弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中控訴人らに係る部分を取り消す。
2(1)(控訴人A)
関東運輸局長がB株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(2)(控訴人C)
関東運輸局長がD株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(3)(控訴人E及び控訴人F)
関東運輸局長がG株式会社に対し平成17年7月29日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目3記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(4)(控訴人H,控訴人I及び控訴人J)
関東運輸局長が株式会社Kに対し平成17年6月30日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目2記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(5)(控訴人L,控訴人M及び控訴人N)
関東運輸局長がO株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(6)(控訴人P)
関東運輸局長がQ株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(7)(控訴人R)
関東運輸局長がS株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
(8)(控訴人T及び控訴人U)
関東運輸局長がV株式会社に対し平成17年6月20日付けでした一般乗
用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の変更を認可する処分のうち原判決別
紙認可項目1記載の各認可項目中,Ⅱの3並びにⅢの4(3)及び(5)の部分を
取り消す。
3被控訴人は,各控訴人に対し,それぞれ50万円及びこれに対する平成18
年1月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
43につき仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,国土交通大臣の権限の委任を受けた関東運輸局長が道路運送法(平
成18年法律第19号による改正前のもの。以下同じ)9条の3第1項に基。
づき一般乗用旅客自動車運送事業者であるO株式会社ほか7社に対し行った運
賃及び料金の変更を認可する処分に関し,控訴人らのうちこれら8社のタクシ
ー会社に勤務するタクシー運転手ら14名(ただし,同運転手らのうち,控訴
人であったWは,本件訴訟の当審係属中に死亡し,控訴人Eがその訴訟を承継
した)が,それぞれ,その勤務するタクシー会社を処分の相手方とする上記。
認可処分のうち営業的割引(いわゆる大口割引)の認可に係る部分は同条2項
の認可基準に違反するなどの違法な処分であるとして,上記部分の取消しを求
め,また,これら8社を含むタクシー会社13社に勤務するタクシー運転手ら
である控訴人らが,それぞれ,これらの違法な処分によって精神的損害を被っ
たとして,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事
案である。
原審は,上記認可処分の相手方であるタクシー会社に勤務するタクシー運転
手である者は上記部分の取消しを求める法律上の利益を有するものではないと
して,本件訴えのうち上記部分の取消しを求める部分をいずれも却下するとと
もに,上記認可処分を行った関東運輸局長の行為に国家賠償法上の違法はない
として,控訴人らの損害賠償請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人らがこ
れを不服として控訴した。
2前提となる事実等は,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」1
(同1頁24行目から3頁11行目まで)記載のとおりであるから,これを引
用する。ただし,原判決3頁3行目,同7行目及び同11行目の「別紙」をい
ずれも「原判決別紙」に改める。
3争点及び当事者の主張は,下記4のとおり当審における当事者の補充主張を
付加するほかは原判決事実及び理由の第2事案の概要2及び3同,「」「」(
3頁12行目から8頁26行目まで)記載のとおりであるから,これを引用す
る。ただし,原判決3頁13行目の「本件各認可処分の取消し」を「上記第1
の2記載のとおり本件各認可処分の一部の取消し(以下,単に「本件各認可処
」。)」,「,」「,分の取消しというに同17行目の原告らはを控訴人らのうち
控訴人A,控訴人C,控訴人F,控訴人H,控訴人I,控訴人J,控訴人L,
控訴人M,控訴人N,控訴人P,控訴人R,控訴人T及び控訴人U(以下「控
訴人Aほか12名」という)は」に,同18行目の「である」を「であり,。。
