弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件訴えのうち、被告が、原告の平成13年4月1日から平成1
4年3月31日までの事業年度の法人税について、平成15年7月
15日付けでした更正の請求に対してその更正をすべき理由がない
旨の通知処分の取消しを求める部分の訴えを却下する。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
平成16年行ウ第271号事件
(1)()
ア被告が、原告の平成11年4月1日から平成12年3月31日までの
事業年度(以下「平成12年3月期」という)の法人税について、平成

14年7月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
(以下、これらを併せて「平成12年3月期更正処分等」といい、後の
事業年度に係る処分についても、同様に略称する)のうち、納付すべき

税額円を超える部分及び過少申告加算税額
円を超える部分をそれぞれ取り消す。
イ被告が、原告の平成12年4月1日から平成13年3月31日までの
事業年度(以下「平成13年3月期」という)の法人税について、平成

14年7月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
(平成13年3月期更正処分等)のうち、納付すべき税額
円を超える部分及び過少申告加算税額
円を超える部分をそれぞれ取り消す。
ウ被告が、原告の平成13年4月1日から平成14年3月31日までの
事業年度(以下「平成14年3月期」という)の法人税について、平成

15年5月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
(平成14年3月期更正処分等)のうち、納付すべき税額
円を超える部分及び過少申告加算税額
円を超える部分をそれぞれ取り消す。
エ被告が、原告の平成14年3月期法人税について、平成15年7月1
5日付けでした更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通
知処分(以下「本件通知処分」という)のうち特定外国子会社等の課税

対象留保金額に関する部分を取り消す。
平成17年行ウ第69号事件
(2)()
被告が、原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事
業年度(以下「平成15年3月期」という)の法人税について平成16年

7月30日付けでした更正処分(ただし、平成17年11月28日付け更
正処分により減額された後のもの)のうち、次の部分を取り消す。
ア当期欠損金額円を
円(ただし、平成17年11月28日付け更正処分により
円に増額)とした処分のうち、同欠損金額
円(ただし、平成17年11月28日付け更正処
分によりに増額)を超え、
円に達するまでの部分。
イ翌期に繰り越す欠損金額円を
円(ただし、平成17年11月28日付け更正処分に
より円に増額)とした処分のうち、特定
外国子会社等の課税対象留保金加算もれとして
円を所得金額等に加算した部分。
2被告
本案前の答弁
(1)
本件訴えのうち平成14年3月期更正処分等の取消しを求める部分た
、(
だし、納付すべき税額円を超える部分及び過少
申告加算税額円を超える部分)をいずれも却下す
る。
本案の答弁
(2)
上記記載の部分を除き、原告の請求をいずれも棄却する。
(1)
第2事案の概要
本件は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国領チャネル諸
島ガーンジー(以下「ガーンジー島」という)に本店を有し、再保険を業と

、、
する法人であるP1の発行済株式の全てを保有している原告に対しP1が
租税特別措置法(以下「措置法」という)66条の6第1項所定の特定外国

子会社等に該当するとして、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金
額を原告の所得の金額の計算上、益金の額に算入して本件各事業年度の更正
処分等及び本件通知処分(以下、これらを併せて「本件各処分」という)が

されたため、これを不服とした原告が、本件各処分の取消しを求める事案で
ある。
1当事者等
原告は、国内に本店を置き、損害保険等を業とする株式会社である。
P1は、平成10年12月にガーンジー島において設立された再保険を業
とする外国法人であり、同社は設立以来、その発行済株式の全てを原告に所
有されており、措置法66条の6第2項1号が規定する外国関係会社に該当
する。
2関係法令には次のような定めがある。
特定外国子会社等の留保金課税(措置法66条の6)
(1)
ア課税対象留保金額の益金算入
ア措置法66条の6第1項は、その有する外国関係会社(外国法人
()
であって、居住者及び内国法人によって発行済株式等の50%超を直
接又は間接に保有されているものをいう。以下同じ)の直接及び間接

保有の株式等(株式及び出資をいう。以下同じ)の当該外国関係会社

の発行済株式の総数又は出資金額(以下「発行済株式等」という)に

占める割合が5%以上である内国法人に係る外国関係会社のうち、本
店又は主たる事務所(以下「本店等」という)の所在する国又は地域

(以下「国等」という)におけるその所得に対して課される税の負担

が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく
低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(以下「特
定外国子会社等」という)が、昭和53年4月1日以降に開始する各

事業年度において、その未処分所得の金額(措置法66条の6第2項
2号に規定する「未処分所得の金額」をいう。以下同じ)から留保し

たものとして、政令で定めるところにより、当該未処分所得の金額に
つき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分
(「」。

配の額に関する調整を加えた金額以下適用対象留保金額という
を有する場合には、その適用対象留保金額のうち、当該内国法人の有
する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するも
のとして政令で定めるところにより計算した金額(以下「課税対象留
保金額」という)に相当する金額は、当該内国法人の収益の額とみな

して当該特定外国子会社等の各事業年度の終了の日の翌日から2月を
経過する日を含む当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、
益金の額に算入する旨規定している。
イ租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という)39条の
()。
20第1項は、外国法人が外国関係会社に該当するかどうかの判定に
、、
ついては当該外国法人の各事業年度終了の時の現況によるものとし
内国法人が措置法66条の6第1項各号の内国法人に該当するかどう
かの判定については、当該各号に規定する外国関係会社の各事業年度
終了の時の現況によるものとする旨規定している。
イ特定外国子会社等の判定
ア措置法施行令39条の14第1項は、措置法66条の6第1項に
()
規定する政令で定める外国関係会社は、法人の所得に対して課される
税が存在しない国等に本店等を有する外国関係会社(同項1号)及び
その各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の
100分の25以下である外国関係会社(同項2号)とする旨規定し
ている。
イ措置法施行令39条の14第2項1号は、外国関係会社が同条1
()
項2号の外国関係会社に該当するかどうかの判定における「所得の金
額」は、当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金
、(「」。

額につきその本店等の所在する国等以下本店所在地国という
の外国法人税(法人税法69条1項に規定する外国法人税をいう。以
下同じ)に関する法令(以下「本店所在地国の法令」という)の規
。。
定により計算した所得の金額に、本店所在地国の法令により外国法人
税の課税標準に含まれないこととされる所得の金額等を加算し、還付
を受ける外国法人税の額で益金の額に算入している金額を控除した残
額とする旨規定している。
ウ措置法施行令39条の14第2項2号は、外国関係会社が同条1
()
「」
項2号の外国関係会社に該当するかどうかの判定における租税の額
は、当該外国関係会社の当該事業年度の決算に基づく所得の金額につ
き、その本店所在地国又は本店所在地国以外の国等において課される
外国法人税の額(同号イ)及び租税条約の規定により納付したものと
()。
みなされる外国法人税の額同号ロの合計額とする旨規定している
ウ課税対象留保金額の計算
ア措置法66条の6第2項2号は「未処分所得の金額」の意義につ
()、
いて、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につ
き、法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ず
るものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として政令
で定めるところにより当該各事業年度開始の日前5年以内に開始した
各事業年度において生じた欠損の金額に係る調整を加えた金額をいう
旨規定している。
イ措置法施行令39条の16は、措置法66条の6第1項に規定す
()
る適用対象留保金額とは、特定外国子会社等の各事業年度の未処分所
得の金額から、当該各事業年度において納付することとなる法人所得
税の額及び当該各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の分配の額の
合計額を控除した残額をいう旨規定している。
ウ措置法施行令39条の19は、措置法66条の6第1項に規定す
()
る課税対象留保金額とは、同項各号に掲げる内国法人に係る特定外国
子会社等の各事業年度の適用対象留保金額に、当該特定外国子会社等
の当該各事業終了の時における当該内国法人の有する当該特定外国子
会社等の直接及び間接保有の株式等の占める割合を乗じて計算した金
額をいう旨規定している。
外国法人税の意義
(2)
ア措置法施行令39条の14第2項1号においては、外国法人税の定義
につき法人税法69条1項を引用するところ、同条同項は、外国法人税
について「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定め

るものをいう」と規定している。

イ法人税法施行令141条1項は「法人税法69条1項に規定する外国

の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものは、外国
の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準
として課される税とする」と規定している。

ウ法人税法施行令141条2項は「外国又はその地方公共団体により課

される次に掲げる税は、外国法人税に含まれるものとする」と規定して

いる。
ア超過利潤税その他所得の特定部分を課税標準として課される税同
()(
項1号)
イ所得又は所得の特定の部分を課税標準として課される税の附加税
()
(同項2号)
ウ所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、特
()
定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他
これに準ずるものを課税標準として課されるもの(同項3号)
エ特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、収入金額そ
()
の他これに準ずるものを課税標準として課される税(同項4号)
エ法人税法施行令141条3項は「外国又はその地方公共団体により課

される次に掲げる税は、外国法人税に含まれないものとする」と規定し

ている。
ア税を納付する者が、その税の納付後、任意にその金額の全部又は
()
一部の還付を請求することができる税(同項1号)
イ税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者
()
が任意に定めることができる税(同項2号)
ウ合併、減資払戻しその他みなし配当(法人税法24条1項)の発
()
生事由により交付を受ける金銭の額又はその他の資産の価額に対して
課される税(その交付の基因となった株式の取得価額を超える部分に
対して課される部分を除く。同項3号)
エ租税条約に基づく政府間協議により移転価格合意があったことに
()
より我が国の法人税について減額更正があった場合に、その減額分の
所得を相手方の国外関連者に支払わないことを理由にこれを利益の配
当とみなして課される税(同項4号)
オ外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに
()
類する税(同項5号)
なお、上記アないしエは、平成13年政令135号により追加され
()()
たものである。
更正の理由付記
(3)
法人税法130条2項は、税務署長は、内国法人の提出した青色申告書
に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、その更正に
係る国税通則法28条2項に規定する更正通知書にその更正の理由を付記
しなければならない旨規定している。
3前提事実等(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない)

ガーンジー所得税法の規定等の要旨
(1)
ア標準税率課税
ガーンジー島に本店を置く法人(以下「居住法人」という)について

は、原則として、その全所得に対して標準税率による所得税が課される
(以下「標準税率課税」という。標準税率は、ガーンジー議会の議決


により定めることとされており、当該議決により定められた標準税率は
(、、、)

20%であるガーンジー所得税法5条甲10乙3乙15
(1)(2)
イキャプティブ保険会社による免税法人の選択
ガーンジー税務当局は、法令の規定に基づく免税申請があった場合に
おいて、当該申請をした団体が法令所定の要件を満たすときは、当該団
体を免税とすることができ、キャプティブ保険会社(企業等が、自らの
保険を専門に引き受けさせるために自ら設立する再保険会社)は、上記
の法令所定の要件を満たす団体に該当する。また免税を認められた団体
(以下「免税法人」という)は、法令で定める料金を支払うこととされ

ており、具体的には毎年500ポンドの申請料を支払う必要がある(ガ
ーンジー所得税法40A条、甲10、乙3。

ウ段階税率課税
ガーンジー所得税法所定の要件を満たす法人は、株主持分から生じる
投資所得及び保険非関連所得のみを課税対象所得として課税され、段階
的な税率による課税(以下「段階税率課税」という)を受けることを選

択することができる。すなわち、次に示す段階課税により株主のファン
ドの投資所得にのみ課税される(ガーンジー所得税法187A条、甲1
0、乙3。

株主の投資所得税率
25万ポンドまで20%
次の25万ポンドまで1%
次の50万ポンドまで0.5%
次の200万ポンドまで0.3%
超過部分0.1%
エ国際課税資格
居住法人はInternationalTaxStatus以
、(
下「国際課税資格」という)という税制上の資格を、申請により、ガー

ンジー税務当局から取得することができる。国際課税資格を取得した居
住法人の所得に対して適用される税率は、当該居住法人が、資格申請に
おいて、0%を上回り30%以下の百分率により申請し、承認された税
率となる(ガーンジー所得税法188C条、甲10。

資格申請は、ガーンジー税務当局に対する書面(以下「資格申請書」
という)の提出により行うものとし、資格申請書には、適用を申請する

税率(0%超30%以下の百分率)を明記するとともに、当該税率が申
請者にとって適しており、ガーンジー島の経済的利益の観点からも妥当
な水準であることの情報を記載し、ガーンジー税務当局は、国際課税資
格の取得要件が満たされている場合には、資格申請を承認し、国際課税
資格の証明書(以下「資格証明書」という)を発行することができる。

なお、ガーンジー税務当局は、資格申請を拒絶することについて全面的
な自由裁量権を有しており、資格申請を拒絶する場合には、申請者にそ
の旨を通知するが、その拒絶理由を示す必要はなく、また、申請者は、
その拒絶に対して異議を申し立てることができない(ガーンジー所得税
法188C条、同法188D条、甲10。

ガーンジー所得税法は、国際課税資格を取得した居住法人について、
段階税率課税を選択できない旨規定しており、国際課税資格を取得した
居住法人の所得に対して適用される税率は、当該居住法人が申請し、承
認を受けた税率となる(ガーンジー所得税法188E条、甲10。

