弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1X1の控訴を棄却する。
2X2及びX3の関係で,原判決を次のとおり変更する。
()Yは,X2に対し50万8140円,X3に対し94万0651
4円,及びこれらに対するいずれも平成16年9月7日から支払済
みまで年5分の割合による各金員を支払え。
()上記X両名のその余の請求をいずれも棄却する。2
3X1の控訴費用は同Xの負担とする。
4YとX2及びX3との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通じて
これを10分し,その7を上記Xらの負担とし,その余をYの負担と
する。
5この判決は,主文第2項の()に限り,仮に執行することができる。1
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2Yは,X1に対し128万6501円,X2に対し127万3503円,X
3に対し346万5610円,及びこれらに対するいずれも平成16年9月7
日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,Xらにおいて,X1が,X2所有の普通乗用自動車(以下「本件自
動車」という)にX3を乗せて運転中に,同車を道路左側の運動公園の防護。
柵(以下「本件防護柵」という)及び左前方の電柱(以下「本件電柱」とい。
う)に衝突させる自損事故(以下「本件事故」という)を発生させ,同車。。
が破損するとともに,X1及びX3が負傷したとして,X2がYとの間で締結
していた保険契約(以下「本件保険契約」という)に基づき,Yに対し,保。
険金等を請求した事案である。
原審が,本件事故は,X1が故意に起こした事故であるからYは免責される
として,Xらの請求を棄却したため,Xらが控訴した。
1前提事実(争いがない,甲4の1・2,甲9∼甲16(枝番を含む,乙2)
7,弁論の全趣旨)
()()()X1昭和○○年○○月○○日生とX2昭和○○年○○月○○日生1
は夫婦,X3(昭和○○年○○月○○日生)はその子であり,Xらは肩書住
所地において同居している。
()X2は,平成16年7月1日,Yとの間で,以下の内容の本件保険契約2
を締結した。
ア保険の種類家庭用総合自動車保険
イ被保険自動車本件自動車(トヨタセルシオ,初度登録年月・平成9年
4月)
ウ保険期間平成16年7月1日午後4時から平成17年7月1日午
後4時まで
エ保険金額車両保険金額・255万円,対人賠償・無制限,対物賠
償・無制限,人身傷害・1名につき5000万円,自損事
故傷害・1名につき最高2000万円,搭乗者傷害・1名
につき1000万円
()X1は,平成16年9月6日午後10時過ぎころ,本件自動車の助手席3
にX3を乗せて同車を運転中,F県G郡H町I○丁目○番○号先路上におい
て,本件自動車を道路左側前方の本件電柱に衝突させるという自損事故(本
件事故)を起こした。
()本件事故により,X2は,本件自動車を牽引するための費用として3万4
6750円を支払い,X1は,頚椎・腰椎捻挫,胸腹部打撲,右膝打撲,腹
腔内損傷(疑,外傷性後頚部交感神経症候群の傷病名で,平成16年9月)
(,),,6日から同年12月9日までの間入院2日通院実日数69日X3は
左肋骨骨折,頚椎・腰椎捻挫,胸腹部打撲,腹腔内損傷(疑,外傷性後頚)
部交感神経症候群で,同年9月6日から同年12月30日までの間(入院3
6日,通院実日数68日,いずれもJ病院において治療を受けた。)
()本件保険契約にかかる約款「第4章一般条項」の15条(事故発生時5
の義務違反)4項(以下「本件条項」という)には「保険契約者または。,
被保険者が,前条第3号(事故内容の通知,第4号(盗難の届出)もしく)
は第9号(書類の提出等)の書類に故意に不実の記載をし,またはその書類
もしくは証拠を偽造もしくは変造した場合には,当会社は,保険金を支払い
ません」と規定されている。。
2争点
()本件の最大の争点は,本件事故に基づくYの保険金支払義務が免責され1
るか否かである。
アこの点について,原審で専ら争われたのは,本件事故がX1により故意
に引き起こされたものかどうか(本件事故の故意性)であるところ,この
点についての当事者双方の主張は,原判決4頁14行目「原告X2は」,
の次に「本件車両の購入価格が126万6500円でありながら車両保険
の付保険額をその倍額以上の300万円としている上,本件事故の4か月
前である平成16年5月10日には,契約期間中であるにもかかわらず搭
乗者傷害保険の保険金額を500万円から1000万円に増額し,他の2
