弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

判決言渡平成21年1月27日
平成20年(行ケ)第10196号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成21年1月20日
判決
原告日立化成工業株式会社
訴訟代理人弁理士三好秀和
同豊岡静男
同高久浩一郎
同原裕子
被告三井化学株式会社
訴訟代理人弁理士鈴木俊一郎
同八本佳子
同土屋直子
主文
1特許庁が無効2006−80213号事件について平成20年4月1
5日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
1原告は,発明の名称を「ダイボンディング材及び接着方法」とする特許第3
117971号の特許権者であるところ,本件は,被告からの特許無効審判請
求に基づき特許庁が訂正後の請求項1∼12(全請求項)を無効とする旨の審
決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。
2争点は,①上記訂正後の請求項1∼12に係る発明が,下記引用例との関係
で進歩性(特許法29条2項)を有するか,及び,②本件発明の明細書及び図
面の記載がいわゆる実施可能要件(平成11年法律第160号による改正前の
特許法36条4項,以下「旧36条4項」ともいう)を満たすか,である。。

・特開平6−145639号公報(発明の名称「導電性接着フィルム,その
製造法及び接着法,出願人日立化成工業株式会社,公開日平成6年5」
月27日,甲1。以下「甲1公報」といい,これに記載された発明を「甲
1発明」という)。
・特開平6−264035号公報(発明の名称「接着フィルム,その製造法
及び接着法,出願人日立化成工業株式会社,公開日平成6年9月20」
,。「」,「」日甲2以下甲2公報といいこれに記載された発明を甲2発明
という)。
・特開平6−218880号公報(発明の名称「接着性絶縁テープおよびそ
れを用いた半導体装置,出願人三井東圧化学株式会社,公開日平成6」
年8月9日甲3以下甲3公報といいこれに記載された発明を甲,。「」,「
3発明」という)。
・特開平6−256733号公報(発明の名称「耐熱性接着材料,出願人」
東レ株式会社,公開日平成6年9月13日,甲4。以下「甲4公報」と
いい,これに記載された発明を「甲4発明」という)。
・特開平5−152355号公報(発明の名称「半導体装置,出願人日東」
電工株式会社,公開日平成5年6月18日,甲5。以下「甲5公報」と
いい,これに記載された発明を「甲5発明」という)。
・特開平4−234472号公報(発明の名称「熱可塑性ダイ結合接着フィ
ルム,出願人ナシヨナルスターチアンドケミカルインベストメ」
,,ントホールデイングコーポレイシヨン公開日平成4年8月24日
甲6。以下「甲6公報」といい,これに記載された発明を「甲6発明」と
いう)。
・特開平3−105932号公報(発明の名称「シート状接着剤並びに当該
接着剤を用いた半導体装置,出願人株式会社日立製作所,公開日平成」
3年5月2日,甲7。以下「甲7公報」といい,これに記載された発明を
「甲7発明」という)。
・米国特許第5296074号明細書(登録日1994年〔平成6年〕3
月22日(甲8−1・2。以下「甲8公報」といい,これに記載された)
発明を「甲8発明」という)。
・特開平4−227782号公報(発明の名称「ダイ接着接着剤組成物,」
出願人イー・アイ・デユポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー,
公開日平成4年8月17日,甲9。以下「甲9公報」といい,これに記
載された発明を「甲9発明」という)。
〈判決注:平成11年法律第160号による改正前の特許法36条4項は,次のとおり〉
である。
前項第3号の発明の詳細な説明は,通商産業省令で定めるところにより,そ
の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をするこ
とができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない。
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁等における手続の経緯
ア原告は,平成7年7月6日の優先権(特願平7−171154号)を主
張して,平成8年7月8日の原々出願(特願平9−505008号)及び
平成11年9月2日の原出願(分割出願,特願平11−248802号)
からの更なる分割出願として,平成12年2月21日,名称を「ダイボン
ディング材及び接着方法」とする発明について特許出願(特願2000−
43233号)をし,平成12年10月6日に特許第3117971号と
して設定登録を受けた(請求項の数22。以下「本件特許」という。特許
公報は甲15。)
イこれに対し,平成13年6月15日付けで本件特許の全請求項に対する
特許異議の申立てがなされ,同手続の中で原告は平成14年7月23日に
請求項5∼7,18,22を削除し,請求項8以降の項番号を繰り上げる
(請求項の数17)等を内容とする訂正請求をしたところ,特許庁は平成
14年12月24日に訂正を認め特許を維持するとの特許異議決定(甲1
7)をした。
ウその後被告が,平成18年10月23日付けで本件特許の全請求項につ
いて特許無効審判請求を行ったので,特許庁は,同請求を無効2006−
80213号事件として審理し,その中で原告は平成19年1月9日に請
求項3を削除し,請求項4以降の項番号を繰り上げる(請求項の数16)
等を内容とする訂正請求をしたところ,特許庁は平成19年8月24日,
訂正を認め本件特許の請求項1ないし16に係る発明についての特許を無
効とする旨の審決をした。
エそこで原告は,平成19年10月4日,知的財産高等裁判所に対し上記
(()),審決の取消しを求める訴えを提起し平成19年行ケ第10336号
その後平成19年12月19日付けで,訂正審判請求(訂正2007−3
90142号。訂正後の請求項の数12。甲14)をしたところ,同裁判
所は,平成19年12月27日,特許法181条2項により上記審決を取
り消す旨の決定をした。
オ上記決定により前記無効2006−80213号事件は再び特許庁で審
理されることとなり,特許法134条の3第5項により上記訂正審判請求
は訂正の請求とみなされた(以下「本件訂正」という)ところ,特許庁。
は,平成20年4月15日,本件訂正を認めた上「特許第311797,
1号の請求項1∼12に係る発明についての特許を無効とする」旨の審決
をし,その謄本は平成20年4月25日原告に送達された。
(2)発明の内容
(「」「」本件訂正後の請求項1∼12以下順に本件発明1∼本件発明12
といいこれらを総称して本件発明というは次のとおりである下,「」。),(
線部は訂正部分。)
・請求項1】半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部【
材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって,
接着部分に均一に付けて用いられるものであり,
ポリイミド樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デ
カメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2−ビス[4−(4
)],−アミノフェノキシフェニルプロパンとから合成されるものであり
接着温度100∼350℃,接着時間0.1∼20秒,接着圧力0.
1∼30gf/mmで上記半導体素子のワイヤボンディングされる面2
の裏面を上記支持部材に接着することができ,
上記支持部材は,ダイパッド部を有するリードフレーム,又は,配線
基板であり,
吸水率が0.9体積%以下であり,残存揮発分が3.0重量%以下で
ある,有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。
・請求項2】飽和吸湿率が0.5体積%以下である請求項1記載のフィ【
ルム状ダイボンディング材。
・請求項3】半導体素子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部【
材に接着するためのフィルム状ダイボンディング材であって,
接着部分に均一に付けて用いられるものであり,
ポリイミド樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デ
カメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2−ビス[4−(4
)],−アミノフェノキシフェニルプロパンとから合成されるものであり
接着温度100∼350℃,接着時間0.1∼20秒,接着圧力0.
