弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
処分行政庁が平成20年2月21日付けでした別紙文書目録記載の各文書(同目
録記載の不開示部分を除く。)を開示する旨の各決定(ただし,同目録4記載の文
書に係る決定については,同年12月25日付け異議決定により一部取り消された
後のもの)を取り消す。
第2事案の概要
本件は,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号。以下「本件条
例」という。)に基づき,実施機関である処分行政庁が平成20年2月21日付け
で原告に関する情報が記録されている行政文書の全部又は一部を第三者である開示
請求者に対して開示する旨の各決定をしたため,原告が,上記各決定(ただし,一
部の文書に係る決定については,同年12月25日付け異議決定により一部取り消
された後のもの)の取消しを求める事案である。
本判決で引用する本件条例の主な条項は,別紙関係法令のとおりである。
1前提事実(当事者間に争いがないか,証拠上明らかである。)
(1)原告に対する行政処分
ア原告は,廃棄物の収集,運搬及び処分に関する業務等を目的とする株式会社
(設立昭和53年1月21日。資本金9550万円)である。
イ原告は,処分行政庁から,廃酸,廃アルカリ及び廃油並びに特別管理産業廃
棄物である引火性廃油の中間処分を業として行うことにつき,廃棄物の処理及び清
掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づく許可を受けていた。同
許可に係る中間処分の内容は,排出事業者から,産業廃棄物や特別産業廃棄物を引
き取り,これらを混合エマルジョン化するという処理であり,原告は,この処理に
よって,廃油をベースとした混合燃料を製造し,石炭の代用燃料である「○○」と
いう商品として,熱源用に売却することを事業目的として掲げていた。
しかしながら,原告は,①排出事業者の承諾を得ることなく,処理を受託した
産業廃棄物を別の処理業者に再委託し,②当該行為を隠すため,産業廃棄物管理
票に原告において中間処理を行った旨を記入し,排出事業者に送付していたため,
平成20年1月4日,処分行政庁から,これらの事実が廃棄物処理法14条14項,
12条の4第2項に違反するとして,廃棄物処理法14条の3に基づき,同月7日
から同年2月20日までの45日間,産業廃棄物収集運搬業,産業廃棄物処分業,
特別管理産業廃棄物収集運搬業及び特別管理産業廃棄物処分業の全部の停止命令
(以下「本件停止命令」という。)を受けた(以下,上記①,②の事実を「本件違
反事実」という。)。
ウ処分行政庁は,平成20年1月7日,愛知県産業廃棄物不適正処理に係る行
政処分要綱に基づいて,本件停止命令の被処分者,処分の内容及び理由(本件違反
事実の概要)を公表するとともに,被告のホームページにこれらの事実を掲載し,
同月8日のA新聞,B新聞等にもこれらの事実が掲載された。
(2)開示決定の経緯
ア平成20年1月8日,処分行政庁に対し,原告以外の第三者から,本件条例
5条に基づき,本件停止命令に関する文書につき開示請求がされた。
イ処分行政庁は,上記開示請求に係る行政文書が別紙文書目録記載の各文書
(以下,同目録の番号順に「本件文書1」ないし「本件文書7」といい,これらを
併せて「本件各文書」という。)であると特定した上,平成20年1月22日,本
件条例15条1項に基づき,原告に対し,開示についての意見を照会したところ,
原告は,同年2月6日,開示に反対である旨の意見書を提出した。
ウ処分行政庁は,平成20年2月21日,本件文書1ないし3及び5について
は別紙文書目録記載の不開示部分を除く部分を,本件文書4については同目録記載
の不開示部分①を除く部分を,本件文書6及び7についてはその全部を,それぞれ
開示する旨の各決定をした。
エ原告は,平成20年3月5日,上記ウの各決定につき,異議申立てをし,処
分行政庁は,同月21日,本件条例19条1項に基づき,愛知県情報公開審査会に
諮問した。
オ愛知県情報公開審査会は,平成20年11月27日,上記ウの各決定におけ
る開示又は不開示の判断のうち,本件文書1ないし3及び5ないし7に係る部分は
妥当であるとし,他方,本件文書4に関しては,別紙文書目録記載の不開示部分②
についても不開示とすることが相当であるとの答申をした。
処分行政庁は,上記答申を受けて,同年12月25日,本件文書1ないし3及び
5ないし7に係る異議申立てを棄却し,本件文書4については,当初の決定におい
て開示とした部分のうち,同目録記載の不開示部分②を不開示とすることとし,そ
の余の異議申立てを棄却する旨の異議決定をした(以下,同異議決定により一部取
り消された後の上記ウの各決定を併せて「本件各決定」という。)。
2争点
本件の争点は,①本件各文書のうち本件各決定において開示すべきものとされ
た部分に本件条例7条3号所定の不開示情報が記録されているか否か,②本件条