免税団体所得税法(乙25)の規定の要旨
(2)
アガーンジー所得税法40A条を適用して免税を選択した免税法人は、
ガーンジー税務当局管理官へ課税年度終了後3年以内に書面で通知する
ことで、同法187A条の段階税率課税を選択できる(免税団体所得税
法3A条a、乙25、乙35。
(1)())
イ免税法人は、ガーンジ税務当局管理官へ課税年度終了後3年以内に書
面で通知することで標準税率課税を選択できる(免税団体所得税法3A
条b、乙25、乙35。
(1)())
なお、免税法人が上記ア又はイの選択をするとき、関係する当該課税
年度に支払われた年間料金は、当該課税年度に関し当該団体により支払
われることになる税金の支払又は税金のための支払と扱われ、また、当
該料金が当該税金の額を超える場合は、その差額は同団体に還付される
(免税団体所得税法3A条、乙25、乙35。
(2))
ウガーンジ所得税法187A条の段階税率課税を選択している法人又は
標準税率課税を選択している法人は、課税年度終了後3年以内にいつで
も、遡って免税申請することができる。なお、当該課税年度に係る納付
済税額があれば、過大納付額の還付を受けることができる(免税団体所
得税法2条、乙25、乙35。
(1))
P1は、平成10年(1998年)9月25日付け、平成12年(20
(3)
00年)4月14日付け、同年12月13日付け、及び平成14年(20
02年)1月31日付けの資格申請書において、いずれも、適用期間を1
年間とし、適用税率を26%とする資格申請をしている(甲11の1ない
し3、甲26。

そして、ガーンジー税務当局がP1に対して発行した平成10年(19
98年)10月8日付け、平成12年(2000年)4月20日付け、同
年12月21日付け、及び平成14年(2002年)2月7日付けの各資
格証明書(甲12の1ないし3、甲27)には、各資格申請及び26%の
適用税率を承認する旨と、その適用期間がそれぞれ平成11年(1999
年)12月31日、平成12年(2000年)12月31日、平成13年
(2001年)12月31日、及び平成14年(2002年)12月31
日をもって終了する旨が記載されている。
P1の課税状況
(4)
P1は、平成11年分、平成12年分、平成13年分及び平成14年分
の各課税年度について、適用税率26%の国際課税法人として賦課決定さ
れ(以下「本件外国税」という、本件外国税を納付している。


課税処分等の経緯
(5)
本件に関する課税処分等の経緯は、別紙1及び同2のとおりである。
4税額等に関する当事者の主張
原告の本件各事業年度の税額等に関する当事者の主張は、別紙3及び同4
記載のとおりであり、本件の争点であるP1が措置法66条の6第1項に規
定する特定外国子会社等に該当し、同項に規定する課税対象留保金額を原告
の所得の計算上、益金の額に算入すべきかどうかに関する部分を除き、計算
の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。
5争点
本件訴訟の争点は、平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが適法
(1)
な訴えであるかどうか(被告は、後記のとおり、不服申立前置を欠き、ある
いは出訴期間を徒過した不適法な訴えである旨主張するのに対し、原告はこ
れを争っている、原告は、本件通知処分のうち申告税額を上回る部分に

)(2)
ついて争うことができるか、本件各更正処分等において、P1が、原告の
(3)
特定外国子会社等(措置法66条の6第1項)に該当するとして、原告の所
得金額の計算上、P1に係る課税対象留保金額に相当する額を益金の額に算
入したことが適法か否か、及び本件各更正処分等の理由付記は適法か否か
(4)
である。そしてについては、特定外国子会社等とは、法人の所得に対して
(3)
課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関
係会社(措置法施行令39条の14第1項1号、又はその各事業年度の所得

に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外
国関係会社(同項2号)であって、外国法人税賦課の有無やその税率が問題
となるところ、措置法施行令39条の14第2項1号が、外国法人税は「法

人税法69条1項に規定する外国法人税をいう」と規定していることから、

本件外国税が法人税法69条1項の外国法人税に該当するか否かが問題とな
る。
6争点に係る当事者の主張
争点について
(1)(1)
(被告の主張)
ア不服申立前置を欠く訴えであること
ア国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができる
()
ものの取消しを求める訴えは、異議申立てをすることができる処分に
あっては異議申立てについての決定を、審査請求をすることができる

処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ
提起することができないこととされている(国税通則法115条1項
本文)が、同項ただし書きによれば、更正決定等の取消しを求める訴
えを提起した者が、その訴訟の係属している間に当該更正決定等に係
る国税の課税標準等又は税額等についてされた他の更正決定等の取消
しを求めようとするとき(同項2号、又は審査請求についての裁決等

を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があると
き、その他その裁決等を経ないことにつき正当な理由があるとき(同
項3号)には、例外的に、不服申立てを経ないで取消訴訟を提起する
ことができるとされている。
原告は、平成14年3月期更正処分等について審査請求をしていな
いし、国税通則法115条1項3号に規定する「正当な理由」がある
とも認められず、その他不服申立てを経ないで取消訴訟を提起するこ
とができる例外事由も認められない。したがって、原告の本件訴えの
うち、平成14年3月期更正処分等の取消しを求める部分(ただし、
納付すべき税額円を超える部分及び過少申
告加算税額円を超える部分)は、不服申立前
置を欠く不適法な訴えであるから却下されるべきである。
イ原告は、平成14年3月期更正処分等について、不服申立てにつ
()
いての決定・裁決を経ないことに国税通則法115条1項3号所定の
「正当な理由」がある旨主張するが、以下に述べるとおり、原告の主
張は失当である。
国税通則法115条1項3号後段は、行政庁に審査・裁決させるこ
とに意味がない場合の例外規定であるから、関連する数個の処分の一
部について同号所定の「正当な理由」があるか否かを判断するに当た
っては、当該処分について不服申立てを不要とすることに合理的な理
由が認められるか否かを、それぞれの処分の目的・性質・効果等の関
連において判断する必要があり、各処分が実質的に同一であると認め
られる場合や、1つの処分について不服申立てをした以上、他の処分
について不服申立てをすることが無意味と見られることが明らかであ
る場合などが同号所定の「正当な理由」があるときに当たると解され
る。
そして、更正の請求は、納税申告書を提出した者が、その申告内容
を自己に有利に是正することを求めて行政庁に是正権の発動を請求す
る行為であり、更正すべき理由がない旨の通知処分は、行政庁が、是
正権の発動を拒否し、申告税額等について更正の請求額まで減額する
ことを認めない旨確認する効果を持つにすぎない。これに対して、更
正処分は、本税の額を確定する効果を有する処分であり、加算税賦課
決定処分は、本税の額を申告税額等よりも増額する更正処分等に附帯
して、一種の行政上の制裁として課される処分である。
、、
そうすると更正すべき理由がない旨の通知処分と更正処分等とは
その目的・性質・効果等を異にするものであって、実質的に同一の処
分であるとはいえず、また、更正すべき理由がない旨の通知処分につ
いて審査請求をした以上、更正処分等について不服申立てをすること
が無意味と見られることが明らかであるとはいえず、更正すべき理由
がない旨の通知処分について適法な不服申立てを経ているとしても、
更正処分等について不服申立てを経ていないことにつき、国税通則法
115条1項3号に規定する「正当な理由」があるとはいえない。
本件では、平成14年3月期更正処分等と本件通知処分は、処分の
日及び処分事由を全く異にしており、平成14年3月期更正処分等が
行われた時点においては、本件通知処分について原告が主張する違法
、、
事由はもちろん平成14年3月期更正処分等の処分事由についても

国税不服審判所長による判断は全く示されていなかったのであるから
平成14年3月期更正処分等に対して不服申立てをすることが無意味
であるとはいえないし、本件通知処分に対する審査請求において、原
、、、
告は本件通知処分固有の違法事由しか争わずその裁決においても
上記違法事由についてのみ具体的な判断がなされたにすぎないのであ
るから、実質的にみても、平成14年3月期更正処分等について審査
請求及び裁決を経たとはいえない。
以上のとおりであるから、平成14年3月期更正処分等につき審査
請求についての裁決を経ていないことに国税通則法115条1項3号
所定の「正当な理由」があるとはいえない。
イ出訴期間経過後の訴えであること
ア本件訴訟は、平成14年3月期更正処分等のあった日である平成
()
15年5月30日から1年以上を経過した平成16年6月24日に提
起されたものであるから、行政事件訴訟法(平成16年法律第84号
改正前。以下「旧行訴法」という)14条3項の定める出訴期間を経

過した後に提起されたものであって、不適法である。
イ原告は、出訴期間を経過している点について、本件更正の請求か
()
ら本件通知処分の取消しを求める訴えまでの経緯にかんがみれば、原
告が本件通知処分を争えば、平成14年3月期更正処分等についても
当然に争ったことになり所期の救済が得られるものと考えたことは明
らかであるから旧行訴法14条3項ただし書き所定の「正当な理由」
がある旨主張する。
しかし、旧行訴法14条が取消訴訟の出訴期間を制限したのは、行
政処分の効果が不安定のまま長期間にわたって放置されるのを防止す
る趣旨であるところ、原告の上記主張は、単に原告の法の不知・誤解

「」。
をいうものにすぎず正当な理由に当たらないことは明らかである
ウ原告は、平成14年3月期更正処分等のうち原告が取消しを求め
()
ているのは、特定外国子会社等の課税対象留保金額に関する部分のみ
であるから、平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えについて本
案審理を行ったとしても、何らその効果を不安定なまま長期間にわた
って放置することにはならないし、本件通知処分のうち特定外国子会
社等の課税対象留保金額に関する部分が取り消されたにも関わらず、
平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが不適法であるとして却
下された上、同処分等が確定することがあれば、それが著しく納税者
の信頼を害するなどと主張する。
しかし、旧行訴法14条3項は、出訴期間を徒過した場合には「正
」、
当な理由がなければ訴えを提起できない旨規定しているのであって
「」、
ここにいう正当な理由とは出訴を妨げる理由にほかならないから
出訴を妨げる理由の存否ではなく、原告の本案についての主張を逐一
考慮する余地はない。また、仮に本件通知処分の一部が判決によって
取り消され、税額等の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎とな
った事実と異なることが確定した場合には、いわゆる後発的理由によ
る更正の請求(国税通則法23条2項)あるいは職権による減額更正
による是正の途が残されているのであるから、原告の上記主張はいず
れも失当である。
(原告の主張)
ア平成14年3月期更正処分等について決定又は裁決を経ていないこと
については、国税通則法115条1項3号の「正当な理由」が存する。
ア国税通則法115条1項3号の「正当な理由」の意義
()
国税に関する法律に基づく処分の取消訴訟について、当該処分が不
服申立てをすることができるものであるときは、原則として不服申立
ての決定又は裁決を経た後でなければ訴えを提起することができない
としているのは、租税の賦課に関する処分については、課税標準の認
定が複雑かつ専門的であるから、出訴に先立って不服申立手続を要求
することにより、行政庁の知識と経験を活用して訴訟に至ることなく
事件の解決を図ることができること及び訴訟に移行した場合に事実関
係の明確化に資するという二重の意味において意義を有し、かつ、合
、、、
理的な根拠を持つし他面国税の賦課は大量的・回帰的であるから
不服申立ての前置を要求することは、上記のことと相まって、裁判所
が訴訟の氾濫に悩まされることを回避しうること及び租税行政の統一

的運用に資することが大きいことに重要な意義を認めうるからである
また、国税不服審判所長は、更正の請求に対する処分について不服
申立てがなされている場合に、その更正の請求に係る国税の課税標準
等についてされた他の更正決定等について不服申立てがされていなく
ても、その更正決定等をあわせ審理することができるものとされてい
る(国税通則法104条4項、2項。このように、不服申立てがされ

ていない他の処分についてもあわせ審理ができることとされている趣
旨は、相互に密接な関連のある複数の処分について判断の抵触を避け
ることにある。そして、国税不服審判所長は、あわせ審理をする場合
には、不服申立てのされた処分のほか、あわせ審理をした処分につい
ても、調査・審理し、判断しなければならないとされている。
したがって、不服申立てのされた更正決定等については、決定・裁
決がされたが、あわせ審理された更正決定等について決定・裁決がさ
れなかった場合のように、2つの処分が相互に密接な関連を有し、か
つ、その実体要件が実質的に共通である場合には、一方に対して不服
申立ての決定・裁決を経ていれば、他方についてこれを経ていないこ
とに、国税通則法115条1項3号所定の「正当な理由」があるもの
と解すべきである。なぜならば、このように2つの処分が相互に密接
な関連を有し、かつその実体要件が共通である場合には、一方に対し
て不服申立てを経ていれば、他方に対する不服申立てにおいても同じ
判断が示される可能性が大きく、あえて不服申立ての前置を要求する
必要性と合理性に乏しいからである。
イ平成14年3月期更正処分等については、本件通知処分に対する
()
審査請求と、あわせ審理がされていることに加え、両処分は、同年度
、、、
の課税標準等に関するものであって相互に密接な関連を有しかつ
その実体要件も実質的に共通しており、本件通知処分のうち特定外国
子会社等の課税対象留保金額に関する部分が取り消されれば、平成1
4年3月期更正処分等のうち納付すべき税額
、、
円を超える部分も取り消される関係にあるといえるからその目的
性質、効果等に照らしても、平成14年3月期更正処分等について不
服申立ての経由を不要とすることに合理的理由がある。
したがって、平成14年3月期更正処分等について不服申立ての決
定・裁決を経ていないことには国税通則法115条1項3号所定の正

