監査請求は,本件規定の趣旨を没却するものとはいえず,これに本
件規定を適用すべきものではない。(最高裁昭和62年2月20日第二小
法廷判決,同平成14年7月2日第三小法廷判決参照)
(2)本件監査請求の対象は,①被告が県の補助参加人らに対する共同不法行
為(A4を私的秘書業務に従事させるという違法な目的で本件派遣を行っ
たこと)に基づく損害賠償請求を行使しないことを怠る事実とするものと,
②A4の給与等に関する支出命令,同人の補助参加人の私的用務に随行す
る際の旅費等の経費に係る事業団への本件補助金交付に関して平成17年
3月2日から平成18年10月1日までになされた財務会計行為が違法で
あるとして,賠償命令,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の不行使
を怠る事実とするものがある。
ア原告が違法な財務会計行為であると主張するもののうち,平成18年
度本件補助金の概算払の債務の確定及び戻入命令については,当該各行
為がなされたのは,平成19年4月27日及び同年5月25日であるか
ら,本件監査請求の監査対象に含まれない。
したがって,この部分に係る請求は,不適法である。
イ本件監査請求の対象である怠る事実のうち①については,監査請求を
遂げるためには,監査委員は,補助参加人らによる本件派遣についての
違法目的の有無及びこれが不法行為法上違法の評価を受けるものである
こと,これにより県に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足り
るものであるから,地方自治法242条2項の期間制限に服さず,適法
であるというべきである。
ウ本件監査請求の対象である怠る事実のうち②については,まさしく財
務会計行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であ
って無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を
対象とするものであり,監査委員は当該行為が違法であるか否かを判断
しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあ
り,これを客観的,実質的に見れば,当該行為を対象とする監査を求め
る趣旨を含むものとみざるを得ず,当該行為のあった日又は終わった日
を基準として本件規定を適用すべきものである。
そうすると,本件監査請求がなされたのは平成18年10月2日であ
るから,本件監査請求の対象②のうち,本件監査請求の1年より前の平
成17年3月2日から同年10月1日までになされた上記各行為の違法
に係る実体法上の請求権を怠る分は,地方自治法242条2項の期間制
限を超えてなされたものとなる。
(3)地方自治法242条2項本文は,普通地方公共団体の執行機関,職員の
財務会計上の行為は,たとえそれが違法,不当なものであったとしても,
いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るものとしておくこと
が法的安定性を損ない好ましくないとして,監査請求の期間を定めている。
しかし,当該行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,1年
を経過してから初めて明らかになった場合等にもその趣旨を貫くのが相当
でないことから,同項ただし書は,「正当な理由」があるときは,例外と
して,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後であって
も,普通地方公共団体の住民が監査請求をすることができるようにしてい
るのである。したがって,上記のように当該行為が秘密裡にされた場合に
は,同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,
普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に
みて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることが
できたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって
判断すべきものである(最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決)。
そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方
公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監
査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができな
かった場合にも同様であると解すべきである。したがって,そのような場
合には,上記正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共
団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に