台の所有車両に比べ6∼8倍もの高額な年間保険料を支払っている。ま
た」を加えるほかは,原判決の「第2事案の概要」欄の第2項(当事,
者の主張)()及び()記載のとおりであるから,これ(原判決3頁15行23
目から6頁13行目まで)を引用する。
イ当審におけるYの追加主張によるもの
(ア)本件事故についての虚偽申告
(Y)
Xらの本件事故に関する虚偽の申告は,本件条項に該当するので,Y
はXらの請求にかかる保険金全額について免責される。
すなわち,Xらが申告する本件事故状況は,本件防護柵に衝突したな
どとする点において重大な虚偽を含んでいる。しかも,X1は「自動車
保険金請求書(乙10)中でもその旨記載し,また,Xらは,調査会」
社による調査(乙4)やその内容確認においても同様に虚偽の事実を述
べ(乙12,さらに本件訴訟においても,訴状,準備書面等の中で,)
事故状況,損害の内容等について虚偽の記載をしている。
(Xら)
a免責という効果の重大性に照らして,不実の申告があった場合の全
てにつき保険会社が免責されるというのは妥当でない。事故発生の日
,,,,時場所事故の状況等のうち保険会社の保険金の支払義務の有無
範囲を調査し確定する上で必要とされる主要事実に限られ,また,こ
れが故意によるというためには,通知人が真実と異なることを認識し
ていたというに止まらず,これにより保険会社が事故原因及び損害填
補責任の有無の調査をするにつき,その妨げとなることの認識をも必
要とすると解すべきである。
bこれを本件について見るに,本件事故については,事故発生後間も
なく警察官が現場に臨場して見分がなされ,平成16年9月17日に
は実況見分が実施されている。また,本件防護柵及び支柱,本件電柱
,,の衝突痕本件自動車等は事故発生時のままの状態で保存されており
同月11日にはYにおいて,これらについて写真撮影をしている。さ
らに,Yは平成17年6月28日には本件自動車について専門家によ
る修理見積書を作成させてもいる。
c以上のとおり,Xらの申告に不実の点があったとしても,Yがこれ
により不利益を被るおそれは全くない。そうであれば,本件条項によ
りYが免責されることにはならない。
(イ)信義則違反
(Y)
Xらが一貫して虚偽の事故状況等を主張していることは,保険制度の
根幹たる誠実・信頼の原則に悖る行為であり,信義則に照らし,その請
求を認めることはできない。
()本件事故によるXらの損害(=請求にかかる保険金額の当否)2
原判決の「第2事案の概要」欄の第2項(当事者の主張)()記載のと1
おりである。
第3当裁判所の判断
1争点()アについて1
()X1及びX3の各供述等によれば,本件事故前後の状況は概ね次のとお1
りであるとされる。
すなわち,Xら方では,毎日出るゴミを,週に5回は近所に住む義兄のと
ころに持って行って処理してもらっていたが,本件事故当夜も,ゴミが3,
4袋あり,雨も降っていたので,X1が本件自動車を運転し,X3を同乗さ
せて,義兄宅にゴミを持って行った。その帰路,下り坂を時速30∼40キ
ロメートルで進行して右カーブにさしかかった際,突然,前から無灯火の単
車が上がってきたので,咄嗟に左にハンドルを切ったところ,本件自動車の
左前角部分が本件防護柵の支柱(以下「本件支柱」という)に衝突し,さ。
らにハンドルを右に戻したところ,本件防護柵と車体が平行になり,そのま
ま本件電柱にぶつかって停止した。
もっとも,X1は,本件防護柵の支柱を次々になぎ倒して行ったとするの
に対し,本件自動車の助手席に乗っていたとされるX3は,そのような供述
をしていない。
()証拠(甲5の2∼19,6の1∼21,乙1∼3,15)によれば,以2
下の事実が認められる。
ア本件防護柵の支柱は,直径0.7∼0.8センチメートルの鉄筋に周囲
をコンクリートで固めた構造(ただし中心部は空洞である)となってい。
て,地中に埋め込まれたコンクリート製の土台に差し込まれている。支柱
と支柱の間には,強化プラスチックの横木が2本ずつ組み込まれている。
イ本件支柱とその西隣の支柱の間の横木は2本とも外れており,本件支柱
とその東隣の支柱の間,同支柱とその東隣の支柱の間,同支柱とさらにそ
,。,の東隣の支柱の間の横木はいずれも上の横木が外れている本件支柱は
中心の鉄筋がねじ曲がって露出し,その周囲のコンクリート部分は飛散し
ている。同支柱の土台の一部は地表に露出し,その上に土が乗り,草が生
えている。本件支柱の東隣の支柱とそのさらに東隣の支柱は,いずれも土
台から傾斜し,土台の一部が地表に露出してその上に土が乗っている。
ウ本件電柱の一部には樹脂製カバーが巻かれていて,そのカバーに擦過痕
がある。
エ本件自動車には,フロントバンパーに円柱状のへこみと擦過傷,左フロ
