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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
さいたま地方法務局志木出張所が原告に対して平成21年9月29日付け
で行った却下処分を取り消す。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,原告が,原告所有土地について登記簿上記載されている地積が誤っ
ているとして,さいたま地方法務局志木出張所(志木出張所)の登記官に対
して土地地積更正登記の申請を行ったところ,同申請が却下されたため,こ
の却下決定は違法であると主張して,同決定の取消しを求めている事案であ
る。
2争いのない事実等(証拠により容易に認定できる事実については括弧内に
証拠を示す。)
(1)原告は,埼玉県富士見市ab丁目c番dの土地(本件土地)及び同土地
上の建物の所有権並びに同市ab丁目c番eの土地(e土地)の18分の
1の持分権を有している者である。
(2)原告は,平成21年7月6日,志木出張所登記官に対し,本件土地の表
示登記のうち地積の記録を,62.23平方メートルから63.01平方
メートルに更正することを求める土地地積更正登記申請(本件登記申請)
をした。同申請は,同日,受付番号第24750号をもって受け付けられ
た。
同申請の際,原告は,添付書類として,申請書副本,地積測量図及び判
決書(さいたま地方裁判所川越支部平成17年(ワ)第336号損害賠償等
請求事件,同19年(ワ)第465号境界確定等請求事件,同19年(ワ)第
693号道路位置確定等請求事件についてのもの。以下,上記事件の判決
を「別訴判決」という。)を提出した。さらに,原告は,平成21年7月
21日ころ,補正の指示に応じて別紙地積測量図(別紙図面)を再度提出
した。
(甲6,7,乙1)
(3)志木出張所の登記官(登記官)は,平成21年9月29日,本件登記申
請に対し,実地調査の結果,本件土地の境界の確認ができなかったとして,
不動産登記法25条11号の規定により却下決定を行った(本件却下決
定)。
(4)同年9月16日,原告は,本件登記申請に対し,本件土地の地積更正登
記をすることを求める訴えを提起したが,同年10月10日付けの書面で,
請求の趣旨を本件訴えの請求の趣旨に変更した。
3争点
(1)本案前の争点(争点(1))
本件却下決定の行政処分該当性
(2)本案の争点(争点(2))
本件却下決定の違法性
4争点に対する当事者の主張
(1)争点(1)(本件却下決定の行政処分該当性)について
(原告の主張)
登記官が,e土地から本件土地への進入路幅を1.90メートルから2.
00メートルに変更する行為は,再建不可の本件土地に再建可能な土地で
あるという地位を与えることになるものである。登記官の同行為は,その
ような法的効果を生じさせ,実体上の権利関係に変動を及ぼすものである
から,本件却下決定には処分性がある。
また,本件土地の権利関係の範囲が拡張変更される結果,隣接地の所有
者の権利関係にも影響を与えるから,この意味でも本件却下決定は処分性
を有するといえる。
(被告の主張)
不動産登記法(法)25条11号に基づき本件登記申請を却下した本件
却下決定は,原告に対し,法律上何ら直接的な影響を及ぼすものではなく,
行政処分性を有しない。
原告が登記官に対してした本件登記申請に係る登記は,土地地積更正登
記であり,法38条に定められた土地の表題部の更正登記に該当するとこ
ろ,このような登記は,登記記録上誤りがあった場合に,土地の物理的状
況及び客観的事実を登記記録上に反映する事実的行為に過ぎず,当該登記
記録自体によって,土地の権利関係,物理的形状が変更,確定されるもの
でも,隣接地との境界,隣接地の範囲等に変更が生じるものでもない。
また,土地地積更正登記等の土地の表題部の更正登記は,当事者の申請
を待たずとも職権ですることが可能であり(法28条),本件登記申請は
登記官の職権発動を促すものに過ぎない。
したがって,土地地積更正登記は,それ自体国民の権利義務を形成し,
その範囲を確定する性質を有せず,土地地積更正登記申請が却下された場
