弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人日野和昌、同安田昌資、同島林樹の上告理由第一点について
 本件のように上告人、被上告人双方の各被用者の過失に基因する同一事故によつ
て生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間において民法五〇九条の規定により
相殺が許されないことは、当裁判所の判例(昭和四七年(オ)第三六号同四九年六
月二八日第三小法廷判決・民集二八巻五号六六六頁)とするところであり、このこ
とは、双方がいずれも運送業を営む会社であつても同様であるというべきである。
これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法
はない。論旨は、採用することができない。
 同第二点について
 原審が適法に確定した事実関係の下において、被上告人の時効の援用が信義則に
反せず、権利の濫用にならないとした原審の判断は、正当として是認することがで
き、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第三点について
 本件訴訟の経過を考慮すれば、原審に釈明権の不行使又は審理不尽の違法はなく、
諭旨は、採用することができない。
 同第四点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠に照らし、正当として是
認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官大塚喜一郎の反対意見
があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官大塚喜一郎の反対意見は、次のとおりである。
 私は、当事者双方の過失に起因する同一の交通事故によつて生じた物的損害に基
づく損害賠償債権相互間においては、相殺が許されると解すべきものと考える。
 多数意見は、上告理由第一点について、右債権相互間の相殺は、民法五〇九条の
規定により許されないとして、その旨を判示した当裁判所の判例(昭和四七年(オ)
第三六号同四九年六月二八日第三小法廷判決)を引用する。ところで、同条が不法
行為債権の債務者は相殺をもつて債権者に対抗することができないとする趣旨は、
不法行為の被害者に現実の弁済によつて損害の填補を受けさせること及び不法行為
の誘発を防止することにあるとされており、右判例も、その旨を説示するのである
が、この法理を本件のような双方当事者の過失に起因する同一交通事故によつて生
じた不法行為(以下、双方的不法行為という。)債権相互間の場合に適用すること
は果して当を得た解釈といえるであろうか。判例を踏襲する多数意見によるとすれ
ば、双方的不法行為者のうち先に損害賠償請求権を行使した原告は、現実の弁済を
受けることができるのに対して、同一事故に基く損害賠償請求権を有する被告は、
原告の右請求に対抗する手段を封ぜられたまま、現実弁済の履行を強制される不合
理な結果を生じ、更に、右原告が被告から現実弁済を受けた後に支払能力を喪失し
た場合には事実上の不公平な結果を生ずることとなる(被告は反訴又は別訴の提起
によつて相殺禁止の不都合を避けられるとして判例を支持する考え方については、
被告が反訴又は別訴によつて債務名義を得れば、結局、相殺を許す場合とどれほど
の径庭もないこととなるであろう。)。
 現在多発しつつある自動車事故による不法行為は、一般に、過失によるものとさ
れているが、本件の如く双方的不法行為による反射的な作動による運転ミスの場合、
未熟な機械的運転ミスの場合など、伝統的な過失概念ではまかないきれないものが
あり、これらの事故は、性質上、損害賠償債権の相殺を許さないことによつて誘発
を防止することを期待できないものである。したがつて、民法五〇九条による新た
な不法行為の誘発を防止しようとする法意は、故意または伝統的な概念での過失に
よる不法行為の再発を防止する意味で是認せられるとしても、本件のような双方的
不法行為による事故発生を防止する現代的意義を喪失しているというべきである。
 もつとも双方的不法行為の場合であつても、それによつて生じた損害のうち治療
費、逸失利益等による人的損害については、人の生存にかかわるものであるから現
実の弁済を受けさせる必要があるとすべきであるが、物的損害にあつては、右のよ
うに解すべき合理的理由を見出しえないから、本件のような双方的不法行為による
もので、受働債権が物的損害賠償債権の場合は、民法五〇九条は適用されないと解
するのが相当であり、当裁判所の判例は、この限度において変更されるべきである。
 すると、原審が上告人の相殺の主張は民法五〇九条の規定に基づいて許されない
としたのは、同条の規定の解釈適用を誤つたものであり、その誤りは、判決に影響
を及ぼすことが明らかである。論旨は、この点において理由があり、その余の点に
ついて判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、更に、この点について審理を
尽くさせるため、本件を原審に差し戻すべきである。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    塚   本   重   頼

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