ントフェンダーに軽微なへこみと擦過傷,左前輪の損傷(パンク)やホイ
,,ールの擦過傷ヘッドランプやターンシグナル部分の損傷等がみられるが
本件自動車の左側面のボディ部分には,本件事故に起因すると認められる
損傷はない。
()上記()でみたところに照らせば,上記()のX1らの供述中,本件自動321
車が本件支柱に衝突したとする部分は,客観的状況に符合せず,信用するこ
とができない。特に,本件防護柵の支柱を次々となぎ倒して行ったとするX
1の供述については全く信用することができない。
()ところで,Yは,上記のとおり,X1らの本件事故状況に関する供述が4
信用できないとするほか,①本件事故当夜は雨が降っていたのに,X1及び
X3が,わざわざX1の義兄宅に3,4袋のごみを捨てに行く必要があると
は考えられない,②本件自動車が融資のために度々担保に供されていること
からすれば,Xらの経済状況は逼迫していたと推認される,③X2は,過剰
な車両保険を掛けたり,本件事故の4か月前に搭乗者傷害保険の保険金額を
増額しており,さらに,本件自動車の修理費用を過大に見積もって,実際に
修理した費用との差額を利得しようとしている,④X1及びX3の受傷内容
には本件事故に起因するとは考えられないものが含まれるなど,Xらが保険
金により不法に利得を得ようとしたことが推認される,⑤X1には過去に5
回も保険金受領歴があり,保険金請求に絡む詐欺の前科まであるなどと指摘
した上で,本件事故が保険金目的で故意に起こされたものである旨主張して
おり,原審も,上記③のうち過剰な車両保険や保険金額の増額を主張する部
分及び⑤を除いて,ほぼYの主張のとおりの理由で,本件事故がX1により
故意に起こされたものであるという結論を導いている。
()アしかしながら,本件事故が,X1らが供述するように,本件防護柵の5
支柱に衝突し,次いで本件電柱に衝突したというような事故態様のもので
あるとは認められないものの,少なくとも本件自動車の左前部ないし左前
輪が本件防護柵ないしその土台部分に接触し,さらに,同車前部が本件電
柱に衝突したこと自体は否定することができないから,そのような態様に
おける本件事故が発生したことは認められる。
そして,上記①については,証拠(乙5,X1,X2)によれば,Xら
には毎日のようにゴミを義兄のもとに持って行くという生活習慣があるも
のと認められるから,本件事故当夜の行動が必ずしも不自然であるとは決
め付けられない。また,③のうち,車両保険の付保険額を300万円とし
たことについては,X2が保険代理店からの勧めに従ったまでのことと見
てよいし,搭乗者傷害保険の保険金額を増額したのは,従前掛けていた保
険金額と同額にするためであったというX2の言も,あながち不合理なこ
ととは思われない。さらに,同③の修理費用の件や④にしても,偶々本件
事故が発生したことを奇貨として,より多額の保険金を得るためにしたこ
とと見る余地がある。そうであれば,これらをもって上記結論を導くこと
はできない。
イこれに対し,上記②及び⑤は上記結論とより親和性が強いことが明らか
であるところ,証拠(甲29の1,乙6,7,X1)によれば,本件自動
車が融資のために度々担保に供されていること及び⑤の事実がそのとおり
認められる。
,,(ア)もっともX1に保険金請求に絡む詐欺の前科があるということは
同Xがそのような事件さえ敢行しかねない人物であることを物語るとと
もに,反面,再び刑事責任を問われる危険性を冒してまで,本件事故を
作出するであろうかという疑問をも喚起しないではおかないのであっ
てこの点をまともに取り上げるのはいささか躊躇されるものがある原,(
審も,同様の考えであったものと思われる。。)
(イ)最後に残るのは,Xらの経済的逼迫の度合い,換言すれば,保険金
取得の必要性であるが,確かに,本件自動車が度々金融の担保に供され
ているということは,Xらの生活が決して楽ではなかったことを示すも
のと見ることができ,しかも,Xら(特にX1及びX3)が自らの収入
を裏付ける資料を提出しないことはその疑念を深めるものである。
しかし,そのような負債がその都度解消されて,本件自動車がX2名
義のまま確保されているうえ,Xら方では本件自動車のほかに2台の自
動車を保有・維持しているなどの事情からすれば,Xらの生活が立ち行
かないような状態にあるとまでは認め難いのであり,他に保険金取得を
企図するような経済的状況を窺うことはできない。そうであればこの点
もまた本件事故の故意性を結論付けるまでに決定的なものではないとい
わざるを得ない。
()以上の次第であるから,本件事故がX1の故意により引き起こされたも6