合に申請者がこれを争う法律上の利益は存しないから,本件登記申請を却
下した本件却下決定は,行政処分性を欠くというべきである。
(2)争点(2)(本件却下決定の違法性)について
(原告の主張)
ア別訴判決において,本件土地とこれに隣接する各土地(隣接各土地)
との境界にはそもそも争いはないと認定されているが,隣接各土地の各
所有者はこの判決に対して控訴して異議を述べていないのであるから,
これにより原告が別訴で主張した境界が確定している。
したがって,原告の本件登記申請に対し,本件土地の境界の確認がで
きないとしてなした,本件却下決定は違法である。
イまた,登記官は,本件登記申請について,公務所に保管されている公
文書(隣接各土地の建物図面)に対する調査を行えば,本件土地の境界
を確定できたにもかかわらず,これを怠った。同調査の懈怠により,本
件土地の境界を確定できなかったのに,これを理由に本件登記申請を却
下した本件却下決定は違法である。
ウさらに,登記官は,本件登記申請の際に,原告に対して,別訴判決に
より特定された境界の境界点に境界標を設置し,境界標設置後の地積測
量図を再提出するよう指示をしなかった。補正の必要があれば,補正の
指示をすれば足りたにもかかわらず,本件却下決定は,それを怠って,
上級行政庁の指示であるとして行われたものであるから違法である。
(被告の主張)
ア本件却下決定は,本件登記申請に添付された別訴判決からは本件土地
の境界を確認できず,実地調査等によってもその確認ができなかった上,
原告からさらなる資料等の提出もなく,他の参考資料も存在しなかった
ため,結局本件土地の境界が確認できないとの理由によりなされたもの
であり,十分な理由があるから適法というべきである。
イ本件却下決定に至る具体的な経緯等は以下のとおりである。
(ア)本件登記申請には別訴判決の判決書が添付されていたが,別訴判
決は原告が隣接各土地の所有者らを被告として,境界確定等を求めて
提訴した事件の判決であるところ,具体的な境界点や境界についての
判断をすることなく,原告の訴訟行為が民事訴訟制度の趣旨,目的に
照らして著しく相当性を欠き,信義に反するとして不適法却下したも
のであって,これにより本件土地の境界を確認できるものではなかっ
た。
(イ)そこで,登記官は,境界の確認のため,本件土地の実地調査が必
要であると判断した。
まず,別紙図面上に示された境界点に境界標の表示がなかったこと
から,同年8月3日,別紙図面に示された境界点について原告の認識
する地点を現地で示させるため,原告の立会いを得て,本件土地の実
地調査を行った。同調査において,原告は,現地に境界点を明示する
境界標等のない別紙図面上のB点及びC点について,おおよその範囲
でその位置を示したのみで,確定的な境界点を指し示すことができず,
さらに登記官の質問に答える形で境界点をある程度特定したものの,
同月10日,原告は,これとは異なる点を境界点として示した写真を
志木出張所に送付してきた。
登記官は,その後,隣接各土地の所有権登記名義人16名に対して
現地調査への立会いを求め,同月19日,隣接各土地の所有権登記名
義人の本人,代理人,又は成年後見人の計11名(隣接各土地所有者
等)の立会いのもと,本件土地の現地調査を行った。
その結果,別紙図面上のA点及びB点については,原告が実地調査
において示した境界点(原告境界点)を結んだ線上にあることについ
て,隣接各土地所有者等の認識が一致したが,当該線上のいずれの位
置であるかは不明であるとの申述がなされた。同C点については,不
明と申述した者と,原告境界点と異なる点を主張した者とがあった。
同D点及びF点については,隣接各土地所有者等の認識は,いずれも
原告境界点と一致したが,同E点については,原告境界点の同D点及
びE点を結んだ線上であることについては認識が一致したものの,当
該線上のいずれの位置であるかは不明と申述された。
(ウ)原告は,その後も登記官に対し,本件土地の境界を認定できる資
料を提出することはなく,また,志木出張所に本件土地の境界を認定
できる地積測量等は保管されておらず,参考となる資料も存在しなか
った。
ウ以上のように,本件却下決定は違法ではない。
第3争点に対する判断
