弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉原大吉の上告理由について
 原審が適法に確定したところによれば、(一) 青色申告法人であつた訴外株式会
社D(以下「訴外会社」という。)は、昭和四〇年八月一日から昭和四一年七月三
一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税につき、法人税法
五七条(昭和四三年法律第二二号による改正前のもの)の規定により本件事業年度
前の事業年度において生じた欠損金額の一部に相当する金額を所得の金額の計算上
損金の額に算入して、昭和四一年一〇月一一日、課税標準額を零とする青色申告書
による期限後の確定申告をした、(二) 所轄の税務署長である被上告人は、訴外会
社を昭和四三年一月一三日に吸収合併した上告人に対して、同年五月二八日に訴外
会社についての青色申告の承認を本件事業年度にまでさかのぼつて取り消したうえ、
これにより青色申告書以外の申告書による申告とみなされることとなつた前記の確
定申告につき、同年八月三一日、前記繰越欠損金の損金算入を否認して課税標準額
及び税額を増額する更正処分及び無申告加算税賦課決定(以下「本件更正処分等」
という。)をした、(三) ところが、被上告人は、昭和四九年九月六日に至つて先
にした訴外会社についての青色申告の承認の取消処分を職権により取り消した、と
いうのである。そして、論旨は、要するに、被上告人のした青色申告の承認の取消
処分の取消によつて訴外会社は本件事業年度においても青色申告法人として青色申
告書による確定申告をしていたことになり、本件更正処分等には違法に繰越欠損金
の損金算入を否認して課税標準額及び税額を過大に算定した重大かつ明白な瑕疵が
あつて、これを無効とすべきものであるから、本件更正処分等にはなんら瑕疵がな
いとして本件更正処分等の無効確認を求める上告人の請求を理由がないものとした
原審の判断には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背がある、とするも
のである。
 そこで検討するに、本件更正処分等の後にされた青色申告の承認の取消処分の取
消によつて、訴外会社は遡及的に青色申告法人としての地位を回復し、青色申告書
以外の申告書によるものとみなされた本件事業年度についての確定申告も青色申告
書による申告であつたことになるから、青色申告書以外の申告書による確定申告に
対するものとして繰越欠損金の損金算入を否認してされた本件更正処分は、その限
度において課税標準額及び税額を過大に算定したこととなつて、青色申告の承認の
取消処分の取消によつて後発的、遡及的に生じた法律関係には適合しないことにな
る。しかしながら、このような場合、課税庁としては、青色申告の承認の取消処分
を取り消した以上、改めて課税標準額及び税額を算定し、先にした課税処分の全部
又は一部を取り消すなどして、青色申告の承認の取消処分の取消によつて生じた法
律関係に適合するように是正する措置をとるべきであるが、被処分者である納税者
としては、国税通則法二三条二項の規定により所定の期間内に限り減額更正の請求
ができると解するのが相当である。そして、このような場合における納税者の救済
はもつぱら右更正の請求によつて図られるべきであつて、課税処分についての抗告
訴訟において右のような事由を無効又は取消原因として主張することはできないも
のというほかはない。そうすると、右のような事由が本件更正処分等の無効原因に
はあたらないというに帰する原審の判断は、結論において正当として是認すること
ができる。論旨は、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    環       昌   一
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    寺   田   治   郎

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