当な理由」がある。
イ平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが処分から1年を経過し
て提起されたことについて旧行訴法14条3項ただし書き所定の「正当
な理由」が存在する。
アすなわち、本件において、原告が平成15年5月13日に本件更
()
正の請求を行ったところ、被告は、同月30日付けで、平成14年3
月期更正処分等を行い、同年7月15日付けで本件通知処分を行い、
これに対し、原告は本件通知処分を不服として同年8月7日に審査請
求を行い、かかる審査請求においては、平成14年3月期更正処分等
についてもあわせ審理が行われ、平成16年3月30日付けで審査請
求を棄却する裁決がされ、その後同年6月24日、原告は、平成14
年3月期更正処分等及び本件通知処分に対する取消訴訟を提起してい
るという経過にかんがみると、原告は、本件通知処分を争えば、平成
14年3月期更正処分等についても当然に争ったことになり所期の救
済が得られるものと考えたことは明らかであり、平成14年3月期更
正処分等について旧行訴法14条3項本文所定の出訴期間内に取消訴
訟を提起しなかったとしてもやむを得ないというべく、本件において
同条項ただし書所定の「正当な理由」があると解すべきことは明らか
である。
イ被告は、旧行訴法14条が取消訴訟の出訴期間を制限したのは、
()
行政処分の効果が不安定のまま長期間にわたって放置されるのを防止
する趣旨であり、単なる法の不知・誤解が「正当な理由」に当たらな
いことは明らかである旨主張する。
しかし、原告は、単なる法の不知・誤解が「正当な理由」に当たる
と主張しているわけではない。平成14年3月期更正処分等は、本件
通知処分の審査請求の際にあわせ審理がされており、かつ、本件通知
処分のうち特定外国子会社等の課税対象留保金額に関する部分が取り
消されれば、平成14年3月期更正処分等のうち納付すべき税額
円を超える部分も取り消されるべき関係にある
といえるのであり、更に平成14年3月期更正処分等のうち原告が取
消しを求めているのは特定外国子会社等の課税対象留保金額に関する
部分のみであるから、本案審理を行ったとしても、何らその効果を不
安定なまま長期間にわたって放置することにはならないことから「正

当な理由」があると主張するものである。むしろ、本件通知処分のう
ち特定外国子会社等の課税対象留保金額に関する部分が取り消される
場合であっても、平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが不適
、、
法であるとして却下された上同処分等が確定してしまうというのは
納税者の信頼を著しく害するものというべきである。
争点について
(2)(2)
(被告の主張)
更正すべき理由がない旨の通知処分は、納税者の更正の請求に対し、課
税庁が減額更正を拒否し、申告税額等について税額を全体的に見直し、減
額を認めないことを確認する効果をもつ処分であるから、同処分の取消し
を求める訴えは、申告税額等の減額を拒否する課税庁の処分の取消しを求
める訴えであることは明らかであり、同処分が取り消される場合とは、税
額が申告税額を下回る場合であるところ、原告は、平成14年3月期の法
人税の納付すべき税額円を下回る部分の税額
については争わないから、平成14年3月期の法人税の確定申告における
納付すべき税額円については、これを認容して
いるというほかない。したがって、本件通知処分の取消しを求める請求に
は理由がない。
(原告の主張)
被告は、原告が、平成14年3月期の法人税の納付すべき税額
円を下回る部分の税額については争わないから、平成1
4年3月期の法人税の確定申告における納付すべき税額
円を認容しているというほかない旨主張する。
しかし、原告は、本件通知処分のうち、特定外国子会社等の課税対象留
保金額に関する部分の取消しを求めているのであり、平成14年3月期の

確定申告における納付すべき税額円についても
そのうち、当該課税対象留保金額に関する部分を争っていることは明らか
である。ただ、原告の平成14年3月期の法人税については、更正の請求
後、本件通知処分がされる前に平成14年3月期更正処分等がなされ、そ
、、
の結果原告の納付すべき税額が円とされたため
審査請求及び本件訴訟においては、上記納付すべき税額とされた
円から特定外国子会社等の課税対象留保金額に係る部分を

控除した円を超える部分を争っているのである
つまり、原告が取消しを求めているのは、本件通知処分のうち特定外国子
会社の課税対象留保金額に関する部分であり、当該部分を平成14年3月
期更正処分等によって確定された納付税額である
円から控除した金額である円が平成14年3月
期に原告が納付すべき税額であることは争わないと表現したものにすぎな
い。
争点について
(3)(3)
(被告の主張)
ア外国法人税の意義
ア外国法人税は、法人税法69条1項による外国税額控除の対象と
()
なる外国の租税であり、同条は、外国法人税の意義について、外国の
法令により課される法人税に相当する税で政令に定めるものをいうと
規定するところ、ある外国の租税が外国法人税に該当するか否かは、
我が国の外国税額控除の可否に直結するものであるから、外国法人税
の意義の解釈に当たっては、この外国税額控除の制度趣旨を踏まえる
必要がある。
、、
外国税額控除の制度は国際的二重課税の排除の制度の1つであり
国内に源泉のある所得と国外に源泉のある所得との間の課税の公平の
維持に役立つのみでなく、投資や経済活動を国内において行うか、そ
れとも国外において行うかについて税制の中立性を維持すること(資
本輸出の中立性)に寄与するものである。このような外国税額控除制
度の趣旨や、外国税額控除が単に損金算入を認めるものではなく、自
国の法人税額を直接相殺する仕組みをとっており、自国の課税権を放
棄する制度であることを踏まえれば、法人税法の解釈上、外国の租税
が外国法人税であるか否かを決定する基準となるのは我が国の所得税
及び法人税であると解すべきである。
そして、ある外国の租税が仮に制度上租税の名をもって呼ばれてい
ても、それが租税に該当しない場合には、二重課税が存在するとはい
えないから、外国法人税に該当し、我が国で外国税額控除の対象とさ
れ得るためには、それが我が国で通用している租税の概念に該当する
ことが必要である。
イ租税の意義
()
租税とは、国又は地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付と
、、
してではなく公共サービスを提供するための資金を調達する目的で
法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付をいい、①公共サービス
のための資金調達を目的とする、②一方的・権力的課徴金の性質をも
()
、、
つ租税の強行性③特別の給付に対する反対給付の性質をもたない
④納税者の能力に応じて一般的に課される、⑤金銭給付であることを
原則とするといった特色を有している。
このように、租税は、国民の富の一部を強制的に国家の手に移す手
段であることから国民の財産権への侵害の性質を持たざるを得ず一
、、

方的・権力的課徴金(租税の強行性)の性質を持つことになる。換言

すれば、国や地方公共団体は、税法に定める特定の要件に該当すると
きは、一方的に納税義務の実現を求めるということであり、その義務
は法規によって設定され、かつ、法規によって義務の内容が定められ
るのであって、租税法律関係においては、契約によって法律関係が形
成されるような任意性を原則的に欠いている。すなわち、租税法上の
法律関係は、租税法の規定によって決定されるのであって、納税者と
国又は地方公共団体との間で、合意によってその内容を定める余地は
残されていないし、法律に定められている権利義務の内容が、同様の
事実については一様のものとして画一的に与えられ、行政機関の裁量
又は行政機関と納税者との合意によって変更することは許されない。
ウ我が国の法人税の強行性
()
我が国の法人税についてみると、法人税法において、課税標準、税
率、申告時期、納付時期、還付額の算定方法などが法定されており、
同じ条件であれば、同じ額の法人税が課され、給付又は還付される仕
組みになっていて、納税者の選択により、あるいは納税者と課税庁と
の合意により課税標準の範囲や計算方法、税率、納付時期、還付額な
どが個別に決定されることはなく、また、法定の税率を超える税率の
適用を認める規定はないし、課税庁が任意に税率を定めることができ
る旨の規定も存在しない。
このように、我が国の法人税は、税額の計算から納付、還付に至る
まで、すべてが法定されており、納税者と課税庁の合意によって法律
関係が形成され得るという任意性はなく、租税の特性である強行性を
有しているといえるから、ある外国の租税が法人税法上の外国法人税
に該当するか否かの判断に当たっては、当該外国の租税が、上記に述
べた強行性を有しているか否かについて検討されなければならない。
エ法人税法施行令141条3項の趣旨
()
我が国の法人税が、外国法人税について、我が国の租税概念に沿っ
て、強行性を要件の1つとしていることは、法人税法施行令141条
の規定及びその改正経緯からも明らかである。
a平成13年政令135号により法人税施行令141条3項が改正
され、外国又はその地方公共団体により課される租税であっても、
①税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は
一部の還付を請求することができる税(同項1号、及び②税の納付

が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定
めることができる税(同項2号)は、外国法人税に該当しないこと
が明らかにされた。このような租税が外国法人税に該当しないとさ
れたのは、納付や還付に関して納税者の裁量が広範であり、その点
で、我が国の法人税に相当する税には該当しないものと考えられる
からである。
b前記改正規定は、制度の趣旨、取扱いを明確化したものであり、
これまでの解釈、取扱いを変更するものではない。すなわち、課税
の中立性、公平性の維持に必要な外国税額控除制度の対象となる外
国法人税は、我が国の法人税に相当する税に該当することを要する
ところ、この改正前の外国税額控除制度においては、文言上、制度
の対象となる外国法人税の定義の外延が必ずしも明確でなかったこ
とから、これを明確にするために、当時タックス・ヘイブンにおい
てよく行われていた制度で外国法人税に相当しない例を明記するこ
。、、
とにしたものであるしたがって法人税法施行令141条3項は
明らかに外国法人税に含まれない租税を例示したものとみるべきで
あるから、同項各号に掲げる租税のみが外国法人税に含まれないも
、、
のであるとはいえず同項各号に列挙されていないものであっても
、、
強行性がないなど我が国の法人税概念に該当しないものであれば
形式的には所得税、法人税等の名称が使用されていたとしても、外
国法人税には該当しないと解すべきである。
c原告は、法人税法施行令141条3項各号は、外国法人税に該当
しない場合を限定的に列挙した規定である旨主張する。
しかし、規定の形式上、法人税法69条1項が「外国法人税」に
ついて「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定
めるもの」と規定し、外国法人税に該当するためには「法人税に相
当する税」であることが前提であることが法律上明確に規定され、
その上でいかなる「法人税に相当する税」が外国法人税に該当する
かという点についての具体的な定めが政令に委任されているのであ
るから、この「法人税に相当する税」という要件に該当しない場合
を政令が限定列挙するということは考えられない上、実質的に検討
しても、諸外国において採られている、又は今後採られるであろう
我が国の法人税に相当しない租税の形態を網羅的に列挙することは
不可能であることは明らかである。
また、外国税額控除制度は、資本輸出の中立性確保という政策的
判断から課税を減免する国家による一方的な恩恵的措置であり、こ
のような外国税額控除に関する課税減免規定である法人税法69条
については、その趣旨、目的に即した限定解釈を行うことが許され
るところ、法人税法69条の規範内容は、我が国の所得税及び法人
税を基準にして、控除対象となる外国法人税該当性を判断し、これ
に該当しない場合には外国税額控除を受けることがないということ
を含意しているのであって、外国法人税に該当しないものがあらか
じめ明示的に列挙されなければ、外国の租税がすべて外国法人税に
該当することになるという見解が、外国税額控除制度の本質に反す
る不合理な解釈であることは明らかである。
したがって、原告の上記主張には理由がない。
d原告は、法人税法施行令141条3項1号及び2号の定める租税
が外国法人税に該当しないこととされたのは、実質的には法人税負
担がない租税であるからであり、P1は、本件外国税について実質
的に税負担を負っているから、同項1号及び2号が規定する場合と
は性質が異なる旨主張する。
しかし、課税の段階で納税者の広範な裁量が認められる租税は、
納税者が自らの裁量によって実質的な負担を軽減することができ、
その後の納付、還付の段階における強行性の有無にかかわらず、強
行性を欠いていることは明らかである。課税の段階で納税者が税率
を任意に選択できたり、納税者と課税庁の合意によって税率が定ま
る場合と、税率自体は法令の規定によって一義的に定まっていても
納税後に納税者が任意に還付を求めることができる場合では、たと
え納税者が実質的な負担を負っていたとしても、強行性を欠き、我
が国の法人税に相当する税の負担を負っているとはいい難い点にお
いては何ら異なるところはなく、原告の上記主張は理由がない。
オ外国法人税に該当するか否かの判定基準のまとめ
()
法人税法施行令141条3項は、我が国の法人税に該当しないもの
として、納付、還付の段階において納税者の裁量が認められるものを
、、
挙げているが課税の段階で納税者の広範な裁量が認められるものは
納付、還付の問題を生じるまでもなく、そもそも強行性を欠いている
ことは明らかである。したがって、ある税が外国法人税に該当するか
否かを判定するために、その税が租税としての特質である強行性を有
しているか否かについて検討する場合、給付の強行性の観点からばか
りでなく、税額の決定など、課税そのものの強行性の有無の観点から
も検討する必要があり、法人税法施行令141条3項が明示するよう
な納付又は還付に関する納税者の裁量が広範な税だけでなく、課税に
、、
関する納税者の裁量が広範な税も租税の特性としての強行性を欠き
外国法人税に該当しない。
また、租税の特性である強行性は、仮に納付及び還付について納税
者の裁量を認めると、結果として租税債務自体が存在しないのと同様
の状態になることからすると、徴収段階においても認められるべきで
ある。そして、租税については、租税の公共性にかんがみ、租税の確
実かつ能率的な徴収を図るためその存在及び金額を確定する権限確
、(
定権)と、任意の履行がない場合に自らの手で強制的実現を図る権限
(強制徴収権・自力執行権)とが租税債権者たる国及び地方団体に与
えられているのであって、自力執行力を有することも我が国の租税の
特性に属するというべきである。
イ本件外国税について
ア本件外国税は、ガーンジー所得税法に基づき法人の所得を課税標
()
準として課されたものではあるが、税額計算の重要な要素である税率
を0%超30%以下の範囲において納税者の選択にかからしめている
という点で、課税に関する納税者の裁量が広範な税であるといえる。
これは、ガーンジー金融当局が、保険会社に対するガーンジー島の税
制等の説明書(以下「本件説明書」という。乙3)において、ガーン
ジー島の税制が保険会社にとって有利かつ柔軟なものであり、国際課
税資格を取得する納税者に適用される税率についてはガーンジー税務