当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間
内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成
14年9月17日第三小法廷判決)。
そこで,本件において,平成17年3月1日から同年10月1日の間に
なされたA4への給与等の支出命令及び県から事業団への本件補助金交付
に係る財務会計行為について,これらの行為がなされてから1年以上を経
過した後の平成18年10月2日まで本件監査請求がなされなかったこと
について正当な理由があるかについて検討する。
前記前提となる事実,証拠(乙14)及び弁論の全趣旨によれば,本件
補助金及び給与の支出は,それぞれ各支出年度の県の予算に計上され,そ
の執行として行われたこと,事業団は,改正前民法34条により設立され
た財団法人であり,同法51条1項に基づき,毎年1月から3月までの間
に財産目録を作成し,これをその主たる事務所に常に備え置く義務があっ
たほか,岐阜県教育委員会の所管に属する公益法人の設立及び監督に関す
る規則(乙14)11条に基づき,財産目録に加え,寄付行為,役員その
他の職員の名簿及び履歴書,処務日誌,寄付行為に規定する機関の議事に
関する書類,収入支出に関する帳簿及び証拠書類,資産台帳及び負債台帳,
官公署往復文書,その他必要な書類及び帳簿を事務所に備える義務があっ
たこと,そのため,事業団は上記書類等を事務所に備え置いていたことが
認められる。
しかし,証拠(乙33ないし35)及び弁論の全趣旨によれば,各支出
年度の県の予算では,事業団への補助金の個別具体的な使途が分からない
こと,事業団の事業報告書及び収支計算書には,種別,科目,支出額等に
ついて記載されているものの,その個別具体的な使途については記載がな
いことが認められる。
そうとすると,A4が事業団に提出した出張伺い兼自家用車使用承認書
(甲5の1∼20),時間外勤務,休日勤務及び夜間勤務命令簿(甲6の
1∼18)又は事業団の有する支出決議書,旅行命令書に補助金の具体的
使途が記載されているものの,県の一般住民において相当の注意力をもっ
て調査したとしても,県から事業団への派遣職員が補助参加人の私的秘書
業務に従事して,補助参加人の私的用務に係る出張に随行するための派遣
職員の旅費や給料等が事業団から支出され,事業団が県からその旅費や給
料等につき補助金を受けていることを知ることができたとはいえない。
したがって,毎日新聞が,平成18年9月20日,県から事業団への派
遣職員が補助参加人の私的秘書業務に従事しており,補助参加人の私的用
務に係る出張に随行するための派遣職員の旅費や人件費等が事業団から支
出がなされており,事業団が県から多額の補助金を受けている事実を報道
し,翌21日に,岐阜新聞及び中日新聞も同様の報道する(甲2の1・
2)までは,県の一般住民において相当の注意力をもって調査すれば客観
的に見て監査請求をするに足りる程度に各支出命令及び各財務会計行為の
存在及び内容を知ることができなかったというべきである。
そして,原告らは,平成18年10月2日に本件監査請求を行い,相当
な期間内に監査請求をしたと認められるから,監査請求期間を徒過したこ
とについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由がある。
2原告の主張(1)(補助参加人らの共同不法行為)について
原告の主張(1)アを認めるに足りる証拠はない。
A4が,かつて県の知事公室秘書課に在籍しており,健康福祉環境部管理
室に異動してから本件派遣までの期間が1年に満たない,A4がその勤務時
間のほとんどにおいて補助参加人の私的用務の秘書業務に従事していたなど
の事情があったとしても,原告の主張(1)アを認めるに足りるものとはいえず,
かえって,事業団は,派遣法2条1項の委任を受けた同条例2条1項から再
委任を受けた同施行規則2条別表第1において,職員派遣をすることができ
る公益法人等(以下「派遣先団体」という。)として規定されており,派遣
された職員は事業団の業務のために派遣されたものである(乙4)から,本
件派遣自体は適法というべきである。
そうとすれば,県の補助参加人らに対する共同不法行為に基づく損害賠償
請求権はないこととなる。
3原告の主張(2)(本件期間におけるA4の給与等に関する支出命令の違法性
と当該職員の損害賠償責任)について
前記2で説示のとおり,本件派遣自体は,派遣法,同法の委任を受けた同
条例及び同条例から再委任を受けた同施行規則に則った適法なものである。
また,前記前提となる事実及び証拠(乙34,35)によれば,事業団は,
メモリアルセンター等の県から委託された施設の管理運営を事業の1つとし
(寄付行為4条),平成16年度ないし平成18年度の各年度において,事
業団の支出のうち,県有施設の管理運営業務費が,5割ないし6割を占めて
いることが認められるから,その主たる業務が,派遣法6条2項にいう「地
方公共団体の委託を受けて行う業務」であって,県が県の派遣職員であるA
4に対し,取決め書に基づき,本件派遣期間中,給料,扶養手当,調整手当
(給料及び扶養手当に係るものに限る),住居手当,期末手当及び寒冷地手