1∼30gf/mmで上記半導体素子を上記支持部材に接着すること2
ができ,
上記支持部材は,ダイパッド部を有するリードフレーム,又は,配線
基板であり,
飽和吸湿率が0.5体積%以下であり,残存揮発分が3.0重量%以
下である,有機物を含むフィルム状ダイボンディング材。
・請求項4】さらにエポキシ樹脂を含み,【
上記エポキシ樹脂は,グリシジルエーテルエポキシ樹脂,グリシジル
アミンエポキシ樹脂,グリシジルエステルエポキシ樹脂,及び,脂環式
エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれかである請求項1∼3のいずれ
かに記載のフィルム状ダイボンディング材。
・請求項5】充填材をさらに含む請求項1∼4のいずれかに記載のフィ【
ルム状ダイボンディング材。
・請求項6】請求項1∼5のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディ【
ング材を用いて支持部材と半導体素子とを接着する接着方法。
・請求項7】上記接着の条件が,接着温度100∼350℃,接着時間【
0.1∼20秒,接着圧力0.1∼30gf/mmである請求項6記2
載の接着方法。
・請求項8】上記接着温度は150∼250℃であり,上記接着時間は【
2秒未満であり,上記接着圧力は4gf/mm以下である請求項7記2
載の接着方法。
・請求項9】上記接着時間は1.5秒以下であり,上記接着圧力は0.【
3∼2gf/mmである請求項8記載の接着方法。2
・請求項10】上記接着することのできる温度は150∼250℃であ【
り,上記接着することのできる時間は2秒未満であり,上記接着するこ
とのできる圧力は4gf/mm以下である請求項1又は3記載のフィ2
ルム状ダイボンディング材。
・請求項11】上記接着することのできる時間は1.5秒以下であり,【
上記接着することのできる圧力は0.3∼2gf/mmである請求項2
10記載のフィルム状ダイボンディング材。
・請求項12】単一の層からなることを特徴とする請求項1∼5,10【
及び11のいずれかに記載のフィルム状ダイボンディング材。
(3)審決の内容
ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本件
訂正は請求項の削除又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか
ら適法であるとした上,①本件訂正後の本件発明1,2は甲1,3,8発
明と周知技術に基づいて,本件発明3∼6は甲1,3∼5,8発明と周知
技術に基づいて,本件発明7∼12は甲1∼甲9発明及び周知技術に基づ
いて,それぞれ当業者が容易に発明することができたから特許法29条2
項により特許を受けることができない,②本件特許の明細書及び図面の記
載は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載され
ているとはいえないから平成11年法律第160号による改正前の特許法
36条4項の要件を満たしていない,というものである。
イなお,審決が認定した甲1発明の内容,本件発明1,3と甲1発明との
一致点及び相違点は,次のとおりである。
(ア)〈甲1発明の内容〉
「半導体素子を支持部材に接着するためのダイボンディング用導電
性接着フィルムであって,
接着部分に均一に付けて用いられるものであり,
ポリイミド樹脂を主体とし前記ポリイミド樹脂は110−デ,,,(
カメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)と2,2−ビス[4−
(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるもの
であり,
8mm×8mmチップに1000gの荷重をかけて,300℃,5
秒間で上記半導体素子を上記支持部材に圧着することができ,
上記支持部材は,リードフレーム,又は,配線板である,有機物を
含むダイボンディング用導電性接着フィルム」。
(イ)本件発明1との対比
〈一致点〉
本件発明1と甲1発明とは,いずれも
「半導体素子を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディ
ング材であって,
接着部分に均一に付けて用いられるものであり,
ポリイミド樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−
デカメチレンビストリメリテート無水物と22−ビス4()(),[
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成される
ものであり,
接着温度300℃,接着時間5秒,接着圧力15.6gf/m㎡
で上記半導体素子を上記支持部材に接着することができ,上記支持
部材は,ダイパッド部を有するリードフレーム,又は,配線基板で
ある,有機物を含むフィルム状ダイボンディング材」。
である点で一致する。
〈相違点1〉
半導体素子を支持部材に接着する際に,本件発明1では,半導体素
子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するのに対
し,甲1発明では,不明である点。
〈相違点2〉
吸水率について,本件発明1では,0.9体積%以下であるのに対
し,甲1発明では,不明である点。
〈相違点3〉
残存揮発分について,本件発明1では,3.0重量%以下であるの
に対し,甲1発明では,不明である点。
(ウ)本件発明3との対比
〈一致点〉
本件発明3と甲1発明とは,いずれも
「半導体素子を支持部材に接着するためのフィルム状ダイボンディ
ング材であって,
接着部分に均一に付けて用いられるものであり,
ポリイミド樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−
デカメチレンビストリメリテート無水物と22−ビス4()(),[
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成される
ものであり,
接着温度300℃,接着時間5秒,接着圧力15.6gf/m㎡
で上記半導体素子を上記支持部材に接着することができ,上記支持
部材は,ダイパッド部を有するリードフレーム,又は,配線基板で
ある,有機物を含むフィルム状ダイボンディング材」。
である点で一致する。
〈相違点4〉
半導体素子を支持部材に接着する際に,本件発明3では,半導体素
子のワイヤボンディングされる面の裏面を支持部材に接着するのに対
し,甲1発明では,不明である点。
〈相違点5〉
飽和吸湿率について,本件発明3では,0.5体積%以下であるの
に対し,甲1発明では,不明である点。
〈相違点6〉
残存揮発分について,本件発明3では,3.0重量%以下であるの
に対し,甲1発明では,不明である点。
(4)審決の取消事由
しかしながら,審決には以下のとおりの誤りがあるから,違法として取り
消されるべきである。
(,)ア取消事由1甲1発明の認定の誤り一致点認定の誤り・相違点の看過
(ア)審決は,甲1発明の段落【0042(合成例3)の記載を根拠とし】
て,甲1発明のダイボンディング用導電性接着フィルムは,ポリイミド
樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デカメチレン)
ビス(トリメリテート二無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフ
ェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるものであると認定し,
これが本件発明におけるポリイミドと一致する旨認定した。
しかし,甲1発明におけるポリイミド樹脂は,2種類のアミン成分:
,(),’,22−ビス4−アミノフェノキシフェニルプロパン及び33
5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンと,2
種類の酸成分:1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無
水物)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得
られるポリイミドである(段落【0042〔合成例3〕参照。】)
,,()これに対し本件発明は1種類の酸成分:110−デカメチレン
ビストリメリテート無水物と1種類のアミン成分:22−ビス4(),[
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されたポリ
イミド(実施例におけるポリイミドF)である。ここで「モノマーX,
とモノマーYとから合成された樹脂」とは,モノマーとしてXとYのみ
を用いて合成された樹脂であること,すなわちXとY以外のその他のモ
ノマーを含まない樹脂であることは明らかである。
したがって,審決の甲1発明の認定は誤りであり,一致点の認定も誤
りであって,相違点(甲1公報の合成例3に記載されたポリイミド樹脂
(A3)と本件発明のポリイミドFとは異なること)を看過している。
(イ)本件発明においてポリイミドの構成が重要であることは,本件発明
に係る明細書(全文訂正明細書・甲14)の実施例の記載から明らかで
ある。
すなわち,明細書の実施例においては異なるモノマーから合成される
ポリイミドA∼Fについて検討されており段落0040表1段(【】),(
落【0047)及び表2(段落【0056)には,各ポリイミドを用】】
いた場合の吸水率,飽和吸湿率とリフロークラックの発生について記載
されている。
ポリイミドFは本件発明で規定するものであるのに対し,ポリイミド
A∼Eはいずれも,ジカルボン酸として1,2−(エチレン)ビス(ト
リメリテート無水物)を使用しており,本件発明の特性を達成すること
ができない。
ポリイミドEはジカルボン酸として12−エチレンビスト,,,()(
リメリテート無水物)と,ポリイミドFのジカルボン酸である1,10
−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)とを等モルで使用し
た樹脂であるが(使用したジアミンはポリイミドFと同じ,ポリイミ)
ドFと比べて吸水率の値で劣っており,本件発明の特性を達成できない
(表1のNo.5と7,No.6と対比。)
(ウ)なお,原告が上記相違点2及び3に係る本件発明1の吸湿率及び残
存揮発分,さらに上記相違点5に係る本件発明3の飽和吸湿率の特性を
実現するためにはダイボンディング材の主成分であるポリイミド樹脂の
種類が特に重要であり甲1発明ではこの効果を達成できないことを示す
ために行った追加実験では,本件発明のポリイミドFは甲1発明との相
違点2,3及び5に係る各特性を実現することができ,その結果,リフ
ロークラックの発生を回避することができるのに対し,甲1公報の合成
例3に記載されたポリイミドはこれらの相違点に係る特性をいずれも実
現することができず,その結果,リフロークラックの発生を回避するこ
とができなかった(実験成績証明書,甲16。)
このように,本件発明のポリイミドFは,従来技術のポリイミド樹脂
と比べてダイボンディングフィルムに求められる厳しい要求特性を満足
することができ,顕著な効果を奏する樹脂である。
(エ)上記のとおり,本件発明のポリイミドFと甲1公報の合成例3に記
載されたポリイミド樹脂とは,その原料となるモノマー組成が明らかに
相違するところ,このモノマー組成の相違が実体として異なるポリマー
を与えることは,本件明細書の表1のポリイミドEとF,実験成績証明
