弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所へ差戻す。
         理    由
 上告理由第三点及び第五点について
 原審は、被上告人銀行は昭和一九年四月七日株式会社D銀行より本件土地所有権
の譲渡を受けるとともに同銀行の上告人Aに対する賃貸人の地位を承継したが、そ
の後昭和二三年一二月一八日同上告人に対し閉鎖機関令一三条に基き本件土地賃貸
借の解約の申入をしたから、これにより右賃貸借は民法六一七条に定める一年の期
間の経過とともに終了したものとして被上告人の上告人等に対する本訴請求の一部
(原判決主文参照)を認容したのである。しかし昭和二二年政令一一五号二条によ
れば、被上告人銀行のいわゆる旧勘定に属する国内資産(国又は地方公共団体に対
する金銭債権で大蔵大臣の指定するものを除く)は、大蔵大臣の指定する時、すな
わち昭和二二年六月三〇日大蔵省告示一三三号により指定された昭和二二年六月三
〇日午前零時において、株式会社E銀行に移転し、被上告人銀行を委託者及び受益
者とし、右E銀行を受託者とする信託財産となつたものであることが明である(右
政令二条二項及び三項によれば右の信託財産の信託条件等に関しては遅滞なく協議
を行い、大蔵大臣の指定する日までにその認可を申請すべく、その認可を受けなけ
れば右の協議は効力を生じないとされるが、この故に信託財産たる効果も生じない
ものと解することはできない)から、被上告銀行はその旧勘定に属する国内資産に
ついては爾後その管理処分権を失い、右資産を他に賃貸している場合にもその賃貸
人としての権利を行使するに由ないものといわなければならない。そして本件土地
が被上告人銀行の旧勘定に属することは原判決の判示自体から明瞭であるから、被
上告人銀行は他に特段の事情のない限り右土地の賃借人たる上告人Aに対し、前記
指定時たる昭和二二年六月三〇日午前零時の後においてはその賃貸借につき解約の
申入をする権能を失つたものと認むべきである。しかるに原審は他に何等特段の事
情を示すことなく、右指定時の後たる昭和二三年一二月一八日被上告人銀行より同
上告人に対してした本件土地賃貸借の解約申入を有効と解し、これに基き被上告人
銀行の上告人等に対する前掲本訴請求の一部を認容したのであつて、右は前記政令
二条の趣旨を誤解したかまたは審理不尽の違法あるものであつて破棄を免れない。
 よつて爾余の論旨に対する説明を省略し民訴四〇七条に従い全裁判官一致の意見
で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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