当局と交渉することができる旨明言していることからも明らかである
、、、
したがって本件外国税は課税に関する納税者の裁量が広範であり
租税の特性としての強行性を欠き、外国法人税に該当しない。
イガーンジー所得税法は、保険会社に対して、課税を受ける方式と
()
して、①年間500ポンドの申請料を支払い免税法人となる(同法4
0A条、②標準税率に比べて極めて低い段階税率課税を選択する(同

法187A条、③標準税率課税20%を選択する(同法5条、④国
))
際課税資格の申請をして0%を超え30%以下の税率を選択する同
、(
)、、
法188条という4つの選択肢を用意しているところ保険会社は
上記①の免税を選択することもできるし、仮に④の国際課税資格の申
請をしても、税率については0%超30%以下の範囲で自由に選択で
きるから、結局、上記税率の範囲内で、納税額を自由に決定できるこ
とになる。そうすると、ガーンジー所得税法は、納税者が任意に税率
を選択できる税制であるということができる。
また、ガーンジー免税団体所得税法2条及び3A条の規定によ
(1)(1)
れば、対象となる課税年度終了後3年以内であれば、上記①の免税を
選択した法人は、当該課税年度の課税方式を②の段階税率課税に遡及
的に変更することができ、上記②の段階税率課税を選択した法人は、
遡って免税申請することができることとしており、当該課税年度に係
る納付済税額があれば、変更後の課税方式で再計算し、過大納付額は
還付される仕組みとなっており、還付に関し納税者の裁量が広範であ
る点で我が国の法人税に相当しないことを確認的に明らかにした法人
税法施行令141条3項1号の規定する「税を納付する者が、当該税
の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することがで
きる税」に該当する。
このように、本件外国税は、我が国の法人税法のように、同一の課
税標準であれば同額の税額を納付しなければならないという強行性を
有する租税とは本質を異にするものといわざるを得ず、むしろガーン
ジー島という国に対するいわば寄附金の性質を有するものというべき
であり、我が国の法人税に相当する税として二重課税の排除を目的と
する外国税額控除の対象となる外国法人税に該当するとはいえない。
ウガーンジー所得税法83条は「本法律の第81A条の規定に基づ
()、
き控除されたか、控除される税金を含む、いずれかの税金または罰金
が支払期日までに支払われない場合、行政官は、その支払い金額が民
事上の債務であるかのように、支払いを強制できる(甲10)と規定

するのみで、我が国の国税徴収法に相当する法律は見当たらない(乙
33、34)から、本件外国税は、自力執行力を付与されていないと
認めるほかない。
そうすると、本件外国税は、そもそも課税の段階で納税者の広範な
裁量が認められるものであるため、納付、還付の問題を論じるまでも
なく、そもそも強行性を欠いているものであることを措くとしても、
課税方式を遡及的に変更できることにより、還付に関する納税者の裁
量も広範である上、自力執行力も有していないと認められるのである
から、我が国の租税の特性たる強行性を欠いており、租税とは異なる
ものといわざるを得ず、法人税法69条1項に定める外国法人税には
該当しない。
ウ原告の主張に対する反論
ア原告は、本件外国税について、租税の一般的意義に合致し、さら
()
に「一方的・権力的課徴金(強行性)の性質を有する他、租税の特色

ないし他の国家収入との相違点として指摘される5つの特色をすべて
満たしているから租税に該当する旨主張する。
しかし、本件外国税は、課税に関する納税者の裁量が広範な税であ
り、納税者が自ら税負担をコントロールすることが可能であり、納付
の段階では強行性があるとしても、全体としては租税の特性である強
行性を欠くものである。
、()、
すなわちP1の取締役が作成した資格申請書甲11の1には
「新会社(P1)はInternationalBusiness
Companyとして、26%の税率の選択を希望しています。当
該税率は日本の税務当局にも受け入れられ、日本で新たな税負担をせ
ずに済むということです。税率の選択期間は1年間とするそうです。
その理由は、日本の法人税法の改正があった場合、P1で支払う税を
変更できるようにです」との記載があること、ガーンジー金融当局及

びガーンジー税務当局によるガーンジー島税制の解説をみても、税率
の決定について「Negotiate(交渉する、乙3「Agr
、」)

eement(合意・協定、乙15)などの用語が使用されているこ

とからすると、本件外国税の税率がガーンジー税務当局と納税者との
話し合いで決定される実態が明らかである。そして、P1は、何ら課
税上の特典を享受できない場合であっても適用税率は20%(標準税
率)にすぎないところ、ガーンジー税務当局と交渉し、我が国のタッ
クスヘイブン対策税制が軽課税国の判定基準としている税率25%を
、。
わずかに超える26%の税率を選択し税務当局と合意したのである
以上の事実を踏まえれば、本件外国税が租税の強行性の性質を有する
ものとはいえない。
これに対し、原告は、本件説明書等に「Negotiate「A


greement」などの用語が記載されている点について、こうし
た用語に重要な意義があるとはいえない旨主張する。
しかし、実際に交渉や合意によって税率が決まる運用がなされてい
るからこそ、ガーンジー金融当局等が外国企業の誘致などの目的のも
とにガーンジー所得税法の概要を解説した文書にそうした表現が用い
られているというほかない。また、これらの記載内容が事実であるこ
とは、設立準備中のP1の代理人が適用税率についてガーンジー税務
当局と交渉していたこと(甲11の1)からも明らかである。
なお、原告は、租税の強行性がない場合とは、国家の財産収入や事
業収入のように経済活動に基づく収入の場合であると主張するようで
あるが、法人税法や同法施行令が、国家の経済活動に基づく収入では
なくても、納税後に任意に全部又は一部の還付が受けられるもの等に
ついて、我が国の法人税に相当する税ではないとしていることは明ら
かであるから、原告の主張は誤りである。
、、、
()
イ原告は国際課税資格の取得に当たっては資格申請書を提出し
本件外国税の適用税率がガーンジー島の経済的利益の観点から妥当な
水準であること等の取得要件が満たされている場合にこれが承認され
るのであり、その申請を承認するかどうかはガーンジー税務当局の自
由裁量の下にあるとして、本件外国税が、課税の段階で納税者が任意
に税率を選択でき、若しくは納税者と課税庁との合意によって税率が
定まる税ではない旨主張する。
しかし「適用税率がガーンジー島の経済的利益の観点から妥当な水

準であること」などという極めて抽象的で無内容な基準が、実際に資
格申請に対する審査において機能し、申請が拒絶される場合があるな
どということは到底考えられず、上記規定は、我が国や各国のタック
スヘイブン対策税制への対抗措置として、あたかも任意に税率を選択
できる税制でないかのように装うため置かれた名目的規定であること
は明白である。
また、ガーンジー所得税法の条文上「Negotiate「A
、」

greement」の記載がなく、適用税率の決定において当局が自
由裁量を有しているとしても、標準税率の20%を超える26%の税
率の適用を求めてきた場合、通常はガーンジー島にとって経済的に有
利であることは自明のことであり、当局において、その申請を拒絶す
るようなことは考え難いといわなければならないから、ガーンジー所
得税法の規定そのものからも、適用税率を任意に選択できる仕組みが
とられていることは明らかである。
さらに、キャプティブ保険会社は、事業会社が自己の保険契約を引
き受けさせるために設立する保険子会社であるが、キャプティブ保険
会社を設立することにより、保険料を第三者である保険会社に支払う
のでなく、自社のペーパカンパニーに積み立てることによってグルー
プ内に留保することができる一方、当該保険料は経費として処理する
ことができ、キャプティブ保険会社の資本金、準備金という形で留保
された資産についても、タックスヘイブンにキャプティブ保険会社を
、。、
設立することによって課税を回避軽減することができるところが
我が国のタックスヘイブン対策税制により、現地税率が所得金額の2
5%以下の軽課国に設立されたキャプティブ保険会社における留保金
は、我が国で合算課税されることになり、上記スキームによる課税額
減少効果が減殺されてしまうことから、原告はタックスヘイブン対策
税制の適用を回避する目的で26%という税率を選択したものである
ことは明らかであり、もし、その任意の選択が可能でなければ、原告
がガーンジー島にキャプティブ保険会社を設立するはずがないのであ
る。
したがって、原告の上記主張には理由がない。
ウ原告は、仮にガーンジー所得税法に規定する要件を満たす会社に
()
ついては税率の選択が認められ、結果的に税負担割合がP1の申請し
た割合になったとしても、我が国において、青色申告の承認を受けた
法人のみに認められている措置法における特典享受の場合と同じく、
特定の要件を充足した者に対してのみ特典が付与されているものであ
、。
るから租税の本質である強行性が失われるわけではない旨主張する
しかし、納税者が措置法その他の課税の特例を定めた法令の規定の
適用を選択することにより、いわゆる実効税率が法定の税率に比べて
軽減されることがあるとしても、これは法定の要件を満たすことによ
り課税の特例が適用されるためであって、納税者が任意に選択した税
率を適用したものでも、納税者と課税庁とが合意した税率を適用した
結果でもない。また、法人税に関する法令には、法定の税率を超える
税率の適用を認める規定はない。換言すれば、我が国の法人税に関す
る法令においては、納付すべき税額は法令の規定そのものにより定ま
るのであって、納税者の選択あるいは納税者と課税庁の合意に応じて
定まるものではなく、納税者によって納付すべき税額や納付時期など
に差異が生じることはないのである。これに反して、本件外国税は、
特定の要件を満たす納税者については0%超30%以下の範囲で任意
の税率の選択が認められ、当該税率に基づいて納付するものであるか
ら、我が国の法人税に相当する強行性があるとは認められない。
エ原告は、英国法人のガーンジー島における子会社が支払った法人
()
、、
所得税はタックスヘイブン税制の適用を受けることになると同時に
英国において外国税額控除の適用を受けることができるのに対し、本
件外国税を外国法人税ではないとした本件各処分は、外国税額控除を
受けることができず、二重課税が排除されていないから違法である旨
主張する。
、、
しかしガーンジー島と英国との間では租税条約が締結されており
同条約第1条において、双方の所得税法を指定して「税」として合意
している(乙27)という特殊な関係が基盤にあるのに対し、我が国
とガーンジー島は、租税条約もその他租税に関する合意もなく、むし
ろガーンジー島は、我が国が加盟するOECDから有害税制を有する
と指定された国家又は地域(乙29)の一つであり、英国との間で取
扱いに差異が存することは当然である。すなわち、我が国のタックス
ヘイブン対策税制上、外国法人税に当たらず、租税条約もその他の合
意もないガーンジー島の所得税なるものは、外国法人税に該当しない
ため、現行法上は、外国税額控除の対象とはならず、そもそも排除さ
れるべき二重課税が存在しない。したがって、原告の主張は、その前
提を誤っており失当である。
オ原告は、中里教授の見解(甲39)を引用し、被告がP1が任意
()
に選択しうると主張し、強調する税率については、租税の賦課要件と
しては副次的な意味しかなく、本件外国税を外国法人税と認定するこ
ととは関係がない旨主張する。
しかし、原告が引用する上記見解は、法人税の税率に関する一般的
性質について、国会を通じ立法された我が国の法人税は、たとえ税率
をどのように改正しても、その法人税としての性格は変わらないこと
を述べているものであり、本件外国税のように、課税を受ける前段階
において納税者による税率の選択が可能な税法について述べているも
のではない。したがって、原告の上記主張は、中里教授の論文の一部
をその文脈を無視して不適切に引用するもので失当である。
(原告の主張)
ア外国法人税の意義
本件において、P1が措置法66条の6第1項で規定する特定外国子
会社等に該当するか否かは、本件外国税が法人税法69条1項の定める
「外国法人税」に該当するか否かにかかわるところ、外国法人税に該当
するというためには、まず「租税」でなければならない。
租税とは「国家が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、公