のと断ずることはできず,したがって,本件事故の故意性を理由にYが免責
されるということにはならない。この点についてのYの主張は採用すること
ができない。
2争点()イ(ア)について1
()Yは,X1が虚偽の事故状況を「自動車保険金請求書(乙10)に記1」
載し,或いはXらが調査会社による調査やその内容確認においても同様に虚
偽の事実を述べ(乙4,12,さらには,本件訴訟の訴状,準備書面等の)
,「」中でも同様に虚偽の記載をした行為は本件条項の故意に不実の記載をし
,。た場合に該当しXらの請求する保険金全額について免責されると主張する
ア本件事故について,X1の故意性まで認めることはできないことは上記
1のとおりであるが,他方で,事故の態様が,同Xの主張するようなもの
とは認め難いことも疑問の余地がない。
イもっとも,本件事故は,夜間,降雨の中で発生したものであるため,事
故状況を正確に把握することが困難であったところに,本件事故後,本件
防護柵が倒れていることが現認されたこと,本件自動車の左側部には本件
防護柵との接触と矛盾しない痕跡があったことなどからして,同Xにおい
て,本件防護柵の支柱を次々となぎ倒していったものと誤って思い込んで
しまったと考える余地も全くないわけではない。
しかし,X1は,Yの担当者であるKから,同X主張の本件事故状況の
不自然・不合理さを指摘されているのであり(乙12,特に「本件防護)
柵の支柱を次々となぎ倒していった」とすれば,本件自動車の左側部の損
傷がこの程度で済む筈はないから,およそそのような事故状況ではあり得
ない。したがって,同Xが,仮に,一時的に上記のとおり誤って思い込ん
だとしても,冷静に事故当時の状況を振り返り,検討するならば,Kに指
摘されるまでもなく,上記のような思い込みを訂正することは容易であっ
たものというべきである。それにもかかわらず,同Xは,本件事故現場付
近に居住する住民が本件事故以前に本件防護柵が大きく傾いていたことは
ない旨述べている(甲21,乙4)ことを聞き及ぶや,上記のような主張
をしてやまなかったものである。
これは,単なる誇張にとどまらない虚偽の事実の主張(申告)であるも
のといわざるを得ないのであり,要するに,同Xは,虚偽の事実を本件請
求書に記載し,或いは,その旨を調査担当者等に述べて,それを報告書等
に記載させたものであるといわなければならない。
ウところで,保険契約者や被保険者は,事故が発生したときは,保険会社
に対して,できる限り速やかに,かつ正確に,書面をもって,事故の状況
(「」等を通知しなければならないものであり本件約款の第4章一般条項
),。の第14条本件条項も保険契約者らの上記義務に依拠するものである
X1が上記のような主張に拘泥した理由は定かでないが,少なくとも事
故態様を誇張して,より多額の保険金を取得しようという意図に出たもの
と見られても致し方ないところである。また,その結果,本件事故の故意
性までも疑われるような事態にまで立ち至ったのであって,同Xの虚偽の
申告の影響は決して小さくはなかったものである。そうであれば,X1の
虚偽申告の事実を軽視することはできず,同Xについては本件条項の趣旨
に照らして保険金請求をすることはできないものとすべきである。
エそうすると,X1については,その余の点(争点()イ(イ)及び())を12
検討するまでもなく,その請求は理由がないことになり,本件控訴も理由
がないことに帰する。
オこれに対し,X3及びX2については,直ちにこれと同様に考えること
はできない。
(ア)X3は,本件事故時にX1の運転する本件自動車に同乗していたも
のであるから,事故状況についてのX3の認識はX1のそれに劣らず重
要なものであるところ,X3は,本件防護柵との衝突に関しては,X1
の主張に引きずられることなく,これとはかなり趣の異なる供述等に終
始していることが認められる(上記1()。1)
(イ)また,X2は本件自動車の所有者であり,本件保険契約の保険契約
者ではあるが,本件事故時には本件自動車に乗車しておらず,したがっ
て,本件事故状況についても運転者であるX1の主張に追随せざるを得
なかったとしてもやむを得ない面があるものというべきであるから,そ
のことの故に,X2に対するYの保険金支払義務が免責されるとするの
は相当でない。
()Yは,Xらが本件訴訟において提出した訴状や準備書面等においても事2
故状況や損害について不実の記載をしているとし,これもまた本件条項の免
責事由となる旨主張するが,訴状等が本件条項にいう「書類」に該当するか
は大いに疑問があるのみならず,Yは平成16年12月上旬にはXらに対し
て正式な支払謝絶通知をしているのであるから(乙12,その後に提出さ)
