弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人灘税務署長が控訴人Aに対して同控訴人の平成4年度分所得税に
ついて平成8年1月29日付けでした更正処分のうち,納付すべき税額656万9
600円を超える部分を取り消す。
(3) 被控訴人灘税務署長が控訴人Bに対して同控訴人の平成4年度分所得税に
ついて平成8年1月29日付けでした更正処分のうち,納付すべき税額623万3
200円を超える部分を取り消す。
(4) 被控訴人西宮税務署長が控訴人Cに対して同控訴人の平成4年度分所得税
について平成8年1月29日付けでした更正処分のうち,納付すべき税額645万
6600円を超える部分を取り消す。
(5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
 主文同旨
第2 事案の概要
 事案の概要は,以下のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の
「第2 事案の概要等」「第3 争点に関する当事者の主張」記載のとおりである
から,これを引用する。
1 原判決2頁21行目「前提事実」の次に「(争いのない事実及びかっこ内の証
拠並びに弁論の全趣旨により認定できる事実)」を加える。
2 同頁22行目「以下の事実は,いずれも当事者間に争いがない。」を削る。
3 同3頁10行目「37条1項」の次に「の表の」を加える。
4 同頁14行目「譲渡予定資産」を「譲渡資産」に改める。
5 同4頁2行目「D相続人代表である」を「「(D相続人代表)」との肩書で」
に改める。
6 同頁6行目「た」の次に「(原審における控訴人A本人)」を加える。
7 同頁11行目「ずれも」の次に「本件土地の売買代金を控訴人らの譲渡所得と
し,」を加える。
8 同5頁5行目「1項は,「個人が,」を「1項は,個人が,」に改める。
9 同頁16行目「計算する。」旨」を「計算する旨」に改める。
10 同頁22行目「1月1日以後に譲渡する年」を「1月1日以後に,譲渡の日
の属する年」に改める。
11 同頁26行目「17項3号」の次に「,租税特別措置法施行令の一部を改正
する政令(平成3年第88号)附則4条」を加える。
12 同6頁18行目「規定している」の次に「(争いがない。)」を加える。
13 同7頁4行目「売買契約の当事者」を「売買契約の売主はDか控訴人らか」
に改める。
14 同頁5行目「原告らに」を削る。
15 同頁16行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「 本件土地の売買契約における売主は控訴人らである。」
16 同頁17行目「9月30日に」の次に「控訴人らと再開発組合との間で」を
加える。
17 同頁20行目「また,」から同頁21行目「ある。」までを削る。
18 同9頁25行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「 本件土地の売買契約における売主はDである。」
19 同10頁12行目「4月21日ないし」を削る。
20 同12頁7行目「14号」を削る。
21 同頁20行目「原告らが」を「仮に,本件土地の売買契約における売主がD
であると認められ,あるいは,譲渡資産の譲渡者と買換資産の取得者とが一致する
ことを要しないと解するとしても,控訴人らが」に改める。
22 同頁26行目「原告ら」を「相続人」に改める。
23 同13頁1行目「解されない。」の次に「民法上の相続による包括承継と税
法上の課税要件とは別次元の問題であり,措置法37条に定める課税要件に関し,
相続によって法的地位が承継されることはない。」を加える。
24 同頁3行目「14号」を削る。
25 同頁12行目「14号」を削る。
26 同頁13行目「経過処置」から同16行目末尾までを次のとおり改める。
「 経過処置に係る届出書の提出及び本件特例を受ける地位の承継
 Dは,平成4年3月10日に本件届出書を提出することにより,本件特例を受け
る地位を取得し,同人の死亡により,その相続人である控訴人らが同地位を包括承
継した。」
27 同頁22行目「4月ないし」を削る。
28 同14頁6行目「4月ないし」を削る。
29 同頁11行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「 措置法通達37-24は,譲渡資産を譲渡した者がその後死亡したが,死亡前
に買換資産の取得に関する売買契約を締結している等の場合に関するものであり,
本件のように,買換資産を取得した者がその後譲渡資産を譲渡する前に死亡した場
合はこれと同様に扱うことはできない。これは,譲渡する者が異なれば,課税され
る者が異なるという差異が生じることからも明らかである。」
30 同15頁9行目「仮に」から同頁14行目「である。」までを次のとおり改
める。
「措置法通達37-24は,譲渡資産を譲渡した者が,その死亡前に買換資産の取
得に関する売買契約を締結しているなど,買換資産が具体的に確定しており,か
つ,その相続人が法定期限内に買換資産を取得し事業の用に供した場合に,死亡し
た者の譲渡所得について,本件特例の適用を認めるものであり,その趣旨は,措置
法37条1項の適用に関する人的範囲を,相続人に限り拡張する解釈を示したこと
にある。これを買換資産を取得した者が譲渡資産を譲渡する前に死亡した場合と比
較すると,買換資産の取得と譲渡資産の譲渡の先後関係が逆であるにすぎず,譲渡
資産と買換資産の牽連性は維持されていて,実態は同じであるといえるから,この
場合にも同通達の場合と同様の扱いをすべきである。したがって,本件で,仮に譲
渡資産である本件土地の売主が控訴人らであるとしても,前記1のとおり,平成4
年7月22日には譲渡が具体的に確定していたから,措置法通達37-24の場合
と同様に扱うべきである。」
第3 当裁判所の判断
 当裁判所の判断は,以下のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」