控訴人Eは本件各認可処分の相手方であるG株式会社に勤務するタクシー運転
手であった亡Wの訴訟承継人である」に,4頁9行目の「原告らは」を「控。,
訴人Aほか12名は」に,同10行目の「につき」を「につき,また,控訴人
Eは亡Wの勤務先であった会社を処分の相手方とする運賃認可処分の取消しを
求めるにつき,それぞれ」にそれぞれ改める。
4当審における当事者の補充主張
(1)本件各認可処分の取消しに係る請求について
ア本件各認可処分の取消しを求める控訴人らの主張
(ア)タクシー運転手の賃金が歩合給中心のものとなっているのは,その
労働形態や労使の力関係等の不可避的な事情によるものである。タクシ
ー運転手の賃金が歩合給であり,実態としてタクシー運賃の上下に連動
してタクシー運転者の賃金が上下することから,タクシー運転手が運賃
認可処分について法律上保護された利益を有することは,以下の点から
も明らかである。
a東京地区における平成2年,平成4年及び平成7年のタクシー運賃
の改定の認可の際には,いずれも,関東運輸局長において,タクシー
運転手の労働条件の改善を指示する通達を発出している。これらの通
達の発出は,歩合給であるタクシー運転手の賃金が運賃改定と連動す
るものであること及び労使交渉にのみ任せたのでは運賃改定の趣旨で
ある労働条件の改善が必ずしも実現されないことを行政当局が十分認
識していることを示すものである。
bタクシーの規制緩和に際して国土交通省が発出した一連の通達のう
ち,平成13年10月26日付け国自旅第101号通達「一般乗用旅
客自動車運送事業の運賃料金の認可の処理方針について(以下「1」
01号通達」という)別紙4「自動認可運賃等の申請に対する処理。
手続等」では,自動認可運賃を下回る運賃申請があった場合には申請
者の原価及び収入を査定するとした上で「人件費については,申請,
(。。)者の運転者1人当たり平均給与月額福利厚生費を含む以下同じ
が原価計算対象事業者の運転者1人当たり平均給与月額の平均の額
(以下「標準人件費」という)の10%を超えて下回っているとき。
は,(1)労使間で当該申請について了解がある場合,又は(2)過去2年
間に労働基準法(昭和22年法律第49号)違反及び自動車運転者の
労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)違反が
認定されていない場合は申請者の実績値を用い,その他の場合には基
準人件費を10%下回る額で人件費を査定することとする」として。
いる。これは,規制緩和により容易になったタクシー運賃の値下げに
ついて,労使間の了解がないまま使用者が一方的に大幅な運賃値下げ
を申請して認可を受けることで,タクシー運転手の賃金が大幅に低下
することを避ける趣旨のものであり,タクシー運賃の値下げがタクシ
ー運転手の賃金の低下につながることを行政当局が十分認識している
ことを示すものである。
c国土交通省が発出した平成19年3月28日付け国自旅第325号
通達「一般タクシー事業における今般の運賃改定申請の審査等の取扱
」,「,いについてにおいては今般の運賃改定申請に係る審査を行う中
タクシー運転手の賃金体系が,従来にも増して歩合給中心の体系に移
行し,処理方針通達における人件費の算定方法(毎年度の春闘で賃金
の改定がなされることを前提とする考え方)は,必ずしも実態に即し
ていない状況となっていることが確認された。一方,今般の運賃改定
申請においては,運転者の労働条件の改善が主要な理由のひとつとし
て挙げられているところである。こうした状況を踏まえつつ,タクシ
ーサービスの質を維持するためには運転者の労働条件につき一定の水
準を確保することが必要であることを勘案し,今般の運賃改定申請に
係る審査においては,実績における運送収入に対する運転者人件費の
割合を維持したうえで健全な経営が成立する水準の運賃を設定すると
,,いう考え方に立って運転者人件費及び所要増収額の算定については
処理方針通達別紙2にかかわらず,原則として以下の方法による」と
して,新たな算定方法が示されたが,その内容は,運賃改定後に歩合
給であるタクシー運転者の賃金が増収に比例して増加することを前提
として,あらかじめその分を含めて増収率を算定するという方式を採
るというものであり,その結果として,増収率は従来の方式よりも高
めに算定されることとなっている。そして,実際のタクシー運賃の改
定時には,関東運輸局が平成19年10月19日付け公示「一般乗用
旅客自動車運送事業(タクシー)の自動認可運賃等について」におい
て「運賃改定実施後において,実績における運送収入に対する運転,
者人件費の割合(歩合率)を維持させること等により,適切に運転者
の労働条件の改善措置を講ずること」を事業者(事業者団体)に指示
している。これらは,運転者の賃金改善のためにはある程度高めの増
収率を確保した運賃改定が必要であること,歩合給中心の体系に移行
しているタクシー運転者の賃金が運賃改定とより一層密接に連動する
ようになり,運賃改訂後の労働条件改善のためには,運送収入に対す
