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平成13年11月27日判決言渡
平成13年(行ウ)第7号 住民訴訟(代位請求)請求事件(平成13年9月11日
口頭弁論終結)
         判      決
       主      文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
      事実及び理由
第1 請求
 被告Aは,千葉地方裁判所平成13年(行ウ)第7号事件における被告B又は同C
に対する請求が認容されたときは,原告に対し,300万円の支払をせよ。
第2 事案の概要
1 原告は,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づい
て,被告Aに代位して住民訴訟を提起した。本件は,原告が,その勝訴を条件に,
被告Aに対し,弁護士報酬相当額の支払を求めた事案である。
2 原告の主張(請求原因)
(1) 原告は,千葉県の住民である。
(2) Cは,千葉県がんセンター臨床病理部長在職中の平成8年1月から平成10年
12月までの間,同センターとして受託した病理診断に関し,正規の手続を踏むこ
とをせず,委託料を個人的な収入としたが,この間,Cは,本来の業務に従事しな
かったので,給与相当分を不当に利得した。しかも,Cは,染色標本作成に関し,
不必要な外部委託を実施したほか,技師に不要な残業待機命令を発し,不要な時間
外勤務手当の支払を余儀なくさせた。これらによる被告Aの損害は,少なくとも4
232万円に上る。
(3) また,Bは,千葉県がんセンター長在職中の平成9年4月以降,財務会計上の
職務怠慢によりこれらを是正しなかったので,被告Aに対し,同額の損害を与えた
ものといえる。
(4) そこで,原告は,弁護士である田村徹を訴訟代理人として,① 法242条の
2第1項4号に基づき,B及びCに対し,被告Aに代位して4232万円の損害賠
償を求めるとともに,② ①の訴訟の勝訴を条件に,被告Aに対し,法242条の
2第7項に基づき,弁護士報酬相当額300万円の支払を求めた(当裁判所が,こ
のうち②の訴訟について口頭弁論の分離をしたのが本件である。)。
3 争点
 本件の訴えは,住民訴訟において,原告勝訴判決の確定前に弁護士報酬相当額の
支払を求めるものであるが,これが適法か。
(1) 原告の主張
 本件訴えは,住民訴訟の請求認容を条件とする将来の給付の訴えであるが,住民
訴訟の請求認容確定後に別訴を提起する煩わしさを避けるため,住民訴訟に併合し
て提起することは,訴訟経済上も合理的で,あらかじめ提起する必要性があり,適
法である。
(2) 被告Aの主張
 法242条の2第7項にいう「勝訴」とは勝訴判決の確定を意味するものであっ
て,原告が求める弁護士報酬の支払請求権は,将来の給付の訴えを提起することが
できる期限付債権や条件付債権には当たらず,また,その基礎となるべき事実関係
及び法律関係が既に存在しその継続が予測されるとともに,同債権の発生,消滅及
びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測
し得る事由も存在しないから,本件訴えは不適法である。
第3 当裁判所の判断
1 法242条の2第7項は,同条第1項4号の規定によるいわゆる代位請求訴訟
を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において,弁護士に報酬を支払
うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる
額の支払を請求することができる旨定めている。
 ところで,上記にいう「勝訴」の意義について検討すると,代位請求訴訟におい
ては,原告住民が普通地方公共団体に代わって訴訟を提起するものであり,勝訴判
決が確定したときは原告住民の費用負担のもとで普通地方公共団体が勝訴判決の利
益を受けることとなるという点を考慮して定められたものであるから,弁護士報酬
支払請求権は,代位請求訴訟において原告勝訴の判決が確定し,判決による利益が
普通地方公共団体に現実化した時にはじめて発生すると解すべきであり,上記にい
う「勝訴」とは勝訴判決の確定を意味するというべきである。
 そして,弁護士報酬のうち法242条の2第7項の相当額が具体的にどのような
金額になるかについては,事柄の性質上,代位請求訴訟が完結し,すべての訴訟活
動が終了した後でなければ判断できないものである上,普通地方公共団体が法律で
定められた弁護士報酬の支払を拒むことは通常考えがたいことを考慮すると,これ
が紛争となり得るのは,代位請求訴訟の確定後において,弁護士報酬のうち普通地
方公共団体が負担すべき相当額の多寡が争いになるという場合に限られることにな
る。ところが,原告は,この点について,原告の煩わしさを主張するものの,本件
が上記のような例外的な場合にあたることの主張立証はないので,事前請求の必要
性の要件を欠いている。もとより,弁護士報酬のうち相当額を定めるには,上記の
とおり,すべての訴
訟活動が終了した後でなければ判断できない性質のものであるから,本件を代位請
求訴訟と併合することは,訴訟経済に合致せず,かえって,本件被告Aに過度の負
担を強いることとなる。結局,本件訴えは不適法である。
2 よって,本件訴えは不適法であるから,これを却下することとし,訴訟費用
の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決
する。
 千葉地方裁判所民事第三部
       裁判長裁判官    園   部   秀   穗
          裁判官    今   泉   秀   和
          裁判官    向   井   邦   生

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