例4条に照らし,本件各文書の開示請求者の開示請求の目的を考慮して,本件各文
書を不開示とすべきであるか否かであり,これらの点に関する当事者の主張は,次
のとおりである。
(原告の主張)
(1)本件条例7条3号イの不開示情報該当性
本件各文書は,本件違反事実に関するものであり,本件文書3には原告と取引関
係にある法人名も記録されている。原告は,取引先に対し,本件違反事実について
十分に説明して理解を得ており,その後も取引を継続している。しかし,本件各文
書が開示されると,現在取引関係にある,あるいは今後取引関係になろうとする法
人等がこれを見ることにより,改めて生々しい現実を知らされることになり,その
結果として,原告が取引を中止されたり,新たな取引先を得られなくなる。しかも,
同業者が本件各文書の開示を受けた場合,それを利用し,原告の顧客を奪うために,
原告の取引先等にその情報を知らしめて原告との取引を断念させようと画策するこ
とは明らかであり,このような行為がなされると,原告は取引を打ち切られ廃業せ
ざるを得ないこととなる。
したがって,本件各文書に記録された情報は,本件条例7条3号イの不開示情報
に当たる。
(2)本件条例7条3号ロの不開示情報該当性
本件文書3には,原告が被告の担当者の調査に応じ,任意に提供した情報が含ま
れているが,原告としてはこのような内部文書が公開されることは全く予想できな
かったことであり,これらの情報を開示しないことについては,互いに了解してい
たものである。
したがって,本件文書3に記録された上記情報は,本件条例7条3号ロの不開示
情報に当たる。
(3)本件条例4条の趣旨に照らし不開示とすべきこと
本件条例4条によれば,本件条例によって開示された行政文書によって得られた
情報は適正に使用しなければならないところ,本件停止命令に関する事実は既に新
聞等に掲載されており,被告が原告に対して業務の調査や検査を実施しこれにより
発覚した本件違反事実に基づいて本件停止命令を発したことは,県民に十分説明さ
れている。それにもかかわらず,開示を求めているということは,開示請求者が,
原告の営業上の権益や競争上の地位その他正当な利益を害し,自社の権益と競争上
の地位を強大にすることを目的としていることは明らかである。
したがって,本件条例4条の趣旨に照らし,本件各文書は不開示とすべきである。
(被告の主張)
(1)本件各文書に記録された情報
本件文書1ないし5には,本件違反事実の内容が具体的に明らかとなる情報及び
原告の産業廃棄物取引に関する情報が記録され,原告の産業廃棄物取引に関する情
報には,原告が受け入れていた産業廃棄物の排出事業者名,産業廃棄物の受託量等
(以下「排出事業者関連情報」という。)及び原告が産業廃棄物処理を委託した委
託先事業者名,産業廃棄物の委託量等(以下「委託先事業者関連情報」という。)
が含まれている。
本件文書6及び7には,上記のうち本件違反事実の内容が具体的に明らかとなる
情報のみが含まれている。
(2)本件条例7条3号イの不開示情報非該当性
ア本件違反事実の内容が具体的に明らかとなる情報について
本件違反事実の内容が具体的に明らかとなる情報は,平成20年1月7日に被告
によって公表されており,本件各文書が開示されたとしても,それによって原告の
権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないから,本件条例7条3
号イの不開示情報とはなり得ない。
イ委託先事業者関連情報について
本件条例7条3号イによって保護されるべき法人等の事業活動は,「健全で適正
な事業活動」でなければならないところ,委託先事業者関連情報は,原告が法に違
反する違法な再委託を行った相手方の事業者,即ち,原告の違法行為に加担した業
者名と,違法な再委託量等であるから,これが「健全で適正な事業活動」に係る情
報ではないことは明らかである。
ウ排出事業者関連情報について
本件条例7条3号イは,公にすることにより当該法人等又は当該個人の権利,競
争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを不開示と定めているが,
不開示とすることにより保護される利益と開示することにより保護される人の生命,
健康,生活又は財産を比較衡量し,後者が優越する場合は,たとえ「正当な利益を
害するおそれ」があっても,開示しなければならないところ(本件条例7条3号た
だし書),原告の行っていた産業廃棄物の各排出事業者からの引取り行為が,人の
生命,健康,生活又は財産に危害又は支障を発生させる蓋然性が高いものであるこ
とは明らかであるから,これを排除,予防するために当該情報を開示する必要があ
り,この必要性と原告の事業活動の自由に対する保障の必要性とを比較衡量すれば,
前者の方がはるかに優越していることは明らかである。原告は,その事業の目的と
する混合燃料化に不適な中和水,廃液,廃アルカリ等を多量に引き取り,これらを
自社処理等廃棄の名目で再委託していたのであるから,これらは,それ自体健全で
適正な事業に使用する原材料となり得ないものというべきであり,そのような取引