る運転者人件費の割合(歩合率)を維持させることが必要となってい
ることを行政当局が十分認識していることを示すものである。
(イ)道路運送法の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,道路運送法施
行規則10条の3第2項のほか,平成16年9月16日付け関東運輸局
長あての自動車交通局長通知「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及「
び料金に関する制度について」及び「一般乗用旅客自動車運送事業の運
賃料金の認可の処理方針について」の一部改正について」及び同月29
日付け関東運輸局長公示「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料「
金に関する制度について」及び「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及
び料金の認可申請の審査基準について」の一部改正について」等が参酌
されるべきである。そして,これらの通知等における「自動認可運賃に
該当しない運賃申請の処理要領」等において,運賃及び料金の認可申請
に係る申請者の運転者1人当たりの平均給与月額を原価計算対象事業者
の運転者1人当たりの平均給与月額と比較する等の基準が用いられてい
ること等から,申請者の運転者の労働条件が個別具体的な利益として道
路運送法の運賃認可処分において考慮されていることは明らかである。
運賃及び料金の認可申請は,個別の事業者が行い,その審査も本来個別
に行われるものであるから,そこでは,タクシー運転者一般の利害が考
慮されるのではなく,標準人件費との対比を基に,個別の事業者ごとの
タクシー運転者の人件費が考慮され,評価されているものである。
(ウ)道路運送法89条は,地方運輸局長が運賃認可処分等を行う際の利
害関係人からの意見聴取について定める規定であるところ,同条にいう
「利害関係人」には,タクシー運転手も含まれる。すなわち,この「利
害関係人」を具体的に定義した道路運送法施行規則56条は,その第3
号において「利用者その他の者のうち地方運輸局長が当該事案に関し,
特に重大な利害関係を有すると認める者」と定めており,これは,認可
の申請者(同条1号)や当該申請者と競争の関係にある者(同条2号)
以外の者であっても「特に重大な利害関係を有する」者となり得るこ,
とを想定したものである。
このことは,関係営業区域を仙台市とするタクシー会社によるタクシ
ー運賃及び料金に関する認可申請に係る平成19年12月11日付け東
北運輸局長公示(公示番号××号)について,タクシー運転者等を中心
とする労働者で組織する労働組合であるXのY執行委員長が道路運送法
施行規則57条の規定に基づき東北運輸局長に対して道路運送法89条
2項の利害関係人としての意見聴取の申請をしたところ,東北運輸局長
が同月26日付け東自旅二第××号をもって当該意見聴取を行う旨上記
執行委員長に通知したことからも明らかである。
(エ)国土交通省設置法に基づく交通政策審議会の「タクシーサービスの
将来ビジョン小委員会」が平成18年7月に取りまとめた「タクシーサ
」,,ービスの将来ビジョン小委員会報告書についてはZ本部の書記長が
,。,同小委員会の専門委員としてその取りまとめに参画しているこれは
運賃及び料金の認可をめぐる運輸行政において,タクシー運転者が事業
者及び利用者と並ぶ独自の法的地位を占めていることの表れである。
イ被控訴人の主張
(ア)タクシー運転者である控訴人らに行政事件訴訟法9条1項にいう
「法律上の利益」が認められるかどうかは,運賃認可処分の根拠規定で
ある道路運送法9条の3の文言のほか,根拠法令である道路運送法の趣
旨,目的,当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質等を考
慮し,道路運送法やその関係法令の解釈によって一義的に導き出される
ものである。したがって,タクシー運転者の賃金体系について歩合給制
を採用しているか,固定給制を採用しているかというような,法律の規
,,定によらず労使間の交渉によって変更される余地のある事情によって
原告適格の有無についての結論が左右される余地はないというべきであ
る。
なお,行政庁が法律に従って運賃認可処分を実際に行うに当たり,歩
合給制を採用するタクシー事業者が多いという現状を踏まえ,必要な措
置を行うことは当然であり,そのことと法律の解釈上原告適格を認める
ことができるかどうかとは別問題であるから,控訴人らが指摘する各種
通達において運賃改定時にタクシー運転者の労働条件に対する考慮がさ
れていたとしても,そのことによって原告適格が認められることとなる
ものではない。控訴人らが指摘する各通達について,タクシー運転者の
労働条件に対する一定の配慮を読み取ることができるとしても,それは
一般的な配慮にすぎない。
(イ)運賃認可処分においてタクシー運転者の賃金が考慮されるとして
も,それは,タクシー事業における費用の一つとしての平均給与額でし
かなく,タクシー運転者の労働条件を個別的に保護するものとはいえな
