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平成23年3月29日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成22年(ワ)第17304号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日平成23年2月25日
判決
原告アテンションシステム株式会社
被告株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
同訴訟代理人弁護士深井俊至
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,機体持主情報欠片も呼出しできない電話番号を記憶した携帯電話機
の販売と無線通信料等口座振替決済は全て無料化せよ。
2被告は,端末機の請求160万円及び[第1の呼び出し番号と第2の呼び出
し番号]記憶販売する携帯電話機が[繋ぐ機体持主情報呼出す端末機技術]特
許権を直接侵害した証拠は,通信記録に残る無線通信料等口座振替決済と回収
する利益の50%支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が,被告が原告の有する後記本件特許権を侵害しているなどと
して,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づき,携帯電話機の販売と
無線通信料等の口座振替決済の無料化を求めると共に,民法709条に基づく
損害賠償として,160万円及び上記特許権侵害により得られた額の50%の
支払を求めた事案である。
1判断の基礎となる事実
(1)原告の特許権
原告は,次の特許に係る特許権を有している(その請求項1に係る発明を,
以下「本件特許発明」といい,その特許権を「本件特許権」という。)。
特許番号特許第3010152号
発明の名称通信不正傍受阻止システム
出願日平成9年12月19日
出願番号特願平9−365392号
登録日平成11年12月3日
特許請求の範囲
「【請求項1】第1の呼び出し番号と,公開されていない第2の呼び出し
番号とを有する通信機,および前記第1の呼び出し番号と前記第2の呼び
出し番号とを関連付けて記憶した記憶手段を有する他の通信機を含み,前
記他の通信機に前記第1の呼び出し番号が通知されることに対応して,前
記他の通信機が前記第2の呼び出し番号に対応した回線で前記通信機を
呼び出す,通信不正傍受阻止システム。」
(2)構成要件の分説
本件特許発明の構成要件は,次のとおり分説するのが相当である。
A第1の呼び出し番号と,公開されていない第2の呼び出し番号とを有
する通信機,
Bおよび前記第1の呼び出し番号と前記第2の呼び出し番号とを関連
付けて記憶した記憶手段を有する他の通信機を含み,
C前記他の通信機に前記第1の呼び出し番号が通知されることに対応
して,前記他の通信機が前記第2の呼び出し番号に対応した回線で前記
通信機を呼び出す,
D通信不正傍受阻止システム。
2当事者の主張
(原告の主張)
被告は,平成12年から現在まで,無線通信する無線通話料と電子メール料
と電子情報料の口座振替決済と回収を実施している。
被告は,機体持主情報を預かり有料化するために,電話番号と根本的に相違
する新規な「第1の呼び出し番号と第2の呼び出し番号」を無断記憶する携帯
電話機について,販売の申出をしている。
被告は,「第1の呼び出し番号と第2の呼び出し番号」を無断で記憶した携帯
電話機が[繋ぐ機体持主情報を呼び出す端末機技術]特許権を直接侵害した無
線通信料等口座振替決済と回収する利益を得ている。
よって,「第1の呼び出し番号と第2の呼び出し番号」を無断で記憶した全て
の携帯電話機は,本件特許発明の技術的範囲に属する。
本件特許権の侵害により,原告は,端末機160万円及び無線通信料等口座
振替決済と回収する利益の50%相当額の損害を被った。
(被告の主張)
(1)本案前の主張
ア原告は,平成21年7月31日に,被告に対し,本件特許権に基づく特
許権侵害差止等請求事件を提起しており(以下「先行訴訟」という。),そ
の請求棄却判決は確定している。そして,先行訴訟における原告の主張立
証の内容に照らせば,本件訴訟は,先行訴訟の蒸し返しであるから,訴権
の濫用又は信義則に反するものである。
イまた,本件訴訟は,請求内容が不明,一義的に確定できない又は特定性
を欠くものである。
ウしたがって,原告の訴えはいずれの点からも却下されるべきである。
(2)本案の主張
原告の主張は否認ないし争う。
なお,原告の請求は,本件特許権の侵害について具体的な主張がなく失当
であるし,先行訴訟の既判力にも抵触する。
第3当裁判所の判断
1本件訴訟の内容
原告の本件訴訟における請求及び主張は,その意味内容を合理的に理解する
ことが困難であるが,最大限に善解すれば,少なくとも原告が本件特許権を有
することを前提として,被告が携帯電話料金の口座振替等をしていることや,
携帯電話機の販売の申出をしていることなどを主張し,その行為が本件特許権
の侵害行為であることを理由として,本件特許権に基づき,上記第1請求欄記
載の判決を求めているものと解される。
2本案前の主張について
(1)被告は,本件訴訟が先行訴訟の蒸し返しであることを理由に,訴権の濫用
や信義則違反を主張する。
証拠(乙1ないし乙15)によれば,原告が被告に対し,本件特許権の侵
害を理由として本件訴訟とほぼ同内容の先行訴訟を提起したが,原告の請求
が棄却されたこと,先行訴訟は上告棄却により確定したこと,先行訴訟の主
張立証内容は本件訴訟のそれとほぼ同内容であることが認められる。
しかし,本件訴訟が先行訴訟と同一の特許権に基づく特許権侵害訴訟であ
るからといって,本件訴訟において,主張立証の補充や追完がされる可能性
を予め完全に否定することはできないから,本件訴訟の提起行為をもって,
それが訴権の濫用あるいは信義則違反であると直ちに断ずることはできな
い。
(2)また,本件訴訟の内容は,前記1のとおりかろうじて理解できないもので
はないから,請求内容が不明あるいは不特定ゆえに不適法であるということ
もできない。
(3)したがって,被告の本案前の主張には理由がない。
3本案の主張について
(1)原告は,被告の侵害行為を具体的に立証するものとして,唯一,被告作成
の「口座振替のご案内」(甲3)を証拠提出し,同書の「お客様電話番号」
欄に,「第1の呼び出し番号と第2の呼び出し番号」が記載されていると主
張する。
しかしながら,指摘にかかる同欄に記載されているのは,契約者の携帯電
話番号にすぎない。
そして,本件特許発明の構成要件Aにいう「第2の呼び出し番号」は「公
開されていない」ものであることは特許請求の範囲の記載に照らし明らかで
あるから,通常用いられている携帯電話番号が本件特許発明にいう「第1の
呼び出し番号と第2の呼び出し番号」に該当するようにいう原告の主張は,
その余の判断に及ぶまでもなく理由がない。
(2)そして原告は,本件訴訟において,裁判所が釈明を求めたにもかかわらず,
本件特許発明の解釈,本件特許権を侵害する製品の具体的構成,被告の具体
的侵害行為について,上記(1)のほか具体的に主張立証しない。
加えて,原告が本件特許発明の内容や被告の行為について主張するところ
は,これを最大限善解するとしたとしても,本件特許発明の特許請求の範囲
及び明細書の記載に基づかない主張であることは明らかであって,採用する
ことができない。
(3)以上のとおりであるから,原告の請求は,いずれも理由がない。
第4結論
よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官森崎英二
裁判官達野ゆき
裁判官山下隼人

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