共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づ
いて私人に課する金銭給付である」と解されている。また、租税の特色
及び他の国家収入との相違として、①公共サービスの提供に必要な資金
を調達することを目的とするものであり、それ以外の目的で課される罰
金・科料・過料・交通反則金等のような違法な行為に対する刑事上・行
政上の制裁の性質をもつ金銭給付と区別されること、②国民の富の一部
を強制的に国家の手に移す手段であるから、一方的・権力的課徴金の性
質を持ち、国家の財産収入や事業収入のように、いわゆる経済活動に基
づく収入と区別されること(租税の強行性、③特別の給付に対する反対

給付の性質を持たない点で各種の使用料・手数料・特権料等と区別され
ること、④国民にその能力に応じて一般的に課される点で、特定の事業
の経費に充てるために、その事業に特別の関係にある者から、その関係
に応じて徴収される負担金と区別されること、⑤金銭給付であることを
原則としていることの5点を指摘することができる。
イ本件外国税について
ア本件外国税は、ガーンジー政府が、特別の給付に対する反対給付
()
としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的
で課するものであり、また、ガーンジー政府が、法律の定めに基づい
てP1に課する金銭給付であるから、前記租税の定義に該当する。
さらに本件外国税は、前記の租税の特色及び他の国家収入との相違
として挙げられている①ないし⑤の特色をすべて満たしている。すな
わち、本件外国税は、罰金等の違法な行為に対する刑事上・行政上の
制裁の性質を持つ金銭給付ではなく、公共のサービスの提供に必要な
資金を調達することを目的とするものであり(①、国家の財産収入や

事業収入のように、いわゆる経済活動に基づく収入とは区別される一
方的・権力的課徴金の性質を持つものであり(②、各種の使用料・手

数料・特権料等のように特別の給付に対する反対給付の性質を持たず
(③、特定の事業の経費に充てるために、その事業に特別の関係のあ

る者から、その関係に応じて徴収される負担金のようなものとは異な
り、住民に一般的に課される(④、金銭給付である(⑤。
))
したがって、本件外国税が租税に該当することは明らかである。

()
イ仮にガーンジー所得税法に規定する要件を満たす会社については
税率の選択が認められているとしても(なお、P1が適用を受けてい
る26%という税率は、ガーンジー税務当局に対しての申請が承認さ
れたことに基づくもので、課税庁との合意によるものではないが、そ
の点は措くものとする、それは我が国において青色申告の承認を受


けた法人のみに認められている租税特別措置法における特典享受の場
合と同じく、特定の要件を充足した者に対してのみ特典が付与されて
いるものであるから、そのことによって本件外国税の租税の本質であ
る強行性が失われるわけではない。
この点、被告は、納税者が措置法その他の法令の規定の適用を選択
することにより実効税率が軽減されることがあることと、納税者と課
税庁が合意した税率を適用することとは異なる旨主張するが、有利な
税制の適用を選択して法人税の実効税率が軽減されることと、納税者
が選択した税率により法人税の課税を受けることは、実質においてな
んら変わるところはない。すなわち、ガーンジー島の税法は、日本の
税法と比較して、税率自体を選択させるか(ガーンジー島、それ以外

の要件において選択の幅を与えるか(日本)という、選択の幅を与え
るための法令の構造が若干相違しているに過ぎず、両者は、全く異質
なものではなく、納税者の選択により納付すべき税額が異なることが
あるという結果をもたらすものとしては、むしろ同一の効果をもたら
す、同種の法令であるということができる。
また、被告は、我が国の法人税に関する法令には、法定の税率を超
える税率の適用を認める規定はなく、納付すべき税額は法令の規定そ
のものにより定まるのであって、本件外国税のように納税者の選択あ
るいは納税者と課税庁の合意に応じて定まるものではなく、納税者に
よって納付すべき税額や納税時期などに差異が生じることはない旨主
張する。
しかし、ガーンジー島において、国際課税資格を取得した居住法人
が資格申請書に記載する税率については、ガーンジー所得税法(18
8C条)において「本法律の本編で言及されている規定税率は、
(4)、
ゼロ%を上回り30%以下の百分率でなくてはならない」と明記され

ているのであり(甲10、ガーンジー所得税法においても、法定の税

率を超える税率(例えば30%を超える税率)の適用を認める規定は
なく、その点で我が国の法人税法とガーンジー所得税法の間に差異は
ない。
ウ法人税法施行令141条3項の趣旨
ア法人税法施行令141条3項1号及び2号の定める租税が外国法
()
人税に該当しないこととされたのは、これらの税は、①「実質的には
法人税負担がない税」であり、いずれも国際的な二重課税の調整とい
う制度本来の目的からはずれるものであること、②納付や還付に関し
納税者の裁量が広範であり、その点で、我が国の法人税に相当しない
ことを考慮した結果であるところ、本件外国税は、原告が選択し、ガ
ーンジー税務当局が承認した税率について、原告は実質的に税負担を
負っているのであり、同条項1号及び2号が規定する税とは明らかに
その性質が異なり、本件外国税においては、P1が申請し、ガーンジ
ー税務当局が承認した税率の税額が、同税務当局によって強制的に徴
収されるのであるから、本件外国税は租税としての強行性を有してい
る。
イ法人税法施行令141条3項は、最大では自国の法人税を完全に
()
放棄することになるという外国税額控除制度の特性にかんがみ、控除
対象となる外国法人税を自国の法人税に相当するものに限定するため
に設けられた規定であり、ここで規定されているのは、外国政府に課
される税であっても、特定のものについては、外国法人税に含まない
ものとして取り扱うことにするという立法者の意図(政策目的)を明
らかにしたものである。その意味で、同規定は、確認規定ではなく、
二重課税の救済範囲を限定した創設規定と解すべきである。
また、同条項は「外国法人税に含まれないものとする」と規定し
、。
ているが「ものとする」という文言は、ものごとの建前、原則を表し

たものであり、本来断定的に規定してもよいところを、言葉のあや、
ないし語呂からそのように表現したに過ぎない場合もあるとされてい
ること、同項5号が「外国法人税に附帯して課される附帯税に相当す

る税その他これに類する税」と規定しているのに対し、同条1号ない
し4号においては、その文末に同様の文言はなく、5号とは明確に区
別されていることからすると、同項各号は、5号を除き、外国法人税
に該当しない場合を限定的に列挙した規定であると解すべきである。
エ被告の行った課税処分は、二重課税をもたらすもので、タックスヘイ
ブン対策税制及び外国税額控除制度の趣旨からも違法である。
アタックスヘイブン対策税制は、税率の低い国に外国子会社を設立
()
することによって行われる租税回避に対処するための税制であるが、
その趣旨は、低税率国における所得についても我が国の課税所得と同
視し、我が国の法人税と同額の法人税を課すことにあり、タックスヘ
イブン国と我が国において、二重に課税を行うことにあるわけではな
い。そのため、措置法66条の7において、タックスヘイブン国で納
付した外国法人税は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上算
出された法人税額より控除することが可能となっている。
イところがP1の課税所得については、ガーンジー島で26%の税
()
率による税額を納付し、既に課税がなされた状態であるのに、更に本
件各更正処分が行われたことにより、日本においても、再び、原告の
益金に算入され、30パーセントの法人税が課されることとなった。
すなわち、ガーンジー島における税率26%と、日本における税率3
0%が二重に課税されており、そのうえ、我が国の法人税に該当しな
いとの理由で外国税額控除も認められていない結果となっている。
ウなお、英国法人のガーンジー島における子会社が支払った法人所
()
得税は、タックスヘイブン対策税制の適用を受けることとなると同時
に、英国において外国税額控除の適用を受けることができる。すなわ
ち、デザイナー・レート・タックス制度により、ガーンジー島におけ
る子会社は、日本における特定外国子会社等に相当する法人に該当す
ることになるが、現地において支払われた税のうち、間接税や保険料
()
に対する税以外の法人の所得に対して課された税本件外国税も含む
、、
については本国での税と現地における税の二重課税排除の観点から
原則として外国税額控除の適用を受けることができるとされている。
エこのようにP1が納付したガーンジー島の法人所得税が外国法人
()
税でないとされた場合には、日本とガーンジー島においてそれぞれ課
された税の負担が全く解消されずに、二重課税として存在したままと
なることが明らかであるから、本件各処分は違法である。
オ被告主張に対する反論等
ア被告は、課税の段階で納税者の広範な裁量が認められる税は、納
()
税者が自らの裁量によって実質的な負担を軽減することができ、その
後の納付、還付の段階における強行性の有無にかかわらず、強行性を
欠くところ、本件外国税は課税の段階で納税者の広範な裁量が認めら
れる税であるから、租税の特色である強行性を有するものとはいえな
い旨主張する。
しかし、そもそも、租税とは、国家が、特別の給付に対する反対給
付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目
的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付をいい、法律の定
めに基づいて課税されることは租税の要素であるといえるが、強行性
を有することは租税であることの必須の要素ではなく、被告の上記主
張は失当である。コンメンタール法人税法(甲14)においても、租
、、
税に該当しない例として挙げられているのは国債を購入した負担金
景気対策のために課徴された金額で後日還付されるものであり、強行
性とは関係がない。
また、本件外国税は、申請する適用税率が申請者にとって適してお
り、ガーンジー島の経済的利益の観点からも妥当な水準であることの
情報を記載した資格申請書をガーンジー税務当局に提出し、当局は、
申請者に国際課税資格の取得要件が満たされている場合に資格申請を
承認し、資格証明書を発行するのであり、当局は、自由裁量により資
格申請を拒絶して、申請者にその旨を通知することができるが、その
拒絶理由は一切示す必要はなく、また、申請者はその拒絶に対して一
切の異議申立てはできないことからすると、本件外国税が課税の段階
で納税者の広範な裁量が認められる税であるとの前提が誤っている。
なお、被告は、P1の取締役が作成した資格申請書(甲11の1)及
びガーンジー金融当局及びガーンジー税務当局によるガーンジー島税
(、)(
「」
制の解説文乙3乙15に記載された用語Negotiate
「Agreement)を自説の論拠としているが、それらに記載さ

れている単語の1つや2つにそれほど重要な意義は認められない。
また、外国法人税該当性の判断に当たっては、強制的に徴収される
という税の特性は、納付や還付といった税の徴収の場面で問題となる
のであり、税率決定等の課税の段階では問題とされていないのである
から、課税の場面で納税者の裁量が広範な税が租税の強行性を欠くと
はいえない点でも被告の上記主張には理由がない。
イ被告は、原告が「一方的・権力的課徴金(強行性)ではない場合
()」
とは、国家の財政収入や事業収入のように経済活動に基づく収入であ
ると主張するのに対し、法人税法や同法施行令が国家の経済活動に基
づく収入ではなくても納税後に任意に全部又は一部の還付を受けられ
るもの等について、我が国の法人税に相当する租税ではないとしてい
ることは明らかであるから、原告の上記主張は、租税法の理解を誤っ
ているものといわざるを得ない旨主張する。
しかし、被告が指摘していると思われる法人税法施行令141条3
項1号は、国家の経済活動に基づく収入でなく、租税に該当するもの
であっても、同号に該当する租税は外国法人税には該当しないと規定
しているだけであって、何ら原告の主張と矛盾しない。
ウ被告は、租税の特徴は、契約等によってではなく、法定の課税要
()
件の充足により租税債務が成立するところにあるのであって、納税者
の任意若しくは納税者と課税庁との合意により租税債務が成立するの
ではない点に租税の強行性が認められる旨主張する。
しかし、本件外国税は、申請者の適用税率の申請に対して、ガーン
ジー税務当局は、その適用税率の決定について全面的な自由裁量を有
しており、その決定に理由を示す必要はなく、申請者は申請の拒絶に
対して一切の異議申立てができないことから明らかなように、そもそ
も納税者の任意若しくは納税者と課税庁との合意により租税債務が成
立する税ではない。また、コンメンタール法人税法(甲14)におい
て、法人税法施行令141条3項1号、2号について「税の特性であ

る強制的に徴収される性格に着目するもので、納付や還付に関し納税
者の裁量が広範であり、その点で、我が国法人税に相当しないものと
考えられる」と記載されていることからも明らかなように、法人税法