に係る排出事業者関連情報は,保護を要しないものである。
しかも,廃棄物処理法は,排出事業者に対し,その産業廃棄物の処理を委託する
際に産業廃棄物管理票を交付するなどして,その処理の状況を自ら把握,管理する
義務を課し(12条の3第1項,5項),産業廃棄物の不適正な処理が行われ,生
活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれのある場合には,排出事業者も措置命
令の対象となり得るなど(19条の6),排出事業者の責任も強化されており,産
業廃棄物処理業者と排出事業者との取引に関する情報は,社会の人々の不安感を取
り除くために開示することが要請されているというべきである。
したがって,排出事業者関連情報は,本件条例7条3号の不開示情報には当たら
ない。
(3)本件条例7条3号ロの不開示情報非該当性
本件文書3に記録された情報の中に,原告が任意に提出したものが含まれている
ことは認めるが,それが本件条例7条3号ロの不開示情報に当たるとの原告の主張
は争う。
(4)本件条例4条は不開示の根拠とならないこと
原告は,本件各文書の開示請求者が,原告の営業上の権益や競争上の地位その他
正当な利益を害し,自社の権益と競争上の地位を強大にすることを目的としている
ことは明らかであるから,本件条例4条の趣旨に照らし,本件各文書は不開示とす
べきであると主張する。
しかしながら,本件条例4条は,本件条例によって開示を受けた者の責務として,
入手した情報を適正に使用すべきことを定めたものであり,この定めを根拠に情報
開示の適否をいう原告の主張は失当である。
第3当裁判所の判断
1本件各文書の内容等
証拠(甲14の2∼4,23の1∼7)によれば,本件各文書の内容等は,次の
とおりであると認められる。
(1)本件文書1ないし3
本件文書1は,被告の西三河事務所(現西三河県民事務所。以下同じ。)廃棄物
対策課において,同課の職員が平成19年11月7日に原告のC工場において実施
した立入検査による指摘事項を同月13日に原告に対し伝達した内容を取りまとめ
たものである。
本件文書2は,同課において,同課の職員が同月20日に原告に対し平成17年
度及び平成18年度の産業廃棄物処理実績報告書の記載内容の調査及び訂正を指導
した内容を取りまとめたものである。
本件文書3は,同課において,同課の職員が平成19年12月4日に原告から廃
棄物処理法違反の是正報告を受けた際の内容を取りまとめたものであり,原告が提
出した是正報告書,是正スケジュール及び「契約書及びマニフェストに関する記載
事項の変更についてのお願い」と題する取引先あての文書の文案が添付されている。
そして,本件文書1ないし3(ただし,別紙文書目録記載の不開示部分を除
く。)には,本件違反事実の内容が具体的に明らかとなる情報,原告が受け入れて
いた産業廃棄物の排出事業者名,産業廃棄物の受託量,原告が産業廃棄物処理を委
託した委託先事業者名,産業廃棄物の委託量等の原告の産業廃棄物取引に関する情
報,原告が被告の職員から受けた指導及びこれに対する原告の是正措置に関する情
報等が記録されている。
(2)本件文書4及び5
本件文書4は,被告の資源循環推進課廃棄物監視指導室において,同室及び西三
河事務所廃棄物対策課の職員が平成19年12月6日に原告から産業廃棄物の委託
処理の状況を聴取した結果を取りまとめたものである。
本件文書5は,同室において,同室及び同課の職員が同月26日に原告に対して
実施した立入検査結果を取りまとめたものであり,原告の工場を撮影した写真が添
付されている。
そして,本件文書4及び5(ただし,別紙文書目録記載の不開示部分を除く。)
には,原告の廃棄物処理法違反の内容が具体的に明らかとなる情報,原告が受け入
れていた産業廃棄物の排出事業者名,産業廃棄物の受託量等の原告の産業廃棄物取
引に関する情報等が記録されている。
(3)本件文書6及び7
本件文書6は,処分行政庁が原告に対し発した産業廃棄物処理業及び特別管理産
業廃棄物処理業に係る本件停止命令の命令書であり,原告の所在地,名称,代表者
の役職名及び氏名,原告が許可を受けた上記各廃棄物処理業の許可年月日及び許可
番号,事業の停止を命ずる旨の文言,停止すべき事業の内容,事業を停止すべき期
間,処分の理由(本件違反事実の概要)等が記載されている。
本件文書7は,被告の環境部長が原告に対し本件停止命令に関する注意事項を通
知した文書であり,原告の名称,代表者の役職名及び氏名,本件停止命令の対象等
が記載されている。
2本件各文書に記録された情報が本件条例7条3号イの不開示情報に当たるか
否か
(1)本件文書6及び7について
前記前提事実(1)ウのとおり,処分行政庁は,平成20年1月7日,本件停止命
令の被処分者,処分の内容及び理由(本件違反事実の概要)を公表するとともに被
告のホームページに掲載し,同月8日,これらの事実が新聞紙面に掲載され,既に
公知の事実となっているから,本件文書6及び7に記録された情報が公にされるこ