1争点(1)(本件却下決定は行政処分に該当するか)について
(1)処分の取消しの訴えの対象となる行政庁の処分は,それによって国民の
権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定することが法律上認められて
いるものでなければならない。
そこで,地積更正登記の申請を却下する本件却下決定が,上記行政庁の
処分に該当するかを検討するに,地積更正登記は,登記簿上に記載された
地積が当該土地の客観的な地積と合致しない場合に,これを訂正するもの
であり,地積更正登記により当該土地の権利関係,形状,範囲等が変更さ
れるものでなく,これと隣接する各土地との境界,範囲等に変更が生じる
ものでもないから,当該土地の所有者はもとより,上記各土地の所有者の
権利義務に何ら影響を与えるものでもない。したがって,同更正登記の申
請を却下する決定も,上記関係土地所有者らの実体上の権利,利益を侵害
するものとはいえない。
(2)もっとも,法156条は,登記官の処分を不当とする者は,当該登記官
を監督する法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる旨定
めている。そして,法25条は,登記官が登記の申請を却下する場合には,
その決定に理由を付することを定めている。
法25条が理由の付記を求める趣旨は,登記官の判断の慎重を担保して
恣意を抑制するとともに,申請を却下された当事者が審査請求を行うにつ
き便宜を与えたところにあると解されるところ,上記理由の付記が表示登
記の申請を却下する場合にも要求されていること(法25条11号)から
すると,上記法156条が定める審査請求をすることができる「登記官の
処分を不当とする者」には,表示登記の申請を却下する処分を不当とする
者が含まれるということができ,そうすると,地積更正登記申請を却下さ
れた場合にも,審査請求で救済される途が用意されていることになる。
これらにかんがみると,法は,当事者に対して,地積更正登記について
もその申請権を付与したものと解するのが相当であり,同登記申請を却下
する決定は,法により認められた申請権を侵害するものとして,国民の権
利義務に影響を与える行政庁の処分に該当すると解するのが相当である。
なお,法158条は,登記官の処分に係る審査請求について,行政不服
審査法の一定の規定の適用を除外する旨を定めており,これは上記審査請
求に原則として行政不服審査法の適用があることを前提としているとこ
ろ,行政不服審査法において対象とされる「処分」(同法2条)も抗告訴
訟の対象となる行政庁の処分と基本的には同様に解されており,このこと
からも地積更正登記の申請を却下する決定が行政庁の処分に該当するとし
た上記結論は相当であるといえる。
(3)以上より,本件却下決定は,行政庁の処分に該当する。
2争点(2)(本件却下決定の違法性)について
(1)前記争いのない事実等及び証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア原告は,志木出張所に対し,本件登記申請の添付書類として,別紙図
面のほか,別訴判決の判決書を提出した。同判決は,原告が,さいたま
地方裁判所川越支部において,隣接各土地の所有者らを被告として,境
界確定等を求めて提訴した訴訟の判決であるが,同裁判所は,同訴訟に
おける原告の訴訟行為が民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相
当性を欠き,信義に反すると認められるとして,実体の判断に入ること
なく訴えを却下した(甲7)。
イ平成21年8月3日,登記官は,原告立会いの下,本件土地の実地調
査を行った。同登記官は,別紙図面上に示された境界点に境界標の表示
がなかったことから,原告に境界点を指示するように求めた。原告は,
別紙図面上のZ点及びF点を示したが,同B点については,確定的な境
界点を示すことができず,登記官が直径2センチメートル程度の円を赤
マジックインキで描き,原告に対して「このあたりか」と聞いたところ,
原告は「そうだ」と答えた。同C点についても,原告は確定的な境界点
を示すことができず,登記官が直径約5センチメートルの円を赤マジッ