れた訴状等によって,Yの事故調査に支障を来すとか,契約当事者間の信頼
関係を破壊するなどということは考え難いのであって,いずれにしても,こ
れらをもって免責事由とすることはできない。また,損害主張については,
多分に専門家(人身損害については医師,物損については修理会社等)の評
,。価が介在するものであるからこれを事故状況等と同視することはできない
3争点()イ(イ)について1
Yは,Xらが一貫して虚偽の事故状況等を主張していることは信義則に反す
る旨主張するが,上記2で判断したとおりであるから,X1に対する関係にお
,,いてはもはやこの点について検討するまでもないしその余のXらについては
信義則違反を理由としてもYの免責を認めることはできない。
そうすると,上記Yの主張を採用することはできない。
4争点()について2
()X1については,上記のとおりこの点を判断するまでもない。1
()X22
同Xは,見積書(甲7)を根拠に本件自動車の修理代金(123万675
),(,),,3円を請求しているが証拠乙1516に照らせば同見積書には
損傷の認められない部品の取替え,従前よりも高額の部品を用いたもの,過
剰な工賃等が計上されている疑いがあり,上記見積書を採用することはでき
ない。そこで,Yが認める修理代金(47万1390円。乙15)の限度で
これを認容するのが相当である。
また,X2は,前提事実()のとおり,本件自動車の牽引代3万67504
円を負担しているから,Yは,X2に対し,約款第3章第1節「車両条項」
第1条1項に基づき,前記修理代金と牽引代との合計額50万8140円の
支払義務を負う。
()X33
ア同Xは,平成16年9月6日から同年10月11日まで36日入院して
いる。しかし,入院中の診療録(乙13)には,医師が記載した部分はほ
,,,とんどなく主訴である胸部及び腰部痛に対する治療も点滴消炎鎮痛剤
外用処方が行われた程度で,L医師の意見書(乙8)に照らしても,36
日もの入院の必要性があったとは認められず,せいぜい事故直後の経過観
察のために2日程度の入院の必要性が認められるに止まるというべきであ
る。
また,同Xは,退院後,主に頚部痛及び腰部痛を訴えて平成16年10
月12日から同年12月30日までの80日間に68日も通院している
が,入院期間中にほとんど見られなかった頚部痛を訴えているのは不自然
な感を否めないし,同Xの診療録(乙14)には医師による記載がほとん
どなく,上記意見書に照らし,高頻度での通院を要するような症状等も認
められないことからして,現に入院していた同年10月11日までに限っ
て通院として認めるのが相当である。
,,「」イ以上によればYがX3に対し約款第2章第1節人身障害補償条項
第1条1項及び同第2節「搭乗者傷害条項」第1項に基づいて支払うべき
保険金は次のとおりである(なお,精神的損害及び搭乗者傷害に係る保険
金の日額については,甲2及び弁論の全趣旨により認められる。。)
(ア)治療費41万1054円
診療報酬明細書(甲13の2,14の2)によれば,前記入院期間に
係る治療費は41万1054円と認められる。なお,入院治療に要する
治療費と通院治療に要する治療費とを同列に論ずることには問題がない
わけではないが,その峻別をすることは証拠上困難である(その旨の的
確な主張立証もない)から,上記期間の治療費全額(合計125万5。
700円)から入院の必要性を肯定できない34日分の入院料等(合計
)。84万4646円を控除した残額を上記期間に係る治療費と認定した
(イ)精神的損害15万9600円
入院8400円×2日=1万6800円
通院4200円×34日=14万2800円
(ウ)搭乗者傷害37万0000円
入院1万5000円×2日=3万円
通院1万円×34日=34万円
(エ)合計94万0654円
5以上によれば,Xらの請求は,X2に対し50万8140円,X3に対し9
4万0654円,及びこれらに対するいずれも平成16年9月7日から支払済
みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるから,その範
囲でこれらを認容すべきである。したがって,原審がX1の請求を棄却した点
は結論において相当であるから,同Xの控訴は棄却すべきであるが,その余の
Xらの請求をも全部棄却したことは不当であって,この点において原判決は変
更を免れない。X2及びX3の控訴はその限りで理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官西理
裁判官鈴木博
裁判官堂薗幹一郎

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