とによって,原告の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるも
のとは認められない。
(2)本件文書1ないし5について
前記1(1),(2)のとおり,本件文書1ないし5(別紙文書目録記載の不開示部分
を除く。)には,原告の廃棄物処理法違反の内容が具体的に明らかになる情報のほ
か,原告が受け入れていた産業廃棄物の排出事業者名,産業廃棄物の受託量,原告
が産業廃棄物処理を委託した委託先事業者名,産業廃棄物の委託量等の原告の産業
廃棄物取引に関する情報,原告が被告の職員から受けた指導及びこれに対する原告
の是正措置に関する情報等が記録されている。
これらの情報は,本件違反事実に関して既に公知の事実となっている情報の範囲
を超えるものである。しかしながら,産業廃棄物の保管,運搬,中間処分又は最終
処分が不適正に行われた場合には,その周辺の生活環境を悪化させ,周辺住民の生
命,健康等に支障を生じさせる可能性があるから,その不適正処理の実態やこれに
対する指導及び是正措置の内容を明らかにするための情報は,周辺住民の上記支障
の発生を未然に防ぐためにも,また,周辺住民に対する心理的な不安を除去する上
でも,これを開示することが強く求められているものである。そして,不適正処理
の実態を明らかにするには,排出事業者が不適正処理に関与したか否かにかかわら
ず,排出事業者が産業廃棄物の運搬又は処分を委託してから,最終処分がされるま
での情報が必要となることはいうまでもない。この点に関しては,廃棄物処理法が,
産業廃棄物の排出事業者に対し,その産業廃棄物の処理を委託する際に,産業廃棄
物管理票を交付することや,その処理の状況を自ら把握,管理することを義務付け
(12条の3第1項,5項),都道府県知事は,産業廃棄物処理基準に適合しない
産業廃棄物の処分が行われた場合において,不適正な処理が行われ,生活環境の保
全上支障が生じ,又は生ずるおそれがあると認められる場合には,産業廃棄物処理
業者のみならず,排出事業者に対しても,その支障の除去等の措置を命ずることが
できる旨定めており(19条の5,19条の6),排出事業者も産業廃棄物の不適
正処理について責任を負う建前となっていることに留意する必要がある。
以上のような点にかんがみれば,産業廃棄物の処理業者がその業務に関し不適正
な処理を行った場合,当該産業廃棄物の処理業者や排出事業者等の関係者は,不適
正処理の実態やこれに対する指導及び是正措置の内容が公にされることにつき,社
会通念上,これを受忍すべき立場にあるものというべきである。そして,本件文書
1ないし5(別紙文書目録記載の不開示部分を除く。)に記録された情報は,いず
れも,本件違反事実の実態やこれに対する指導及び是正措置の内容に関するもので
あって,原告及びその関係者において当該情報が公になることを社会通念上受忍す
べき範囲内のものであるということができるから,これらが公にされることによっ
て,原告及びその関係者の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが
あるものとは認められない。
(3)小括
そうすると,本件各文書(別紙文書目録記載の不開示部分を除く。)に記録され
た情報は,本件条例7条3号イの不開示情報には当たらないというべきである。
3本件文書3に記録された情報が本件条例7条3号ロの不開示情報に当たるか
否か
原告は,本件文書3に記録された情報の中は,原告が,被告の担当者に対し,開
示しないことについて互いに了解して,任意に提供したものが含まれているから,
当該情報は本件条例7条3号ロの不開示情報に当たる旨主張するが,本件文書3に
記録された情報の中に原告が被告の担当者に対し任意に提出したものが含まれてい
るとしても,それが「公にしないとの条件で」提出されたものであることを認める
に足りる証拠はない。
しかも,同号ただし書は,「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公
にすることが必要であると認められる情報を除く。」と規定しているところ,上記
2で説示したところによれば,本件文書3(別紙文書目録記載の不開示部分を除
く。)に記録された情報は,周辺住民の生命,健康等を保護するために公にするこ
とが必要な情報であって,同ただし書所定の情報に該当するということもできるか
ら,この点においても,原告の主張は理由がない。
4本件条例4条を根拠とする原告の主張の当否
原告は,本件各文書の開示請求者が,原告の営業上の権益や競争上の地位その他
正当な利益を害し,自社の権益と競争上の地位を強大にすることを目的としている
ことは明らかであるから,本件条例4条の趣旨に照らし,本件各文書は不開示とす
べきであると主張する。
しかしながら,本件条例においては,何人も本件条例の定めるところにより実施
機関に対し行政文書の開示を請求することができるものとされ(5条),実施機関
は,開示請求に係る行政文書に本件条例7条所定の不開示情報のいずれかが記録さ