い。道路運送法及びその関係法令の解釈によっても,それらがタクシー
運転者の労働条件を一般的公益の中に吸収解消させるに止めず,個々人
の利益として保護しているとは認められないというべきである。
(2)損害賠償請求について
ア控訴人らの主張
国家賠償法の「違法性」と行政処分の取消訴訟の「違法性」とを別異に
解すべきではない。本件各認可処分については,それが違法である限り,
当然にこれを行った公務員の行為も,国家賠償法上違法となると解すべき
である。
イ被控訴人の主張
争う。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの本件訴えのうち本件各認可処分の取消しを求める部
分はいずれも却下すべきものであり,控訴人らのその余の請求は理由がないも
のと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及
び理由」の「第3当裁判所の判断」1及び2(同9頁2行目から同21頁1
行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決12頁14行目の「4号」を「4号まで」に改める。
(2)13頁5,6行目の「可能なのであるから」を「可能であるというべき
であるほか,そもそも,タクシー運転者がその勤務先会社を処分の相手方と
する運賃認可処分の取消しを求めるにつき行政事件訴訟法9条1項にいう
「法律上の利益を有する者」に該当するかどうかは,道路運送法やその関係
法令の解釈によって一義的に導き出されるべきものであって,当該タクシー
運転者の賃金体系について歩合給制が採用されているか,固定給制が採用さ
れているかというような,法令の規定によらず,労使間の交渉によって変更
される余地のある事情によって,その結論が左右される余地はないというべ
きであり」に改める。
(3)17頁14行目末尾に改行の上,次を加える。
「オ控訴人らは,道路運送法の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,道路
運送法施行規則10条の3第2項のほか,平成16年9月16日付け関東
運輸局長あての自動車交通局長通知「一般乗用旅客自動車運送事業の運「
賃及び料金に関する制度について」及び「一般乗用旅客自動車運送事業の
運賃料金の認可の処理方針について」の一部改正について」及び同月29
日付け関東運輸局長公示「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金「
に関する制度について」及び「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料
金の認可申請の審査基準について」の一部改正について」等が参酌される
べきであり,これらの通知等における「自動認可運賃に該当しない運賃申
請の処理要領」等において,運賃及び料金の認可申請に係る申請者の運転
者1人当たりの平均給与月額を原価計算対象事業者の運転者1人当たりの
平均給与月額と比較する等の基準が用いられていること等から,申請者の
運転者の労働条件が個別具体的な利益として道路運送法の運賃認可処分に
おいて考慮されていることは明らかであって,タクシー運転者は,運賃認
可処分について法律上保護された利益を有するものと解すべきである旨主
張するので,この点について検討する。
道路運送法施行規則10条の3は,道路運送法9条の3第1項の規定に
より一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金の設定又は変更の認可を
申請しようとする者は所定の事項を記載した運賃及び料金設定(変更)認
()可申請書を提出すべき旨を定める道路運送法施行規則10条の3第1項
とともに,当該申請書には,原則として原価計算書その他運賃及び料金の
額の算出の基礎を記載した書類を添付すべき旨を定めている(同条2項,
3項。また,証拠(甲2,20の1・2,乙2)によれば,101号通)
達別紙4「自動認可運賃等の申請に対する処理手続等」の第3「自動認可
運賃に該当しない運賃申請の処理要領」の1「原価及び収入の算定」にお
いては,申請運賃が当該運賃適用地域(需要構造,原価水準等を勘案して
運賃改定手続をまとめて取り扱うことが合理的であると認められる地域と
(。。))して地方運輸局長沖縄総合事務局長を含む以下同じが定める地域
の自動認可運賃に該当せず,かつ,運賃改定(運賃適用地域において普通
車の最も高額の運賃よりも高い運賃を設定すること)を伴わない運賃に係
る申請については,申請者に実績年度の原価及び収入をもとに所定の書類
を作成提出させ,地方運輸局長においてこれをもとに平年度における申請
者の原価及び収入を査定するものとされ「人件費については,申請者の,
運転者1人当たり平均給与月額(福利厚生費を含む。以下同じ)が原価。
計算対象事業者の運転者1人当たり平均給与月額の平均の額(以下「標準
人件費」という)の10%を超えて下回っているときは,(1)労使間で。
当該申請について了解がある場合,又は(2)過去2年間に労働基準法(昭
