弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を拘留二〇日に処する。
     原審並に当審訴訟費用は被告人に負担させない。
         理    由
 本件控訴の趣意は、被告人並に弁護人黒須弥三郎提出の各控訴趣意書記載のとお
りであるから、これらをここに引用する。
 ところで職権により本件記録を精査し、原判決を仔細に検討するに、本件起訴状
記載の公訴事実は「被告人は昭和三五年一二月一三日午後六時二五分頃、東京都台
東区ab丁目c番地先道路において、同所を通行中のAに対し「実演と映画を見ま
せんか」等と申し向け、迷惑を覚えさせるような仕方で同人につきまとつたもので
ある。」と謂うにあるところ、原審は本件を簡易公判手続によつて審判し、罪とな
るべき事実として、右公訴事実と同一の事実を認定し、これを認めた証拠として、
一、被告人の原審公廷の供述、一、被告人の司法警察員並に検察官に対する各供述
調書、一、現行犯人逮捕手続書、一、Aの司法巡査並に検察官に対する各供述調書
等を掲記し、軽犯罪法第一条第二八号に該当するものとして処断していることが明
らか<要旨>である。ところで、刑事訴訟法第二九一条の二の規定によると、簡易公
判手続によつて審判することができるのは、被告人が被告事件についての陳
述に際し、起訴状に記載された訴因につき有罪である旨の陳述をした場合に限られ
るのであつて、その趣旨は、被告人が訴因事実の総べてを認め、これについて自己
の刑事責任を肯定することを要するものと解せられるところ、原審第一回公判調書
の記載によると、被告人は被告事件についての陳述に際し、「その人に声をかけた
ことは確かですがつきまとつたはありません、しかし、悪いと思つていますから争
いません。私の刑事責任は認めます。」と供述していることが明らかである。よつ
て考察するに、軽犯罪法第一条第二八号は「他人の進路に立ちふさがつて、若しく
はその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるよう
な仕方で他人につきまとつた」所為を処罰の対象とするものであり、被告人の所為
は右後段に該当するものとして起訴せられているのであるから、他人につきまとう
ことはその犯罪構成要件の一部と謂わなければならない。しかるに被告人は前記の
とおり、相手方につきまとつた覚えはないと陳述し、明らかに訴因事実の一部を否
認したものと認められるから、被告人はたとえこれに続いて、しかし悪いと思つて
いますから争いません、刑事責任は認めますと陳述したとしても、これによつて訴
因事実を全部認めた趣旨とは解し難い。なお、右公判調書によると、被告人は被告
人質問に当つて弁護人の「その客に声をかけたことは事実ですね」との問に対し、
「その人にバンかけたことは間違いありません。」と供述しているが、それ以上詳
しい問答のなされた形跡がなく、右問答によつても被告人が訴因事実の総べてを自
認したものと認めることは困難である。果して然らば、本件は簡易公判手続による
ことを得ない場合であるに拘わらず、原審は簡易公判手続によつて審判し、適法に
証拠調べを経ない前記証拠によつて右原判示事実を認定した誤りを犯したものであ
つて、右訴訟手続法令の違反は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、こ
の点において原判決は到底破棄を免かれない。
 よつて各控訴趣意に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第四〇〇条但書
に則り原判決を破棄した上、当裁判所において自から次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は昭和三五年一二月一三日午後六時二五分頃、東京都台東区ab丁目c番
地先道路において、同所を通行中のAに対し「実演と映画を見ませんか」と申し向
けながら追随し、よつて相手方に迷惑を覚えさせるような仕方で同人につきまとつ
たものである。
 (証拠の標目)(省略)
 (法令の適用)
 被告人の所為は軽犯罪法第一条第二八号に該当するので、所定刑中拘留を選択
し、その所定刑期範囲内で被告人を拘留二〇日に処し、原審並に当審訴訟費用は、
刑事訴訟法第一八一条第一項但書に則り被告人に負担させないこととし、主文のと
おり判決する。
 (裁判長判事 山本謹吾 判事 渡辺好人 判事 目黒太郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