弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役壹年以上貳年以下に処する。
     原審における未決勾留日数中、参拾日を右本刑に算入する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人沢登定雄の控訴趣意書を引用するが、その要旨は、原
審が被告人に対し、刑の執行を猶予しなかつたのは、量刑不当であると謂うにあ
る。
 よつて先づ職権により、原判決の法令の適用を検討するに、原判決は、原判示第
一の(一)乃至(六)の窃盗に刑法第二百三十五条を適用し、原判示第二の強盗未
遂に同法第二百三十六条第二百四十三条を適用した上、後者について、同法第四十
三条第六十八条第三号に則り、未遂減軽を為し、右の窃盗と強盗未遂とは、同法第
四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条により、最も重い窃盗(原
判示第一の(一))の刑に法定の加重を為した上、少年法第五十二条第一条により
被告人を懲役一年以上二年以下に処しているが、刑法第四十七条の併合罪加重の規
定は、併合罪中重い罪の長期に半数を加えたものを長期とすることを定め、短期に
ついては、何等の規定を置いていないから、原判決の通り、併合罪中の各罪に定む
る刑の短期を顧慮するこなく、最も重い罪の長期に半数を加えたものを長期とする
と共に短期もその刑の短期によるもの、前記の例によれば窃盗と強盗未遂とがあつ
て、後者について未遂減軽したときは、窃盗の方が重くなるので、その長期は、懲
役十五年となるが、短期は懲役一月であつて、懲役一月以上十五年以下の範囲内で
処断すべきもののように一応は、考えられるけれども、若しそうだとすると、強盗
未遂罪一個だけ犯したときには、如何に減軽しても一年三月を下らないのに、更に
窃盗罪も犯したために一年三月以下に処断せられるような奇異の観を呈し、公平を
失す<要旨>ることは、多言を要しないところである。それ故、併合罪加重をする
際、その処断刑は、長期については、併合罪中最も重い罪の刑に半数を加え
たものとするが、短期については、併合罪中、その短期の最も重いものによるべき
ものと解するのが相当である。(昭和二八年四月一四日最高裁第三小法廷判決参
照)。果して然らば原審は、被告人を懲役二年六月(未遂減軽した強盗未遂罪の短
期)以上十五年以下の範囲内で処断しなければらなかつたのである。従つて、原審
が被告人を前記の通り懲役一年以上二年以下に処したのは、法令の適用を誤つたこ
とになり、これは、判決に影響すること明らかであるから、この点で、原判決は、
破棄を免れない。
 よつて尓余の論旨についての判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八
十条により、原判決を破棄し、同法第四百条但書により、次の通り自判する。
 犯罪事実並に証拠の標目は、原判決を引用する。
 法律に照すに、被告人の所為中窃盗の点は、刑法第二百三十五条に強盗未遂の点
は、同法第二百四十三条第二百三十六条に各該当するところ、後者については、未
遂罪であるから、同法第四十三条本文第六十八条第三号により法定の減軽を為すが
以上は、同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条により、
最も重い原判示第一の(一)の窃盗の罪の刑の長期に半数を加えたものを長期と
し、短期は、右強盗未遂罪の刑によることとし、被告人を懲役二年六月以上十五年
以下で処断すべきものであるが被告人は少年であり、実父はなく、実母と共に内縁
の夫と同棲しているけれども生活が苦しく、そのために本件犯行を為したものであ
る点や犯罪の回数、被害金額、弁償の程度等諸般の情状を綜合するときは、刑の執
行を猶予することは、相当でないので、少年法第五十二条第一項により、被告人を
懲役二年六月以上の不定期刑に処すべきではあるが前記の通り本件は、被告人のみ
の控訴であるから、刑事訴訟法第四百二条により、原判決の刑より重い刑を言渡す
ことはできないので原審の通り、被告人を懲役一年以上二年以下に処し、原審にお
ける未決勾留日数中、三十日は、刑法第二十一条により、右本刑に算入する。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)

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