弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤健二の上告趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単な
る法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 なお、【要旨】本件は、平成六年法律第四号による改正前の政治資金規正法一二
条一項に基づいて提出された報告書を作成するに当たり、それに虚偽の記入をした
というものであるところ、何人が右報告書に虚偽の記入をしても、政治資金の収支
を公開することにより政治活動の公明と公正を確保するという同法の目的が没却さ
れることに変わりはないのであって、右改正前の同法二五条一項により右行為が処
罰されるのは、特定の者に課せられた義務に違反するからではないというべきであ
る。したがって、同条項が定める前記報告書に虚偽の記入をする罪は、その主体が
限定されたものではなく、犯人の身分によって構成すべき犯罪ではないと解される
から、原判決が、これと同旨の見解の下、会計責任者との共謀による被告人の本件
所為に対して平成七年法律第九一号による改正前の刑法六五条一項を適用しなかっ
た第一審判決を正当とした判断は、これを是認することができる。
 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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