弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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             主     文
 被告人両名をいずれも無期懲役に処する。
 被告人両名に対し,未決勾留日数中各300日をそれぞれその刑に算入す
る。
             理     由
(犯罪事実)
 被告人両名は,
第1 C及びDらと共謀の上,
 1 平成9年10月6日午後10時15分ころ,福岡県鞍手郡a町大字bc番地
のd所在のE方前路上において,同人(当時54歳)に対し,被告人B及び前記D
が,殺意をもって,こもごも前記E目がけて,各自所携の回転弾倉式けん銃各1丁
から実包合計約11発を発射し,そのうち数発を同人の背部等に命中させ,よっ
て,同日午後11時45分ころ,同県飯塚市e町f番g号のF病院において,同人
を背部の射創によって生じた肺損傷及び腹大動脈損傷に基づく失血により死亡させ
て殺害するとともに,法定の除外事由がないのに,不特定かつ多数の者の用に供さ
れる道路においてけん銃を発射し
 2 法定の除外事由がないのに,同日午後10時15分ころ,前記E方前路上に
おいて,前記回転弾倉式けん銃2丁を,これに適合する実包約11発と共に携帯し
て所持し
第2 C及びFと共謀の上,
 1 同月13日午後5時ころ,長崎県佐世保市h町i番地j所在の畑において,
G(当時40歳)に対し,被告人両名及びFが,殺意をもって,所携の針金でその
頸部を強く絞め付け,よって,そのころ,同所において,前記Gを頸部圧迫による
窒息により死亡させて殺害し
 2 同日午後5時過ぎころ,前記Gの死体を同所から約25メートル離れた,前
記畑北側にあらかじめ掘っていた穴まで運んで土中に埋没させ,もって,死体を遺
棄し
たものである。
(累犯前科)
被告人Bについて
1 事実
(1) 平成3年11月28日福岡地方裁判所小倉支部宣告
傷害の罪により懲役1年
平成4年11月27日刑の執行終了
(2) 平成5年5月25日福岡地方裁判所小倉支部宣告
(1)の刑の執行終了後に犯した監禁,恐喝の罪により懲役1年
平成6年4月4日刑の執行終了
(3) 平成6年11月15日福岡地方裁判所飯塚支部宣告
  (2)の刑の執行終了後に犯した恐喝未遂,恐喝の罪により懲役1年2月
  平成7年12月5日刑の執行終了
2 証拠(省略)
(確定裁判)
被告人Bについて
1 事実
  平成10年6月16日福岡地方裁判所飯塚支部宣告
  詐欺,道路交通法違反の罪により懲役1年6月
  平成10年7月1日確定
2 証拠(省略)
(法令の適用)
罰  条(被告人両名について)
  判示第1の1の行為のうち
殺人の点は,刑法60条,199条けん銃を発射した点は,刑法60条,平
成11年法律第160号(中央省庁等改革関係法施行法)1303条により
同法による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法31条,3条の13
判示第1の2の行為    
刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項
判示第2の1の行為    
刑法60条,199条
判示第2の2の行為    
刑法60条,190条
科刑上一罪の処理(被告人両名について)
判示第1の1の罪について      
刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合である
から,一罪として重い殺人罪の刑で処断)
刑種の選択(被告人両名について)
判示第1の1及び第2の1の各罪の所定刑中いずれも無期懲役刑を選択
累犯加重(被告人Bについて)
刑法59条,56条1項,57条により,判示第1の2及び第2の2の各罪
の刑についてそれぞれ4犯の加重(ただし,判示第1の2の罪の刑について
は同法14条の制限内で)
併合罪の処理
被告人Aについて
刑法45条前段,46条2項本文(刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪
   につき無期懲役刑に処し,他の刑を科さない。)
被告人Bについて
刑法45条後段,50条,45条前段,46条2項本文(刑及び犯情の最も
   重い判示第1の1の罪につき無期懲役刑に処し,他の刑を科さない。)
未決勾留日数の算入(被告人両名について)  
刑法21条
訴訟費用の不負担(被告人両名について)
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
第1 被告人らの経歴等
 1 被告人A
 被告人Aは,中学校卒業後,工員などとして稼働していたが,昭和58年ころか
ら福岡県内の暴力団であるH会の構成員となり,平成2年ころいったんH会から離
れたものの,平成9年1月ころから,H会内でC組を発足させようとしていたC