69条1項の外国法人税該当性が問題となる場面で想定されている租
税の強行性とは、徴収の場面での強制性を指すものであるとするのが
通常の理解なのであり、この点においても被告の主張は誤りである。
エ被告は、原告がガーンジー島にキャプティブ保険会社を設立した
()
のは、タックスヘイブン対策税制の適応を回避したいからである旨主
張している。
しかし、原告のような損害保険会社がキャプティブ保険会社を設立
するのは、保険リスクの回避のためであり、原告がガーンジー島をそ
の設立地として選択したのは、①再保険マーケットの中心地であるロ
ンドンに近いこと、②ガーンジー島は、オフショア金融センターで銀
行も多数進出し、さまざまな通貨を扱っていること、③ガーンジー島
においては、生損保の兼営が可能であること、④ガーンジー島におい
ては、グループ以外の第三者からの再保険契約の再受も可能であるこ
と、⑤ガーンジー島には、当時、約330社のキャプティブ保険会社
が存在し、キャプティブ保険会社設立の実績があったこと等を考慮し
た結果であり、タックスヘイブン対策税制の適用を回避したいがため
ではない。
オ被告は、ガーンジー所得税法は、保険会社に対して課税を受ける
()
方式として、①免税法人となる、②標準税率に比べて極めて低い段階
税率課税を選択する、③標準税率課税(20%)を選択する、④国際
課税資格の申請をして、0%超30%以下の税率を選ぶという4つの
選択肢を用意しており、同法は、納税者が任意に税率を選択できる税
制である旨主張する。
しかし、保険会社が④の方式を選択するためには、ガーンジー税務
当局に対し、国際課税資格の申請をし、当局の承認(当局の自由裁量
により決定される)を得ることがその条件となるのであって、納税者
が任意に④の方式を選択できるわけではなく、被告の主張は前提を誤
っている。
また、被告は、上記①の免税を選択した免税法人と②の段階税率課
税を選択した法人との間では、対象となる課税年度終了後3年以内で
あれば当該課税年度の課税方式を遡及して変更できるとしており、当
該課税年度に係る納付済み税額があれば、変更後の課税方式で再計算
し、過大納付額は還付される仕組みになっているから、ガーンジー所
得税法における税は、法人税法施行令141条3項1号の「税を納付
する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を
請求することができる税」に該当するなどと主張する。
、、、
しかしP1に適用される本件外国税は上記④の課税方式であり
④の課税方式を選択した場合には、被告の指摘する3年以内の課税方
式の遡及変更による過大納付額の還付を受けることはできないのであ
るから、本件外国税が、法人税法施行令141条3項1号の「税の納
、」。
付後任意に還付を請求することができる税に該当する余地はない
また、①及び②の課税方式を選択した法人は、課税方式の遡及適用に
より過大納付額の還付を受ける余地はあるが、それは、遡及的に課税
方式を変更できるからであり、再計算の結果、過大納付額が発生すれ
ば、それが還付されるのは当然である。これに対し、法人税法施行令
141条3項1号が規定しているのは、税の納付後、任意にその金額
の全額又は一部の還付を請求することができる税であり、課税方式の
遡及適用による再計算という過程を経ずに、納税者の意思のみで、任
意に還付請求することができる税のことである。したがって、①及び
②の課税方式を選択した法人の税も法人税法施行令141条3項1号
には該当しない。
カ被告は、ある外国における税が法人税法69条1項に定める外国
()
法人税に該当するためには、我が国の租税の特性である強行性を有し
ていることが必要であり、自力執行力を有することも我が国の租税の
特性に属するところ、本件外国税は自力執行力を有しておらず、我が
国の租税の特性たる強行性を欠いており、租税とは異なるものといわ
ざるを得ず、法人税法69条1項に定める外国法人税に該当しない旨
主張する。
しかし、そもそも強行性は租税であることの必須の要素とはいえな
い点は措くとしても、租税の強行性の意義については、様々な見解が
あり、租税義務の設定、その内容が法規によって定められていること
と解する見解(乙13)によれば、本件外国税の納税義務もガーンジ
ー所得税法によって設定され、その内容が決定されているのであり、
強行性を有しているということができる。少なくとも、自力執行力を

有しないことの一事をもって強行性を欠くとする見解は見当たらない
また、自力執行力を有するかどうかは、租税法律関係の本質的要素で
はなく、これを認めるかどうかは立法政策の問題であり、現に自力執
行権を有しない税制を採る国もあり、また自力執行力を有する国の間
でも、その内容は様々であり、決して同一ではない。
したがって、被告の上記主張には理由がない。
キ中里教授の論文である「法人税の税率の法理論(甲39)におい
()」
て「法人税とは、①法人の、②所得に対して課される租税である(中

略)ということができるから、その定義において、税率の問題はあま
り重要なものとは考えられていないといえよう。なぜなら、たとえ法
人税の税率構造や、税率の水準が劇的に変化しても、必ずしも法人税
の本質自体が変化するわけではないと思われるからである」と述べら

れているように、我が国の法人税は、法人の所得に対して課される租
税である点にその本質的要素が存するのであって、税率如何によりそ
の法人税の本質自体が変化するものではなく、被告が強調する税率の
、。
違いは本件外国税を外国法人税と認定することとは全く関係がない
争点について
(4)(4)
(被告の主張)
ア被告は、平成12年3月期、平成13年3月期及び平成15年3月期

の各更正処分等に係る更正通知書に以下のとおり更正の理由を付記した
①ガーンジー島に所在するP1は、原告によりその発行済株式を10
0%保有されており、措置法66条の6第1項に規定する外国関係会
社に該当する。
②P1が現地で負担している法人税は、現地の税制により、0%を超
え30%以下の範囲で任意に税率を選択できるものであり、我が国の
法人税には相当しないことから、措置法66条の6第1項に規定する
税には該当しないものと認められる。
③したがって、P1は、措置法66条第1項に規定する特定外国子会
社等に該当するから、P1に係る課税対象留保金額に相当する金額を
原告の当期の所得の金額に加算した。
イ最高裁昭和60年4月23日第3小法廷判決(民集39巻3号850
頁)は「したがって、帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合にお

いて更正通知書に付記すべき理由としては、そのような更正をした根拠
を帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明
示することを要するが、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正
する場合においては、その更正は納税者による帳簿の記載を覆すもので
はないから、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根
拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものではないと
しても、更正の理由を前記の原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜
という理由付記制度の制度趣旨を充足する程度に具体的に明示するもの
である限り、法人税法が要求する更正理由の付記として欠けるところは
ないと解するのが相当である」と判示しているところ、本件各更正処分

は、原告の帳簿書類の記載を覆すものではなく、原告が平成12年3月
、、
期平成13年3月期及び平成15年3月期に係る各確定申告において
P1が原告の特定外国子会社等に該当せず、したがって、P1に係る課
税対象留保金額に相当する金額を益金に算入することはないとした法的
評価を修正したものである。そして、本件各理由付記は、その理由とし
て、上記のように記載しており、判断の慎重、合理性を確保するという
点において欠けるところはなく、本件各理由付記の記載で課税庁の恣意
抑制という理由付記制度の趣旨目的を損なうことはないというべきであ
るまた本件各理由付記は理由付記制度のもう一つの目的である不
。、、「
服申立ての便宜」という面からの要請に対しても必要な材料を提供する
ものということができる。
したがって、本件各理由付記は、法人税法130条2項の要求する更
正理由の付記として欠けるところはないというべきである。
(原告の主張)
法人税法130条2項は、税務署長は、内国法人の提出した青色申告書
に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、その更正に
、、
係る更正の理由を付記しなければならない旨規定しているところこれは
税務署長の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、
処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与えるためであると解
されるから、付記すべき理由は例文的・抽象的なものでは足りず、帳簿書
類との関連において更正処分の具体的根拠を明らかにするものでなければ
ならない。ところが、平成12年3月期、平成13年3月期及び平成15
年3月期各更正処分等にかかる更正通知書(甲2、甲3、甲24)には、
P1が特定外国子会社等に該当する理由として「ところで、P1が現地で

負担している法人税は、現地の税制により0%を超え30%以下の範囲で
任意に税率を選択できるものであり、我が国の法人税には相当しないこと
から、措置法66条の6第1項に規定する税には該当しないものと認めら
れます」と記載されているだけで、税率を選択できることによってなぜ我

、、
が国の法人税に該当しないことになるのかその判断の過程の記載がなく
その理由を知ることができず、この程度の記載では、到底更正処分等の恣
意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程
度に具体的に明示するものであるとはいえない。
したがって、上記記載は、更正処分等の具体的根拠を明らかにするもの
であるとはいえず、法人税法130条2項の理由付記を欠いており、平成
12年3月期、平成13年3月期及び平成15年3月期の各更正処分等は
違法である。
第3当裁判所の判断
1争点について
(1)
争いのない事実
(1)
平成14年3月期更正処分等及び本件通知処分の課税経緯は、以下のと
おりである。
ア原告は、被告に対し、平成14年3月期の法人税の確定申告書(以下
「平成14年3月期確定申告書」という。乙1)を平成14年7月30
日に提出した。原告は、平成14年3月期確定申告書において「特定外

国子会社留保金」として円を所得金額に加算して
おり、このうち円は、原告がその発行済株式の全部
を直接保有するガーンジー島に本店を置くP1にかかる措置法66条の
6第1項に規定する課税対象留保金額であった(乙1。

イ原告は、平成15年5月13日付けで、平成14年3月期の法人税に
ついて、①②益金の額に算入した課
税対象留保金額のうちP1に係る部分、及び③
、(「」
に誤りがあったとして更正の請求をした以下本件更正の請求
という。甲5。

ウ被告は、平成15年5月30日付けで、平成14年3月期更正処分等
をした(甲4。

エ被告は、同年7月15日付けで、本件更正の請求について更正すべき
理由がないとして本件通知処分をした(甲6。

オ原告は、同年8月7日に、本件通知処分を不服として、国税不服審判
所長に対し審査請求(以下「平成14年3月期審査請求」という)をし

た(甲8。

カ国税不服審判所長は、平成16年3月30日付けで、平成14年3月
期審査請求を棄却する裁決をした(甲9。

キ原告は、平成16年6月24日、本件各処分の取消しの訴えを当裁判
所に提起した。
被告は、本件訴えのうち、平成14年3月期更正処分等の取消しを求め
(2)
る訴えは、不服申立前置(国税通則法115条1項)を欠き、また、同更
正処分等のあった日から1年以上を経過して提起されたものであるから出
訴期間(旧行訴法14条3項)を徒過したもので不適法である旨主張して
いるので、以下検討を加えることにする。
被告の主張のうち、不服申立前置に関する部分は、要するに、更正の請
求に理由がない旨の通知処分は、納付すべき税額を、申告税額から更正の
請求において求める税額にまで引き下げることを求める要求に対して、こ
れに応じないとする処分であるのに対し、更正処分(増額更正処分)は、
納付すべき税額を、申告税額から更正処分に係る税額にまで引き上げる処
分なのであって、両者はその対象を異にするから、これに対する不服も別
個であり、したがって、それぞれ別々に不服申立前置を経ることを要する
というものであると解される。しかし、当裁判所は、一般論としてはとも
かく、少なくとも本件のような事案においては、被告の主張を採用するこ
とはできないものと考える。
すなわち、本件においては、原告による更正の請求がされた後、これに
対する応答が何らされないまま増額更正処分がされ、その後、更正の請求
に理由がない旨の本件通知処分がされている。そして、総額主義の立場に
立てば、更正の請求がされた後に増額更正処分がされた場合、それにもか
かわらず原告が当初の更正の請求を維持し、その要求どおりの処分を得る
ためには、単に更正の請求に理由があることが認められるだけでなく、増
額更正処分に理由がないことまで認められなければならないこととならざ
るを得ない(具体的な事例を例にすると、当初の申告税額が1000万円
であり、更正の請求に係る税額が500万円であり、増額更正処分に係る
税額が1500万円であったとすれば、原告としては、納付すべき税額が
500万円であることが認められて初めて更正の請求どおりの処分が得ら
れる筋合いである以上、更正の請求が認められるためには、更正の請求に
係る500万円の税額の減額要求に理由があることばかりでなく、増額更
正処分に係る500万円の税額増額に理由がないことまで認められる必要
があるということである。そうすると、増額更正処分がされた後も維持


された更正の請求は、税額を、増額更正処分に係る額から更正の請求に係
る額まで引き下げることを要求する行為であって(なお、国税通則法が、
更正処分後の更正の請求があり得ることを前提としていることは、同法2
3条1項各号の規定からしても明らかである、更正の請求に理由がない


旨の通知処分は、これらの要求をいずれも拒否する行為であると理解すべ
きであるから、更正の請求に理由がない旨の通知処分に対する不服申立て
には、必然的に、税額の減額要求(更正の請求)を認めなかったことに対
する不服と、税額が増額されたこと(増額更正処分)に対する不服とが含
まれているものと理解することができる。したがって、更正の請求に理由
がない旨の通知処分に対して不服申立てをしていれば、増額更正処分に対
しても不服申立てを経由したものということができるから、不服申立前置
の要件に欠けるところはないものというべきである(なお、本件において
は、本件通知処分に対する審査請求がされた時点において、既に、平成1
4年3月期更正処分等に対する不服申立期間を徒過していた点をどのよう
に考えるべきか問題にならないわけではないが、上に指摘したような更正
の請求と増額更正処分との関係を考慮すると、原告としては、更正の請求
に対する処分において、最終的な決着が付けられるものと判断し、それま
での間は不服申立てをしないことにも合理的な理由があるものと考えられ
る反面、課税庁としては、更正の請求に対して判断をするまでの間は、増
額更正処分が確定することについて合理的な期待を有しているとはいえな
いものと考えられるから、更正の請求に理由がない旨の通知処分がされる
までの間は、増額更正処分についても不服申立期間が進行しないものと解
すべきである。したがって、この点についても問題はないものというべき
である。


また、上記の検討結果によれば、平成14年3月期更正処分等の取消訴
訟の出訴期間は、更正の請求に理由がない旨の通知処分についての審査請
求に対する裁決がされた時から進行することになるから、出訴期間の点に
おいても問題はないものというべきである。
本件通知処分の取消しの訴えの適法性
(3)
アすると、平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えと本件通知処分
の取消しの訴えはいずれも不服申立前置の要件及び出訴期間の要件を満
たしていることになるが、このように両処分に対する訴えが併存した場
合は、以下に述べるように、税額等を争う納税者は、更正処分(増額更
正処分)等に対する取消訴訟を争えば足り、これと別個に更正すべき理