書(甲16)に示されるように,ダイボンディング材として使用された
際の特性の差異から明らかであり,本件発明においてこの特定のポリイ
ミド樹脂の選択は特徴的な構成である。しかるに,審決はこの特徴的部
分を捨象し,恣意的に一致する部分を選択して一致点を認定し,その結
果,本件発明のポリイミドFと甲1公報記載のポリイミド樹脂との相違
点を看過した。これが審決の結論に影響することは明らかであるから,
審決の認定・判断には違法がある。
イ取消事由2(相違点の認定・判断の誤り)
(ア)審決は前記相違点を容易想到と判断したが,そもそも本件発明1及
び3と甲1発明のポリイミド樹脂は同じものではないから,審決の上記
判断は前提において誤りといわざるを得ない。
(イ)また,審決が看過した相違点についてみても,以下のとおり容易想
到ということはできない。
すなわち,審決が挙げた甲1∼甲9公報にはフィルム状ダイボンディ
ング材に本件発明のポリイミド樹脂を使用することの開示はないから,
看過した相違点の検討においては,甲1公報の記載に基づいて,甲1発
明のポリイミド樹脂を本件発明のポリイミドFに変更することが容易か
否かを判断せざるを得ない。
この点,甲1発明は,熱時接着力の高いダイボンド用導電性接着フィ
ルムを提供することを目的とし,広く式(Ⅰ)で表されるジカルボン酸
無水物(1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)も
概念上含む)を使用するとの技術思想を開示するものである。甲1公報
には本件発明の効果(吸水率,残存揮発分及び飽和吸湿率を改善し,さ
らにはリフロークラックの発生を防止するとの効果)については記載も
示唆もない。つまり,甲1公報においては,ダイボンディング材の主体
となるポリイミドのモノマー構成が,ダイボンディング材の吸水率,残
存揮発分及び飽和吸湿率に影響を与えること,さらにはリフロークラッ
クの発生の有無にも影響することについて全く検討されていなかった。
したがって,甲1発明のポリイミド樹脂に代えて,異なる課題を解決
するための技術思想を開示する甲1公報に記載された広範なジカルボン
酸及びジアミンの中から,特定の各1種を選択し,それにより甲1発明
とは全く別異な効果を奏する本件発明のポリイミドFを採用すること
は,当業者が容易になし得ることではない。
(ウ)さらに,本件発明1及び3に共通する残存揮発分が3.0重量%以
下であるとの構成に関していえば,この3.0重量%という数値は本件
発明において臨界的意義を有するものである。
すなわち,本件明細書の表3に示されるように,ポリイミドFを用い
た場合に残存揮発分が3.5重量%以上であるとフィルム中にボイドが
,,.発生しリフロークラックが発生してしまうのに対し残存揮発分が3
0重量%以下であるとフィルム中のボイドは発生せず,リフロークラッ
クの発生もない。
このような臨界的意義を有する数値限定を一構成とする本件発明は,
この点のみにおいても進歩性が認められるべき発明である。
ウ取消事由3(特許法旧36条4項の適用の誤り)
審決は「本件発明の『ピール強度』は,その測定方法が本件明細書及,
び図面の記載からだけでは明確でなく,また,一般的な測定方法ともいえ
ないので,本件明細書及び図面の記載が,当業者がその実施をすることが
できる程度に明確かつ十分に記載されているとは云えない(審決40頁。」
6行∼9行)と判断した。
しかし,本件発明1∼12はいずれも「ピール強度」を発明特定事項と
して含むものではないから,そのような「ピール強度」との関係において
特許法旧36条4項の実施可能要件が問題となるものではなく,審決の上
記判断は誤りである。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1)取消事由1に対し
ア本件発明1及び3には,フィルム状ダイボンディング材は「ポリイミ,
ド樹脂を主体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デカメチレン)
ビス(トリメリテート無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノ
キシ)フェニル]プロパンとから合成されるものである」と記載されてお
り,1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)及び2,
2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン「のみ」か
ら合成されるものであるとは記載されていない。
また,本件明細書(甲14)には「ポリイミド樹脂の原料として用いら
れるテトラカルボン酸二無水物としては,…2種類以上を混合して用いて
もよい(段落【0033)と記載され「またポリイミド樹脂の原料と。」】,
して用いられるジアミンとしては,…2種類以上を混合して用いてもよ
い(段落【0034】と記載されているのであって,これらの記載によ。」
れば,本件発明1及び3のモノマー組成について,テトラカルボン酸二無
水物及びジアミンを1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無
水物)及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロ
パンに限定して解釈することはできない。
したがって本件発明に記載されたポリイミド樹脂と22−ビス4,,,(
),−アミノフェノキシフェニルプロパンを含む2種類のアミン成分及び1
10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)を含む2種類の
酸成分とから合成された甲1公報の合成例3に記載されたポリイミド樹脂
とは,発明の要旨の認定において一致する。
イこれに対し原告は,本件発明に係るポリイミドFとは別のモノマーを含
んで合成されるポリイミドEでは本件発明の特性を達成できないと主張す
る。
しかし,本件明細書の記載からは,吸水率その他の特性において,ポリ
イミドFがポリイミドEに比べて格別顕著な効果を奏するものと理解する
ことはできない。
すなわち,ポリイミドEとポリイミドFとを直接対比できるのは,わず
かに本件明細書(甲14)の表1(段落【0047)においてのみであ】
るが,表1によれば,ポリイミドFは,吸水率においてポリイミドEより
低い数値を示しているものの,その差異はポリイミドEの数値から連続的
に推移する程度のものであり,顕著に相違するわけではなく,ポリイミド
FがポリイミドEより特性において際立って優れているとは認められな
い。具体的には,表1の吸水率(%)の欄で示される数値は,銀の含量が
「」「」,「.」「.60wt%0wt%である場合にポリイミドEが12%1
0%,ポリイミドFが「0.9%「0.8%」である。特許査定時の請」」
求項では「1.5体積%以下」と規定されていたことを考慮すれば,ポリ
イミドEの吸水率は十分優れているといえる。
また,本件明細書に,所定の吸水率等を有する本件発明のダイボンディ
ング材について「…フィルム状有機ダイボンディングの組成,例えばポ,
リイミド等のポリマーの構造や銀等のフィラー含量を調整することにより
製造することができる(段落【0026)と記載されているように,。」】
吸水率は銀の含量によっても調整することができる。表1によれば,ポリ
イミドFは,銀の含量が「40wt%「80wt%」である場合に低い」
吸水率(0.7%,0.4%)を示しているから,ポリイミドEについて
も銀の含量を同様(40wt%,80wt%)にすれば,吸水率が1.0
%をさらに下回ることが容易に予想される。
このように,吸水率ひとつをみても,ポリイミドEが本件発明の特性を
達成できないとは理解することができない。
さらに,表1によれば,ポリイミドEのリフロークラック発生率は0%
であり,本件発明が目的とする効果を発揮するものであることは明らかで
ある。
他方,ポリイミドEは吸水率以外の特性が劣っているかといえば,残存
揮発分,飽和吸湿率に関するポリイミドEのデータはない。
結局,本件明細書の記載によっては,ポリイミドFとポリイミドEとの
差異が明確ではない。
ウなお原告は,実験成績証明書(甲16)を提出して,ポリイミドFと甲
1発明のポリイミド樹脂(A3)との相違を主張するが,本件明細書に原
告が主張するようなモノマー組成の重要性が記載されていないことは上記
のとおりであり,事後的な実験証明書によって明細書の記載を補完できる
ものではない。そして,かかる本件明細書の記載に基づけば,本件発明1
及び3のポリイミド樹脂と甲1公報(合成例3)に記載されたポリイミド
樹脂との間に実質的な相違点は認められず,両者のポリイミド樹脂を発明
の一致点とする審決の認定に誤りはない。
(2)取消事由2に対し
ア取消事由2に関する原告の主張は,いずれも本件発明に用いられるポリ
イミド樹脂を1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)
及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンの
みから合成されるポリイミド樹脂とした場合の主張であるから,採用する
ことができない。
そして,吸水率,残存揮発分,飽和吸湿率を所定の値以下に設定するこ
とは,各甲号証及び周知技術に基づいて,当業者が適宜行い得ることであ
る。
したがって,甲1発明においても,接着強度が迅速で,接合強度が十分
,,であり経年劣化やその他の使用における変化を少なくしようとすること
すなわち,吸水率を低くしようとすること,バブル及びボイドの形成を防
止すること及び加熱時のクラックを低減しようとすることは当然に求めら
,,,れるものであるから甲1発明において甲各号証の技術思想を基にして
吸水率の値を0.9体積%以下にし,残存揮発分の値を3.0重量%以下
にし,かつ飽和吸湿率の値を0.5体積%以下にすることは容易であると
した審決の判断に誤りはない。
イ仮に,本件発明1及び本件発明3のポリイミド樹脂が1,10−(デカ
メチレン)ビス(トリメリテート無水物)及び2,2−ビス[4−(4−
アミノフェノキシ)フェニル]プロパンのみから合成される樹脂であると
しても,以下のとおり,本件発明は甲1発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができるものである。
すなわち,甲1公報には,ポリイミド樹脂の原料について,2,2−ビ
ス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンなどのアミン成分及び1,
10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)などの酸成分が
例示されている(段落【0007【0012【0013。この甲1】,】,】)
,,公報の合成例3に記載されたポリイミド樹脂は2種類のアミン成分:2
2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン32.8g(0.0
8モル)及び3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフ
ェニルメタン5.08g(0.02モル)と,2種類の酸成分:1,10
−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)41.8g(0.0
8モル)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物6.44g(0.