中の「第4 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決17頁3行目「しかし,」の次に「上記訴状の文言に加え,上記訴状に
はこれとは異なった本件土地の売買契約の時期及び売主に関する記載がないこと,
同訴状請求の原因五4にも「本件は,買換資産を取得後,相続人が既に確定してい
た物件の譲渡をなした」との記載があることなどに照らすと,」を加える。
2 同頁23行目「所得した。」を「取得した。」に改める。
3 同18頁1行目「各3分の1の割合で」を削る。
4 同頁25行目「相続人間で決着が」から同頁26行目「登記をした」までを
「平成4年7月5日付で相続人間の覚書が作成され,これに基づいて真正な登記名
義の回復を原因とするE名義の登記がなされたのは」に改める。
5 同19頁10行目「原告らは」から同20頁13行目「認められる。」までを
次のとおり改める。
「 原審における控訴人A本人の供述中には,上記E及びFの同意も平成4年4月
には得られており,同年4月末には売買の条件が揃っていたが,再開発組合から手
続ができていないと言われて契約書ができなかった旨の部分があり,甲17の①に
よれば,Dの代理人とEの代理人との間で借地権割合についての合意が成立して合
意書が作成され,その日付は平成4年4月2日と記載されており,ただし,月日の
記載は手書きであることが,また,甲17の②によれば,Dの代理人とFの代理人
との間で借地権割合についての合意が成立して合意書が作成され,その日付は平成
4年4月2日と記載されており,ただし,月日の記載は手書きであることがそれぞ
れ認められる。
 しかし,前記のようにEについては,その共同相続人らとの間で本件土地上に存
在した建物を何人が取得するかについて紛争があったところ,乙10によれば,相
続人間でEが上記建物の所有権を有する旨の合意が成立したのは,平成4年7月5
日であることが,また,乙7によれば,Fが保管している上記Dとの合意書の写し
では年月日の記載は空欄であり,同人は同合意書が作成された月日は覚えていない
ことがそれぞれ認められるから,これら証拠によれば,甲17の①及び②の作成日
のうち,4月2日との記載部分は採用することができない。そこで,これら事実及
び後記オの再開発組合の理事会議事録の記載に照らすと,控訴人A本人の上記供述
部分は採用することができない。」
6 同20頁14行目「ウ」を「イ」に改める。
7 同頁25行目「現に」から同21頁6行目「認められる。」までを削る。
8 同21頁7行目「エ」を「ウ」に改める。
9 同頁15行目「オ」を「エ」に改める。
10 同22頁5行目「カ」を「オ」に改める。
11 同頁15行目「時点でも,」の次に「G側(編注 GはDの姓である。)の
諸条件の整理は未了であり,買収手続はまだ進行中の状態であって,」を加える。
12 同頁19行目「キ」を「カ」に改める。
13 同頁21行目「締結したのであれば,」を「締結し,その所有権が組合に移
転したのであれば,特段の事情がない限り,その賃貸人の地位も再開発組合に移転
し,」に改める。
14 同23頁3行目「ク」を「キ」に改める。
15 同頁22行目の次に行を改め,次のとおり加える。
「ク 以上のとおりであって,平成4年7月22日にDと再開発組合との間で本件
土地の売買契約が成立したとの控訴人ら主張の事実は,これを認めることができな
い。」
16 同25頁5行目「措置法37条1項につき」から同頁12行目「生じる。」
までを次のとおり改める。
「課税の特例が定められている場合,これが適用される要件はこのような特例を定
める政策目的等から定められるから,その結果,特例の効果が発生する要件が全部
具備する前に当該個人について相続が生じた場合,当該規定の文言やその趣旨か
ら,その特例の効果を受ける地位は被相続人についてだけ認められ,その相続人は
被相続人の特例を受ける地位を承継しないと解される場合もありうるところであ
る。そして,措置法37条1項は,不動産の譲渡所得に対する課税の特例を定める
ものであるところ,相続発生後に相続人(ら)が当該不動産を譲渡した場合,その
譲渡所得は,被相続人ではなく,相続人(ら)について生ずるのであり,また,相
続人(ら)がその売買代金(全部または一部)を被相続人が営んでいた事業用固定
資産の買替に使用するとは限らないから,前記措置法37条1項の文言及び上記ア
のようなその政策目的からすると,このような場合に相続人(ら)が被相続人の特
例を受ける地位を当然承継するものと解することができない。そこで,本件におい
て,Dは本件土地を売却する前に死亡したのであるから,たとえDが特例を求める
届出をしたとしても,そのために控訴人らがDの本件特例を受ける地位を承継した
と解することはできない。」
17 同26頁9行目「4月ないし」を削る。
18 同頁22行目から23行目にかけて「事業の用に供したときは,」の次に
「前記のような措置法37条1項の政策目的にも適うことから,」を加える。
19 同27頁6行目「4月ないし」を削る。
20 同頁25行目「あっても,」の次に「このような場合に本件特例を適用する
ことは措置法37条1項の政策目的に適うところから,」を加える。
21 同28頁14行目「(前記1(2)イ)」を「(原判決「事実及び理由」の
「第2 事案の概要」の2(4))」に改める。
22 同頁26行目「昭和26年」を「昭和28年」に改める。
23 同29頁11行目「10万円」を「控訴人各自につき10万円」に改める。
24 同31頁1行目「平成4年」を「平成4年の」に改める。
第4 結論
 よって,控訴人らの本件各請求は理由がないから棄却すべきであり,これと結論
を同じくする原判決は相当であるから,本件各控訴をいずれも棄却し,控訴費用の
負担について,行政事件訴訟法7条,民訴法67条,65条,61条を適用して,
主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 大喜多啓光
裁判官 安達嗣雄
裁判官 久保田浩史

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