当の100分の100を支出することに何ら違法はない。
仮に,A4が事業団の業務命令に従った結果,事業団の業務ではない補助
参加人の私的秘書業務に従事していたとしても,県は,取決め書に従い,A
4に対し給与等を支給する義務があるから,上記結論を左右するものではな
い。
そうとすれば,県のA1,A2,A3,A4及び補助参加人に対する各支
出命令に関する不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権は
ないこととなる。
4原告の主張(3)(事業団に対する本件補助金支出に関する各財務会計行為の
違法性並びに各財務会計行為に係る当該職員及び相手方の損害賠償責任又は
不当利得返還責任)について
(1)本件補助金の概算払の支出負担行為(但し,平成17年4月1日及び平
成18年4月1日になされたもの。)及び支出命令(但し,平成17年1
0月14日から平成18年3月までの分)について
ア違法性
前記前提となる事実によれば,本件補助金は,地方自治法232条の
2が定める「公益上必要がある場合」の例を規定した交付要領に従い,
事業団運営事業の運営に係る経費として人件費,会議費,法人運営費,
法人事業費及び配置事業費を,補助対象経費として,共済費,福利厚生
費,賃金,報酬,給料,プロパー退職手当積立金,手当,会議費,報償
費,旅費,消耗品費,役務費,通信運搬費,備品購入費,使用料及び賃
借料,予備費,その他事業の実施に直接必要な経費を補助するため,交
付規則の手続に則り交付決定がなされたことが認められる。
そうとすれば,本件補助金の交付決定に基づく本件補助金の概算払の
支出負担行為及び支出命令は原則として適法であるというべきである。
もっとも,前記前提となる事実によれば,県は,本件派遣期間中にお
けるA4に対する給与のうち,通勤手当,勤勉手当及び時間外勤務手当
等,給与条例の定める手当のうち,取決め書により県が直接支給するも
の以外のもの相当額を,県が補助金を事業団に交付し,事業団からA4
に支給するという方法により支給していたことが認められる。
派遣法は,従前,地方公共団体毎に,職務専念義務免除,職務命令,
休職,退職等,様々な方法により公益法人等への給与付きの職員派遣が
行われていたところ,最高裁平成10年4月24日第二小法廷判決等を
踏まえて,職員派遣についての統一的なルールの設定,派遣の適正化,
派遣手続の透明化・身分取扱いの明確化等のために制定されたもので,
その運用に関する通達上も,同法は職員派遣に関する統一的なルールを
定めるものであるから,同法の目的に合致するものについては,同法規
定の職員派遣制度によるべきものとされ,職員の任命権者は,2条1項
各号に定める公益法人等のうち,条例で定めるものとの間の取決めに基
づき,職員を派遣することができるが,派遣元の地方公共団体はその給
与を支給しないものとされ(6条1項),派遣職員が派遣先において従
事する業務が給与支給可能業務である場合又は給与支給可能業務が派遣
先団体の主たる業務である場合に限り,例外的に,派遣元の地方公共団
体が,条例で定めることを条件に派遣職員に給与を支給できると定めた
ものである(同条2項)。
かかる派遣法の規定,その制定経緯・趣旨,同法の運用に関する通達
の内容を総合勘案すれば,同法の目的に合致する職員派遣については,
同法規定の職員派遣制度によるべきものであり,同法規定の制度による
職員派遣である以上は,その給与支給についても同法規定によるべきで
あって,派遣職員に対する派遣元による給与支給は禁止され(6条1
項),例外的な場合に限って条例で定めることを条件に派遣元による給
与支給が許され(同項2条),それ以外の場合は派遣元による給与支給
は許されないものと解される。
前記前提となる事実によれば,県は,事業団との間で,派遣法2条1
項所定の取決め書を締結し,同法に基づきA4を事業団に派遣してその
業務に従事させたものであり,同法6条2項により委任された派遣条例
には,県が派遣職員に対し支給できる給与の範囲が明示され,取決め書
には,派遣職員であるA4の給与のうち,県が支給すべきものと事業団
が支給すべきものが明示されており,県は,派遣条例が支給できると定
めた給料等すべてについて負担し,事業団がその余を負担するという内
容であったこと,A4も取決め書の内容につき同意した上で本件派遣に
至ったことが認められる。
そうであれば,県が,派遣法6条2項に基づきA4に対して本件派遣
期間中に支給することが例外的に許されるのは,同法の委任を受けた派
遣条例に定めるもののみであるから,同条例に定めのない手当等を,事
業団に対する補助金の交付を介して派遣職員であるA4に対して支給す
るのは,同法6条2項の潜脱であって,同項1項の禁止に抵触するもの
として違法というべきである。
したがって,本件補助金の概算払の支出負担行為及び支出命令のうち,
A4に対する手当等に相当する部分は違法である。
イ当該職員の責任
(ア)本件補助金の支出負担行為及び支出命令の専決権者
前記前提となる事実によれば,本件補助金の支出負担行為及び支出
命令の専決権はスポーツ課長が有しており,A6スポーツ課長は,平
成16年度ないし平成18年度の各年度において,本件補助金の概算