02モル)とを反応させて得られるポリイミドである。この配合割合から
明らかなように,甲1公報(合成例3)には,2,2−ビス(4−アミノ
フェノキシフェニル)プロパンと1,10−(デカメチレン)ビス(トリ
メリテート二無水物)を主原料として合成されたポリイミド樹脂が記載さ
れている。
また,甲1公報∼甲9公報には,接着強度が迅速で,接合強度が十分で
あり,経年劣化やその他の使用における変化を少なくするためには,吸水
,,率は低い方が好ましいことバブル及びボイドの形成を防止するためには
残存揮発分は少ない方が好ましいこと,加熱時のクラックを低減するため
には,飽和吸湿率は低い方が好ましいことが記載されている(審決29,
30,35頁参照。甲1発明においても,接着強度が迅速で,接合強度)
が十分であり,経年劣化やその他の使用における変化を少なくしようとす
ること,バブル及びボイドの形成を防止すること,加熱時のクラックを低
減しようとすることは当然に必要とされる特性である。
したがって,甲1発明において,ダイボンディング材に求められる諸特
性について実験的に確認し,ポリイミド樹脂の好適な原料として,1,1
0−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2−ビス[4
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとを選択するとともに,
諸特性を表す数値の上限値を特定することは,当業者にとって通常の創作
能力の発揮であって,何ら困難性はない。
さらに,前記(1)のとおり,1,10−(デカメチレン)ビス(トリメ
リテート無水物)及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェ
ニル]プロパンのみから合成されるポリイミド樹脂が,これに加えて他の
原料をも含むポリイミド樹脂に比して,ダイボンディング材に求められる
諸特性について際立って優れた効果を有しているとも認められない。
,「.」,なお原告は吸水率につき09体積%以下との数値に固執するが
本件明細書の記載をみても,0.9体積%という数値に臨界的意義を見出
すことはできない。
このように,樹脂の原料の選択自体に困難性はなく,諸特性を表す数値
限定も従来技術に照らして格別なものではなく,奏される作用効果も当業
者の予測範囲を超えるものではない。
以上によれば,仮に本件発明1及び本件発明3のポリイミド樹脂が1,
10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)及び2,2−ビス
[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンのみから合成される
樹脂であるとした場合であっても,本件発明は引用発明に基づいて当業者
が容易に発明をすることができるとした審決の判断に誤りはない。
(3)取消事由3に対し
本件発明には「ピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上,
であること」は特定要素として記載されていない。
しかし,本件訂正前の明細書の記載に基づいてなされた無効2006−8
()(),0213号事件における被請求人原告の審判事件答弁書乙11には
本件発明では,フィルム状ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部
材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以
上であることは重要な要件である旨が記載されている。具体的には,フィル
ム状ダイボンディング材において,ピール強度が0.5kgf/5mm×5
mmチップ以上であることは,リフロークラック発生との関連において新た
に見出された技術的意義を有する特性であると記載されている(4頁下2行
∼5頁2行。このように,本件発明の効果であるリフロークラック発生防)
止効果を得るためには「ピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチッ,
プ以上であること」は必須であるので「ピール強度が0.5kgf/5m,
m×5mmチップ以上であること」は本件発明の実質的な特定要素の一つで
ある。
しかるに,本件発明の「ピール強度」はその測定方法が明細書及び図面の
記載からだけでは明確でなく,また一般的な測定方法ともいえないのであっ
て,本件明細書及び図面の記載が当業者がその実施をすることができる程度
に明確かつ充分に記載されているとはいえない。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁等における手続の経緯,(2)(発明の内容,(3)(審))
決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2本件発明の意義
(1)本件発明1∼12の内容は,前記第3,1(2)のとおりである。
,(,),(2)また本件発明の明細書本件補正に係る全文訂正明細書甲14には
次の記載がある。
ア発明の属する技術分野
・【0001】
本発明は,半導体素子をダイボンディング材を用いてリードフレーム等の支持部
材に接着し,樹脂封止した半導体装置及び半導体装置の製造法に関する。
イ従来の技術
・【0002】
従来,半導体素子をリードフレームに接着させる方法としては,リードフレーム
上にダイボンディング材料を供給し半導体素子を接着する方法が用いられてきた。
・【0003】
これらの材料としては,例えばAu−Si共晶,半田,樹脂ペーストなどが知ら
れている。この中で,Au−Si共晶は高価かつ弾性率が高く又接着部分を加振す
る必要があるという問題がある。半田は融点温度以上の温度に耐えられずかつ弾性
率が高いという問題がある。
・【0004】
樹脂ペーストでは銀ペーストが最も一般的であり,銀ペーストは,他材料と比較
して最も安価で耐熱信頼性が高く弾性率も低いため,IC,LSIのリードフレー
ムの接着材料として最も多く使用されている。
・【0005】
電子機器の小型・薄型化による高密度実装の要求が,近年,急激に増加してきて
おり,半導体パッケージは,従来のピン挿入型に代わり,高密度実装に適した表面
実装型が主流になってきた。
ウ発明が解決しようとする課題
・【0006】
この表面実装型パッケージは,リードをプリント基板等に直接はんだ付けするた
めに,赤外線リフローやベーパーフェーズリフロー,はんだディップなどにより,
パッケージ全体を加熱して実装される。
・【0007】
この際,パッケージ全体が210∼260℃の高温にさらされるため,パッケー
ジ内部に水分が存在すると,水分の爆発的な気化により,パッケージクラック(以
下リフロークラックという)が発生する。
・【0008】
このリフロークラックは,半導体パッケージの信頼性を著しく低下させるため,
深刻な問題・技術課題となっている。
・【0009】
ダイボンディング材に起因するリフロークラックの発生メカニズムは,次の通り
である。半導体パッケージは,保管されている間に(1)ダイボンディング材が吸
,(),,湿し2この水分がリフローはんだ付けの実装時に加熱によって水蒸気化し
(3)この蒸気圧によってダイボンディング層の破壊やはく離が起こり(4)リ,
フロークラックが発生する。
・【0010】
封止材の耐リフロークラック性が向上してきている中で,ダイボンディング材に
起因するリフロークラックは,特に薄型パッケージにおいて,重大な問題となって
おり,耐リフロークラック性の改良が強く要求されている。
・【0011】
従来最も一般的に使用されている銀ペーストでは,チップの大型化により,銀ペ
ーストを塗布部全面に均一に塗布することが困難になってきていること,ペースト
状であるため接着層にボイドが発生し易いことなどによりリフロークラックが発生
し易い。
・【0012】
本発明は,フィルム状有機ダイボンディング材を使用し,リフロークラックが発
生せず,信頼性に優れる半導体装置及びその製造法を提供するものである。
エ課題を解決するための手段
・【0013】
本発明では,フィルム状有機ダイボンディング材を用いる。これはたとえばエポ
キシ樹脂,シリコーン樹脂,アクリル樹脂,ポリイミド樹脂等の有機材料を主体に
した(有機材料に金属フィラー,無機質フィラーを添加したものも含む)フィルム
状のもので,リードフレーム等の支持部材上にフィルム状有機ダイボンディング材
を加熱した状態で圧着させ,更にフィルム状有機ダイボンディング材に半導体素子
を重ねて加熱圧着させるものである。すなわち樹脂ペーストをフイルム化すること
によって接着部分に均一にダイボンディング材料を付けようとするものである。
・【0017】
本発明は,半導体装置のリフロークラックの発生とフィルム状有機ダイボンディ
ング材の物性・特性との間に相関関係があることを見い出し,リフロークラックの
発生とフィルム状有機ダイボンディング材の特性の関係を詳細に検討した結果なさ
れたものである。
・【0018】
本願の第一の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に吸水率が1.
5vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする
半導体装置及びその製造法である。
・【0019】
本願の第二の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に飽和吸湿率が
1.0vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴と
する半導体装置及びその製造法である。
・【0020】
本願の第三の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に残存揮発分が
3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とす
る半導体装置及びその製造法である。
・【0021】
本願の第四の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に250℃にお
ける弾性率が10MPa以下のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したこと
を特徴とする半導体装置及びその製造法である。
・【0022】
本願の第五の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に,半導体素子
を支持部材に接着した段階でダイボンディング材中及びダイボンディング材と支持
部材の界面に存在するボイドがボイド体積率10%以下であるフィルム状有機ダイ
ボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置及びその製造法である。
・【0023】
本願の第六の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材として,半導体
素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5×5mmチップ
以上のフィルム状有機ダイボンディング材を使用したことを特徴とする半導体装置
及びその製造法である。
・【0024】
本願の第七の発明は,半導体素子を支持部材にダイボンディング材で接着し,半
導体素子を樹脂封止した半導体装置に於いて,ダイボンディング材に,半導体素子
の面積と同等以下の面積を有し半導体素子を支持部材に接着した段階で半導体素子
の領域からダイボンディング材がはみ出さない,すなわち,半導体素子と支持部材
との間からはみ出さない,フィルム状の有機ダイボンディング材を使用したことを
特徴とする半導体装置及びその製造法である。
・【0025】
これらの発明において,支持部材にフィルム状有機ダイボンディング材を貼り付
ける段階で,吸水率が1.5vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材,
飽和吸湿率が1.0vol%以下のフィルム状有機ダイボンディング材,残存揮発
分が3.0wt%以下のフィルム状有機ダイボンディング材,250℃における弾
性率が10MPa以下のフィルム状有機ダイボンディング材がそれぞれ使用され
る。
・【0032】
本発明の半導体装置は,半導体装置実装のはんだリフロー時においてリフローク
ラックの発生を回避することができ,信頼性に優れる。
・【0033】
本発明のフィルム状有機ダイボンディング材の有機材料として,ポリイミド樹脂
が好ましい。
,,ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては1
2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物,…1,10−(デカメチレン))
(),,。ビストリメリテート無水物…等があり2種類以上を混合して用いてもよい
・【0034】
またポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては,…4,4′−ジ
アミノジフェニルエーテル,…ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メ
タン,ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン,…2,2−
ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン,…等の芳香族ジアミン
や,…等の脂肪族ジアミン等があり,2種類以上を混合して用いてもよい。
・【0035】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させてポリイミド
を得ることができる。すなわち,有機溶媒中で,テトラカルボン酸二無水物とジア
ミンを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意,反応温度80℃以)
下,好ましくは0∼50℃で反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐
々に上昇し,ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
・【0036】
,()。ポリイミドは上記反応物ポリアミド酸を脱水閉環させて得ることができる
脱水閉環は120℃∼250℃で熱処理する方法や化学的方法を用いて行うことが
できる。
・【0038】
,,,上記したように本発明の半導体装置の製造法においてはダイボンドの条件は
温度100∼350℃,時間0.1∼20秒,圧力0.1∼30gf/mmが好2
ましく,温度150∼250℃,時間0.1秒以上2秒未満,圧力0.1∼4gf
,,..,/mmがより好ましく温度150∼250℃時間01秒以上15秒以下2
圧力0.3∼2gf/mmが最も好ましい。2
・【0039】
フィルム状有機ダイボンディング材の250℃における弾性率が10MPa以下
のフィルムを使用すれば,温度150∼250℃,時間0.1秒以上2秒未満,圧
力01∼4gf/mmの条件でダイボンディングを行い十分なピール強度例.,(2
えば,0.5Kgf/5×5mmチップ以上の強度)を得ることができる。
オ発明の実施の形態
・【0040】
以下に,本発明の実施例を説明するが,本発明はこれらの実施例に限られるもの
ではない。以下の実施例において用いられるポリイミドは,いずれも等モルの酸無
水物とジアミンとを溶媒中で混合し加熱することにより重合させて得られる。以下
の各実施例において,ポリイミドAは,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテー
ト無水物)とビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタンとから合成さ
れるポリイミドであり,ポリイミドBは,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテ
ート無水物)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから合成されるポリイミ
ドであり,ポリイミドCは,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)
とビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタンとから合成される
ポリイミドであり,ポリイミドDは,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート
無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとか
ら合成されるポリイミドであり,ポリイミドEは,1,2−(エチレン)ビス(ト
リメリテート無水物)および1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無
水物)の等モル混合物と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]
プロパンとから合成されるポリイミドであり,ポリイミドFは,1,10−(デカ
メチレン)ビス(トリメリテート無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェ
ノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるポリイミドである。
・【0041】
<実施例1>
表1に示すポリイミド100g及びエポキシ樹脂10gに,有機溶媒280gを
加えて溶解させる。ここに,銀粉を所定量加えて,良く撹拌し,均一に分散させ,
塗工用ワニスとする。
・【0042】
()この塗工ワニスをキャリアフィルムOPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレン
上に塗工し,熱風循環式乾燥機の中で加熱して,溶媒を揮発乾燥させ,表1に示す
組成,吸水率のフィルム状有機ダイボンディング材を製造した。
・【0045】
その後,半導体装置をポリエステル樹脂で注型し,ダイヤモンドカッターで切断
,(),した断面を顕微鏡で観察して次式によりリフロークラック発生率%を測定し
耐リフロークラック性を評価した。
・【0046】
(リフロークラックの発生数/試験数)×100
=リフロークラック発生率(%)
評価結果を表1に示す。なお,銀ペーストは,日立化成工業株式会社製「エピナ
ール(商品名)を使用した。」
・【0047】
【表1】
カ発明の効果
・【0096】
本発明は,フィルム状有機ダイボンディング材を使用し,リフロークラックが発
生せず,信頼性に優れる半導体装置及びその製造法を提供するものである。
(3)以上によれば,本件発明1∼12は,半導体素子をダイボンディング材を
用いてリードフレーム等の支持部材に接着し,樹脂封止した半導体装置及び
半導体装置の製造法に関する発明である。
すなわち,従来,半導体素子をリードフレームに接着させる方法として,
リードフレーム上にダイボンディング材料を供給し半導体素子を接着する方
法が用いられてきたところ,近年,高密度実装に適するため半導体パッケー
ジの主流になってきた表面実装型においては,リードをプリント基板等に直
接はんだ付けするためパッケージ全体が加熱されて高温にさらされ,パッケ
ージ内部に水分が存在すると水分の爆発的な気化によりリフロークラックが
発生し,半導体パッケージの信頼性を著しく低下させることが深刻な問題・
技術課題となっていた。そこで本件発明1∼12は,特定の構成に係るフィ
ルム状有機ダイボンディング材を使用することで,リフロークラックが発生
せず,信頼性に優れる半導体装置及びその製造法を提供するものである。
本件発明の技術的意義は,半導体装置のリフロークラックの発生とフィル
ム状有機ダイボンディング材の物性・特性との間に相関関係があることを見
出した点にあり,具体的には,本件発明のフィルム状有機ダイボンディング
材の有機材料としてテトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮
合反応させたポリイミド樹脂を採用しつつ,テトラカルボン酸二無水物のモ
ノマー組成には1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)
を,ジアミンのモノマー組成には2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキ
シ)フェニル]プロパンを使用するものとして,ポリイミド樹脂の合成に使
用されるモノマーの組成を特定した点に特徴を有するものである。
なお,本件発明1及び3は,上記1,10−(デカメチレン)ビス(トリ
