弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由は末尾添附別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の
判断は次ぎの如くである。
 本件の売買において、当時目的物の公定価格は百匁金二二円であつたが、これに
対し県知事の特別価格の認可があり、百匁金四五円で契約成立したこと、右認可に
は昭和二三年三月末日迄の期限が附せられて居たこと、上告人は右三月末日迄に本
件契約物件を受取り組合員に配給すべき義務があつたこと、そして被上告人は右期
間内に引取方を上告人に督促したに拘らず、上告人は右督促を無視して恣意にその
引取を為さず、認可期間後たる同年四月一日及同月一二日に契約物件中の一部(本
件係争の部分)の引取をしたこと、しかも上告人は右四五円の代金を以て組合員に
配給しその代金を受取つたことはいずれも原審の適法に確定した処である。かかる
場合においては上告人は右四五円の割合を以て代金支払の義務あるものとした原審
の判断は正当である(もしそうでなく上告人主張の様に上告人は公定価格二二円の
割合を以て支払えば足るものとすれば、上告人はその恣意によつて被上告人の不当
の損害において、不当の利益を得ることとなるであろう。県知事が右の如く特別価
格の認可をしたに付ては、それ相応の理由があつたことは勿論であろうし、本件の
如く僅に一〇日位の引取遅延によつて右の事情に変化があろうとは、当時吾国の経
済事情から見て到底考えられない処であり、従つて本件被上告人請求の代金が支払
われることにより価格統制法規の趣旨が乱されるものとは思えない。その他原審認
定の事実全部を通じて考えるときは、本件特別認可は期限を三月末日迄としてある
けれども、それは同月中に配給さるべき物資に関する認可であるから期限を右の如
く定めたものであり、原審認定の如く、被上告人はその趣旨に従つて集荷し、期限
内に引取を督促したに拘わらず、被上告人の恣意により(即全然被上告人の過失な
くして)引取の少しく後くれた場合の代金の授受の如きは右認可の中に含まれるも
のと解するを相当とする。論旨は総て四月一日以後の引取部分について公定価格の
限度内において支払義務あるのみであることを主張し、もしくはそれを前提とする
ものであるから総て理由なきに帰する。
 よつて民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条に従い裁判官全員の一致で主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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