払の支出負担行為及び支出命令の専決をしたことが認められる。
しかし,A6スポーツ課長が,派遣条例や取決め書を正解せず,本
件補助金の交付決定に基いて本件補助金の概算払の支出負担行為及び
支出命令のうち,A4に対する手当等に相当する部分の専決をしたと
しても,直ちに故意,重過失があるとは認め難い。
(イ)知事
地方自治法242条の21項4号にいう「当該職員」とは,当該訴
訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限
を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委
任を受けるなどして右権限を有するに至った者を広く意味するもので
ある(最高裁昭和62年4月10日第二小法廷判決)。知事は,当該
地方公共団体を代表する者であり,種々の財務会計上の行為を行う権
限を法令上本来的に有する。したがって,知事は,訓令等の事務処理
上の明確な定めにより,その権限に属する一定の範囲の財務会計上の
行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合で
あっても,同財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するも
のとされている以上,同財務会計上の行為の適否が問題とされている
住民訴訟において,法242条の21項4号にいう「当該職員」に該
当するものと解すべきである。そして,右専決を任された補助職員が
知事の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合
は,知事は,同補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止す
べき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同補助職員が財
務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,県に対
し,同補助職員がした財務会計上の違法行為により県が被った損害に
つき賠償責任を負うものと解するのが相当である。(最高裁平成3年
12月20日第二小法廷判決参照)
これを本件についてみるに,A1知事が従前「県が,派遣法6条2
項に基づき派遣中に派遣職員に対し支給することが例外的に許される
のは,同法の委任を受けた派遣条例に定めるもののみであるから,同
条例に定めのない手当等を,事業団に対する補助金の交付を介して派
遣職員に対して支給するのは,同法6条2項の潜脱であって,同項1
項の禁止に抵触する。」と指摘されたことがなかったこと(弁論の全
趣旨)からすると,A1知事が,補助職員であるA6スポーツ課長が
財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違
反し,故意又は過失により同補助職員が財務会計上の違法行為をする
ことを阻止しなかったとは認められない。
ウ相手方
原告は,「補助参加人,A2,A5及びA4は,本件補助金の概算払
の支出負担行為及び支出命令の相手方である。」旨主張するが,本件補
助金は事業団に対して支出されたものであるから,補助参加人,A2,
A5及びA4は,相手方とはいえない。
(2)平成17年4月28日になされた平成16年度本件補助金の概算払の債
務確定及び戻入命令並びに平成18年4月26日になされた平成17年度
本件補助金の概算払の債務確定及び戻入命令について
ア違法性
(ア)まず,平成16,17年度本件補助金の概算払の支出負担行為及
び支出命令のうち,A4に対する手当等に相当する部分が違法である
ことは,前記4(1)アで説示のとおりである。その部分は,同補助金の
債務確定にあたっても精算されるべきであり,その精算がされずにな
された同補助金の債務確定は違法である。そして,これに基づきなさ
れた戻入命令も違法である。
(イ)次に,事業団が,県から,事業団の事業に関する運営に係る経費
として補助金の概算払を受けていたにもかかわらず,事業団の事業の
範囲を逸脱する用途で支出されたものがあれば,その部分は精算され
るべきものであり,その精算がされずになされた同補助金の債務確定
は違法となると解される。そして,これに基づきなされた戻入命令も
違法である。
そこで,事業団が,県から,事業団の事業に関する運営に係る経費
のうち,A4が,平成16,17年度において,別紙4の「年月日」
欄記載の各日において,同「用務先」欄及び「用務欄」記載の補助参
加人の出張用務に随行するために支出された旅費等のうち,事業団の
事業と関連のない用途に用いられたものがあるか否かにつき検討する。
前掲前提となる事実によれば,A4は,事業団の寄付行為に定めら
れた事業に関する業務に従事するものとされ(寄付行為4条,取決め
書3条),事業団において,役員の秘書業務に関することがその分掌
事務として定められていることが認められる。
A4が,補助参加人の会長としての用務のための出張に随行して出
張することは,役員の秘書業務に従事したものといえ,同出張に係る
旅費等は,事業団の事業と関連する用途に用いられたものであり,事
業団の事業に関する運営に係る経費ということができる。一方,A4