(以下「C組長」という。)の配下として行動するようになり,本件各犯行当時は,
同組の幹部組員(代貸)として活動していた。
 2 被告人B
   被告人Bは,中学校卒業後,自動車整備工等を経て,昭和48年ころから暴
力団構成員となり,平成元年ころいったん暴力団をやめたものの,平成9年1月こ
ろから,C組長の配下として行動するようになり,本件各犯行当時は,組長舎弟と
して活動していた。
第2 本件各犯行に至る経緯
 1 判示第1の各犯行について
  (1) 平成9年9月中旬ころ,C組長は,被告人両名及びC組構成員D(以下
「D」という。)に対し,H会内I組の元組長E(以下「被害者E」という。)を
殺害するよう指示し,被告人らもこれを了承した。
    その後,C組長はDに回転弾倉式けん銃1丁を手渡すなどし,被告人ら
は,被害者E方の下見をして同人の動向を探るなどしていた。
  (2) 同年10月2日ころ,C組長は,被告人両名らが被害者E殺害を実行しな
いとして,被告人Bを自宅に呼び寄せ,同被告人にも回転弾倉式けん銃1丁を手渡
して,被害者E殺害の実行を指示した。
    さらに,C組長は,同月5日ころ,被告人らを山中に連れ出してけん銃の
試射を行った後,被害者E方付近に赴いて同人方の下見をするなどした際,被告人
らに対し,被害者Eの車にわざと車をぶつけて交通事故に見せかけ,同人を自宅か
ら誘い出し,D及び被告人Bが被害者Eを射殺し,被告人Aが逃走の手助けをする
よう指示し,被告人らにおいてもこれを了承した。
  (3) 被告人らは,被害者E殺害を同月6日夜実行することとし,被告人両名及
びDが被害者E方付近に赴き,被告人Aが逃走準備のため近くで待機した後,D
が,その運転する盗難車を被害者E方の車にぶつけた上,被害者E方を訪問して同
人の妻と応対するうちに,被害者Eが自宅から姿を現し,そこで,被告人B及びD
が,判示第1のとおり,所携のけん銃を発砲するなどして,被害者Eの殺害等(以
下「E事件」という。)に及んだ。
 2 判示第2の各犯行について
  (1) ところが,E事件の際に使用した前記盗難車に付けていたナンバープレー
トは,C組構成員であるG(以下「被害者G」という。)が手配したものであり,
同人は,当該ナンバープレートの件で,警察から追及を受けることになりそうであ
った上,覚せい剤取締法違反の嫌疑も受けていたため,C組長は,E事件への関与
の発覚を恐れて被害者Gを佐賀県内のアパートに匿った。
  (2) 同月8日ころ,C組長は,被害者Gが逮捕されれば同人の口からE事件が
C組組員による犯行であることが発覚する恐れが強いとして,入院先の病院に被告
人Aを呼び寄せ,被害者Gの殺害を指示したが,被告人Aはいったんはその指示を
拒絶した。
    しかし,同月12日ころ,C組長は,被告人両名を前記病院に呼び出した
上,被害者Gを殺害するよう強く指示し,当初,被告人両名はこれに抵抗したもの
の,結局その殺害を承諾した。
  そして,その際,C組長は,被告人両名に対して,殺害方法等につき「道具を
使うな。ガラを上げるな。」などと指示した。
  (3) 被告人両名は,同病院を出た後,被害者G殺害について話し合うなどした
後,被告人Aが,C組組員であったF(以下「F」という。)を呼び出して,被害
者G殺害に協力するよう指示し,Fは,これを承諾した。
その後,被告人両名及びFは,被害者G殺害の方法等について,自動車の
助手席に乗せた被害者Gを,後部座席のFが背後から針金で首を絞めて殺害した
後,その死体を山中に埋めることとした。
  (4) 被告人両名及びFは,同月13日,針金等の犯行道具を購入するととも
に,判示第2の畑に,人が入る大きさの穴を掘って,死体遺棄の場所を準備した
後,被害者Gが匿われている前記アパートに赴き,同人に隠れ家を変えるなどと伝
えて,同人を車に乗せて前記畑付近に赴いた上,判示第2のとおり,同人の殺害等
(以下「G事件」という。)に及んだ。
第3 特に考慮した事情
 1 本件は,前判示のとおりの殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案(判示
第1)及び殺人,死体遺棄の事案(判示第2)である。
 2 まず,判示第1のE事件について見るに,
  (1) 被告人両名の本件犯行は,自己が所属していたC組の組長から,被告人両
名にとって個人的には何の恨みもない被害者Eを射殺するよう指示されたことに基
づくもので,暴力団組織の中において,被告人両名がその組長の指示に反すること
は事実上困難であったとは認められるものの,かかる事情は,被告人らが自らの意
思でC組に加入し,同組幹部として活動していたことに起因するものであるから,
本件犯行を何ら正当化するものではない。
  (2) また,被告人両名は,C組長の指示の下,複数のC組組員らとともに,被
害者E方の下見等をしたほか,被害者Eを確実に殺害するため,けん銃という殺傷
能力の極めて大きな凶器をC組長から渡されて用意するなど,周到な準備を行った
後,犯行当日には,偽計を用いて誘い出した被害者Eに対し,被告人Bにおいて,