メリテート無水物)及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェ
ニル]プロパンを縮合反応させたポリイミド樹脂(本件明細書の実施例〔段
落0040参照においてポリイミドFと表示されているもの以下ポ【】〕。「
リイミドF」という)を用いたフィルム状ダイボンディング材の基本的な。
構成を特定したものであり,本件発明2,4,5,10∼12はこれらに性
能上の限定を加え又は添加物を加えるなどして特定したものであり,本件発
明6∼9は本件発明1∼5のダイボンディング材を用いて支持部材と半導体
素子とを接着する接着方法を特定したものである。
3取消事由1(甲1発明の認定の誤り,一致点認定の誤り・相違点の看過)に
ついて
(1)原告は,審決が,甲1発明のダイボンディング用導電性接着フィルムにつ
いて,1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)と2,
2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンとから合成さ
れるポリイミド樹脂,すなわちポリイミドFを主体とするものであると認定
し,これが本件発明におけるポリイミドと一致する旨認定したことが誤りで
あると主張するので,この点について検討する。
(2)甲1公報には次の記載がある。
ア特許請求の範囲
・【請求項1(A)式(I)…で表されるテトラカルボン酸二無水物,の含量が】
全テトラカルボン酸二無水物の70モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物
と,ジアミンを反応させて得られるポリイミド樹脂,及び(B)導電性フィラー,
を含有してなる導電性接着フィルム。
・【請求項7】半導体素子と支持部材の間に請求項1∼6のいずれかに記載の導電
性接着フィルムを挾み,加熱圧着する,半導体素子と支持部材との接着法。
イ産業上の利用分野
・【0001】
本発明は,ICやLSIとリードフレームの接合材料,すなわちダイボンディン
グ用材料として用いられる導電性接着フィルム,その製造法及び接着法に関する。
ウ発明が解決しようとする課題
・【0004】
…本発明は,ダイボンド時の熱処理を従来の銀ペーストと同じように比較的低温
で行うことができ,かつ,熱時接着力の高いダイボント用導電性接着フィルムを提
供することを目的としている。
エ課題を解決するための手段
・【0005】
本発明の導電性接着フィルムは(A)式(I)…で表されるテトラカルボン酸,
二無水物,の含量が,全テトラカルボン酸二無水物に対して70モル%以上である
テトラカルボン酸二無水物と,ジアミンを反応させて得られる,ポリイミド樹脂;
100重量,に対し,
(B)導電性フィラー;1∼8000重量部,を含有してなる導電性接着フィルム
である。
・【0006】
また本発明の導電性接着フィルムは,次のようにして製造する。
(1)式(I)のテトラカルボン酸二無水物,の含量が全テトラカルボン酸二無水
物の70モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物と,ジアミンを反応させて得
られるポリイミド樹脂(A;100重量部,を有機溶媒に溶解し,)
(2)導電性フィラー(B;1∼8000重量部を加え,混合し,)
(3)ベースフィルム上に塗布し,加熱する。
・【0007】
上記のポリイミド樹脂の原料として用いられる,式(I)のテトラカルボン酸二
無水物としては,nが2∼5のとき,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート
二無水物,1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート二無水物,1,4−))
()(),,()テトラメチレンビストリメリテート二無水物15−ペンタメチレン
ビス(トリメリテート二無水物,nが6∼20のとき,1,6−(ヘキサメチレ)
ン)ビス(トリメリテート二無水物,1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメ)
),,()(),リテート二無水物18−オクタメチレンビストリメリテート二無水物
1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート二無水物,1,10−(デカメ)
チレンビストリメリテート二無水物112−ドデカメチレンビスト)(),,()(
リメリテート二無水物,1,16−(ヘキサデカメチレン)ビストリメリテート)
二無水物,1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート二無水物,)
等があり,これら2種以上を併用してもよい。
・【0012】
本発明で使用されるジアミンとしては,1,2−ジアミノエタン,1,3−ジア
ミノプロパン,1,4−ジアミノブタン,1,5−ジアミノペンタン,1,6−ジ
アミノヘキサン,1,7−ジアミノヘプタン,1,8−ジアミノオクタン,1,9
−ジアミノノナン,1,10−ジアミノデカン,1,11−ジアミノウンデカン,
1,12−ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン,o−フェニレンジアミン,m−
フェニレンジアミン,p−フェニレンジアミン,3,3′−ジアミノジフェニルエ
ーテル,3,4′−ジアミノジフェニルエーテル,4,4′−ジアミノジフェニル
エーテル,3,3′−ジアミノジフェニルメタン,3,4′−ジアミノジフェニル
メタン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,3,3′−ジアミノジフェニルジ
フルオロメタン,3,4′−ジアミノジフェニルジフルオロメタン,4,4′−ジ
,,,,アミノジフェニルジフルオロメタン33′−ジアミノジフェニルスルホン3
,,,,4′−ジアミノジフェニルスルホン44′−ジアミノジフェニルスルホン3
,,,3′−ジアミノジフェニルスルフイド34′−ジアミノジフェニルスルフイド
4,4′−ジアミノジフェニルスルフイド,
・【0013】
3,3′−ジアミノジフェニルケトン,3,4′−ジアミノジフェニルケトン,
4,4′−ジアミノジフェニルケトン,2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロ
パン,2,2′−(3,4′−ジアミノジフェニル)プロパン,2,2−ビス(4
−アミノフェニル)プロパン,2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオ
,,(,),ロプロパン22−34′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン
2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン,1,3−ビス(3
),,(),−アミノフェノキシベンゼン14−ビス3−アミノフェノキシベンゼン
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン,3,3′-(1,4−フェニレ
ンビス(1−メチルエチリデン)ビスアニリン,3,4′-(1,4−フェニレン)
ビス(1−メチルエチリデン)ビスアニリン,4,4′-(1,4−フェニレンビ)
ス(1−メチルエチリデン)ビスアニリン,2,2−ビス(4−(3−アミノフ)
ェノキシ)フェニル)プロパン,2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フ
ェニル)プロパン,2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキ
サフルオロプロパン,2,2−ビス(4−(4−アミノフエノキシ)フエニル)ヘ
キサフルオロプロパン,ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフイ
ド,ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフイド,ビス(4−(3
−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン,ビス(4−(4−アミノフェノキシ)
フェニル)スルホン等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
・【0014】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの縮合反応は,有機溶媒中で行う。この場
合,テトラカルボン酸二無水物とジアミンは等モル又はほぼ等モルで用いるのが好
ましく,各成分の添加順序は任意である。用いる有機溶媒としては,ジメチルアセ
トアミド,ジメチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン,ジメチルスルホ
キシド,ヘキサメチルホスホリルアミド,m−クレゾール,o−クロルフェノール
等がある。
・【0020】
本発明の導電性接着フィルムの製造は,以下のようにする。まずポリイミド樹脂
を有機溶媒に溶解する。ここで用いられる有機溶媒は,均一に溶解又は混練できる
ものであれば特に制限はなく,そのようなものとしては例えば,ジメチルホルムア
ミド,ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン,ジメチルスルホキシド,ジ
エチレングリコールジメチルエーテル,トルエン,ベンゼン,キシレン,メチルエ
チルケトン,テトラヒドロフラン,エチルセロソルブ,エチルセロソルブアセテー
ト,ブチルセロソルブ,ジオキサン等が挙げられる。
・【0021】
,,,。,次いで導電性フィラーを加え必要に応じ添加剤を加え混合するこの場合
通常の攪拌機,らいかい機,三本ロール,ボールミルなどの分散機を適宜組み合せ
て,混練を行ってもよい。
・【0022】
こうして得たペースト状混合物を,例えばポリエステル製シート等のベースフィ
ルム上に均一に塗布し,使用した溶媒が充分に揮散する条件,すなわち,おおむね
60∼200℃の温度で,0.1∼30分間加熱し,導電性接着フィルムとし,通
常,使用時にベースフィルムを除去して接着に用いる。
・【0039】
IC,LSI等の半導体素子と,リードフレーム,セラミックス配線板,ガラス
エポキシ配線板,ガラスポリイミド配線板等の支持部材との間に,本発明で得られ
た導電性接着フィルムを挾み,加熱圧着すると,両者は接着する。
オ実施例
・【0040】
以下,本発明を実施例により説明する。
合成例1
温度計,攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに,
2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン41g(0.1モル)及
びジメチルアセトアミド150gをとり,攪拌した。ジアミンの溶解後,フラスコ
を氷浴中で冷却しながら,1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)
41g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で3時間反応させたのち,キシレ
ン30gを加え,N2ガスを吹き込みながら150℃で加熱し,水と共にキシレン
を共沸除去した。その反応液を水中に注ぎ,沈澱したポリマーを濾過により採り,
乾燥してポリイミド樹脂(A1)を得た。
・【0041】
合成例2
温度計,攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに,
ビス4−3−アミノフェノキシフェニルスルホン432g01モル)(()).(.
