弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人桜川玄陽および上告人の上告理由について。
 私立学校法三七条一項は、各理事が単独で学校法人を代表することを原則としな
がら、寄附行為をもつてその代表権を制限することを許容し、同法二八条および昭
和三九年政令二九号による改正前の同法施行令(昭和二五年政令三一号)一条は、
理事の代表権対する右制限については、民法上の法人の場合と異なり登記をなすべ
きことを要求し、登記の後でなければこれをもつて第三者に対抗することができな
い旨規定している。そして、記録によれば、被上告法人B大学は、その寄附行為一
〇条において「理事長以外の理事は、すべてこの法人の業務について、この法人を
代表しない。」と規定して理事の代表権に対し制限を加え、前記私立学校法施行令
の定めるところによりその旨の登記をなし、さらに前記寄附行為一一条において「
理事長に事故があるとき、又は理事長が欠けたときは、理事長のあらかじめ指名し
た他の理事が順次に理事長の職務を代理し、又は理事長の職務を行う。」と規定し
ているところ(私立学校法三七条三項参照)、被上告法人の理事長であつたDは昭
和三五年一一月一一日死亡し理事長が欠けるにいたつたが、前記寄附行為一一条に
定める後継理事長の指名はなされていないし、また、右指名のない場合における準
則となるべき特段の規定が寄附行為に存しないことも明らかである。
 右の事実によれば、被上告法人の単なる理事は理事長の存在する場合に右法人の
代表権を有しないことは明らかであるだけでなく、理事長として登記とれたDが前
記のように後継理事長の指名をしないで死亡し理事長が欠けるにいたつた本件のご
とき場合においても、前記寄附行為および私立学校法の規定の趣旨に徴すれば、被
上告法人の単なる理事にすぎないEが所論のように当然に代表権を回復するにいた
ると解するのは相当でない。したがつて、右と同趣旨の見解のもとに、理事Eに被
上告法人の代表権が存しないとした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法
は存しない。所論は、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用で
きない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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