Dとともに各自所携のけん銃で,至近距離から合計約11発もの弾丸を発射して数
発を命中させた上,犯行後は直ちに,現場付近で待機していた被告人A運転の車に
乗って逃走しているのであって,その犯行態様は,組織的,計画的かつ卑劣で残虐
なものである。
    そして,被告人両名は,下見等の事前の計画段階から関与した上,被告人
Bは,殺害の実行行為を担当し,被告人Aも,待機車両で逃走の手助けを行うなど
しており,被告人両名の役割は不可欠のものであったということができるのであっ
て,その犯行態様の点においても,酌むべき点はない。
  (3)そして何より,被害者Eは,格別落ち度もないのに,無惨に死亡させられ
たのであって,その犯行結果は取り返しのつかない重大なものである。
   被害者Eの妻は,眼前で夫が銃撃されるのを目撃し,被害者Eの娘も,血ま
みれになって瀕死の状態の父親の姿を目の当たりにしており,その後間もなく被害
者Eは意識を取り戻すこともなく死亡しているのであるから,その遺族らは多大な
精神的苦痛を被るとともに,現在でも厳しい処罰感情を抱いているのは当然のこと
である。
    加えて,被告人らは,夜間住宅街において本件銃撃及び殺害に及んだこと
により,近隣住民に対して,多大な恐怖や不安感を抱かせたものである。
 3 次いで,判示第2のG事件について見るに,
  (1) 被告人両名は,被害者Gが警察に逮捕されてE事件がC組の手によるもの
であることが発覚することを恐れたC組長から,被害者Gを殺害するよう指示さ
れ,同人に対する恨み等は何らないにもかかわらず,E事件の7日後に,本件各犯
行に及んだものであって,E事件同様,その犯行は,暴力団ならではの身勝手な論
理,動機に基づくものである。
  (2) その犯行態様についても,被告人両名が,Fとともに,事前に殺害後に遺
体を埋める穴を掘った上,被害者Gを隠れ家を変えるためなどとだまして犯行現場
まで誘い出し,被告人らの殺害の意図に気付いた被害者Gが必死で助命嘆願するの
にも耳を貸さず,逃げる同人を追いかけて捕まえ,予め殺害のために準備していた
針金を用いて3人がかりで絞殺したばかりか,殺害後,その遺体を前記の穴に放り
込んで遺棄し,殺害の隠蔽を図るなどしたものであって,死者に対する悼みも見受
けられず,計画的かつ残忍な犯行である。
    被告人両名は,C組長からの指示の下,殺害方法や殺害場所等を実質的に
決定して,暴力団組織内での地位が下の関係にあるFに指示をした上,自らも直接
犯行を実行しており,その役割は本件犯行に不可欠なものであったと認められる。
  (3) そして,被告人らの本件犯行の結果は,E事件同様,人の死という取り返
しのつかない重大なものである。
  また,被告人らの犯行により,被害者Gが感じたであろう恐怖感,絶望感,同
人が同じ組の者たちから殺害されることになった無念の思いは容易に察せられ,そ
の遺族は現在も厳しい処罰感情を抱いている。
 4 加えて,被告人両名とも,長期にわたって暴力団組員として活動してきたも
のであって,一時的に暴力団組織を離脱した時期があったにせよ,その生活状況は
不良であったと認められる上,被告人両名とも多数の前科(被告人Bについては前
記の累犯前科を含めて)を有していることを併せ考えれば,被告人両名の反社会性
には根深いものがあるとうかがわれる。
 5 他方で,被告人両名は,当時所属していた暴力団の組長から強く指示されて
本件各犯行に及んだものであり,各犯行を積極的態度で遂行したとまでは認められ
ないこと,被告人両名は,現在では自己の罪を全て認め,被害者らの遺族らに謝罪
文を書くなど反省の情を深めていること,被告人Aには,妻と幼い子供がいるこ
と,被告人Aの妻が,被害者E宅に赴き,その遺族に謝罪をし,また,被害者Gの
遺族に対しては,50万円を慰謝料の一部として支払っていること,被告人Bが,
被害者Eの遺族に30万円の支払いを申し出ていること,仏教関係者が,被告人B
について,今後,被害者らの冥福を祈り懺悔するための指導を約していること,被
告人両名が財団法人日本臓器移植ネットワークに臓器提供の意思表示をしているこ
となど,被告人両名のためにそれぞれ酌むべき事情も存在する。
 6 しかしながら,前記のとおりの,本件事案の悪質重大性に鑑みれば,被告人
両名の刑事責任は極めて重大であるというほかなく,被告人両名のために酌むべき
事情を十分考慮しても,被告人両名に対しては,いずれも主文掲記の無期懲役刑に
処すべきものと判断する。
(検察官山本美雪,私選弁護人徳永賢一〔被告人A関係〕,川副正敏〔被告人B関
係〕各出席)
(求刑 被告人両名につき各無期懲役)
  平成13年11月1日
     福岡地方裁判所第3刑事部
         裁判長裁判官  濱 崎   裕
            裁判官  向 野   剛
            裁判官  岡 崎 忠 之

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