和22年法律第49号)違反及び自動車運転者の労働時間等の改善のため
の基準(平成元年労働省告示第7号)違反が認定されていない場合は申請
者の実績値を用い,その他の場合には標準人件費を10%下回る額で人件
費を査定することとする」とされている(なお,控訴人らが指摘する上。
記通知は,101号通達の一部改正(平成16年9月16日付け国自旅第
148号によるもの)が平成16年10月1日から適用される旨を通知す
る内容のものであるところ,同一部改正においては,別紙4の第3につい
ては,変更が加えられていない。また,控訴人らが指摘する上記公示も,
自動認可運賃に該当しない運賃申請の処理要領として,101号通達別紙
4の第3の内容を掲げるものである)ことが認められる。。
このように,運賃認可処分に当たっては,一定の場合を除き,申請者か
ら提出される原価計算書等に基づき,地方運輸局長において平年度におけ
る申請者の原価及び収入を査定すべきものとされており,その際,申請者
の運転者1人当たり平均給与月額と標準人件費(原価計算対象事業者の運
転者1人当たり平均給与月額の平均の額)との比較が行われるべきことと
,,されていることは控訴人らが指摘するとおりであるが上掲証拠によれば
平成16年9月16日付け国自旅第148号による101号通達の一部改
正は「意欲のある事業者の創意工夫により更に多彩な運賃及び料金の設,
,」定がなされることがタクシー事業の活性化利用者利便の向上につながる
との観点から行われたものであり,その趣旨を明示するため,上記改正後
の101号通達の前文には,一般乗用旅客自動車事業の運賃料金の認可の
処理方針の基本的な観点として「利用者間に不当に差別的な取扱いをす,
るものではなく,かつ,他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそ
れがないことを十分勘案の上,運賃料金の多様化を促進する」旨が新たに
掲げられたことが認められるのであり,このような改正経過の趣旨にも照
らせば,上記の比較も,申請に係る運賃の認可の可否を判定する過程にお
いて,地方運輸局長において査定すべき申請者の原価の1項目である人件
費の査定として行われるものであり,申請者に勤務するタクシー運転者の
賃金水準その他の労働条件の個別具体的な保護を図る趣旨によるものでは
ないことは明らかであるというべきである。また,上掲証拠によれば,1
01号通達別紙第4の第3の3「申請に対する処分」(1)においては「申,
請額が運賃査定額以上である場合は申請額で認可することとする。また,
申請額が運賃査定額に満たない場合は運賃査定額を申請者に通知し,通知
後2週間以内に申請額を運賃査定額に変更することができることとするこ
と。変更申請がない場合は,当該申請による運賃を設定することによる労
,。」働条件への影響等についても審査の上その適否を判断することとする
とされていることが認められるが,これも,労働条件への一般的な配慮に
とどまり,申請者に勤務するタクシー運転者の労働条件の個別具体的な保
護を目的とするものではないと解される。この点も,上記の101号通達
の改正の経過に照らしても明らかであるというべきである。
したがって,101号通達の内容を参酌しても,道路運送法が一般乗用
旅客自動車運送事業に従事する運転者の賃金等の労働条件の保護自体をそ
の趣旨又は目的としているものと解することはできないといわざるを得
ず,この点についての控訴人らの主張も採用することはできない」。
(4)17頁23行目の「され」を「認可され」に改める。
(5)18頁18行目の「理由はない」の次に「この点について,控訴人ら。
は,上記のとおり,関係営業地域を仙台市とするタクシー会社によるタクシ
ー運賃及び料金に関する認可申請に係る平成19年12月11日付け東北運
輸局長公示(公示番号××号)について,Xの執行委員長が道路運送法施行
規則57条の規定に基づき東北運輸局長に対して道路運送法89条2項の利
害関係人としての意見聴取の申請をしたところ,東北運輸局長が同月26日
付け東自旅二第××号をもって当該意見聴取を行う旨上記執行委員長に通知
した事実をもって,道路運送法89条にいう「利害関係人」にはタクシー運
転手も含まれることの証左であるとするが,Xの執行委員長に対し当該通知
がされた事実をもって直ちに同条にいう「利害関係人」にはタクシー運転手
も含まれるものと解することができないことは明らかである」を加える。。
(6)19頁13行目の「の一部」を削る。
(7)20頁4行目の「裁判所時報1458号1頁」を「民集62巻5号10
05頁」に改める。
2よって,原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないからこれら
を棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第7民事部
裁判長裁判官大谷禎男
裁判官相澤哲
裁判官吉村真幸

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