クインキで描き,原告に対して「このあたりか」と聞いたところ,原告
は「そうだ」と答えた。原告は,同D点,E点,A点については,登記
官に対してその位置を指示した。(乙3)
ウ同年8月10日,原告から志木出張所に,境界点を撮影したとする写
真(境界点位置及び境界点符号の記載があるもの)が送付されてきた。
同写真において示された境界点のうち,別紙図面上のB点及びC点は,
上記実地調査の際に原告が指示した点(指示境界点)と異なっていた。
(乙3)
エ同年8月19日,登記官は,隣接各土地所有者16名のうち,11名
(本人の代理人を含む。)の立会いにより本件土地の実地調査を行った。
立会人のうち8名は,別紙図面上のF点には同意したが,同A点及びB
点については,指示境界点である同A点及びB点を結んだ線上であるこ
とについては同意したものの,その線上のいずれの点であるかは不明と
申述し,同E点については,指示境界点である同E点とD点を結んだ線
上であることについては同意したものの,その線上のいずれの点である
かは不明と申述し,同C点については,不明と申述した。
他の立会人の一人は,同F点には同意し,同A点及びB点については,
指示境界点である同A点とB点を結んだ線上であることには同意したも
のの,その線上のいずれの点であるかはいずれも不明と申述し,また同
C点については,不明と申述した。
また別の立会人の一人は,同F点及びD点については同意し,同E点
については,指示境界点である同E点及びD点を結んだ線上であること
には同意したものの,その線上のいずれの点であるかは不明と申述し,
同C点については不明と申述した。
また別の立会人の一人は,同F点及びD点については同意し,同C点
については相違していると主張した。具体的には,同C点は,原告が主
張する境界点より約13センチメートルほど同B点寄りの位置であると
の主張であった。
なお,原告が同年8月10日に志木出張所に送付してきた写真におけ
る境界点を前提としても,別紙図面上の同B点については立会人の一人
が不明とし,同C点についても立会人の別の一人が主張する境界点から
同D点方向に約8センチメートル相違していた。
(乙3)
オ原告は,登記官に対し,上記の資料のほか,本件土地の境界を確認で
きる資料を提出しなかった(乙3,弁論の全趣旨)。
カ登記官は,同年9月29日,本件登記申請に対し,実地調査の結果,
本件土地の境界の確認ができなかったとして,法25条11号の規定に
より本件却下決定を行った。
(2)法は,表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が,当該不動産の表
示に関する事項についての登記官による調査の結果と合致しないときは,
登記官は,登記の申請を却下しなければならない旨規定している(法25
条11号,29条)。
本件却下決定は,法25条11号の規定に基づいてなされているところ,
前記認定のとおり,原告は,本件土地の境界が確認できる資料を提出して
おらず,登記官による実地調査によっても,その境界が確認できなかった
のであるから,同登記官が行った本件却下決定は違法とは認められない。
原告は,本件土地の境界は別訴判決において確定されていると主張する
が,別訴判決は原告の訴えを不適法として却下したものであり,これによ
って本件土地の境界を確認することはできないことは前述のとおりであ
る。
また,原告は,登記官が本来行うべき補正の指示や調査を怠ったために
本件土地の境界を確定できず,本件却下決定をすることになったなどと主
張するが,前記認定のとおり登記官は実地調査等を行っており,必要な調
査は行っているといえるのであって,これに加えてさらに補正の指示や調
査等を行うべきであったと認めるに足る証拠はない。
3以上のとおりであり,原告の請求には理由がないから棄却することとし,
主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第4民事部
裁判官八木貴美子
裁判官辻山千絵
裁判長裁判官遠山廣直は差し支えのため署名押印できない。
裁判官八木貴美子

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