及びN−メチル−2−ピロリドン150gをとり,攪拌した。ジアミンの溶解後,
室温で,1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)43.8g
(0.1モル)を加えた。5℃以下で5時間反応させ,無水酢酸20.4g(0.
2モル)及びピリジン15.8g(0.2モル)を加え,1時間室温で攪拌した。こ
の反応液を水中に注ぎ,沈澱したポリマーを濾過により採り,乾燥してポリイミド
樹脂(A2)を得た。
・【0042】
合成例3
,,,,温度計攪拌機塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに2
().(.,2−ビス4−アミノフェノキシフェニルプロパン328g008モル)
3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン5.0
8g(0.02モル)及びジメチルアセトアミド100gをとり,攪拌した。ジア
ミンの溶解後,フラスコを氷浴中で冷却しながら,1,10−(デカメチレン)ビ
ス(トリメリテート二無水物)41.8g(0.08モル)及びベンゾフェノンテ
トラカルボン酸二無水物6.44g(0.02モル)を少量ずつ添加した。添加終
,,,.(.了後氷浴中で3時間更に室温で4時間反応させた後無水酢酸255g0
25モル)及びピリジン19.8g(0.25モル)を添加し,2時間室温で攪拌し
た。その反応液を水中に注ぎ,沈澱したポリマーを濾過により採り,乾燥してポリ
イミド樹脂(A3)を得た。
・【0043】
実施例1
表1に示す配合表に従い,まず,2種類のペースト状混合物を調合した。なお,
表1中,TCG-1とあるのは,徳力化学(株)製の銀粉を意味する。
【表1】
表1配合表(単位:重量部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
材料No.1No.2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ポリイミド樹脂A1A1
100部100部
────────────────────────────────────
銀粉(TCG-1)15067
────────────────────────────────────
溶媒300300
(ジメチルアセトアミド)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・【0054】
試験例4
実施例1及び実施例2で得られた導電性接着フィルムのピール接着力を測定する
と,表10に示す通りであった。なお,ピール接着力は,導電性接着フィルムを8
×8mmの大きさに切断し,これを8×8mmのシリコンチップと銀メッキ付リー
ドフレームの間に挟み,1000gの荷重をかけて,300℃,5秒間圧着させた
のち,250℃,20秒加熱時に測定した。
【表10】
表10導電性接着フィルムのピール接着力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
項目No.12345678(比較)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ピール接着力>3>31.91.51.71.02.5−*
(kgf/chip)250℃
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*:フィルムが形成できなかったので,測定不可。
表10の結果から,熱硬化性樹脂非含有の導電性接着フィルム(No.1∼2)は
熱硬化性樹脂含有の導電性接着フィルム(No.3∼7)よりも,250℃における
ピール接着力が高いことが分かる。
(3)ア以上によれば,甲1公報には,半導体素子を支持部材に接着するための
ダイボンディング用導電性接着フィルムに係る発明が開示されており,そ
の構成は,接着部分に均一に付けて用いられるものであり(段落【002
2ポリイミド樹脂を主体とするものであること請求項1段落0】),(【】,【
005【0006【0020】∼【0022,8mm×8mmチッ】,】,】)
プに1000gの荷重をかけて,300℃,5秒間で半導体素子を支持部
材に圧着することができること(段落【0054,支持部材はリードフ】)
(【】),。レーム又は配線板であること段落0039がそれぞれ認められる
他方,甲1公報には,ポリイミド樹脂の合成に関して,
・合成例1(段落【0040)として,ジアミン:2,2−ビス(4】
−アミノフェノキシフェニル)プロパンと,テトラカルボン酸二無水物
:1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート二無水物)との合成によ
るポリイミド樹脂(A1)が,
・合成例2(段落【0041)として,ジアミン:ビス(4−(3−】
アミノフェノキシ)フェニル)スルホンと,テトラカルボン酸二無水物
:1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート二無水物)との合
成によるポリイミド樹脂(A2)が,
・合成例3(段落【0042)として,ジアミン:2,2−ビス(4】
−アミノフェノキシフェニル)プロパン及び3,3′,5,5′−テト
ラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタンと,テトラカルボン酸
,()()二無水物:110−デカメチレンビストリメリテート二無水物
及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物との合成によるポリイミ
ド樹脂(A3)が,
それぞれ挙げられているものの,本件発明1∼12に係るポリイミドFと
同様のモノマー組成(ジアミン:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノ
キシ)フェニル]プロパンとテトラカルボン酸二無水物:1,10−(デ
カメチレン)ビス(トリメリテート無水物)とから合成)に合致するもの
は見当たらない。
イこの点,審決は,上記合成例3(段落【0042)のポリイミド樹脂】
(A3)について,甲1公報の段落【0013】にはジアミンとして使用
,[()]可能なものとして22−ビス4−4−アミノフェノキシフェニル
プロパンが挙げられていることから,合成例3のポリイミド樹脂(A3)
の2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンをこれと置換
することができるとして,甲1公報にはポリイミド樹脂をポリイミドFの
構成とする発明が開示されている旨認定する。
しかし,上記段落【0012】ないし【0013】に多数挙げられたジ
アミンは「ダイボンド時の熱処理を従来の銀ペーストと同じように比較,
的低温で行うことができ,かつ,熱時接着力の高いダイボント用導電性接
着フィルム(段落【0004)を製造するためのポリイミド樹脂に係る」】
モノマー組成としては置換可能であるとしても,リフロークラックの防止
等,これとは異なる目的ないし課題を有する本件発明のジアミンに係るモ
ノマー組成として置換可能であるか否かは甲1公報の開示するところでは
なく,審決がこれを置換可能とした根拠は不明といわざるを得ない。
また,上記合成例3においては,ポリイミドFと同様のモノマー組成に
加えて,ジアミンに係るモノマー組成として3,3′,5,5′−テトラ
メチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタンが,テトラカルボン酸二無
水物に係るモノマー組成としてベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
が挙げられているにもかかわらず,審決の上記認定においてはこれらの合
成要素が捨象されており,その根拠もまた不明といわざるを得ない。
そして,ポリイミド樹脂のモノマー組成として何を選択するかにより,
合成された樹脂の特質が変化し得ることは,甲1公報が合成例1∼3とい
う複数のポリイミド樹脂を挙げた上でこれを用いた実施例を掲げ,本件発
明に係る明細書がポリイミドAないしFという複数のポリイミド樹脂を比
較対照していることからも明らかである。
そうすると,甲1公報と本件明細書におけるポリイミド樹脂を比較する
に当たり,それらのモノマー組成の差異を捨象することは許されないとい
うべきであって,ジアミンの一種であるとの共通性ないしテトラカルボン
酸二無水物の一部が合致することのみを根拠として甲1公報の合成例3の
ポリイミド樹脂がポリイミドFに等しいものと認定することは,誤りとい
わざるを得ない。
(4)アこれに対し被告は,本件発明の請求項1及び3には,同発明に係るポリ
イミド樹脂が1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)
及び22−ビス4−4−アミノフェノキシフェニルプロパンの,[()]「
み」から合成されるものとしては記載されていないから,審決の認定に誤
りはないと主張する。
,,「,しかし本件発明の請求項1及び3にはポリイミド樹脂を主体とし
前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテー
ト無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プ
ロパンとから合成されるものであり」と記載されているのであって,その
記載上上記発明に係るポリイミド樹脂のモノマー組成が110−デ,「,(
カメチレン)ビス(トリメリテート無水物」から成るモノマーと「2,)
2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン」から成る