が,補助参加人の会長としての用務と認められない出張に随行して出
張した際の旅費等は,事業団の事業に関連のない用途に用いられたも
のというべきである。
A4が,平成16,17年度に随行した,補助参加人の出張等が,
会長としての用務と認められるかについては,別紙4の「当裁判所の
判断」欄のとおりとなる。
上記認定にかかる補助参加人の会長としての用務と認められない出
張に随行したA4の旅費等は,事業団の事業と関連のない用途で支出
されたものであって,精算されるべきであり,その精算がされずにな
された平成17年度本件補助金の債務確定は違法である。そして,こ
れに基づきなされた戻入命令も違法である。
イ当該職員の責任
(ア)平成16,17年度本件補助金の概算払の債務確定の専決権者
前記前提となる事実によれば,平成16,17年度本件補助金の概
算払の債務確定の専決権はA2副知事及びA10副知事が有しており,
A2副知事及びA10副知事は,平成17年度本件補助金の概算払の
債務確定の専決をしたことが認められる。
しかし,A2副知事及びA10副知事は,事業団から提出された平
成16,17年度事業実績報告書と収支計算書に基づき上記債務確定
の専決をしたものである(前記前提事実及び弁論の全趣旨)ところ,
同事業実績報告書は,その性質上,会長出張用務について事細かに記
載するものではないこと(乙34)などからすると,同事業実績報告
書等によって,補助金の対象とならないA4に対する手当等に相当す
る部分や事業団の業務と関連のない用途で支出されたものがあると容
易に判断できたものとはいえず,直ちに故意,重過失があるとは認め
難い。
(イ)平成16,17年度戻入命令の専決権者
前記前提となる事実によれば,平成17年度戻入命令の専決権はA
6スポーツ課長が有しており,A6スポーツ課長は,同年度において,
同戻入命令の専決をしたことが認められる。
しかし,A6スポーツ課長は,平成16,17年度本件補助金の概
算払の債務確定に伴い,平成16,17年度戻入命令を専決したに過
ぎず,同戻入命令につき故意,重過失があるとは認められない。
(ウ)知事
上記4(1)イ(イ)で説示のとおり,専決を任された補助職員が知事の
権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は,知
事は,同補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指
揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同補助職員が財務会計
上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,県に対し,同
補助職員がした財務会計上の違法行為により県が被った損害につき賠
償責任を負うものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに,上記(ア)で説示のとおり事業団から提
出された平成16,17年度事業実績報告書や収支計算書によって,
補助金の対象とならないA4に対する手当等に相当する部分や事業団
の業務と関連のない用途で支出されたものがあると容易に判断できた
ものとはいえなかったことからすると,A1知事が,補助職員である
A2副知事やA6スポーツ課長が財務会計上の違法行為をすることを
阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同補助職
員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったとは認められ
ない。
ウ相手方
原告は,「補助参加人,A2及びA4が,平成16年度本件補助金の
概算払の債務確定の相手方で,補助参加人,A2,A5及びA4が,平
成17年度本件補助金の概算払の債務確定の相手方である。」旨主張す
るが,本件補助金の債務確定は,事業団に対してなされたものであって,
補助参加人,A2,A5及びA4は平成16,17年度本件補助金の概
算払の債務確定の相手方とはいえない。
(4)そうとすれば,県のA1,A2,A3,A5,A6及びA4に対する本
件補助金支出に関する各財務会計行為に関する不法行為に基づく損害賠償
請求権並びに県の補助参加人に対する本件補助金支出に関する各財務会計
行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権は
ないこととなる。
5結論
以上によれば,本件訴えのうち平成18年度の財団法人岐阜県イベント・
スポーツ振興事業団に対する補助金の概算払の債務の確定及び戻入命令の部
分に関する賠償命令,損害賠償請求及び不当利得返還請求に係る部分はこれ
を却下し,その余の請求はこれを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
岐阜地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官内田計一
裁判官永山倫代
裁判官山本菜有子

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