弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
     右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人山本正司の上告理由第一について
 原審が確定したところによれば、(1) 上告人は昭和四六年四月二日被上告人に
対して本件土地を代金二五八八万円、所有権移転登記及び代金支払の日を同年五月
末日とする約定で売り渡し、同日手附金二〇〇万円の授受を了した、(2) 右売買
契約(以下「本件売買契約」という。)には、「売主において契約不履行の場合は
手附金の倍戻しを、買主において契約不履行の場合には手附金流しとして双方異議
なく、本契約はその時限り解除するものとす」る旨の約定があつた、(3) 上告人
は本件売買の履行期である同年五月三一日被上告人が代金を持参すれば所有権移転
登記手続ができるよう準備していたが、被上告人は右代金を支払わずその履行期を
徒過した、(4) そこで、上告人は同年六月一二日頃被上告人に対して債務不履行
を理由に手附金流しとして処理する旨の意思表示をした、というのである。
 原審は、右のような事実関係のもとにおいて、前記(2)の約定が当事者の一方に
債務不履行があつた場合にはなんらの意思表示を要しないで当然に契約解除の効果
が生ずる旨を約したいわゆる失権約款であることを前提とする上告人の主張に対し、
右約定はそのような失権約款と認めることはできず、むしろ当事者の債務不履行に
よる契約解除の場合の手附金の帰属関係と手附金に解約手附の効力を含ましめる趣
旨をあわせ定めたものと解すべく、債務不履行の場合における法定の契約解除権行
使の要件を緩和するものとは認められない旨の認定判断を示したうえ、上告人の右
主張を排斥し、次いで上告人の前記(4)の契約解除の意思表示による解除の主張に
ついても、解除権行使の前提である債務履行の催告がされなかつたから契約解除の
効力を生じないと判示してこれを排斥した。
 しかしながら、原審は、他方において、前記(2)の約定につき、右手附金は当事
者の債務不履行の場合において契約関係一切を清算する損害賠償の予定の性質を有
すると解される旨の第一審裁判所の認定判断を引用しているところ、右のように、違
約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨でされた場合においては、手附金受領者
は、相手方に違約があつたときは、あらかじめ契約解除の手続を経ることなくいわ
ゆる手附金流しとしてこれを確定的に自己に帰属せしめることができるとともに(
最高裁昭和三七年(オ)第八八〇号同三八年九月五日第一小法廷判決・民集一七巻
八号九三二頁参照)、特段の事情のない限り、相手方に対し右の旨を告知したとき
は、これによつて右契約関係も当然に終了するものと解するのが相当であるから、
本件手附金約定の趣旨、内容についての上記認定に従うときは、特段の事情のない
限り、上告人による前記(4)の手附金流しとして処理する旨の意思表示により本件
売買契約も終了するにいたつたものといわざるをえない筋合である(契約解除の意
思表示による解除に関する上告人の主張は必ずしも明確とはいえないが、上記説示
の意味における契約関係の終了の主張をも含んでいると解することができないでも
ない。)。しかるに、原審は、右の特段の事情の存在につきなんら認定することな
く、さきに述べたように、本件手附金の約定は債務不履行の場合における契約解除
権の行使につき法定の要件を緩和する趣旨を含むものとは認められないとし、上告
人による契約解除が無催告解除であるから無効である旨判示しているのである。し
てみると、本件手附金約定の趣旨、内容に関する原審の認定判断には前後矛盾する
ものがあり、この点につきなんらの説明がされていないのであるから、結局原判決
には、本件手附金の約定ないし契約解除に関する法令の解釈の誤りによる審理不尽、
理由不備ないしは理由齟齬の違法があるといわざるをえない。したがつて、この点
に関する論旨は結局理由があるから、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして、叙上の点についてさらに審理を尽くさせるため、右部分を原審に差し戻す
のが相当である。
 よつて、その余の論旨についての判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    戸   田       弘
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    中   村   治   朗

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