モノマーの二種を指すものとして特定されていることは明らかであるし,
上記(3)イのとおり,ポリイミド樹脂のモノマー組成として何を選択する
かにより合成された樹脂の特質が変化し得ることに照らせば,請求項の記
載上,殊更に「のみ」などといった文言を用いるまでもなく,上記特定の
趣旨は当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する
者)において明らかというべきである。
その上,本件明細書(甲14)の記載(前記2(2))をみても「本発明,
は,半導体装置のリフロークラックの発生とフィルム状有機ダイボンディ
ング材の物性・特性との間に相関関係があることを見い出し,リフローク
ラックの発生とフィルム状有機ダイボンディング材の特性の関係を詳細に
検討した結果なされたものである(段落【0017)として,本件発。」】
明がダイボンディング材の物性・特性に着眼したものであることが示さ
れ,また,実施例においても,ポリイミドA∼Fとして酸無水物とジアミ
ンの各モノマー組成を異にするポリイミド樹脂が列挙された上で段落0(【
040,これらのポリイミド樹脂のうち,ポリイミドA∼Cについては】)
リフロークラックが発生したなどとして,上記モノマー組成の差異を前提
に特質を比較しており(実施例1,段落【0041】∼【0049,こ】)
れらの記載からみても,本件発明1及び3は,ポリイミド樹脂として酸無
水物とジアミンとを合成することのみならず,その各モノマー組成をポリ
イミドFと同様のものに特定する趣旨を含むものであることは明らかであ
る。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イまた被告は,本件明細書には「…ポリイミド樹脂の原料として用いら,
れるテトラカルボン酸二無水物としては,…2種類以上を混合して用いて
もよい(段落【0033「またポリイミド樹脂の原料として用いら。」】),
れるジアミンとしては…2種類以上を混合して用いてもよい段落0,。」(【
034】と記載されていることを根拠として,本件発明1及び3のポリイ
ミド樹脂をポリイミドFに限定して解釈することはできないと主張する。
確かに,前記2のとおり,本件明細書には被告の主張するとおりの記載
があるが,特許権の範囲は特許請求の範囲に記載された範囲に限定される
,,のであって本件発明1及び3におけるポリイミド樹脂のモノマー組成が
特許請求の範囲の記載上,ポリイミドFに係るモノマー組成に明確に特定
されたものであることは上記アのとおりである。そして,このような特許
,,,請求の範囲の記載に鑑みれば被告の引用する上記記載は一般論として
ポリイミド樹脂の原料に複数種のモノマーの組合せがあり得ることをいう
ものと解することはできても,それを超えて特許請求の範囲を当該記載に
係る各モノマーの組合せのすべてを包含するものと解することはできない
から,被告の上記主張は採用することができない。
ウさらに被告は,本件発明1及び3のモノマー組成をポリイミドFのモノ
マー組成に限定できないことの根拠として,本件明細書の記載上,ポリイ
()ミドFとポリイミドEとの間に明確な効果ポリイミド樹脂としての特性
の差異がないことを指摘するが,前記2のとおり,ポリイミドEは1,2
−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)及び1,10−(デカメチ
レン)ビス(トリメリテート無水物)の等モル混合物と2,2−ビス[4
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとから合成されるポリイ
ミドであって,ポリイミドFとはそのモノマー組成を異にするから,ポリ
イミドEが特許請求の範囲の記載上,本件発明1及び3に含まれないこと
は明らかである。そうすると,両者のポリイミド樹脂としての特性の差異
を論じてもこれが前記判断を左右するものではないから,被告の上記主張
は採用することができない。
(5)以上によれば,審決が,甲1発明の内容について「ポリイミド樹脂を主,
体とし,前記ポリイミド樹脂は,1,10−(デカメチレン)ビス(トリメ
リテート二無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル]プロパンとから合成されるものであり」と認定したことは誤りというほ
かない。
そして,前記第3,1(3)イのとおり,審決における甲1発明と本件発明
1又は3との対比においてはいずれも上記構成が一致点として認定されてお
り,また本件発明2,4∼12はいずれも本件発明1又は3の構成を前提と
するものであるから,結局,審決は甲1発明と本件発明1∼12との対比に
おいて,上記構成に係る一致点の認定を誤り,上記(3)イに述べた合成例3
におけるポリイミド樹脂の合成要素とポリイミドFの合成要素との差異に係
る相違点を看過したものといわざるを得ない。
したがって,取消事由1に係る原告の主張は理由がある。
4取消事由2(相違点の認定・判断の誤り)について
前記3のとおり,審決は甲1発明の認定を誤り,その結果,本件発明1∼1
2との一致点の認定を誤り,相違点を看過したものであるが,進んで,上記3
で認定した甲1発明におけるポリイミド樹脂のモノマー組成(甲1公報に記載
された合成例3におけるポリイミド樹脂のモノマー組成)を前提に,これと本
件発明におけるポリイミド樹脂のモノマー組成(ポリイミドF)との相違点の
容易想到性についても,検討を加える。
この点,甲1公報に記載された発明は,熱時接着力の高いダイボンド用導電
性接着フィルムを提供することを目的とし,広く式(Ⅰ)で表されるジカルボ
ン酸無水物を使用するとの技術思想を開示するものであるのに対し,本件発明
は,半導体装置のリフロークラックの発生とフィルム状有機ダイボンディング
材の物性・特性との間に相関関係があるとの理解を前提に,リフロークラック
の発生を防止するため,ポリイミドFという特定のモノマー組成により合成さ
れたポリイミド樹脂を採用することを技術思想として開示するものである。こ
,,のように甲1発明と本件発明の技術思想は必ずしも一致するものではない上
甲1公報には本件発明の効果(吸水率,残存揮発分及び飽和吸湿率を改善し,
さらにはリフロークラックの発生を防止するとの効果)との関係でポリイミド
Fという特定のモノマー組成を採用することの技術的意義については教示も示
唆もなく,また,甲2公報ないし甲9公報をみても,上記のような観点でポリ
イミドFという特定のモノマー組成に着目した教示も示唆も見当たらない。
そうすると,これら甲1公報ないし甲9公報の記載を前提とすれば,甲1発
明のポリイミド樹脂に代えて,甲1公報に記載されたジカルボン酸及びジアミ
ンの中から,特定の各1種を選択し,本件発明に係るポリイミドFを採用する
ことは,当業者が容易に想到できるものではない。
したがって,本件発明1∼12に進歩性がないとした審決の判断は誤りであ
り,取消事由2に係る原告の主張も理由がある。
5取消事由3(特許法旧36条4項の適用の誤り)について
原告は,本件明細書及び図面上「ピール強度」の測定方法に関する記載が,
明確でなく,実施可能要件を欠くとした審決の判断は誤りである旨主張する。
この点,審決は「本件発明においては,フィルム状ダイボンディング材の,
特定要素の一つとして『ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部材に
接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上であ
る』とし,該ピール強度を,明細書段落【0084】及び図2に示された装置
。」(),によって測定したとしている審決39頁9行∼13行との認定を前提に
本件発明1∼12が実施可能要件を欠くと判断したものであるが,前記2のと
おり,本件発明1∼12は「ダイボンディング材を用いて半導体素子を支持部
材に接着した段階でのピール強度が0.5kgf/5mm×5mmチップ以上
である」ことを特定要素とするものでないことは明らかである(なお,本件訂
正前における特許請求の範囲の記載〔平成14年7月23日付け訂正請求に基
づくものであり,平成14年12月24日付け特許異議決定において訂正が認
められたもの。甲17〕においては,その請求項3,5に「ダイボンディング
材を用いて半導体素子を支持部材に接着した段階でのピール強度が0.5kg
f/5mm×5mmチップ以上である」との記載があったものの,本件訂正に
より請求項3,5はいずれも削除されている。。)
そうすると,審決の指摘する事項について「発明」の実施可能が問題となる
,。ものではなく審決の上記判断は前提において誤りがあるといわざるを得ない
これに対し被告は,本件訂正前の明細書の記載に基づいてなされた審判事件
における原告の答弁書(乙11)の記載に基づき「ピール強度が0.5kg,
f/5mm×5mmチップ以上であること」は本件発明の実質的な特定要素の
一つであると主張するが,上記答弁書の記載は本件訂正前の請求項の記載を前
提とするものである上,上記答弁書の記載いかんにより請求項に記載されてい
ない発明特定事項が新たに付加されるものではないから,被告の上記主張は採
用することができない。
したがって,原告の取消事由3についての主張も理由がある。
6結論
以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由があるから,審決は違法
として取消しを免れない。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官森義之
裁判官澁谷勝海

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