由がない旨の通知処分を争う利益や必要はないと解するのが相当である
イ増額更正処分と更正すべき理由がない旨の通知処分は、内容的に積極
・消極の違いはあるにせよ、ともに同一の納税義務を確定する効力を有
するもので、相互に密接な関連を有しているということができるが、更
正すべき理由がない旨の通知処分は、申告税額の減少のみにかかわるの
に比し、増額更正処分は、納付すべき税額全体にかかわり、実質的には
申告税額等を正当でないものとして否定し、これに増額変更を加えて税
、、
額の総額を確定するものであることからすると増額更正処分の内容は
更正すべき理由がない旨の通知処分の内容を包摂する関係にあるという
ことができる。
また、同一の納税義務にかかわる両処分の訴訟が別個に係属すること
により生じる審理判断の重複や抵触を避ける必要がある。
そして、増額更正処分の内容は、更正すべき理由がない旨の通知処分
の内容を包摂する関係にあるのであるから、前者に対する取消訴訟の中
で、更正すべき理由がない旨の通知処分における減額更正をしない旨の
判断に存する違法を主張して、申告税額等を下回る額にまで増額更正処
分の取消しを求めることもできると解することができるから、増額更正
処分とは別に更正すべき理由がない旨の通知処分を争う利益や必要性が
ないというべきである。
ウしたがって、本件訴えのうち、平成14年3月期法人税について本件
、、
通知処分の取消しを求める訴えは取消しを求める利益又は必要がなく
不適法というべきである。
2争点について
(2)
前記のとおり、本件通知処分の取消しを求める訴えは、不適法であるとい
わざるを得ないから、同訴えが適法であることを前提とする争点について
(2)
は、判断の必要がない。
3争点について(本件外国税は、法人税法69条1項の外国法人税に該当
(3)
するか)
法人税法施行令141条3項各号は限定列挙か例示列挙か
(1)
ア前記のとおり、法人税法69条1項は、外国法人税について「外国の

法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるもの」をいうと
規定し、法人税法施行令141条2項は、外国法人税に含まれる場合と
して同項1号ないし4号を列挙するとともに、同条3項において、外国
法人税に含まれない場合として同項1号ないし5号を列挙しているとこ
ろ、原告は、同項は、外国法人税に当たらない場合を限定列挙したもの
である旨主張するのに対し、被告は、例示列挙である旨主張しており、
仮に原告の上記主張が認められるならば、本件外国税が同項に列挙され
た場合のいずれにも当たらないことは明らかであるから、その余の点を
検討するまでもなく、本件外国税は外国法人税に該当することになる。
そこで、まずこの点について検討を加えることとする。
イ法人税法施行令141条3項は、従来、同項は、外国法人税に含まれ
ないものとして現行の施行令同項5号に当たる附帯税を挙げるのみであ
ったところ、平成12年7月の政府税制調査会「中期答申」において、
外国税額控除制度の対象となる外国で所得に課される税は外国の制度に
基づくものであり、その性格を把握することは容易ではない上、我が国
の企業の国際的な活動の多様化に伴い控除対象となる外国の税の範囲に
ついてどのように考えるのかという問題が一層難しくなっているといっ
た状況の中で、控除対象となる外国の税の範囲について、二重課税の排
、()
除という制度の趣旨を踏まえて明確化することが求められる乙14
と提言されたことを受けて、平成13年政令135号により、同項1号
ないし4号が追加されたものであり、改正の趣旨は、制度の趣旨、取扱
いの明確化にあり、これまでの取扱いを変更する趣旨ではないと考えら
れる(乙12。また、規定の形式面を見ると、法人税法69条1項が、

外国法人税の意義を「外国の法令により課される法人税に相当する税で
政令で定めるものをいう」と定めたのを受けて、同法施行令141条1

項が「法69条1項(外国税額の控除)に規定する外国の法令により課

される法人税に相当する税で政令で定めるものは、外国の法令に基づき
外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される
税(以下この款において「外国法人税」という)とする」と定め、更
。。
に同条2項が「外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税

、。
」、
は外国法人税に含まれるものとするとして1号から4号までを定め

「、
同条3項が外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は
外国法人税に含まれないものとする」として1号から5号までを定めて

いる。これらの規定ぶりからすると、法人税法69条1項を受けて、外
国法人税の意義を定めた政令の規定とは、明らかに同法施行令141条
1項なのであって、外国法人税に当たるかどうかは、最終的には同項に
該当するかどうかによって判断することが予定されているものである。
そうすると、同条2項、3項の規定は、同条1項の規定と同格の規定で
あるとは考えられず、同条1項に該当するかどうかを判断するための、
一種の解釈規定として位置付けられるべきものなのであるから、同条2
項、3項各号の定めは、このような規定の性質上、例示列挙と解するの
が素直である。そうではなく、これらを限定列挙であると解釈し、例え
ば、同条1項に照らしてみれば、外国法人税には当たらないと解される
税があった場合、それにもかかわらず、それが同条3項各号の列挙事由
に含まれないから外国法人税に当たると解するのは本末転倒の議論であ
るといわなければならない。さらに、実質的にみても、外国法人税に該
当しない場合を網羅的に限定列挙することは不可能であることは明らか
であるにもかかわらず、外国法人税に該当しないものがあらかじめ明示
的に列挙されていなければ、外国の租税がすべて外国法人税に該当し、
外国税額控除を受けることができることになるという結論は、国内企業
の外国での活動を課税によって阻害せず、資本輸出の中立性を確保する
という政策的判断に基づいて設けられた外国税額控除制度本来の趣旨・
目的に沿うものとは考えられないのであって、この点でも原告の主張す
る解釈は採用することはできない。
この点、原告は、法人税法施行令141条3項が、①「外国法人税に
含まれないものとする」という表現を用いていること、及び②同項5号
が「外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類
する税」と規定しているのに対し、同項1号ないし4号においてはその
文末に同様の文言がないことを理由に、同項各号は5号を除き外国法人
税に該当しない場合を限定列挙した規定である旨主張するが、①につい
ては、上記表現をもって、同条項各号が例示列挙と解することが否定さ
れるわけではなく(原告の論法によれば、同条2項各号も限定列挙の規
定というべきことになるが、その結果、同条2項の限定列挙にも、同条
3項の限定列挙にも該当しないものはどのように取り扱われるべきなの
か、という問題も生じざるを得ない、②についても、同条5号は、附


帯税に相当するものを一括して定めるために、原告主張のような規定の
、、
仕方をしたのにすぎないと解することができるからこのことによって
本税に相当するものを定める同項1号ないし4号の規定が限定列挙なの
か例示列挙なのかが左右されるものではないというべきであり、いずれ
も上記結論を覆すに足りるようなものではない。
本件外国税が外国法人税に含まれるか
(2)
ア外国法人税かどうかの判断基準
上記において検討したとおり、本件外国税が、法人税法施行令14
(1)
1条3項各号に該当しないから、外国法人税に当たるとする原告の主張
を採用することはできないから、本件外国税が外国法人税に当たるかど
うかは、同条1項等の規定に照らして判断するほかないところ、税制と
いうものは、国ごとにある程度の違いが生じることが当然に予想される
のであるから、それにもかかわらず外国法人税の控除を認めるというこ
とは、対象となる外国税と我が国の法人税との間にある程度の違いがあ
ったとしても、そのような違いは許容するということを制度の前提にし
ているものと考えざるを得ないのであって、我が国の法人税との類似性
を殊更強調することは、制度の趣旨にもそぐわないものと考えられる。
他方、上記の各規定が「税」という概念によって、控除の対象を限定し

ようとしていることも明らかなのであるから、結局、上記各規定は、先
進諸国において通用している一般的な租税概念を前提としそのうち法
、、

人税「法人の所得を課税標準として課される税」に相当するものを、


控除の対象にしているものと解するのが相当である。そして、我が国の
租税も、このような一般的な租税概念の範疇に属するものといえるから
(上記各規定も、そのことを前提にしているものと解される、我が国


の法人税とおよそかけ離れた内容、性質を有するものは、一般的な租税
概念の範疇にも含まれない可能性が高いものというべきであり、我が国
の法人税との類似性は、このような意味で、外国法人税に該当するかど
うかの判断の参考となるものと考えられる。
ところで、一般的に「租税」とは、国又は地方公共団体が、特別の給
付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資
金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付であ
ると解されている。そして、租税の特性及び他の国家収入との違いとし
て、租税は、①公共サービスの提供に必要な資金を調達することを目的
とし(租税の公益性、それ以外の目的で課される罰金・科料・過料・交

通反則金等のような違法行為に対する刑事上・行政上の制裁の性質を持
つ金銭給付とは区別され、②国民の富の一部を一方的・強制的に国家の
手に移す手段であり(租税の強行性、租税が国民の財産権の侵害の性質

を有することから、租税の賦課・徴収が必ず法律の根拠に基づいて行わ
れなければならない(租税法律主義)とされ、③特別の反対給付の性質
を持たない点で、各種の使用料・手数料・特権料等と区別され、④国民
にその能力に応じて一般的に課される点で、特定の事業の経費に充てる
ために、その事業に特別の関係のある者から、その関係に応じて徴収さ
れる負担金と区別され、⑤金銭給付であることを原則とする点を挙げる
ことができ、以上のような租税概念及び租税の特性については、当事者
間にほぼ争いがないところである(なお、原告は、租税の強行性につい
て、これは、租税の必須の要素とはいえない旨の主張をしているが、租
税の特性の1つであることについては当事者間に争いがないところであ
る。


したがって、本件外国税が外国法人税に含まれるかどうかの判断に当
たっては、本件外国税が上記租税概念等に当てはまるのかどうかについ
て検討を加える必要があるが、我が国の法人税との比較も、前記のよう
な意味においては、判断の一要素となり得るものといえるから、以下、
このような観点から、本件外国税が外国法人税に該当するかどうかを検
討する。
イ本件外国税
ガーンジー所得税法及び免税団体所得税法の規定の内容は、既に認定
したとおりであるが、証拠(甲11の1、乙3、乙15、乙18、乙1
9、乙33、乙34)によれば本件外国税に関して以下の事実が認めら
れる。
アガーンジー島の税制の運用の実態について
()
a本件説明書(乙3)
ガーンジー金融当局が保険会社に対するガーンジー島の税制等を
説明した本件説明書(乙3)には「ガーンジー島の税制が保険会社

にとって有利かつ柔軟な税制構造(AFavourablea
ndFlexibletaxstructure)を有して
おり、キャプティブ保険会社は、20%の税率で所得課税を受ける
こと(標準税率課税、無税(免税法人)か段階的な税率で課税を受

けること(段階税率課税、適用税率を0%超30%以下の範囲で交

渉すること(国際課税資格)のいずれかを選択できる」旨記載され

ている(なお、税率の決定について「Negotiate(交渉)

という用語が使用されている。また、本件説明書のガーンジー島


の税制に関する項において「重要なことは、ガーンジー島の税制の

下では、キャプティブ保険会社を、親会社に本国での課税問題が生
じない方法で設立できること、そして、キャプティブ保険会社が設
立され管理される地域において留保利益を蓄積できることである」

旨記載されている。
b国際課税法人へのガイド(乙18)
ガーンジー金融当局が作成したパンフレットである「国際課税法
人へのガイド(AGuideToTheInterna
」「
tionalCompany、乙18)には「国際課税資格)
」、(
の申請に先立って、国際課税資格を取得しようとする法人の事業計
画がガーンジー税務当局担当官と議論される(又は当該担当官に書
面で連絡される。これにより、適用税率の設定が可能となる。申


請者とガーンジー税務当局との間で仮に合意された諸条件は、正式
な国際課税資格の取得申請におけるガーンジー税務当局の承認を必
要とする」旨記載されている。

cガーンジー所得税法の解説文(乙15)
ガーンジー税務当局が作成したガーンジー所得税法の解説文(乙
15)には「所得税を支払う際の税率は、合意(Agreemen

t)によって決めることができる」旨記載されている。

d金融制度調査レポート(乙19)
元英国財務省高官が作成した金融制度の調査レポート(乙19)
には「国際課税資格を取得する法人は、通常は0から2%の間でガ

ーンジー税務当局と税率の交渉をしているが、たまには、その親会
社の全世界所得税負担を最小化するために、より高い税率で交渉す
る場合もある」旨記載されている。

e本件文書(甲11の1)
P1が設立される前の1998年(平成10年)9月25日付け
で担当者がガーンジー税務当局にあてた文書(以下「本件文書」と
いう。甲11の1)には以下の記載がある。
すなわち「9月15日にP2から上記名称(P1)の新会社が設

立予定だということをお話ししたかと思います」との記載に引き続

き「新会社(P1)は、nternationalBusin
、I
essCompany(国際課税資格)として、26%の税率の
選択を希望しています。当該税率は日本の税務当局にも受け入れら
れ、日本で新たな税負担をせずに済むとのことです。税率の選択期
間は1年間とするそうです。その理由は、日本の法人税法に改正が
あった場合、P1で支払う税を変更することができるようにです」