れている場合を除き,開示請求者に対し当該行政文書を開示しなければならないも
のとされている。そして,同条所定の不開示情報に該当するか否かは,開示請求者
の属性等にかかわらず,当該開示請求の対象となった行政文書に記録された情報の
内容によって客観的に判断されるべきものであるから,本件各文書の開示請求者の
目的は,不開示情報に該当するか否かに影響しない事柄であり,処分行政庁は,上
記目的を理由として本件各文書を不開示とすることは許されないものである。本件
条例4条は,本件条例によって開示を受けた者の責務として,入手した情報を適正
に使用すべきことを定めたものであって,この定めによって開示請求の対象となっ
た行政文書を開示すべきか否かが判断されるものではない。
したがって,原告の主張は失当である。
5結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
増田稔裁判長裁判官
前田郁勝裁判官
杉浦一輝裁判官
(別紙)
文書目録
1平成19年11月13日付け「E㈱・C工場への立入検査について」という
件名の文書
【不開示部分】個人(法人の役員及び公務員を除く。)の氏名,廃棄物処理以
外の業務に関する法人の名称
2平成19年11月20日付け「E㈱の産業廃棄物処理実績報告等について」
という件名の文書
【不開示部分】個人(法人の役員及び公務員を除く。)の氏名
3平成19年12月4日付け「E㈱の違反是正報告等について」という件名の
文書
【不開示部分】個人(法人の役員及び公務員を除く。)の氏名,廃棄物処理以
外の業務に関する法人の名称
4平成19年12月6日付け「E㈱からの事情聴取について」という件名の文

【不開示部分】①個人(公務員を除く。)の氏名
②「要旨」欄の22行目,23行目の1文字目から26文字
目まで及び28行目の3文字目から6文字目まで(「鉱物油
の単価」,「処理後の製品の販売先事業者名」及び「販売先
事業者がどのような製品を必要としていたか」に係る内容が
記載されている部分)
5平成19年12月27日付け「E㈱D工場の立入について」という件名の文

【不開示部分】個人(公務員を除く。)の氏名
6平成20年1月4日付け「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業
の全部の停止について(命令)」と題する文書
7平成20年1月4日付け「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業
の全部の停止について(通知)」と題する文書
(別紙)
関係法令(愛知県情報公開条例)
1条この条例は,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,
実施機関の管理する情報の一層の公開を図り,もって県の有するその諸活動
を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに,県民の的確な理解
と批判の下にある公正で民主的な県政の推進に資することを目的とする。
4条この条例の定めるところにより行政文書の開示を受けたものは,これによ
って得た情報を,この条例の目的に即して適正に使用しなければならない。
5条何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,行政文書の開
示を請求することができる。
7条実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各
号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されてい
る場合を除き,開示請求をしたものに対し,当該行政文書を開示しなければ
ならない。
3号法人(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除
く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を
営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。ただし,人
の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要である
と認められる情報を除く。
イ公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位そ
の他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ実施機関の要請を受けて,公にしないとの条件で任意に提供されたもの
であって,法人等又は個人における通例として公にしないこととされてい
るものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に
照らして合理的であると認められるもの

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