と記載されている。
イ本件外国税は自力執行力を有しないこと(乙33、乙34)
()
本件外国税に係る徴収制度については、ガーンジー所得税法83条
で「本法律の第81A条の規定に基づき控除されたか、控除される税

金を含む、いずれかの税金又は罰金が支払期日までに支払われない場
合、行政官は、その支払い金額が民事上の債務であるかのように、支
払いを強制することができる」と規定しているほかは、我が国の国税

徴収法に相当する法律は見当たらず、ガーンジー税務当局は自力執行
力を有していない。また租税に対する一般的優先権を認める制度も見
当たらない(乙33、乙34。

ウ検討
以上認定した事実も併せ検討してみると、本件外国税を含むガーンジ
ー島における「法人税」については、次のような問題点を指摘すること
ができる。
ア第1に、ガーンジー島において、P1のようなキャブティブ保険
()
会社は、①免税法人となる、②20%の定率課税を受ける、③低率の
段階税率による課税を受ける、④0から30%の間の一定の税率によ
る課税を受けるという4つの中から適用される税制を選択できること
になっている(なお、④の適用を受けるためには、国際課税資格を取
得することが必要であり、そのためには、資格申請者が、資格申請書
に適用すべき税率を明記するとともに、当該税率が申請者にとって適
しており、ガーンジー島の経済的利益の観点からも妥当な水準である
ことに関する情報を記載した上、ガーンジー税務当局から資格申請の
承認を受けることを要するが、このような要件が、実際に要件として
、。

。、
機能するものと考えられないことは後述のとおりであるしかも
これらの制度が、それぞれ基本的性格を大きく異にするものであるこ
とは明らかなのであるから、ガーンジー島においては、同一の法人の
同一の収入に対して、基本的性格を異にする4つの税制が、当該法人
の選択によって適用され得る(別の言い方をすれば、同種の法人の同
種の収入に対して、基本的性格を異にする税制に基づく課税が行われ
得る)という極めて不自然な事態が生じているのであり、これを特例
規定の適用を受けるかどうかを納税者の選択に委ねるといった、税制
における調整的な選択制度と同質のものとして理解することは到底困
難であるといわざるを得ない。そうすると、このような制度は、我が
国の法人税においてはおよそ考えられない制度であるのみならず、租
税の一般的概念の観点からしても、税の強行性(更には、税において
一般的に要請されると考えられる平等性)の概念とは相容れないとこ
ろがあるものといわざるを得ない。
、、
()
イ第2に本件外国税の根拠となる上記④の制度との関係でみると
ガーンジー島の法令上は、その適用を受けるためには、国際課税資格
を取得することが必要であり、そのためには、資格申請者が、資格申
請書に適用すべき税率を明記するとともに、当該税率が申請者にとっ
て適しており、ガーンジー島の経済的利益の観点からも妥当な水準で
あることに関する情報を記載した上、ガーンジー税務当局から資格申
()
請の承認を受けることを要することとされているものの上記イア
、、
において認定した諸事実に照らしてみれば、その実態としては、0な
いし30%という枠の中で、申請者である法人とガーンジー税務当局
とが交渉を行い、その結果成立した合意に基づいて課税が行われてい
ると考えざるを得ない。そうすると、本件外国税は、税率という重要
な課税要件が、納税者とガーンジー税務当局との合意により決定され
るものであって、課税に関する納税者の自由が広範に認められる租税
といわざるを得ないのであり、この点において、納付や還付に関し納
税者の裁量が広範に認められている税として法人税法施行令141条
3項1号、2号に掲げられた租税に類似した側面を有するものという
べきであるし、租税の特質である強行性と相容れない面があることも
否定し難いところである。なお、OECD(経済協力開発機構)は、
1998年(平成10年)に公表した報告書(HARMFULTA
。)、
「、()
XCOMPETITION乙4においてもし税率と又は
課税ベースが交渉可能であるか又は投資家が居住者である場合に依存
している税制であるならば、主催国の税制で創設された課税規定は、

()、
潜在的に有害である中略すると自国は外国税額控除を許可するか
または納税者に自国のタックスヘイブン対策税制が課せられることか
ら逃れることを許可することになり、タックスヘイブン対策税制の適
用は主催国の税率に依存することとなる。税率と(又は)課税ベース
の交渉可能性は、実際に納税者の課税所得を決める不透明な税制とし
て問題を起こしている」と指摘しており、上に指摘した点は、先進諸

国において共通に認識されているところであるということができる。
これに対し、原告は、本件外国税の税率は、ガーンジー税務当局が
決定するものであるから、法律に基づくものであると強調するのであ
るが、その前提に疑問があることは上記のとおりであるのみならず、
本件外国税は、法律で規定されているといっても、その前提となる国
際課税資格による課税制度は、税率の一定枠(上限及び下限)を決め
ているだけで、その幅は広範であり、重要な課税要件である税率の確
定について、その際によるべき基準が示されておらず(なお、ガーン
ジー所得税法188C条には「適用税率が申請者にとって適切でかつ
ガーンジー島の経済的利益の観点から妥当な水準であること」が要件
とされているが、その内容が一義的に明らかになるようなものではな
く、これがよるべき基準になり得ないことは明らかであるし、不服申
立てを許さないとしている点において、その恣意性はより強度なもの
となっていると評さざるを得ない、実質的には白地規定であるとい


わざるを得ず、課税権者に広範な裁量の余地を許容するもので、租税
法律主義(課税要件明確主義)に反するものであると評価せざるを得
ない。したがって、原告の主張を前提としても、本件外国税は、我が
国の法人税はもとより、一般的な租税概念にも相反するものといわざ
るを得ないのである。
ウ第3に、本件外国税には自力執行力がなく、かつ租税に対する一
()
般的優先権を承認する制度も存しないため、税の徴収手段において実
。、
効性に欠ける点があることも否定し難い原告も主張しているように
自力執行力を有するかどうかは、租税であることの必須の要素とまで
は断定できないとしても、本件外国税においては、それに止まらず租
税に対する一般的優先権を承認する制度も存しないのであるから、こ
のことが、租税該当性の判断にマイナスに働く要素になることは否定
し難いところである。
エ以上のとおり、本件外国税を含むガーンジー島における法人税制
()
は、我が国における法人税制とはおよそかけ離れた制度になっている
ことはもとより、一般的な租税概念を前提に照らしてみても、不自然
()
なものであると評さざるを得ないものである。そして、上記イ、ア
に認定した諸事実をも照らし合わせてみると、ガーンジー島において
このような「税制」が採用されているのは、外国法人に対し、本国に
おけるタックスヘイブン税制の適用を回避するためのメニューを提供
するためではないかと疑わざるを得ないのであり、この観点からする
と、ガーンジー島において徴収される「税」なるものは、その名称に
もかかわらず、その実質は、タックスヘイブン税制の適用を回避させ
るというサービスを提供するための対価であるということも可能なの
であって(このような強い誘因を持つ制度であるからこそ、自力執行
力等、徴収のための実効性担保措置を必要としないと考えることもで
きなくはない、この点からしても、一般的な租税の概念(特定のサ


ービスに対する対価ではないこと)に反するものであるといわざるを

得ない。
そうすると、本件外国税は、我が国の法人税概念とはおよそかけ離
れたものであるばかりでなく、一般的な租税概念に照らしてみても、

到底その概念の範疇に含まれるものであるとはいい難いのであるから
これを外国法人税に当たらないとした被告の判断に誤りはないものと
いうべきである。
エ原告の主張についての検討
ア原告は、仮に本件外国税が納税者に税率の選択が認められる租税
()
であるとしても、それは、我が国において、法令を適用して青色申告
の承認を受けた法人にのみ認められる特典享受を受ける場合と何ら異
なることはなく、いわば、税率自体を選択させるか(ガーンジー島、

それ以外の要件において選択の幅を与えるか(日本)という選択の幅
を与えるための法令の構造が若干相違しているのにすぎない旨主張す
る。
しかし、本件外国税を巡る問題点を、特例措置の適用を受けるかど
うかの問題と同視することはできないことは既に指摘したとおりであ
って、原告の主張は採用することができない。
イ原告は、法人税法施行令141条3項1号及び2号の定める租税
()
が外国法人税に該当しないこととされたのは、実質的に法人税負担が
ない租税であるからであり、これに対し、P1は、本件外国税につい
て実質的に税負担を負っているから、同項1号及び2号が規定する租
税とは性質が異なること、また、仮に本件外国税を外国法人税に当た
らないとすると、原告は実質的に税負担をしているにもかかわらず外
国税額控除を受けることができず、二重課税が排除されないから違法
である旨主張する。
しかし、本件においては、本件外国税が「税」の概念に含まれるか
どうかが問題となっているのであるから、これを税であると決めつけ
て、既に税負担を負っているとか、二重課税の問題が生じていると主
張するのは、結論先取りの議論であって、成り立たないものといわざ
るを得ない(原告の主張を、原告が、現に一定の経済的負担を負って
いることを問題とする趣旨であると理解したとしても、それが実際に
問題であるかどうかは、当該経済的負担の意味内容によるのであるか
ら、やはり上記の結論を左右するものではない。したがって、この


点に関する原告の主張も失当である。
、「」
()
()
ウ原告は中里教授の論文である法人税の税率の法理論甲39
を引用して、我が国の法人税とは、法人の所得に対して課される租税
である点にその本質的な要素が存するのであって、税率如何によって
法人税の本質自体が変化するものではなく、税率の違いは、本件外国
税を外国法人税と認定することとは関係がない旨主張する。しかし、
上記見解は、我が国の法人税について、税率を改正してもその法人税
についての性格は変わらないことを述べているものにすぎず、本件外
国税のような納税者による税率の選択が可能な租税を想定して述べて
いるものではないことは明らかであるから、原告の上記主張は、採用
することができない。
オ小括
P1が原告の外国関係会社(措置法66条の6第1項1号)に該当す
ることは当事者間に争いがないところ、以上の検討結果によれば、本件
外国税は法人税法69条1項の外国法人税に該当しないから、P1の本
件各事業年度における措置法施行令39条の14第1項2号に規定する
租税負担割合は零であり、100分の25以下ということになる。した
がって、P1は原告の特定外国子会社等に該当し、これを前提とした本
件各事業年度の更正処分等はいずれも適法である。
4争点について
(4)
争いのない事実
(1)
平成12年3月期、平成13年3月期及び平成15年3月期の各更正処
分等に係る更正通知書には、原告の所得の金額の計算上、P1に係る課税
対象留保金額を益金の額に算入したことについて、以下のとおり理由が付
記されている(甲2、甲3、甲24。

ア英領チャネル諸島(ガーンジー島)に所在するP1は、貴社によりそ
の発行済株式を100%保有されており、措置法66条の6第1項に規
定する外国関係会社に該当します。
イP1が現地で負担している法人税は、現地の税制により、0%を超え
30%以下の範囲で任意に税率を選択できるものであり、我が国の法人
税には相当しないことから、措置法66条の6第1項に規定する税には
該当しないものと認められます。
ウしたがって、P1は、措置法66条の6第1項に規定する特定外国子
会社等に該当しますので、課税留保所得金額に相当する金額を当期の所
得金額に加算しました。
本件のように青色申告に係る法人税について更正処分をする場合には、
(2)
更正処分の理由を付記しなければならないものとされているところ(法人
税法130条2項、帳簿書類の記載自体を否認して更正処分をする場合に

おいては、単に更正処分に係る勘定科目とその金額を示すだけでなく、そ
のような更正をした根拠を帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示する
ことによって具体的に明示することを要するが、帳簿書類の記載自体を否
認することなしに更正処分をする場合においては、付記された理由が、そ
のような更正処分をした根拠について帳簿の記載以上に信憑力のある資料
を摘示するというものでないとしても、処分庁の恣意の抑制及び不服申立
ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示す
るものである限り、理由の付記として欠けるものではないと解される(最
、)

高裁判所第三小法廷昭和60年4月23日判決民集39巻3号850頁
そして、本件各更正処分等は、帳簿書類の記載自体の信憑性を否認してい
るわけではなく、原告が平成12年3月期、平成13年3月期及び平成1
5年3月期に係る各確定申告において、P1が措置法66条の6第1項の
特定外国子会社等に該当するかどうかという点についての法的評価を修正
したものであるから、上記のうち後者の場合に当たるものというべきであ
るところ、前記認定のとおり、本件各理由付記においては、P1が原告の
特定外国子会社等に該当し、P1に係る課税対象留保金額に相当金額を益
金に算入するという法的判断に至った理由を示しており、上記のような理
由付記制度の趣旨目的を充足する程度の理由の付記がされているものとい
うべきである。
したがって、理由付記の違法をいう原告の主張には理由がない。
第4結論
以上によれば、本件訴えのうち、原告の平成14年3月期の法人税につい
、、
て平成15年7月15日付けでした本件通知処分の取消しを求める部分は
取消しを求める利益又は必要がなく、不適法であるからこれを却下すること
とし、原告のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴
、、、
訟費用の負担について行政事件訴訟法7条民事訴訟法61条を適用して
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官鶴岡稔彦
裁判官古田孝夫
裁判官潮海二郎

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